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[OGC 2010]狙うは世界市場――「モバゲータウン」のディー・エヌ・エーが見据えるモバイルソーシャルゲームの今後
講演の議題は,「モバイルSNSのオープンAPI化について」というもの。具体的には,モバゲータウンでの取り組みを紹介しながら,モバイル端末におけるソーシャルゲームの可能性や今後について語るという内容だった。
守安氏は,まず自身が運営を手がけるモバゲータウンの近況について説明する。モバゲータウンといえば,以前は10代の若い層を中心としたコミュニティを形成していることで知られたサービスだったが,ディー・エヌ・エー側の戦略転換の効果もあり,最近は,20〜30歳代にユーザー層を拡大しているのだという。
約3年前は,過半数が10代のユーザーだったモバゲータウンも,1500万アカウントを超えた今では,7割が20歳以上のユーザーになっており,しかも30歳以上の割合が30%近いというから驚きである。一昔前のモバゲータウンといえば,20代ですら「馴染みにくい」と言われていた気もするのだが……。
同じ携帯向けサービスを展開するライバルのGREEが,昨年に「30代以上のユーザーが40%」という発表をしていたことも併せて考えると,携帯向けゲームサービス=若者向けという図式も,もはや過去のものなのかもしれない。
続いて守安氏は,昨年に内製のソーシャルゲームを展開したところ,急激にモバゲータウンのページビュー(以下,PV)が増加し,また収益としても大きな柱として急成長したことに触れ,「2010年1月には,アカウントも61万人純増した」「現状で,約450億PV/月のアクセスをいただいております。PVだけを見れば,Yahoo Japanを抜いて国内トップ」などなど,その好調ぶりをうかがわせるコメントが随所で見られたのが印象的であった。
なかでも興味深いのは,ソーシャルゲームを投入したことで,モバゲータウンのビジネス構造自体が大きく変化してきているという点だろうか。以前はアバターを中心にしたアイテム課金,あるいは広告収入が事業の柱だった同サービスなのだが,ゲームが展開された昨年度の第三クォーターからは,ゲームの売り上げが収益全体の半分を占めるほどに急成長したのだという。
公開されたグラフを見ても,2009年度の第三四半期のゲーム関連の売り上げは約36億円。それまでのゲームの売り上げ推移から比べても,10倍近い伸び幅である。これはなかなか凄い。
また守安氏は,「ゲームとアバターを密接に関連させた展開を考えている」として,従来型のゲームポータルよりも一歩進んだゲーム&コミュニティサービスを志向しているとのことであった。これは簡単に言えば,アバターの服やアイテムが,ゲーム側にいろいろな効果を及ぼすというものらしく,例えばアバターにバズーカを持たせれば,アクションゲームでプレイヤーの攻撃力が上がる……などというもののようだ。
アバターのアイテムは,今のところ実利的な要素に欠けている部分があるのは否めないわけだが,単なるコレクションアイテムではなく,「必要なアイテム」「欲しいアイテム」を促す仕掛けを目指すということなのだろう。
ちなみに上記の数値は,ディー・エヌ・エー自身が自社で開発した,いわゆる“内製”のゲーム中心での売り上げになるのだが,モバゲータウンの方針としては,今後さらにモバゲータウンのオープン化(1月27日から他社のゲームもリリースされている)も推し進め,より多様なニーズへの対応を目指したいとのこと。モバイルゲーム市場のプラットフォーマーとしての立ち位置を強化するとのことであった。
最後に守安氏は,「モバイルソーシャルゲームの今後」についても言及。「今はPCベースで大きなムーブメントが起きているソーシャルゲームですが,将来,これがモバイルに移行してくるのは確実」だとして,「世界市場を見据えた取り組みを今後は重視していく」と語り,講演を締めくくった。
さて,近年急激な成長を見せるモバイル向けゲームサービスの雄ディー・エヌ・エーによる今回の講演。話を聞いていて改めて思ったのは,かつてニンテンドーDSが掘り当てた「ゲームをしない層」という金脈を,彼らが虎視眈々と狙っている(むしろ「着実に浸食している」が正しい)という事実だろうか。
累計アカウント1500万以上という数値からも分かるように,携帯電話を使ってゲームを遊ぶというのは,以前にも増して一般化しつつあるという雰囲気だ。売り上げの規模感という意味では,まだまだ既存のゲーム産業に遠く及ばないものの,プレイ時間,あるいはライフスタイルへの浸透度という面で,モバイルを使ってゲームをすることが,今や“ゲームを遊ぶ”側の需要の一角を占めているといっても過言ではない。
昔,それこそ“モバイルゲーム”なるものが登場し始めた頃には,「携帯電話がゲーム機を駆逐する!」と言われたこともあったわけだが,高性能なスマートフォンが広く普及し始め,またそれに乗っかるサービスが充実してきた今,改めてその存在感が際立ってきたのかもしれない。
ただ,そこでメインプレイヤーとなっているのが,NTTドコモやAUといったキャリアではなく,ソーシャルサービスを絡めたプラットフォーム事業者だというあたり,時代の流れというものを感じさせられるのも確かだろう。
「モバゲータウン」公式サイト
「OGC 2010公式サイト」
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