プレイレポート
「Medal of Honor」マルチプレイβテストレポート。MoHシリーズの最新作は,ライバルを蹴落として王座に返り咲けるか
Electronic Artsが開発中の「Medal of Honor」(邦題 メダル オブ オナー,PC/PlayStation 3/Xbox 360)は,1999年のPlayStation向け同名タイトル「Medal of Honor」以来,10年以上も続いてきたFPSシリーズである。PCゲーマーに注目されたのは,2002年に発売された「Medal of Honor: Allied Assault」(PC)で,欧米だけでなく日本でも大ヒットを記録した。「第二次世界大戦モノのFPS」というジャンルを確立した作品といっていいだろう。
シリーズ前作は2007年にリリースされた「Medal of Honor: Airborne」PC/PlayStation 3/Xbox 360で,タイトルどおり主人公は空挺部隊に所属する兵士となる。マップ上の好きな場所に自由に降りて戦えるというユニークなゲームシステムがそれなりの評価を獲得したが,数か月後に発売された「Call of Duty 4: Modern Warfare」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)が驚異的なメガヒットを飛ばしたため,ちょっと影が薄くなってしまった感がある。
巻き返しを図るべく投入される2010年版Medal of Honorは,サブタイトルを取り払って記念すべき第一作と同じタイトルになり,背景となる時代も,それまでの第二次世界戦から現代のアフガニスタンに移行。さらに,シングルプレイのパートをElectronic Artsのロサンゼルススタジオ(EALA)が,マルチプレイをスウェーデンのEA DICEが制作するというオールEA体制で取り組まれた作品だ。
「Medal of Honor」公式サイト(英語:要年齢認証)
ちなみに,複数のスタジオによるシングルとマルチの分業については,「BioShock 2」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)や「Return to Castle Wolfenstein」(PC)などの例があり,そう珍しいことではないが,Medal of Honorではゲームエンジンまでもが異なり,シングルプレイにはEpic Gamesの「Unreal Engine 3」が,またマルチプレイにはEA DICEの「Frostbite Engine」が使用されている。まるで,同じテーマを扱った二つのタイトルが同梱されているような感じだ。
そんなEA期待の新作,Medal of Honorは,6月22日に掲載した記事でもお伝えしたように,2010年6月18日から7月18日の1か月,PlayStation 3版とPC版のマルチプレイβテストが行われた(Xbox 360版のβテストも行われる予定だが,現在のところ開始日時未定)。今回は,そのテストのインプレッションを簡単にまとめて紹介しようという魂胆だ。
もちろん,今後のブラッシュアップによって製品にはいろいろ手が加えられるはずなので,あくまで現在行われているβテストの印象である。また,ここに掲載したムービーおよびスクリーンショットは開発中のものであり,今後の変更もあり得るということで,一つよろしくお願いします。
戦火のアフガニスタンで火花を散らす,二つの勢力
今回のβテストは,ショップでMedal of Honorを予約することなどでもらえるキーコードを使って参加するわけだが,現在,EA JapanのストアでMedal of Honorの予約受付が行われていないため,日本から参加するのはちょっと大変かもしれない。また,日本語版の発売が予告されているのに,英語版を買うのも悩みどころではある。
ちなみに我々は,6月に開催されたE3のときEAブースで配布されたカードに書かれたキーコードを使用して,今回のテストに参加した。プレイした機種はPCであり,そのためコンシューマ機とは細部が異なっている可能性もある。ということまで知っておいていただければ,さあ,あとはレッツプレイだ。
Medal of Honorのマルチプレイβテストには,2種類のモードが用意されている。一つは,Team Assaultで,これはつまり最大24人が参加できるチームデスマッチだ。二手に分かれたプレイヤーがテクニックの限りを尽くして殺し合うという,おなじみのもの。戦場となるマップには「Kabul City Ruins」という名前が付けられており,これはやはり,アフガニスタンの首都カブールだろう。また,出てくる勢力は「Coalition」,つまり“連合”と「Insurgent」,つまり“反乱部隊”の2つ。連合はどう見てもアメリカ軍で,反乱軍はアフガンゲリラだ。
もう一つのモードはCombat Missionで,「Battlefield: Bad company 2」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)の「ラッシュ」モードに似たルールが採用されている。マップには「Helmand Valley」という名前が付けられており,攻撃側と守備側が「機関銃座」や「掩体壕」といったオブジェクトをめぐって戦うというもの。一度に争うのは常に一か所で,例えば道路を塞いでいるブロックを攻撃側が破壊すれば,次に機関銃座が目標としてアンロックされ,敵味方がそこへ集結してそれを奪い合うというダンドリだ。マップにはこういう目標が5つあり,すべて破壊すれば攻撃側の,制限時間いっぱい守りきれば守備側の勝利となる。
攻撃は常に連合側が担当し,守備は反乱部隊が受け持つ。チームデスマッチ同様,最大参加プレイヤー数は24人だ。
攻撃側がどこを攻撃するのか守備側に分かっているのだから,待ち伏せできる守備側のほうが有利という気がするが,そのハンデを乗り越えるため攻撃側にはM3ブラッドレー装甲戦闘兵車が用意されている。守備側はRPG(対戦車ロケット)で対抗できるとはいうものの,その破壊力は抜群だ。このように,Medal of Honorのマルチプレイは必ずしも歩兵同士の戦闘に限られているわけではなく,こうしたビークル類が出てくるマップがいくつか用意されるのだろう。
どちらのモードでもプレイヤーが選べる兵科は「Rifleman」「Special Ops」,そして「Sniper」の3種類と少なめだ。とはいえ,最近のEAタイトルを見ると,Bad company 2が4クラス,カジュアル層をターゲットにした「Battlefield 1943」(PlayStation 3/Xbox 360)が3クラスと,似たような感じである。「Battlefield 2」(PC)の7兵科というのが,多すぎたのかもしれない。ちなみに,ライバルのCall of Duty Modern Warfareシリーズでは5種類(うち,最初から使えるのは3種類)のクラスがあるが,プレイを続けると,すぐにクラスを好きにカスタマイズできるようになるシステムだ。
Medal of Honorのマルチプレイにおいては兵科と武器は固定されており,死んだ兵士が落とした武器を拾って使うことはできないようだ。各兵科の特徴は,マルチプレイFPSのプレイヤーにはおなじみだろうが,RiflemanはアサルトライフルもしくはSAW(分隊支援火器)を使って中距離戦闘を受け持ち,Spec Opsは特殊部隊用のカービン銃やショットガンによる至近距離の戦闘を,そしてSniperは狙撃ライフルによる遠距離戦闘を得意とする。
どれを選ぶかは,個人の好みだ。Riflemanを選んだ筆者は,やたらにSpec Opsのナイフキルの餌食になるので,Spec Opsが有利なような気がするものの,Sniperの狙撃ライフルの犠牲にもなりがちなので,クラスによる有利不利はとくにないと思う。
戦闘に参加することでキャリアアップし,それに伴って武器をグレードアップできるという,おなじみのフィーチャーも用意されている。キャリアはレベル1の「Recruit」からレベル8の「T1 Recruit」まであり,レベルが上がるごとに「エクストラマガジン」「サプレッサー」「レッド・ドッド・サイト」などのアイテムの使用が可能になる(以上はRiflemanの場合。各クラスごとにアンロックアイテムは違う)。
これらのアイテムは,「Change Gear」画面で自分の銃に装着できる。必ずしも取り付けなければいけないわけではないが,どのアイテムもなかなか効果が高く,結果として「長く遊んでいたほうが有利」になるのは仕方ないことだろう。最近のオンラインFPSではよくあるフィーチャーでもある。
上位のキャリアになるほど,当然ながらキャリアアップに必要なポイントは増えていき,最後のT1 Recruitの場合,実に10億ポイント(!)という,とんでもない値になる。まあ,実際問題として1か月のβテスト期間で10億ポイントはほとんど無理なので,「こういうのも製品版に出てきますよ」という意味で,まだ実装されていないだろう。とはいえ,世の中は広いので,すでにT1の新兵であるという強者プレイヤーもいるかもしれない。無理だと思うけど。
ちなみに,T1とはシングルプレイの主人公が属する特殊部隊「Tier 1」のことだ。マルチプレイでT1隊員になった場合,「ヒゲづら」になれるという噂があるが,本当だろうか。
近接戦闘に特化したゲームシステムが,熱い
2002年発売のMedal of Honor: Allied Assaultのマルチプレイは,ゲームバランスなどにいくつか問題があり,あまり評判のいいものではなかった。とはいえ,なにしろヒットしたためプレイヤー数が多く,有志の制作したバランス調整用パッチなどが出回ったりしたので,2008年頃までそれなりの数のプレイヤーがいた人気作だったと記憶している。
当時の作品らしく,敵を見つけるとパンパンと撃ち,撃たれると物陰に隠れて救急パックを使い,しかるのちに応戦し,戦況は一進一退というプレイフィール(※あくまで個人の印象です)。
だが,シリーズ最新作のマルチプレイは,Allied Assaultの頃とはまったく違う雰囲気だ。一回の戦闘が長くても20分ほどで終了するハイペースなもので,撃たれたときのダメージが大きく,数発で倒される。体力回復は自動で救急パックはなく,またメディック役のクラスもないので,その点からも殺られやすい。弾薬は,マップに示された場所に置かれた弾薬箱で補給するのだが,個人的には,弾が切れるまで生きちゃいられない雰囲気。
したがって基本は動き回って敵をいち早く発見し,撃つというものになる。うまく連続キルを達成すると,連合側の場合「空爆要請」が,また反乱部隊の場合「迫撃砲攻撃要請」が可能になる。これもまた破壊力甚大で,爆撃地点から結構離れているつもりでも,根こそぎ倒されたりする。ただし,リスポーンまでの時間は短く,すぐに復活して前線復帰が可能になっている。敵を倒すたびにポイントが表示され,そのへんはカジュアルな雰囲気だ。
ちなみに空爆/迫撃砲攻撃で建物が丸ごと破壊されるようなシーンはなく,同じFrostbite Engineを使うBad Company 2で見られた「ディストラクション」は導入されていない。破壊できるオブジェクトもあるが,限定的だ。6月16日に掲載したE3レポートでも書いたように,本作のEA DICE側のプロデューサーであるPatrick Liu氏はMedal of Honorのマルチプレイの狙いを,「息詰まる近接戦闘の迫力」にあるとしており,いたずらにルールを複雑にするよりシンプルさを重要視したのだろう。
その狙いどおり,歩兵同士の戦闘を中心にした,やってやられて,またやってを繰り返すスピード感のあるマルチプレイという印象だ。短時間でケリがつくので入りやすく,ついつい続けてしまう中毒性もある。デフォルトで同士討ちはないので,気をつかうことなく撃ちまくれるのも悪くない。大型兵器や,空爆/迫撃砲もよいアクセントになっている。全体として,マルチプレイFPSのベテランが驚くようなところは少ないが,ビギナーにはプレイしやすく遊びやすい雰囲気だ。
「白兵戦主体」「連続キルによる特殊攻撃」など,ライバルであるCall of Dutyシリーズを強く意識しているのは間違いなく,あとは,どれくらい独自性を打ち出せるのかが勝負になるかもしれない。シングルプレイに関する情報の少なさが気になるが,個人的には早くリリースしてほしいという気分でいっぱいの一本だ。
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(C)2010 Electronic Arts Inc. EA, the EA logo and Medal of Honor are trademarks of Electronic Arts Inc. All other trademarks are the property of their respective owners.
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