レビュー
ミドルクラスの新型コア「GF104」で,Fermi反撃の狼煙が上がる
GeForce GTX 460リファレンスカード
MSI N460GTX Cyclone 768D5/OC
EVGA 768-P3-1360-KR
搭載グラフィックスカードの想定売価が199〜229ドルとされる新世代GPUは,GeForce GTX 400シリーズの新たな最下位モデルとして,ミドルクラスの市場をターゲットに展開される見込みだが,コストパフォーマンスを重視するPCゲーマーは,どう捉えるべき製品なのか。今回4Gamerでは,発表に先立ってNVIDIAから,グラフィックスメモリ1GB仕様のリファレンスカードを短期間貸し出してもらったほか,MSIの日本法人であるエムエスアイコンピュータージャパンからはグラフィックスメモリ768MB版のクロックアップモデル「N460GTX Cyclone 768D5/OC」,EVGAの販売代理店であるリンクスインターナショナルからグラフィックスメモリ768MB版のリファレンス仕様準拠モデル「768-P3-1360-KR」を入手したので,3製品のテストを通じて,その“素性”に迫っていきたい。
N460GTX Cyclone 768D5/OC メーカー:MSI 問い合わせ先:エムエスアイコンピュータージャパン Tel 03-5817-3389 予想実売価格:2万1800円前後(※2010年7月12日現在) |
GF100と似て非なるアーキテクチャを採用するGTX 460
メモリ容量&I/Fの異なる2バージョンが存在
例えば,7月時点の最上位モデル「GeForce GTX 480」(以下,GTX 480)だと,フルスペックから1SM少ない480 CUDA Core。「GeForce GTX 470」(以下,GTX 470)や「GeForce GTX 465」(以下,GTX 465)は,フルスペックのGF100からSMの数を削る(=32基単位でCUDA Core数を減らす)ことで派生している。
もう一つ注目したいのはメモリ周りだ。フルスペックのGF100において,ROPユニットは8基で1つのパーティションを形成し,それを6基搭載していた。GF104でも,1パーティションあたりのROPユニット数が8基なのは同じだが,パーティションの数は最大で4と,GF100比で3分の2に削減されている。また,ROPパーティションの削減に合わせて,1基当たり64bit幅のメモリコントローラ数もGF100比3分の2となる4基に減ったため,メモリインタフェースはフルスペックで256bitということになるわけだ。
ここまでの要点は下記のとおりである。
●GF104におけるGF100からの変更点(※フルスペックの場合)
- SMあたりのCUDA Core数が32基から48基へ増加
- SMあたりのテクスチャユニット数が4基から8基へ増加
- GPC数が4基から2基へ減少
- ROPパーティションが6基から4基へ減少
- メモリインタフェースが384bitから256bitへ減少
……ここまで再三「フルスペック」と繰り返してきたことと,冒頭で紹介した3枚のグラフィックスカードでグラフィックスメモリ容量に違いがあったことで,気づいた読者もいると思う。そう,GTX 460はフルスペックのGF104ではなく,かつ,メモリ周りの違いで2モデルが用意されているのだ。
GTX 460[1GB]とGTX 460[768MB]はいずれもPCI Express補助電源コネクタとして6ピン×2を要求するが,これについてNVIDIAは,「GTX 460[768MB]は,最大消費電力を150Wに収めているため,カードベンダーの設計次第で,6ピン×1も実現可能」という見通しを示している。その意味で“GTX 460[1GB]とGTX 460[768MB]の立ち位置問題”は,時間が解決するかもしれないが……。
なお,GTX 460[1GB]とGTX 460[768MB]で,CUDA Core数や動作クロックに違いはない。GF104のフルスペックから48 CUDA Core(=1SM)削減された336 CUDA Core(=7SM)仕様なのは,GF100と同じく,歩留まり向上のためだろう。
ミドルクラスらしいカード長を実現
リファレンスデザインはメモリ容量を問わず同じ
アーキテクチャの解説がかなり長くなってしまったが,入手した3枚をチェックしていこう。
GTX 460[1GB]とN460GTX Cyclone 768D5/OC(以下,N460GTX Cyclone),768-P3-1360-KR(以下,EVGA GTX 460)のカード長はいずれも実測で約208mm(※突起部除く)。「ATI Radeon HD 5770」のリファレンスカードとほぼ同じ長さで,省電力版「GeForce 9600 GT」カードより若干長い,といった程度だ。少なくとも「GeForce GTX 400シリーズの新製品」というコトバからイメージされるサイズからすれば相当に小さい。
今回入手した3枚を並べたところ。リファレンスデザインは外排気クーラー,N460GTX CycloneはMSI独自のCycloneクーラーを搭載するという違いはあるが,カード長自体は同じ |
N460GTX Cycloneを,リファレンスデザインの基板を採用する「ATI Radeon HD 5830」カード(上),省電力版GeForce 9600 GTカード(下)と並べたところ。かなり短めだ |
GPUクーラーについては後述するとして,以下,クーラーを取り外した写真を並べてみたので参考にしてほしい。写真は左がGTX 460[1GB]リファレンスカード,中央がN460GTX Cyclone,右がEVGA GTX 460だが,今回入手した3枚は基本的に同じレイアウトを採用しているのが分かる。つまり,リファレンスデザインレベルでGTX 460[1GB]とGTX 460[768MB]に違いはなく,メモリチップを8枚搭載していれば前者,6枚なら後者ということになるわけだ。
TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.4.4)で確認すると,動作クロックはGTX 460[1GB]リファレンスカードとEVGA GTX 460がリファレンスどおり。N460GTX Cycloneはコア728MHz,シェーダ1455MHzだった。
ちなみに,下に示したGPU-Zのスクリーンショットだと,「Shaders」が224になっているが,これは誤表示。正しくは表1のとおり336基である。
レビュワー向けドライバ「258.80」を使用
表1で示したGPUとの比較を実施
テストに用いるグラフィックスドライバには,GTX 460のテストにあたってNVIDIAから全世界のレビュワーに配布された「GeForce Driver 258.80」を利用。一方,ATI Radeonの検証には,テスト時点の最新版となる「ATI Catalyst 10.6」を用いる。
テストは4Gamerのベンチマークレギュレーション9.2に準拠。ただし,テストスケジュールが短いという都合上,「Left 4 Dead 2」と「ラスト レムナント」を省略するほか,解像度も先の理由から1680×1050/1920×1200ドットの2つに絞る。
一方,レギュレーション9.2準拠ではDirectX 11世代のタイトルが一つしかないこともあって,今回は「S.T.A.L.K.E.R.: Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP)の公式ベンチマークテストから,「DX11 Ultra」設定で,最も描画負荷の低い「Day」と,逆に最も高い「SunShafts」をそれぞれ実行したときのスコアを採用することにした。
テストするタイミングなどによってその効き具合が異なることを避けるため,「Core i7-975 Extreme Edition/3.33GHz」の自動オーバークロック機能「Intel Turbo Boost Technology」はBIOSから無効に設定。一方,「Intel Hyper-Threading Technology」は有効にしたままとしている。
また,以下,ベンチマークスコア考察の段では,N460GTX Cycloneを「GTX 460[768MB/OC]」,EVGA GTX 460をGTX 460[768MB]と表記することを優先するので,この点もあらかじめお断りしておきたい。
GTX 465と同等以上のパフォーマンス
HD 5850を上回ることも
DirectX 9世代の定番ベンチマークソフト,「3DMark06」(Build 1.2.0)から見ていこう。グラフ1,2は総合スコア「3DMarks」をまとめたものだが,アンチエイリアシングおよびテクスチャフィルタリングを適用していない「標準設定」で,GTX 460[768MB]のスコアは,GTX 465と比べて5%ほど低い。これがGTX 460[1GB]だと1〜3%に縮んでいる。
面白いのは,GTX 460[768MB/OC]が,標準設定ではGTX 460[1GB]と変わらないスコアに留まる一方,4xアンチエイリアシングと16x異方性フィルタリングを適用した「高負荷設定」において,GTX 465比3〜4%高いスコアを示していること。「クロックアップ状況次第で,GTX 460[768MB]は,GTX 460[1GB]との間に存在するメモリ周りのスペック低下を払拭できる可能性がある」というわけだ。
ライバルと比較してみると,GTX 460[768MB]で,HD 5850とHD 5830のほぼ中間といったところか。
グラフ3〜7は,3DMark06のデフォルト設定である1280×1024ドット,標準設定における「Feature Test」の実行結果だ。
まずグラフ3に示した「Fill Rate」(フィルレート)から見てみると,今回用意したGTX 460カードは,3枚がすべて「Multi-Texturing」のスコアでGTX 465を上回った。GF100では,SMあたりのテクスチャユニット数が4基と少なく,これがDirectX 9&10世代のアプリケーションでパフォーマンスが伸びない原因の一つになっていたが,GF104でSMあたり8基へと倍増し,GTX 460では8基×7SMの56基と,GF100のフルスペックである64基(4基×16SM)に近い数になっているのが影響していそうだ。
ATI Radeon HD 5000シリーズやGeForce GTX 200シリーズとの差は依然としてあるものの,GTX 460(=GF104)で,旧世代のDirectX APIを採用したゲームタイトルを前にしたとき,GF100比でパフォーマンスが引き上げられている可能性を期待できる結果といえよう。
続いてグラフ4,5は,「Pixel Shader」(ピクセルシェーダ)と「Vertex Shader」(頂点シェーダ)のテスト結果である。GF100はフルスペックで16基,GTX 465すら11基もの頂点処理ユニットを搭載することで,頂点シェーダ性能が大きく引き上げられる一方,すぐ上で述べたテクスチャユニット周りの弱点により,ピクセルシェーダ性能が相対的に低くなっていたが,GF104では,若干ながらもバランスが取られた印象だ。
Shader Model 3世代における汎用演算のポテンシャルを見る「Shader Particles」(シェーダパーティクル)や,長いシェーダプログラムの実行性能を見る「Perlin Noise」(パーリンノイズ)の結果がグラフ6,7である。
前者では,GTX 460[768MB/OC]のスコアが何度計測しても低く,「製品版ドライバ待ち」といった結果になってしまった。後者については,依然としてATI Radeon HD 5000シリーズとの差が大きいと分かる。GF100におけるラディカルなアーキテクチャ変更が,旧世代のアプリケーションを動作させるときにもたらす負の影響は,GF104でも確認されたことになる。
以上を踏まえつつ,新旧さまざまなエンジンで,3Dゲーム性能をチェックしていこう。
グラフ8,9は,STALKER CoPのDayシークエンスにおけるテスト結果をまとめたものだが,ここではGTX 460[768MB]がGTX 465とほぼ同じスコアを示し,GTX 465を完全に“喰う”格好になっている。描画負荷の低い標準設定だと,HD 5850にはずいぶん離されるが,HD 5830には優位性を示しており,さらに高負荷設定だとGTX 460[768MB/OC]とGTX 460[1GB]がHD 5850と並んでいるのも興味深い。DirectX 11に強いFermiアーキテクチャらしい結果といったところか。
ただし,今回テストに用いたレビュワー向けGeForce Driver 258.80では,GTX 460[768MB]の1680×1050ドットと,GTX 465の1680×1050&1920×1200ドットで,画面表示がおかしくなる問題が見られた。NVIDIAはレビュワーズガイドでこの問題について言及しているため,早晩修正されるとは思うが,一応,現時点で「そういう問題がある」ことは押さえておきたい。
次にグラフ12,13は,DirectX 10世代のタイトル「Crysis Warhead」のテスト結果だ。
ここで,GTX 460[768MB]のスコアはGTX 465にあと一歩届いていない。高負荷設定でメモリ周りの違いが顕著になり,GTX 460[1GB]がGTX 465に食らいついていく一方,GTX 460[768MB/OC]とGTX 460[768MB]は脱落していくあたり,メモリ周りのスペック差は,ゲームタイトルによってはやはりあるようだ。
ただ,ここでよりはっきりさせておくべきは,DirectX 10だとやはりATI Radeon HD 5000シリーズが強いということのほうだろう。GTX 460[768MB]が高負荷設定の1920×1200ドットでHD 5830に追いつかれているのも示唆的である。
DirectX 9世代のFPSとなる「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)だと,GTX 460は,負荷の高い高負荷設定でGTX 465を上回るスコアを示し,HD 5850とのスコア差も縮めにかかっている(グラフ14,15)。ただ,負荷の低い局面だと増量したテクスチャユニットを生かし切れていないのも,標準設定のテスト結果からは見て取れよう。
DirectX 10世代のTPS「バイオハザード5」の結果がグラフ16,17。本タイトルはもともとGeForceシリーズが高いスコアを示す傾向にあり,同時にCPUボトルネックも出やすく,スコアに大きな違いは出にくい傾向にもあるが,果たしてGTX 460[768MB/OC]は「低負荷設定」でHD 5850と遜色ないスコアを示せている。
高負荷設定だと,GTX 460[1GB]とGTX 460[768MB]の間にあるメモリ周りの仕様差がスコアに大きな影響を与えているのと,全体としてGTX 460とGTX 465との間に有意な差がないのが見どころだ。
パフォーマンス検証の最後は,DirectX 11モードで実行した「Colin McRae: DiRT 2」(以下,DiRT 2)である。
テスト結果はグラフ18,19のとおり。ATI Radeonへの最適化が行われているタイトルで,GTX 460がHD 5850を上回るスコアを示しているのは,DirectX 11環境におけるFermiアーキテクチャの強さを再び示したといえるが,GTX 465よりも総じて高いスコアを示しているあたりからは,GF104がGF100以上に3Dゲーム向けのアーキテクチャになっている可能性も見て取れる。
消費電力はGTX 465から20〜40W程度低下
クーラーの動作音も静か
GTX 460[1GB]で160W,GTX 460[768MB]で150W。公称最大消費電力はGTX 465の200Wから大きく引き下げられているが,実際のところはどうなのか。今回も,ログを取得できるワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を計測し,そこからカードの消費電力を推し量ることにしたい。
アプリケーション実行時のスコアは,GTX 460[768MB]は279〜308W,GTX 460[1GB]は293〜326W。例によってスコアにはバラツキがあるので,ざっくりとした比較にはなってしまうが,メモリ容量とメモリコントローラ,ROP周りの違いが消費電力に与える影響は,20W程度はありそうな雰囲気だ。ただ,いずれにせよGTX 465との差は一目で分かるほどで,GTX 460の消費電力は,GTX 465から間違いなく下がっていると断言できる。HD 5850の優秀さには敵わないものの,199〜229ドルクラスのGPUとして,破綻のない消費電力になっていることは間違いない。
なお,GTX 465[768MB/OC]の消費電力は,クロック分上がっているものの,クロックアップ版の購入を躊躇させるほどのものではない印象だ。
消費電力が下がった効果はてきめんといったところか,GTX 460のGPU温度はリファレンスカード同士で比較したときにGTX 465比で10℃前後低い。GTX 460[768MB/OC]が搭載するMSIオリジナルのCycloneクーラーが,相当に高い冷却能力を持っているのも見て取れる。
なお,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,GTX 460のリファレンスクーラーはなかなか静かだ。静音性に関しては,HD 5850のリファレンスクーラーと同じくらいだろうか。なお,Cycloneクーラーも,GTX 460のリファレンスクーラーと同じくらい静かに感じられた。
GTX 465を過去のものにするキラーぶりを発揮
NVIDIAの戦略には疑問もあるが,製品は魅力的だ
N460GTX Cycloneの製品ボックス。「Voltage Adjustment」の文言が躍るが,試してみた限り,MSI製のチューニングツール「Afterburner」から確かに電圧設定の変更が可能だった |
こちらはEVGA GTX 460の製品ボックス |
これが,テストを終えた筆者の,偽らざる感想である。GTX 465のレビュー時に筆者は「なぜGTX 460ではなくGTX 465なのか疑問だ」と述べたが,今から思えば,GF104をGTX 460として投入することははじめから決まっており,しかしリリースが遅れたために,急遽GTX 465を投入してきたというのが,実際のところではなかろうか。
いずれにせよ,GTX 460はパフォーマンスと価格の両面で“GTX 465キラー”ぶりを遺憾なく発揮しており,GTX 465が市場に立ち位置を確保する余地はもはやないように思える。
さすがに実勢価格2万9000〜3万5000円程度(※2010年7月12日現在)のHD 5850には多くの場面で届いていないものの,1万8000〜2万7000円程度(※同)のHD 5830に対しては優位性を発揮しており,それでいて北米市場における想定売価がグラフィックスメモリ1GB版で229ドル,768MB版で199ドルというのは,ちょうどHD 5850とHD 5830の間に切り込む格好で,悪くない。消費電力やクーラーの性能も含め,コストパフォーマンスの高いDirectX 11世代のGPUを探している人達の間で,その存在感はかなり大きくなりそうだ。
ただ理解に苦しむのは,グラフィックスメモリ1GB版と768MB版とで型番が同じであること。後者は価格が低めに設定されているから,そう大きな問題ではないとNVIDIAは考えているのかもしれないが,名前が同じで片方だけ性能が低い(ことがある)となれば,768MB版が「地雷」と呼ばれてもやむを得ないだろう。価格設定,性能とも,決して“そう”ではないだけに,もったいない話である。
本稿の中盤で指摘したように,NVIDIAはグラフィックスメモリ768MB版で,補助電源コネクタ6ピン×1版の登場を示唆している。そのため,将来的に768MB版は「省電力版」とか「静音版」とかいった形で区別されることになると思われるが,少なくとも発表からしばらくの間,不親切のそしりは免れ得まい。
最後に余談ながら,複数のグラフィックスカードベンダー関係者によると,グラフィックスメモリ1GB版は総じて,同768MBよりも遅れ気味とのこと。リファレンスデザインを利用する限り,1GB版と768MB版で基板は同じで,メモリチップを2枚余計に搭載するくらいしか違いはないはずだから,それで遅れるということは,ROPパーティションを4つ利用できるGF104の歩留まりはあまり芳しくない可能性がある。
GF104のフルスペック版が“GeForce GTX 4xx”で登場するのか,あるいは“GeForce GTS 450”などといった形で,さらに一部を無効化したモデルが登場するのか。GF104の派生品がどのように今後登場してくるのか,動向には注目しておきたい。
- 関連タイトル:
GeForce GTX 400
- この記事のURL:
Copyright(C)2010 NVIDIA Corporation