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「ATI Radeon HD 5670」レビュー。99ドルのDirectX 11対応GPUは速いのか
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印刷2010/01/14 14:01

レビュー

99ドルで買えるDirectX 11対応GPUは速いのか

SAPPHIRE HD 5670 1GB GDDR5 PCIE

Text by Jo_Kubota

SAPPHIRE HD 5670 1GB GDDR5 PCIE(国内製品名:SAPPHIRE HD5670 1G GDDR5 PCI-E DUAL DVI-I/HDMI/DP)
メーカー:Sapphire Technology
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
予想実売価格:1万3800円前後(※2010年1月14日現在)
画像集#002のサムネイル/「ATI Radeon HD 5670」レビュー。99ドルのDirectX 11対応GPUは速いのか
 日本時間2010年1月14日14:01,AMDは,ATI Radeon HD 5000シリーズ初のエントリーミドルクラス市場向けGPUで,開発コードネーム「Redwood」こと「ATI Radeon HD 5670」(以下,HD 5670)を発表した。

 また,2月には,「Cedar」という開発コードネームで呼ばれてきた製品を「ATI Radeon HD 5500/5400」シリーズとして市場投入することも明らかにしており,競合が第1弾製品を投入する前に,ATI Radeonは全ラインナップがDirectX 11対応を果たすことになる。

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かねてよりの予告どおり発表されたHD 5670。そのキャッチコピーは「HD Gaming Starts Here」となっている
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CedarベースのGPUとして,ATI Radeon HD 5500シリーズと,ATI Radeon HD 5450を2月に市場投入することも合わせて発表された。前者はエントリー市場向け,後者は,ビデオ再生などに向けたローエンド市場向けとなるようだ

HD 5670の概要。99ドル以下とされる“価格タグ”のインパクトが大きい
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 今回発表されたHD 5670だが,北米における搭載グラフィックスカードの想定売価は99ドル以下。ロジスティクスや税金の仕様が異なることを差し引いても,DirectX 11対応GPUが,1万円強かそれ以下で手に入ることになるわけだ。
 今回4Gamerでは,そんなHD 5670を搭載したSapphire Technology製グラフィックスカード「SAPPHIRE HD 5670 1GB GDDR5 PCIE」(国内製品名:SAPPHIRE HD5670 1G GDDR5 PCI-E DUAL DVI-I/HDMI/DP,以下 SAPPHIRE HD 5670)を,同社の販売代理店であるアスクの協力によって入手したので,本製品を通じ,HD 5670のポテンシャルを探っていくことにしたい。

SAPPHIRE HD 5670を別のカードから。4点ネジ留めタイプのArctic Cooling製GPUクーラーを搭載している
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「HD 4670の後継」がイメージに最も近いか

TU数とRender Back-End数が性能を左右する?


HD 5670のブロックダイアグラム(※クリックすると別ウインドウで全体を表示します)
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 HD 5670のStream Processor(以下,SP)数は400基。
 詳細は西川善司氏のATI Radeon HD 5000シリーズ解説記事に譲るが,ATI Radeon HD 5000シリーズでは,5基のSPが一つのThread Processorを構成し,それが16基でSIMD Engineを構成する。
 5SP×16=80なので,400SP仕様のHD 5670で,SIMD Engineは5基。そして,SIMD Engine 1基に一つ,クロック当たりのスループットが4テクセルのテクスチャユニットがペアとなり,5基×4テクセルスループットで,テクスチャユニット数は20基相当ということになるわけだ。
 また,Render Back-End数は2基で,それぞれ1クロック当たり4ピクセル(≒テクセル)出力が可能なため,8基相当になる。

AMDからレビュワーに公開されたスライドだと,HD 5670の消費電力は典型的なアプリケーション実行時に61W,アイドル時に14W。ただし,正式発表に当たって,最大消費電力は64W,アイドル時は15Wという情報が公開されたので,今回はその情報に従っている。
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 ちなみにこの「SP数400基,テクスチャユニット数20基,Render Back-Ends数8基」という仕様は,Juniperコアを採用したATI Radeon HD 5700シリーズの“完全版”となる「ATI Radeon HD 5770」(以下,HD 5770)と比べるとちょうど半分。シングルGPU仕様の最上位モデル,Cypressコアの「ATI Radeon HD 5870」(以下,HD 5870)と比べると4分の1である。HD 5670のハードウェアスペックは,ある意味で大変分かりやすいものになっているといえるだろう。

 HD 5670の上位モデルとして位置づけられ,HD 5770から80SP(=1 SIMD Engine)分削られたGPUとなる「ATI Radeon HD 5750」(以下,HD 5750),そして,ターゲットとなる価格帯的に競合しそうな「ATI Radeon HD 4770」(以下,HD 4770),「ATI Radeon HD 4670」(以下,HD 4670),省電力版「GeForce 9600 GT」(以下,省電力版9600 GT)の,主なスペックを比較したのが表1だ。HD 5670は,HD 4670の後継として,一部スペックが引き上げられたものと捉えるのが正しそうである。

※1 ROP=Raster Output Processor。本文にもあるとおり,AMDはRender Back-Endと呼んでいる
※2 HD 5670は,AMDによる,北米市場における搭載カードの想定売価。それ以外は,4Gamer独自調査による2010年1月14日時点の実勢価格
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外部インタフェースはDVI-I,HDMI,DisplayPort。これもリファレンスデザイン踏襲だ。「ATI Eyefinity」による3画面出力をサポートする
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 そんなHD 5670を搭載したSAPPHIRE HD 5670だが,スライドに載っているリファレンスカードの写真と見比べる限り,カードデザインはリファレンスどおりになっているようだ。ただ,AMDの日本法人である日本AMDから別途入手した実際のリファレンスカードだと,ATI CrossFireX動作用のリボンケーブルを接続するブリッジコネクタが用意されていないので,ひょっとすると,SAPPHIRE HD 5670以外に,ブリッジケーブルを使わない,俗にいう“Software CrossFire”しかサポートしないものが登場する可能性はある。

日本AMDから入手したHD 5670リファレンスカード(左)にはなぜかブリッジコネクタが用意されていなかったが,基本的なカードデザインはSAPPHIRE HD 5670と同じだった(右)
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 カード長は167mm。先ほどHD 5670はHD 4670の後継と指摘したが,リファレンスデザインを採用したSAPPHIRE HD 5670のカードサイズはHD 4670のリファレンスデザインと完全に同じである。また,最大消費電力が64Wということもあって,PCI Express補助電源コネクタは用意していない点もポイントといえ,「サイズ,給電の両面で,環境を選ばないカードに仕上がっている」と断言しても語弊はないはずだ。

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省電力版9600 GTを搭載した玄人志向製カード「GF9600GT-E512HW/HD/GE」と並べてみたところ
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2スロット仕様のArctic Cooling製クーラーを外してみた。ヒートシンクが接しているのはGPUダイのみ
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2009年第50週に製造されたものと思われるHD 5670 GPU。ダイサイズは実測でおおよそ11×11mmとなっていた
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メモリチップは,1.5V動作で5GHz相当の動作が可能とされるHynix Semiconductor製のGDDR5「H5GQ1H24AFR-T2C」


上位モデル,従来モデル&競合製品と比較

一部DirectX 11環境でもテストを実施


SAPPHIRE HD 5670に対して「GPU-Z」(Version 0.3.8)を実行した結果。動作クロックはリファレンスと同じだった
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 テストのセットアップに入ろう。
 比較対象には,先ほどの表1で示したGPUを用意することにし,ASUSTeK ComputerからHD 4770カード「EAH4770 FORMULA/DI/512MD5」を借用。HD 5750,HD 4670,9600 GTカードについては,4Gamerで独自に用意している。

 このほかテスト環境は表2のとおり。ATI Radeon用のグラフィックスドライバ「8.69-091211a-09320BE」は,AMDから全世界のレビュワーに配布されたバージョンになる。「ATI Catalyst 9.12」だと,「Display Driver」のバージョンは8.681だったから,今回のドライバは,「ATI Catalyst 10.1」のβ版,もしくは公開候補版といった位置づけのものではなかろうか。

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EAH4770 FORMULA/DI/512MD5Tフォーミュラカーを模した独自クーラー搭載
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:1万〜1万4000円(※2010年1月14日現在)
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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション8.4準拠。エントリーミドルクラスの検証ということで,解像度は1024×768/1280×1024/1680×1050ドットの3パターンに絞っている。

 なお4Gamerでは現在,ベンチマークレギュレーションのメジャーアップデートを計画中だが,今回はそのなかから,事前検証がほぼ済んでいるDirectX 11対応タイトル「Colin McRae: DiRT 2」(以下,DiRT 2)のベンチマークモードを使ったテスト結果も参考として示すことにした。DiRT 2におけるテスト方法については後述したい。


HD 4670を確実に凌駕する3D性能

省電力版9600 GTといい勝負に


 前置きが大変長くなったが,以下,とくに断りのない限り,グラフィックスカード名ではなくGPU名で記すこと,スペースの都合で,グラフ中に限り,省電力版9600 GTは「LP 9600 GT」と表記することをお断りしつつ,まずはグラフ1,2で,「3DMark06」(Build 1.1.0)の総合スコアから見ていこう。
 大多数の3Dゲームが採用するDirectX 9.x世代のポテンシャルで比較すると,HD 5670のそれは,省電力版9600 GTとほぼ同等レベル。HD 4670に対しては「標準設定」で24〜29%,4xアンチエイリアシング&16x異方性フィルタリングを適用した「高負荷設定」でも20〜23%高いという,はっきりした違いを見せつけている。
 一方,HD 4770からは10〜15%程度置いていかれている。ドライバの最適化が進んで,HD 5670がHD 4770を逆転する……というのは,ちょっと考えづらいほどの差だ。

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 続いては,3DMark06のデフォルト設定となる,標準設定の1280×1024ドットで実行したFeature Testの結果である。
 グラフ3〜5は順に「Fill Rate」(フィルレート),「Pixel Shader」(ピクセルシェーダ),「Vertex Shader」(頂点シェーダ)のスコアをまとめたものだが,HD 5670におけるシェーダユニット最適化の方向性は,HD 4670を踏襲していると見ていいだろう。ピクセルシェーダ性能のスコアからは,テクスチャユニット数が少ない影響を見て取れるが,頂点シェーダ性能が偏重されすぎている嫌いもあるので,ピクセルシェーダ周りはもう少しヘッドルームがあると見るべきかもしれない。

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 続いては,GPUの汎用プロセッサ利用における可能性を見る「Shader Particles」(シェーダパーティクル)と,DirectX 9世代における長いシェーダプログラムの実行性能をチェックする「Perlin Noise」(パーリンノイズ)だが,ここでのスコアはなかなか優秀(グラフ6,7)。とくにShader ParticlesではHD 4770のスコアを上回っており,最新アーキテクチャであることのメリットを感じさせる。

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 グラフ8,9は,実際のゲームタイトルから,DirectX 10対応プログラム「Crysis Warhead」のスコアになる。
 極めて“重く”,グラフィックスメモリ周りへの負荷も高いCrysis Warheadだけに,このクラスのGPUを使うと,メモリ周りのスペックをそのまま反映したようなスコアになりやすい。その意味で,ROP(≒Render Back-End)数に制限のあるHD 5670のスコアは危惧されるところだが,4GHz相当のデータレートで動作するGDDR5メモリを組み合わせることで,省電力版9600 GTと同等レベルのところで踏みとどまっている。
 メモリバス帯域幅で比べると,HD 5670が64GB/s,省電力版9600 GTが57.6GB/s,HD 4670が32GB/sなので,HD 5670は,ROP数の不利を,GDDR5メモリの搭載でカバーしているといってよさそうだ。

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 続いては比較的描画負荷の低いFPS,「Left 4 Dead」だが,標準設定では省電力版9600 GTに圧勝(グラフ10,11)。高負荷設定でメモリ周りの負荷が高まると大きくスコアを落とすことから,逆に,メモリ周りの制限が少ないようなタイトルでは,LP 9600 GTを大きく上回る性能を発揮できる可能性が高い。
 高負荷設定の1680×1050ドットでも70fpsを超えているのは,エントリーミドルクラス製品として,完全に合格点といえそうである。

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 一方,シェーダプロセッサ数とテクスチャユニット数,ROP数ががモノを言う「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)だと,HD 5670のスコアは,HD 5750&HD 4770にまったく歯が立たなかった(グラフ12,13)。省電力版9600 GTに対しても,標準設定では高いスコアを示したものの,高負荷設定でわずかながら逆転を許している。

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 グラフ14,15は,「バイオハザード5」のベンチマーク結果になる。入手したレビュワー向けドライバは,「日本語版バイオハザード5でパフォーマンスが出ない」問題を抱えており,スコアが50fps強で頭打ちになることから,今回は英語版公式ベンチマークソフトでテストを実行しているが,ご覧のとおり,HD 5670は高負荷設定で省電力版9600 GTとほぼ同等,あえていえば多少高めというスコアに落ち着いた。
 「低負荷設定」でHD 5670のスコアが伸びない理由は分からないが,総じてスコアは高めなので,「ドライバがきちんと日本語版実行ファイルを認識できさえすれば,高いグラフィックス設定でプレイ可能なだけの3D性能を持っている」とはいえそうである。

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 Unreal Engine 3.0ベースのRPG,「ラスト レムナント」のスコアをまとめたのがグラフ16だ。
 ここでは,HD 5750が頭一つ抜け出しているが,むしろ,HD 5670とHD 4670のスコアに,47〜55%という,大きな違いがある点に注目しておきたい。HD 5670とHD 4770,省電力版9600 GTのスコアがほぼ横並びという点からして,ここはメモリバス帯域幅が大きく影響したと見るべきではなかろうか。

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 レギュレーション8.4準拠のテストとしては最後となる「Race Driver: GRID」。本タイトルはATI Radeon有利なスコアが出やすいが,グラフ17,18で確認できるように,残念ながらHD 5670はその恩恵を受けられていない。HD 4670プラスアルファ程度のフレームレートしか出ていないあたり,ROP数の少なさが影を落としている印象だ。

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 さて,パフォーマンス検証のオーラスは,オフロードドライブゲームであるDiRT 2だ。GRIDと同じCodemasters製となる本作は,AMDの支援を受けて開発されていることもあり,ATI Radeon,そしてDirectX 11への最適化が進んでいるという,貴重なタイトルである。
 DiRT 2では,基本的にDirectX 9 APIが用いられるが,DirectX 11対応のグラフィックスカードを差すと,グラフィックスオプションメニューに,いくつかDirectX 11関連の選択肢が追加され,選択できるようになる。そこで今回は,DirectX 11モードでの動作に関連した4項目を下記のように設定することによって,基本的にDirectX 9モードでテストを行いつつ,ATI Radeon HD 5000シリーズの2製品では,選択できる最高設定を選択することでDirectX 11モードを有効にした状態でもスコアを計測することにした。

  • WATER:HIGH
  • POST PROCESS:MEDIUM
  • AMBIENT:LOW
  • CLOTH:LOW

 これ以外の選択肢は,すべて選択できる最高設定に指定。DirectX 11動作させたものはGPU名の後ろに(DX11)と記して区別することにし,結果をまとめたのがグラフ19,20だ。
 面白いのは,DirectX 9モードで動作させる限り,標準設定で最もパフォーマンスが高いのはHD 4770であるということ。HD 5670のスコアは省電力版9600 GTとほぼ同等で,ドライブゲームをプレイできる最低水準の30fpsは大きく超えている点は評価できるが,快適にプレイできる目安の平均60fpsにはDirectX 9モードでも届いていない。しかも,DirectX 11モードではさらに大きくスコアを落とすので,快適にプレイしたいのであれば,DirectX 9モードに指定し,さらにグラフィックス設定を落とす必要がありそうである。

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消費電力はHD 4670とほとんど同じ!

高負荷時の低さが目を引く


 冒頭で紹介したとおり,HD 5670の公称最大消費電力は64W。アイドル時は15Wと,いずれもエントリーミドルクラス製品として十分に低い。
 では,実際のところはどうなのか。ログの取得が可能なワットチェッカー,「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を計測してみることにした。
 テストに当たっては,OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき最も高い消費電力値を記録した時点を,各タイトルごとの実行時としている。

 その結果をまとめたのがグラフ21だ。アイドル時の消費電力が高いHD 4770を除くと,4製品はほぼ同じレベルだが,目を引くのはアプリケーション実行時。タイトルごとに多少の前後はするものの,概ね,HD 5670と9600 GT,HD 4670は,同じくらいの消費電力と見てよさそうだ。消費電力当たりの3D性能は,HD 4670比で大きく向上しているわけである。

画像集#044のサムネイル/「ATI Radeon HD 5670」レビュー。99ドルのDirectX 11対応GPUは速いのか

参考までに,今回テストしたHD 5750カード(右)とHD 4670カード(左)の写真も掲載しておきたい
画像集#046のサムネイル/「ATI Radeon HD 5670」レビュー。99ドルのDirectX 11対応GPUは速いのか
 参考までに,GPU温度もチェックしておこう。室温15℃の環境で,3DMark06を30分間ループ実行した時点を「高負荷時」としつつ,アイドル時ともども,「HWMonitor Pro」(Version 1.08)からGPU温度を計測した結果が,グラフ22となる。
 HD 5670とHD 5750は,おそらく同じものと思われるArctic Cooling製クーラーを搭載しているため,リファレンスカードよりは冷却能力が高い。また,HD 4770,省電力版9600 GTもカードベンダーのオリジナルクーラーを搭載しているため,横並びの比較にはまったく適さない点をお断りしておくが,少なくともSAPPHIRE HD 5670の搭載するクーラーがまったく問題のない冷却性能を持っているとは言っていいだろう。
 ちなみに,筆者の主観になることをお断りしながら続けると,SAPPHIRE HD 5670が搭載するファンの動作音は十分に「静か」と断言できるレベルだった。

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9000円台まで下がれば

エントリーミドルクラスの有力な選択肢に


SAPPHIRE HD 5670の製品ボックス
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 エントリーミドルクラスGPUの常として,ゲームタイトルを前にすると得手不得手があるHD 5670。「99ドルのDirectX 11対応GPU」と言っても,現時点では実力を発揮できる舞台がない――描画負荷の低いDirectX 11対応タイトルが存在しない――ため,DirectX 9/10世代のGPUとして基本的には見ることになる。そしてその場合,1万円台前半という価格がネックになってくる印象だ。
 ATI Radeon HD 5000シリーズの登場によって“旧世代”となり,大きく値を崩したHD 4770やATI Radeon HD 4800シリーズ,あるいは,ATI Radeonと歩調を合わせるように値段を下げてきた省電力版9600 GTや,その上位モデルとなる省電力版「GeForce 9800 GT」といった強力なライバルを前にすると,グラフィックスメモリ1GB版で1万4000円前後から,同512MB版で1万2000円前後からというHD 5670搭載グラフィックスカードの“初値”は,さすがに高すぎると言わざるを得ないのである。

 ただ,価格の問題が解決すれば,事情は変わってくる。少なくとも,HD 4670を置き換えるコンパクトなグラフィックスカードとして,HD 5670の実力には非の打ち所がないからだ。
 現時点ではさすがに待ちが正解だが,最安値が9000円台まで下がり,その頃にATI Radeon HD 4000シリーズのGPUが市場から整理されていれば,エントリーミドルクラス市場における新しい主役になれる存在。そうまとめておきたいと思う。
  • 関連タイトル:

    ATI Radeon HD 5600/5500

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