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BenQ ZOWIEの新作キーボード「CELERITAS II」レビュー。研ぎ澄まされたリニアなスイッチは文句なしに素晴らしい
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印刷2017/11/27 00:00

レビュー

研ぎ澄まされたリニアなスイッチは文句なしに素晴らしい

BenQ ZOWIE CELERITAS II

Text by 米田 聡


 メンブレンにメカニカルキー,そして静電容量無接点方式が今日(こんにち)におけるゲーマー向けキーボード用スイッチの主流だが,BenQのゲーマー向け製品ブランドであるBenQ ZOWIE(以下,ZOWIE)から,新たに光学スイッチ搭載のキーボード「CELERITAS II」(セレリタス2)が登場した。

CELERITAS II
メーカー:BenQ
問い合わせ先:マスタードシード(販売代理店) 問い合わせフォーム
実勢価格:2万〜2万1700円程度(※2017年11月27日現在)
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 徹底したプロユース指向で,「市場受けを狙うために新技術を採用する」ようなブランドからは最も遠い存在と言えるZOWIEが,まだ採用事例のあまり多くない光学スイッチを進んで採用したというのはそれだけで「事件」だが,そんなCELERITAS IIはゲーマー向けキーボード市場に何をもたらすのか。初採用のテストも交えつつ,検証してみたい。


光学スイッチをチャタリング対策に採用し,バネのチューニングのほうに時間をかけたZOWIE


初代CELERITAS
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 2010年,ZOWIE GEARというブランド名を名乗っていた頃のZOWIEは,「Cherry MX Brown」メカニカルキースイッチ搭載のフルキーボード「CELERITAS」を発表した(※国内発売は2011年)。
 初代CELERITASは,欧州市場を中心にかなりの人気を集めたと記憶しているが,ZOWIEは「金属接点を用いるメカニカルキースイッチではチャタリングが避けられず,それをキャンセルするためには,基板上の回路かもしくはソフトウェア的に遅延を入れる必要があり,それがキーボードの反応速度を低下させる」という,メカニカルキースイッチの原理的な問題に当時から悩んでいたのだそうだ。

Flaretech Switch。台座部分は半透明の樹脂製で,LEDの色を全体へ拡散させるタイプ。プランジャーの形状はCherry MXシリーズ互換となっている
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 開発チームによると,結局,どのメカニカルキースイッチを使ってもこの問題からは逃れらなかったそうだ。そこで採用することになったのが,オランダの新興企業Wootingが開発した光学キースイッチ「Flaretech Switch」である。
 金属接点を採用するメカニカルキースイッチではチャタリングを抑えるために5msの遅延を入れねばならないところ,Flaretech Switchであれば0.03msで済むそうで,これが採用の決め手になったという。

キースイッチのバリエーションは今のところ,Cherry MX Redに近い特性の「Flaretech Red Switch」と,「Cherry MX Blue」に近い特性の「Flaretech Blue Switch」がある。表はWootingが参考として示しているものだ。なおWooting側では,「Flaretech red switch」「Red Flaretech Switch」といった具合に表記揺れがある
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WootingのWebサイトより,Flaretech Switchを取り付ける基板側の写真
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 WootingはFlaretech Switchの概要しか語っていないので推測も入るのだが,キースイッチのハードウェア仕様は基本的に,プランジャーの押下による明るさの変化をアナログ値として検出するものになっているようだ。
 光の強弱を取り込むセンサーには主にCdS(Cadmium Sulfide,硫化カドミウムだが,電子部品の世界ではセンサーの名前として使われている)とフォトトランジスタ(≒フォトダイオード)の2種類がある。このうちCdSは安価だが反応がとても遅いので,キースイッチに使うのは無理だろう。よってキー1つ1つにフォトトランジスタを埋め込んでプランジャーの押下量を検出するという,かなり高コストなキースイッチだと考えられる。

 明るさの強弱で押下量を検出していることから,機械的な構造はシンプルで,それゆえに耐久性は高いそうだ。Wootingによれば,キーあたり1億回の押下に耐えるとのことである。

WootingのWebサイトより
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 「プランジャーの押下量をアナログ値として取り出せる」「キースイッチの構造が単純」というところでピンときた読者は鋭いが,この特徴は東プレが手がけている静電容量無接点方式と同じだ。そのため原理的にはアクチュエーションポイントを任意の深さに設定したり,アナログ的な入力に対応させたりすることは可能で,実際,Wootingの自社製キーボード「Wooting One」はアナログ入力に対応するという。

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 ただし,ZOWIEの開発チームは,Flaretech Switchをあくまでもチャタリング対策として採用したため,CELERITAS IIにアクチュエーションポイントの変更機能やアナログ入力機能といった「東プレ的機能」はない。
 ZOWIEがこだわったのは押下感のほうで,いわく「バネは(Flaretech Switchの)標準ではなく,我々が徹底的なカスタマイズを行い,真の意味においてリニアな押し心地を実現できている。今回のスイッチでより重要なのはこちらのほうだ」とのことである。


測定器を使い,「キー押下に必要な力」を追う


デジタルフォースゲージ ZTAシリーズ「ZTA-50N」
メーカー:イマダ
問い合わせ先:「お問い合わせ」フォーム
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 ZOWIEは,新しい光学スイッチを採用しつつも,スイッチ構造そのものではなく,スイッチ内部に搭載したバネの特性のほうが重要だと言っているわけだが,それを確認すべく,冒頭で軽くお伝えした「初採用のテスト」をここで行ってみたい。
 今回は測定器メーカーであるイマダからデジタルフォースゲージ ZTAシリーズ「ZTA-50N」の貸し出しを受けることができたので,これを用い,キーの押下に必要な力の変化を調べてみることにした。

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専用スタンドに取り付けたところ。右に見えるノブでZTA-50Nを上下させることができる
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測定のイメージ
 デジタルフォースゲージは,先端にある突起に力をかけると,その力の強さを表示してくれる測定器だ。
 ZTAシリーズと,オプションの専用計測スタンド「MSF-50N」を組み合わせることで,「測定器の先端が押し込んだ距離」と「そのときに先端にかかっている力」を同時に測定することができる。ZTA-50NをMSF-50Nに取り付けて,ZTA-50Nの先端でキーボードのキーを押せば,押下に必要な力を簡単に測定できるわけである。

 どんな感じで測定するのかは,動画で見てもらったほうが分かりやすいだろう。下に示したのは,専用スタンド側のノブを回してZTA-50Nの先端でキーを底まで押し,また戻すという,一連の作業を撮影したものだ。


Force Recorder。「Professional」「Standard」「Light」の3ラインナップから,今回はProfessionalを用いた
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 このとき,スタンドと測定器は専用ケーブルでつながっており,スタンドから測定器へ押下距離を送っている。さらに測定器はUSBケーブルでPCとつながり,押下距離と,キーを押すZTA-50Nの先端にかかっている力をPCへ送る仕様だ。PC側では,専用ソフト「Force Recorder」からデータを取り込み,グラフ化することができる。

 ただ,上の動画から察してもらえると思うが,今回の測定機材では,被測定対象を置くスペースに奥行きがないため,キーボードのテストにあたっては端にあるキースイッチしか測定できないという制限がある。専用スタンドに頑丈なアームなどを取り付けるなどの工夫をすればなんとかなりそうだが,今回は測定器が借り物で,かつ貸出期間も2日程度しかなかったため,そこまでの手間はかけていない。
 というわけでまずは,CELERITAS IIの向かって右端にある[+]キーの測定結果をグラフ化したものを例として下に掲載しておこう。

CELERITAS IIの[+]キー測定結果
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 上の動画から分かるように,テストは「測定器がキーを押し,離れる」という往復運動になるため,グラフでは往復分の線を描く。上の線が押し込み時,下の線が戻り時のものだ。
 グラフは横軸の右が押し始めで,左に向かって押した深さを0.2mm刻みで示す。縦軸が前述した「ZTA-50Nの先端にかかっている力」だ。グラフの左側で線が急上昇しているのは,キーを一番深くまで押し込んで,底打ちしたことを意味している。

 ZTA-50Nで測定できる力の単位は「N」(ニュートン)だが,キーボードのキースイッチではカタログ値として「gf」(g-force,グラム重)を使うケースが多い。換算の目安は「0.5N≒51gf」と理解しておけば十分だろう。
 キースイッチの荷重は一般に30g〜60gとされるが,要するに30gf〜60gfのことであり,Nに換算すると押下にはざっくり0.3N〜0.6N程度の力が必要ということになるわけだ。

 それを踏まえてあらためてグラフを見てみると,CELERITAS IIの[+]キーでは押し始めが0.3N弱,底打ちする直前で約0.55Nとなっている。多少の凹凸はあるものの,グラフの線はほぼ左上がりで,押し込む深さと力が比例していることが分かるかと思う。

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 ここで思い出したいのが,ZOWIEがCELERITAS IIで「真の意味においてリニアな押し心地を実現できている」と述べている点だ。このグラフを見る限り,確かにそうだと言えそうだが,1キーだけでそう判断するのは早計だろう。今回は[+]キー以外に,10キー部の[Enter]キー,左[Shift]キー,[Caps Lock]キー,左[Ctrl]キーでもテストを行い,その結果を1枚のグラフにまとめてみることにした。それが下の画像である。

CELERITAS IIの5キーを用いたテスト結果。黒が[+]キー,赤が[Enter]キー,緑が左[Shift]キー,青が[Caps Lock]キー,橙が左[Ctrl]キーである
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 グラフの縮尺は前出のグラフとおおよそ合わせてある。縦軸の最大値は約1.0N,横軸は0.2mm刻みで全幅4mm強だ。やや異なるのはグラフを作成するForce Recorderの仕様の関係で,複数の測定値を重ねた際に横軸の原点(0点)が左にくるため横軸の目盛りがプラスになっている点と,自動でふられる縦軸の目盛りが0.02N刻みになっている点だけである。
 「ぴったりと押し始めで合わせる」といったことができないため,押し始めと底突きのグラフ位置にズレがある点はご了承を。

 それを踏まえてグラフだが,テスト対象となる5個のキーすべてで,グラフの線(以下,便宜的に「負荷曲線」と呼ぶ)が±0.05N以内に収まっており,かつキーごとの傾斜がほぼ一致している点に注目したい。
 つまり,ZOWIEが主張しているとおり,CELERITAS IIはキーの押下圧にばらつきが少なく,またリニアな押し心地を実現できているわけだ。

 なら,ほかのキースイッチはどうなのか。今回は以下に挙げるキースイッチ(を搭載したキーボード)で,(“外周縛り”はあるものの)無作為に選んだ4キーの負荷曲線を調べてみることにした。

  • ZF Electronics「Cherry MX RGB Red」(Mionix「WEI」)
  • Razer「Razer Orange switch」(Razer「Razer BlackWidow Ultimate Stealth 2016」)
  • オムロン スイッチアンドデバイス「Romer-G」(Logitech G/Logicool G「Pro Gaming Keyboard」)
  • 東プレ,静電容量無接点方式(東プレ「REALFORCE RGB」)

 テスト結果を順に見ていこう。

 まず(WEIの)Cherry MX RGB Redで測定した4キーだが,負荷曲線のバラツキは非常に小さい。とくに押し込み時のバラツキだけを見ると±0.02Nの範囲に収まっているので,むしろCELERITAS IIよりも小さいわけだ。この点はさすが,長年の実績があるCherry MXシリーズと言えるだろう。
 CELERITAS IIと異なるのは,押し込むときと戻るときとで,負荷曲線の違いが大きい点である。また,戻るとき,深さ2mm前後のところで急激な負荷の変化が生じ,「負荷の変化が生じる深さ」に±0.5mm程度のばらつきが見られるのがCherry MX Redの特徴と言える。

 Cherry MX Redはよく「クリック感のない,リニアな押し心地」と紹介される――筆者もそう書くことはある――が,実際には,接点を軽く擦(こす)るような感触があることを,体験的に知っている読者は多いだろう。これはメカニカルキースイッチだけに仕方のないところだが,グラフで深さ2mmあたりに見られる負荷の変化こそが,この独特の感触を指し示しているのだと思われる。

Cherry MX RGB Red(WEI)のテスト結果。黒が左[Ctrl]キー,赤が左[Alt]キー,緑が[Space]キー,青が右[Ctrl]キーである
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 次にRazer Orange switchだが,4本の負荷曲線自体はよく揃っている。ただ,Cherry MX Redと同様,押し込むときと戻るときとで負荷の違いが大きい。具体的には最大0.2N前後だ。
 また,戻り時の負荷曲線で,キーから測定器が離れるときにやや乱れる傾向も見られる。きっちりと負荷曲線が揃うCELERITAS IIに比べると乱れが大きく,またCherry MX Redと比べても乱れはやや大きめと言えるだろう。

 なお,グラフだと,Razer Orange switchは1mmほど押し込んだところに小さな負荷のピークがあるが,これは本スイッチの特徴となっている,軽い手応えとクリック音を反映したものである。

Razer Orange switch(Razer BlackWidow Ultimate Stealth 2016)のテスト結果。黒が左[Shift]キー,赤が左[Ctrl]キー,緑が[Caps Lock]キー,青が10キー部[+]キーのものとなる
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 続いてはRomer-Gである。グラフ化の都合でスタートと底打ちしたところが揃っていないので,バラツキが大きく見えるかもしれないが,実際のところ,押し込み時と戻り時の負荷曲線はそこそこ揃っている。
 ただ,Razer Orange switchと同様,押し込み時と戻り時には負荷に最大0.2N程度の開きが生じ,またキーから測定器が離れるとき負荷曲線が乱れる傾向を確認できる。CELERITAS IIと比べて負荷の乱れが大きいとは言えるだろう。

 Romer-Gも,1mmほど押し込んだところに軽いクリック感があるタイプなので,クリック感を持つスイッチはキーから測定器が離れるときの負荷が乱れやすいのかもしれない。

Romer-G(Pro Gaming Keyboard)のテスト結果。黒が右[Ctrl]キー,赤が[ひらがな/カタカナ]キー,緑が[Space]キー,青が左[Ctrl]キーだ
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 最後に東プレの静電容量無接点方式スイッチだが,これはほかのスイッチとは異なる,独特のカーブを描いている。
 今回測定したこれ以外のキースイッチは,押し込み量に応じて押下圧が高まるチューニングになっているのに対し,静電容量無接点方式のスイッチは押し込み量にかかわらずほぼ一定の押下圧になるようチューンされているためだ。
 ただ,「一定」と言っても若干のバラツキはあり,やや波打ったような波形になっているキーも見られる。

静電容量無接点方式(REALFORCE RGB)のテスト結果。黒が右[Ctrl]キー,赤が[ひらがな/カタカナ]キー,緑が[Space]キー,青が左[Ctrl]キーのものである
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 以上,測定器を使ったところ,面白い結果を得ることができた。
 今回の測定で分かったのは,どのメーカーのキースイッチも,キーごとの違いは比較的小さいということだ。バネや接点といったスイッチを構成するパーツの均一性は,最近のトップブランドであれば一定レベルを確保できていると言ってしまっていい。逆に言うと,この点でCELERITAS IIに大きな優位性はない。

 一方,Cherry MX Redのようにリニアと謳われるメカニカルスイッチや,フラットとされる静電容量無接点方式でも,測定してみると負荷曲線は一直線ではなく,上下動が生じているのが分かる。それに対して,ZOWIEがバネの選定にとことん時間をかけたというCELERITAS IIの場合,負荷曲線に上下動がなく,ほぼ一直線というのが大きな違いだ。他社製品と比べて「よりリニア」なのは,CELERITAS IIの持つ明確な優位性と言っていいだろう。


 全体として,CELERITAS IIのスイッチは,「接点の感触がない」点で静電容量無接点方式を彷彿とさせつつも,バネ圧がリニアで音やクリック感がないという点ではCherry MX Redに近い印象がある。
 Cherry MX Redにとことん馴染んでいるゲーマーだと,接点の感触がまるでないことに違和感を抱く可能性もあると思うが,バネ圧のリニア感はCherry MX Redを軽く超えている。言うなれば研ぎ澄まされたCherry MX Redといったところなので,静電容量無接点方式もかくやという感触のなさにさえ慣れれば,CELERITAS IIは手放せなくなるのではないかと考えている。静電容量無接点方式に長く親しんでいるゲーマーも,一度は試す価値がありそうだ。

 個人的には「ゲーム用途ならもう少しアクチュエーションポイントが浅くてもいいのではないか」と思わないでもないが,先の測定結果からも分かるように,CELERITAS IIのキースイッチは押し始めが軽い。それゆえ,アクチュエーションポイントを浅くすると,非ゲーム用途におけるタイプミスが増えそうな気もするので,バランスを取るためCherry MX Redと同じ設定にしてあるという可能性はあると思われる。

いくつかのキーでキーキャップを取り外したところ。[Space]キーや[Shift]キーなど,長めのキーにはダミーのプランジャーを用意して,押し込みの安定化を図っているのが分かる。ダミーのバネもスイッチと同じ,均質なもののようで,長めのキーも標準サイズのキーと変わらない押下感だ
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付属の変換アダプターによりPS/2接続が可能だ
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 なお,ここまであえて述べてこなかったが,初代CELERITASから引き続き,CELERITAS IIも,接続インタフェースとしてUSB 1.1 Full Speedだけでなく,PS/2もサポートしている。
 PS/2はUSBと比べてキー押下からデータをPCが受け取るまでの遅延が小さいことから,かつては一定数のゲーマー向けキーボードがサポートしていたが,最近はゲーマー向けマザーボードでもPS/2ポートを搭載しているケースはごくまれだ。なので,ほとんどの読者にとって,PS/2接続対応はほとんど意味を持たないだろうが,簡単に紹介しておこう。

 まず,遅延の小ささだが,これは体感できるかどうかと言えばできる。「使っているゲームPCにPS/2ポートがあるなら,一度はUSBでなくPS/2接続して試してみる価値はある」と言えるレベルである。

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 もう1つ,これまた初代CELERITASから引き続きという話になるが,PS/2接続時のCELERITAS IIは,ZOWIEが「RTR」(Real Time Response)と呼ぶ高速レスポンス技術を利用できるようになっている。
 これは簡単に言うと,キーを押し続けたときに同じキーが繰り返し入力されるキーリピートの速度を変更するためのもので,[Fn]キーと[F9]〜[F12]キーの組み合わせにより,キーリピート速度を標準の「1x」から「2x」「4x」「8x」から選択可能だ。
 正直,ゲームでキーリピートを使うことははまずないので,無用な機能とも思えるが,PS/2接続時のちょっとしたオマケとして,その存在は押さえておいてもいいように思う。

 なお,CELERITAS IIはUSB接続時,PS/2接続時を問わず,全キー同時押しに対応する。このあたりは抜かりないと言ってよさそうだ。

Microsoftが公開しているWebアプリケーション「Keyboard Ghosting Demonstration」で同時押しの数を確認したところ。手のひらでキーを押してみたところ,抜けなく認識されるのを確認できたので,いわゆる全キー同時押し仕様という理解でいいだろう
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外観は初代CELERITASを踏襲。ZOWIEらしい,とてもシンプルな仕様に


 ここまで,CELERITAS IIで最も重要なキースイッチと,性能周りを紹介してきたが,ここからはそれ以外の部分を見ていこう。
 身も蓋もない紹介を先に行っておくと,基本仕様のほとんどは初代CELERITASから変わっていないが,さすがに初代機はかなり昔の製品なので,読者の多くは初代CELERITASに触れていないという前提で説明を行っていきたい。

 さて,そんなCELERITAS IIの国内モデルは,日本語109キー配列をベースとするフルキーボードだ。右[Alt]キーの代わりに[Fn]キーを搭載するという,ゲーマー向けキーボードで一般的な配列と言ってもいい。
 日本語配列モデルだと[Space]キーの行が混み合いやすいのだが,ZOWIEは左[Windows]キーや[変換/無変換]キーを一般的な19mmピッチとすることで[Space]キーに95mmの横幅を確保できている。

CELERITAS IIを正面から。日本語配列のゲーマー向けフルキーボードとしてごくごく標準的な配列だ
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 本体底面のサイズは実測で約440(W)×170(D)mmだった。10キー付きのフルキーボードとして幅は割と一般的な横幅および奥行きである。

ZOWIEロゴ入りのリストレスト(パームレスト)を標準で備える。ご覧のとおり着脱は不可
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 一方,本体の高さは[Space]キーの行で実測約20mm,ファンクションキーの行だと28.5mmあった。キーキャップの高さは場所によって異なるが,[Space]の行で実測約8mm,[Esc]キーの行で同9mmとなる。したがって,最も手前側のキーで,机上からキートップまでの高さは約28mmということになる。
 [Space]キーの行,最も手前のところから実測約35mmのリストレスト(パームレスト)が延びているため,ここに手を置くようにすれば,キーの高さはあまり感じない。ただ,リストレストは短いので,筆者のように手が小さい人なら対応できると思われるものの,手が大きめの人だとかなり窮屈に感じるだろう。

本体側面から見たカット。筆者の手元に初代CELERITASはないので過去記事との比較になるが,初代機と比べてリストレストは長く,傾斜が緩やかになっている可能性がある。なお,キーボードの傾斜を調整するためのチルトスタンドは持たない
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 本体実測重量はケーブル込みで1.3kg,ケーブルを重量計からどかした参考値では約1.25kgだった。いずれにせよ1kg超級の重量があるわけだが,この重さと,本体底面に貼られた細長い滑り止めゴムの効果もあって,安定感は十分だ。手荒なゲームプレイを行ったとしても,筐体がガタガタと動いてしまう心配はまずもって無用である。

本体底面には4か所で長さ実測118mmの滑り止めゴムが貼ってある。ゴムの厚さは1mmもないが,幅が十分にあるため,とくに問題はない
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キーキャップを外した状態の[Windows]キー。赤と白の色で色が変わるが,後者の色はかなり青い。キーキャップ側の加工込みで白く見せているようだ
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 LEDイルミネーションは基本的に赤一色。ただし,[Windows]キーと[Caps Lock]キー,[Scroll Lock][Num Lock]キーはロック時に白く――実際にはかなり青白いが――光り,ロック状態であることを視覚的に知らせてくれる。[Windows]キーのロックは[Fn]キーとの組み合わせによって有効/無効を切り換えられる仕掛けで,無効化時は追加の[Ctrl]キーとして機能する。

右側がロックした様子。[Caps Lock][Num Lock][Scroll Lock]キーのロック,もしくは[Windows]キーのロック(=[Ctrl]キーへの機能変更)を行うと,LEDイルミネーションが白に切り替わる
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LEDイルミネーションは輝度のみ調整可能。[Fn]+[F7/F8]キーの組み合わせにより,100%〜0%(=消灯)の範囲を無段階に調整できる
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 そのほかキーボードショートカットとしては,[Fn]+[F1]〜[F6]キーから利用できる音量調整やメディアプレーヤー操作がある。
 ゲームで多用する音量調節やミュートを利用するための機能が[F1]〜[F3]キーに割り当てられており,[Fn]キーからはかなり遠いため,とっさの対応は難しいが,慣れればなんとかといったところか。


減点対象は質感と機能。本質的な性能は文句なしに素晴らしい


製品ボックス
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 普段のレビューとはやり方を変えて,CELERITAS IIを見てきた。最大の特徴であるZOWIEカスタム版Flaretech Red Switchは,研ぎ澄まされたリニア感のあるスイッチで,個人的にはかなり気に入っている。ZOWIEがとにかく解決したかったという遅延周りの速度性能は,正直,体感するには至っていないのだが,この安定感とリニア感は文句なしに素晴らしい。

 一方,ここまであえて触れてこなかったが,感心しない部分も散見される。「初代CELERITASと同じ」「いつものZOWIE」と言ってしまえばそれまでなのだが,筐体の質感は,とても2万〜2万1700円程度(※2017年11月27日現在)という実勢価格に見合うものではない。

 筐体がつや消しの黒仕上げなのはいいとしても,樹脂の無垢と思われる表面は,指紋や皮脂が残りやすい。USBケーブルは柔軟で取り回しがよいものの,太さは実測約3mmと細く,見た目にも安っぽい。価格とのバランスで言えば,「プロユース」の一言で納得できるレベルを下回っていると言わざるを得ないだろう。
 また,機能も充実しているとは言えない。もちろん全キー同時押しや[Windows]キーの無効/有効切り換えといった必要最低限のところは押さえてあるが,日本語配列を採用するのであれば,[半角/全角]キーなど,ほかのキーも無効にさせてほしいところだ。昨今のゲーマー向けキーボード上位モデルならけっこう当たり前の要素が抜けているというのは,やはり残念である。

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USBケーブルは細く,見た目が頼りない。ちなみに長さは実測約2mだった
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パームレスト部はつや消しだが汚れは目立ちやすく,質感も決して高くない

 その意味でCELERITAS IIは,今回も非常にZOWIEらしい製品に仕上がっているとまとめることができそうだ。初代CELERITASの抱えていた問題に対して真摯に向き合い,新しいキースイッチを探しだして,さらにそれに徹底したカスタマイズを施すといった,多大な開発コストと時間を惜しげもなく注ぎ込みつつ,見た目とかそういった,「こだわったところで使い勝手や勝率を左右するものではない」部分はハナから二の次という,ZOWIE開発チームの思想が手に取るように分かるキーボードなのである。

 なのでCELERITAS IIに2万円の価値を見出せるかどうかは,ZOWIEの考え方に共感できるかどうかにかかっている。ZOWIEの考えを理解し,かつキーの押下感に惚れた人にとって,CELERITAS IIは唯一無二の存在となるだろう。

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ZOWIEのCELERITAS II製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    ZOWIE(旧称:ZOWIE GEAR)

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