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テストレポート
BenQ ZOWIE,ゲーマー向け液晶ディスプレイ新製品「XL2735」の実機を大公開。次世代製品のポイントに西川善司が迫る
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筆者は,そんなXL2735の実機を触ったうえで,BenQでゲーマー向け製品部門を率いるChris Lin(クリス・リン)氏から話を聞くことができたので,今回はその内容をまとめてお伝えしたいと思う。
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XL2735とはどんな製品なのか,基本スペックを確認
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輝度は250nitで,静的コントラスト比は公称1000:1。映像輝度に応じてバックライトの明暗を制御した場合の動的コントラスト比は1200万:1だ。
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ビデオ入力インタフェースはDisplayPort 1.2
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公称本体サイズは633(W)
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では,機能的に見て,新XL2735のどこが先代機と違うのか? Lin氏は「XL2735の新規アピールポイントは2つある」と語っているので,以下はその2点について紹介していきたい。
XL2735の新規アピールポイント(1)残像低減技術「DyAc」
Lin氏の言うアピールポイント,1つめが新技術「DyAc Technology」(以下,DyAc)である。
DyAc(ダイアク)は「Dynamic Accuracy」(ダイナミックアキュレシー)の略語で,効果としては「人間の視覚上の残像」を低減させるものになる。
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Lin氏は「DyAcの動作アルゴリズムは,現時点では公開しない」とのことだが,XL2735で表示した映像を240Hzの高速度で撮影したところ,どのような技術か,大枠で想像できた。なので,「筆者による推測を含む」という但し書きを入れつつ,DyAcの機能概要を解説してみようと思う。
「液晶ディスプレイの動体表示だと残像が知覚されやすい」とはよく言われるが,その理由を「液晶素子の応答速度が遅いから」と思い込んでいる人は少なくない。しかし現在,ディスプレイ機器が採用する液晶素子は,応答速度が遅いと言われるIPS型液晶ですら,速度性能を重視したものなら中間調で5msはある。これは120fpsの表示に必要な応答速度である8.3msよりも高速だ。
ではなぜ液晶ディスプレイは,応答速度が高速でも残像感がつきまとうのかというと,実は,我々人間の視覚メカニズムに原因がある。
液晶ディスプレイで,バックライトは基本的に常時点灯している。そのため,新しい表示フレームに表示を切り替えても,直前まで表示していた映像が残像として視覚に残りやすいのだ。これを俗に「ホールドボケ」と言う。
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このホールドボケを低減させる一番シンプルな方法は,「残像が視覚されにくい」とされたブラウン管の表示方法に倣って,次のフレームを表示する前に前のフレームを漆黒で掻き消すことだ。これは「黒挿入」とか「疑似インパルス駆動」とか呼ばれるテクニックである。
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DyAcでは,入力された映像フレームに基づいて液晶画素を書き換えている間にバックライトを消灯させ,それまで表示していた前フレームの映像を見えなくする。その間に,入力された新しい映像フレームの内容に書き換えるが,液晶画素の応答中(=映像フレームの書き換え中)もバックライトは消灯のままとして,ユーザーには見せない。そして,液晶画素が目的の表示状態になったときにバックライトを再点灯させる。
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さて,以上の説明を読んで,鋭い人は気付いてしまったかもしれない。
この手法だと,伝送されてきた映像を直には表示しないことになる。液晶画素の応答期間中は消灯して表示していないので,動作アルゴリズムの理論的に,どうしても最大1フレーム時間分の遅延が発生するのである。
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Lin氏によれば,DyAc機能はフレームレート(≒リフレッシュレート)が100fps(=100Hz)以上の映像に対して自動的に介入するよう設計されており,100fps未満の映像に対しては自動的に無効化されるとのこと。なので,100fps以下の映像なら最大1フレームの遅延は回避できる。
その場合,ホールドボケ低減はなくなるため,従来どおりの残像感を体感することにはなるが,その分だけ低遅延を実現できることになる。
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これは,入力映像が伝送されてきたそばから液晶画素の書き換えを行い,応答している当該画素の領域のみでバックライトを消灯させ,応答完了後に再点灯させる制御の証である。こういった,画面の上から順番に横帯状に区分けした領域をひとかたまりとしてバックライトの消灯および再点灯制御を行う手法のことを映像技術業界では「バックライトスキャニング」というのだが,DyAcは,シンプルな黒挿入ではなく,このバックライトスキャニングを採用しているものと見られる。
XL2735は,規定の液晶画素駆動電圧よりも瞬間的に電圧を上下制御させることで液晶応答速度を速める,いわゆる「オーバードライブ駆動」技術を,従来どおりの「AMA」(Advanced Motion Accelerator)として実装しているが,DyAcはおそらく,AMAと連動して動作しているのだろう。
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「液晶応答の隠蔽とバックライトスキャニングの組み合わせ」自体は,既存の液晶テレビで比較的広く採用されており,液晶ディスプレイにおいても採用例はある。もしかすると,DyAcでBenQはそれ以外の独自技術を併用しているのかもしれないが,現状では,「従来は主に動画再生用で使われてきた技術を,ゲーム用途に転用し,弊害が生じる恐れがある条件では自動的に無効化するよう設定したものである可能性が高い」という見立てが限界だ。
それだけでもかなり画期的なのだが,実際のところがどうなのかは,ZOWIE側による情報開示を待つ必要があるだろう。
XL2735の新規アピールポイント(2)集中力を高めるための「Shield」
XL2735でZOWIEは,DyAcのような電気的なものとは別に,デザインからのアプローチによる新機能も搭載した。
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Shieldは,いわゆる遮光用途のフードのようなものかと思いきや,そうではないそうで,ユーザーの視る位置から画面外の様子が見えてしまうのを防ぐためのものだという。
Shieldは,蝶番(ちょうつがい)のような機構によって可動させられるようになっており,それこそ遮光フードのようにユーザー側に突き出す角度から,その180°反対側まで動かすことができる。もちろん,左右のShieldをそれぞれ異なる角度に設置しておくことも可能だ。
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ちなみにこのShieldはネジ留めされており,簡単に取り外せる。不要だと思うなら付けなくてもいいのだ。
XL2735,日本での発売はいつ?
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ちなみにその実勢価格は,ざっくり800ユーロ(※税別,2016年9月27日現在)。日本円換算で9万円強といったところで,これがある程度の目安にはなるだろう。XL2730の実勢価格が7万5000〜8万4000円程度(※税込,2016年9月27日現在)だから,XL2735は,XLシリーズとして最も強気な価格設定で国内市場へ登場することになるかもしれない。
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XLシリーズの次世代モデルが気になる人は,もう少しの辛抱だ。
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BenQのXL2735製品情報ページ(英語)
- 関連タイトル:
ZOWIE(旧称:ZOWIE GEAR)
- 関連タイトル:
XL,XR,RL
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