レビュー
SpawNの意見を取り入れて完成した光学センサー搭載モデルをチェックする
ZOWIE AM
徹頭徹尾プロゲーマー,そしてシリアスゲーマー向けを志向するZOWIE GEARブランドの方針により,同ブランドの第1弾マウス「EC1」「EC2」と同じく,LEDイルミネーションやマクロ機能,重量調整機能,無用なまでの高DPI/CPI設定を誇るセンサーといったものは一切持たないAM。2011年に登場したマウスとしては相当に割り切った仕様といえるが,それだけに気になるのは使い勝手だ。今回も細かくチェックしていきたい。
IMOを若干小型&軽量化したような形状
クセが少なく,持ち方の自由度は高い
全体的な形状は,惜しまれつつ販売終了になったMicrosoft製光学センサー搭載マウス「IntelliMouse Optical」(以下,IMO)を小さくしたような左右対称型で,とくに持ち方が限定されるようなことはなく,一般的な持ち方から特殊な持ち方までカバーできる懐の広さがある。また,本体全面を覆うラバーコートの手触りがよく,つまんだり,手のひらを押し当てたりしたときに,グリップ力を発揮してくれる印象だ。
筆者の場合,IMOを「かぶせ持ち」(Palm grip)すると,親指の第一関節が凹みの最深部に当たるが,AMでは第一関節と指先の中央付近が当たるようになっていた。総じて両者の持ち心地にはかなり近いものがあるのだが,IMOからAMへ乗り換える場合,この凹みの違いは違和感の原因になるかもしれない。ただ,個人的にはAMのほうがより自然だとも感じる。
そのため,AM(やIMO)では,側面をつまんで持ち上げるときに指が引っかかる感覚がなく,XaiやSensei以上にしっかりと握る必要がある。かぶせ持ち時における薬指の感覚も異なるので,XaiやSenseiから乗り換えようとすると,かなり違和感があるだろう。
ただ,(XaiやSenseiとの比較時に述べたとおり)本体側面が,IMOと同じく,高い位置から低い位置に向かって裾の広がるような形状になっているため,筆者のように,指先に相当な力を込めてつまむようなタイプだと,親指がマウスの“山頂”側に向かって若干ねじられたような感じになってしまう。指先にさほど力を入れず,添えるようにホールドする人ならおそらく気にならないと思われるが,力を入れてつまみ持ちする場合にはIMOと同じ問題を抱えるので,この点は注意が必要だと思われる。
なお,「つかみ持ち」(Claw grip)やかぶせ持ち時には,前出の凹みに親指と小指がほどよく収まる。さらに,凹みからマウスの前側(=メインボタン側)へ向かって,膨らみが最も大きくなる部分に存在感があり,いわゆる2本指操作時,薬指に押しつけられる感覚があるため,いきおい,操作をしやすく感じられる。
同時に利用可能なボタンは5個
独特なホイール以外は満足できる品質
ただ,AMでは,左右のサイドボタンが排他になっており,右手で使うときは左サイド,左手で使うときは右サイドしか利用できないようになっているため,実質的には5ボタンマウスとして使うことになる。製品ボックスには切り替え方法が一切説明されていないのだが,左右動作モードの切り替えは,「中指もしくは薬指で押すほうのメインボタンとスクロールホイールボタンを同時押ししながらUSBポートに差す」ことで可能だ。
サイドボタンを持った左右対称形状のマウスによくある問題として,薬指&小指側のサイドボタンは押しづらく,そもそも,マウスの操作時に“誤爆”してしまいがちというものがある。そのため,薬指&小指側のサイドボタンにはあえて何も割り当てないのが大多数の選択だと思われるが,「だったらはじめから無効化してしまえばいい」というのが,ZOWIE GEARの結論だったわけだ。
ただ,使わないなら何も機能を割り当てなければいいので,一部のプレイヤーからすると,「あるのに使えない」ことにもなる。USBクラスドライバで動作する,いわゆる「ドライバレス」仕様であるがゆえの制約があったのかもしれないが,ユーザー側に選択肢を残しておいてくれてもよかった気はする。
筐体カバーと一体成形のメインボタンは若干固めなものの,同じZOWIE GEARの「MiCO」ほどではない。メインボタンが軽すぎると,指を載せているだけのつもりでも押下してしまう,なんてことがあるので,これくらいでちょうどいい。
なお,深めのつかみ&かぶせ持ちだと,サイドボタンの奥側(=メインボタン側)はホールドしながらでも押下できるが,手前側は指を大きく動かさないと押しづらくなる。
ただ,筆者のように,ホイールの上下回転そのものに特定の武器スロットを割り当てている場合は,1刻みだけ回すのも,ひと思いにガッと回すのも結果として変わりなく,そういう使い方の場合はあまりメリットを享受できず,逆に固い分,回しづらさを覚えるかもしれない。
また,これは個体差かもしれないので参考程度にしてもらえればと思うが,一気に回転させたとき,「カタカタ」「キチキチ」というメカニカルな音がやや耳障りなのも気になった。
なおセンタークリックは,ストロークが浅いことを除くと,特筆すべきことはない。無難な作りだ。
ドライバレスで手軽かつシンプル
DPI設定はマウスに保存される
そんなAMにおける数少ない機能が,前出のサイドボタン切り替えと,後述するとしたDPI設定変更,そしてレポートレート変更である。
マウス底面に用意されたボタンを押すこと解像度設定を変更できるというのは先ほど述べたとおりだが,AMで解像度は3段階からの選択式となっていて,ボタンを押すごとに,赤(450DPI)→紫(1150DPI)→青(2300DPI)→赤……といった具合で,LEDインジケータの色とDPIが切り替わる。LEDの色を見れば,現在の解像度を確認できるわけだ。
ちなみに,AMが搭載する光学センサーはAvago Technologies製の「ADNS-3090」と公表されているのだが,ADNS-3090の製品情報ページによれば,同センサーのネイティブ解像度設定は1800/3500CPI。450DPIはともかく,どういう理由で1150&2300DPIがAMの解像度設定として用意されたのかはよく分からない。SpawNの好みだろうか。
- 何も押さないor手前側(=マウス後方側)押下:1000Hz
- 奥側(=マウス前方側)押下:500Hz
- 2個同時押下:125Hz
ただ,後述するテスト環境で,500Hz設定時に「Direct Input Mouse Rate」(dx_mouse_timer_dialog.exe)でレポートレートを計測してみると,なぜか450Hz程度で頭打ちになってしまう。また,125Hz設定時も低めで,逆に1000Hz設定時は高めの値が得られた。ゲームプレイ時に違和感があるというわけではないのだが,なんだか気持ちが悪いのも確かである。
ちなみに,左右どちらの手で使うかと,解像度,レポートレートの設定はマウス本体に保存されるようで,PCをつなぎ替えても,直前に設定した内容が保持される。
追従性は「無難」といったところ
リフトオフの短さによる影響は感じる
さて,詳細なテストに移ろう。テスト環境は表1,詳しいテスト条件はその下に箇条書きでそれぞれまとめたとおりとなる。
●AMの設定
- トラッキング解像度:2300DPI
- ポーリングレート:500Hz
- Windows側設定「マウスのプロパティ」内「速度」スライダー:中央
- Windows側設定:「ポインタの精度を高める」:オフ
●テスト方法
- ゲームを起動し,アイテムや壁の端など,目印となる点に照準を合わせる
- マウスパッドの左端にマウスを置く
- 右方向へ30cmほど,思いっきり腕を振って動かす「高速操作」,軽く一振りする感じである程度速く動かす「中速操作」,2秒程度かけてゆっくり動かす「低速操作」の3パターンでマウスを振る
- 振り切ったら,なるべくゆっくり,2.の位置に戻るようマウスを動かす
- 照準が1.の位置に戻れば正常と判断可能。一方,左にズレたらネガティブアクセル,右にズレたら加速が発生すると判定できる
テストに用いたゲームタイトルは「Warsow 0.62」。本テストにおいて,ゲーム内の「Sensitivity」設定は,よりマウスに厳しい条件とすべく,「180度ターンするのに,マウスを約30cm移動させる必要がある」0.38に設定。読み取り異常の発生を分かりやすくさせている。
以上のテスト条件で,マウスパッドとの相性を確認した結果が表2だ。
ただ,追従性を厳しく見てみると,通常のゲームプレイに用いる「低速操作」〜「中速操作」ではおおむね問題ないものの,センサーの限界を見るべく,可能な限り高速で動かした場合は,「ADNS-9500」シリーズのような最新世代のレーザーセンサーと比べるとさすがに見劣りする。「リフトオフディスタンスを短くした結果,追従性が犠牲になっているのでは?」という疑念を抱かないでもないが,通常利用する限りにおいてはまったく問題ないので,「リフトオフディスタンスの短さと追従性のバランスが良好」と言い換えることもできるだろう。
相性を細かく見てみると,まず,ガラス製の「Icemat Purple 2nd Edition」では芳しくない結果となり,軽くサッと動かしただけでも読み取りが停止してしまうことがよく見られた。Icemat Purple 2nd Edition上では,多くのマウスでリフトオフディスタンスが短くなる傾向があるため,マウス側でリフトオフディスタンスの短縮化を図ったAM独自レンズとの相性が悪いと見るべきではなかろうか。
また,樹脂製のサーフェスを持つ「Razer Vespula」では,低速操作時にも時折ガクガクとし,正常な読み取りができない挙動になることがあった。
なお直線補正は,ZOWIE GEARが「ない」と断言しているが,そのとおりの結果が得られた。
クセがなく使いやすいので勧めやすい
絶版となったIMOの後継としてもアリ
光学センサー搭載マウスとして,センサーの追従性は実用的な水準にあるので,「ゲーマー向けマウスに手を出してみたいが,何を買ったらいいか分からない」という人に広く勧めやすいものになっている。ゲーム用マウス選びをギャンブルにしたくない人なら,購入して後悔することはないだろう。
ただ,これはZOWIE GEARの思想によるものだが,機能が最小限に留まる点は覚悟しておく必要がある。ドライバレスで動作すること自体は魅力であり,また,トラッキング解像度やレポートレートの設定機能はあるものの,「プラスアルファ」は皆無だ。マウスレベルではボタンへの機能割り当てすらできないものに,6000円台中盤〜後半のコストを投じられる人は,正直,そう多くないのではないだろうか。その意味では,人を選ぶマウスといえるかもしれない。
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ZOWIE GEAR公式Webサイト(英語)
マスタードシードのAM(AM BLACK)製品情報ページ
- 関連タイトル:
ZOWIE(旧称:ZOWIE GEAR)
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