インタビュー
リヴァイアサンは難攻不落? 来日中だった「ArcheAge」開発元XLGAMESのCEOジェイク・ソン氏に11月19日の大型アップデートについてインタビュー
「ArcheAge」と言えば,2014年7月に日本でのサービス1周年を迎え,その記念としてバーベキューパーティーが行われたことも記憶に新しい。今回の大型アップデートは,その会場で発表された“海”のコンテンツの一部が実装されるものだ。
コンテンツの大まかな概要については,パーティー当日に本作のプロデューサー石元一輝氏(以下,石元氏)にインタビューしているので,ご存じのプレイヤーも多いだろう。
今回4Gamerでは,来日していたArcheAgeの開発元であるXLGAMESのCEOジェイク・ソン(Jake Song)氏にインタビューする機会を得た。なぜ“海”をメインテーマにしたのか,すでに韓国で実装されているアップデートの反響はどうなのか,開発元としての思いや今後の考えなど,いろいろと聞いてみたので一読してほしい。
物理シミュレーションの挙動に苦労の連続
「海」のコンテンツはArcheAgeの自慢
4Gamer:
本日は,よろしくお願いします。日本では7月に「ArcheAge」のサービス1周年を迎えました。
はい。日本でのサービスは,韓国でサービスを始めてから初めての海外展開ですので,1周年は特別な意味があると思います。また,4月の無料化,そして7月のエアナード1.2アップデート以降,日本での状況が良くなっていると聞いていますし,嬉しく思っています。
4Gamer:
韓国ではその7月に「リヴァイアサン」を含むアップデートが実装されましたが,プレイヤーの反応はいかがでしたか?
ジェイク氏:
好評です。11月に入るアップデート内容を含んだものですが,韓国でも良い状況が続いています。
4Gamer:
このアップデートは海がメインのアップデートと聞いています。なぜ海を前面に押し出そうと考えたのでしょうか。
ジェイク氏:
ArcheAgeにとって海洋に関するコンテンツはとても重要で,ほかのMMORPGと差別化できる大きなポイントだからです。さらに,船に物理シミュレーションを使ったすごくリアルな航海が体験できます。
ただ,サービスから1年以上経っていることもあり,プレイヤーの海への関心が徐々に薄くなってきました。そこでもう一度,海に対して関心を高めてもらうために,“海”をメインコンテンツにすることにしました。
4Gamer:
その海のコンテンツを作るうえで,苦労したエピソードはありますか?
ジェイク氏:
船を物理シミュレーションでリアルに動かしていると話しましたが,これは長所でもある一方,難しい部分でもあります。プレイヤー同士のクライアント間や,サーバー間で船の動きを同期させるのが難しくて,バグが発生しやすいんです。たとえば,過去には船が空に飛んでいったこともあります。
4Gamer:
ああ……物理シミュレーションを使ったタイトルでは,ときおりそんなバグが起きますよね(笑)。
ジェイク氏:
一方で,物理シミュレーションによって,プレイヤーも我々も予期しない面白い状況が生まれることもありますから,メリットも大きいのです。こうした物理シミュレーションで多数の船を動かすMMORPGは,自分が知っているかぎり,ArcheAgeしかないと思います。そこは,ちょっとした自慢ですね。
大海原で冒険者を待ち受ける「リヴァイアサン」
200人で挑んだ韓国勢もまだ倒せていない?
4Gamer:
では,今回のアップデートについて個別にうかがいたいと思います。ArcheAgeには海のボスとしてクラーケンがいますが,今回実装される「リヴァイアサン」は,クラーケンとどう違うのかを教えてください。
クラーケンは,サービス開始当初から存在する海洋モンスターで,数十人がレイドに参加して倒すという海のコンテンツです。しかし,比較的戦闘パターンが単純で,出現場所も固定でした。
4Gamer:
とすると,プレイヤーとしては人数さえ揃えられれば,攻略しやすそうですね。
ジェイク氏:
はい。ですから,現在韓国では大きな勢力側の独占状態になってしまっています。一方でリヴァイアサンは,クラーケンとは違い出現位置も固定されず,自発的に動きます。これは,プレイヤーの皆さんに新しい体験ができるように設計したものなんです。
4Gamer:
なるほど。ちなみに韓国ではリヴァイアサンの実装後に,どれぐらい倒されているんですか?
ジェイク氏:
それがですね,実は韓国でもまだ倒されていないんですよ。
4Gamer:
あれ? 以前にレッドドラゴンで同じようなお話を聞いた覚えがあります(笑)。つまり,韓国のリヴァイアサンは,弱体化される前のレッドドラゴンと同じような状態になっているわけですか。
ジェイク氏:
ええ。過去に200人規模の遠征隊でも挑戦されていましたが,まだ倒されていません。
4Gamer:
その理由は単純にリヴァイアサンの強さなのでしょうか。それとも,見つけるのが難しいとかだったりですか。
ジェイク氏:
見つけ出すのもそうですが,ほかにもいろいろな要素があります。リヴァイアサンは移動しながら自らの体力を回復させるので,攻略する側は追いかけながら一定以上のダメージを与え続けなければいけません。もし攻略する側の船の速度が遅かったり,リヴァイアサンの移動速度を落とせないままだと見失ってしまいます。また,攻撃するために移動するリヴァイアサンの左右に船をうまく配置しなければいけませんが,これには高い水準の練習が必要です。
4Gamer:
それは,かなり大変ですね……。
ジェイク氏:
さらにもう一つの要因として,後半になるとリヴァイアサンはノックバックスキルを使ってくるのですが,これは船をノックバックさせるだけでなく,乗っているプレイヤー自身もノックバックしてしまうんですよ。
4Gamer:
ああ,プレイヤーが海に落ちて攻撃が途絶えるんですね。
ジェイク氏:
そのとおりです。
4Gamer:
参考までに石元さんにうかがいたいのですが,日本で遠征隊を組む場合は,何人くらいが参加しているものなんでしょうか。
弱体化後のレッドドラゴン討伐のときですが,100人前後で討伐したサーバーがいくつかあります。ただ,日本よりも装備のレベル帯が高い韓国サーバーで,リヴァイアサン遠征隊が200人ということは,日本だと250〜300人ぐらいいないと,同程度の戦力にならないかもしれません。
4Gamer:
人数を集めるという点でも厳しいですね……。ちなみに,こうした巨大モンスターは,倒すための攻略方法みたいなものを想定して開発しているんですか?
ジェイク氏:
もちろん企画者が設計する段階から,どのように攻略してもらうかを想定しています。実際に開発したあと,100人ほどいる開発チーム全員で一緒にログインして,何度も戦ってみたうえで調整しているんですよ。
4Gamer:
100人規模で実際にテストしているんですね。
ジェイク氏:
ええ。とはいえ,開発メンバーの実力はプレイヤーさんに劣りますから,「開発でこれぐらい戦えるなら,プレイヤーはもっとうまくやれるだろう」ということで若干難しく調整することになります。そうして当初の企画意図から,リヴァイアサンを簡単に倒せないことは想定していたのですが……いまの強さは,開発からも少し厳しすぎるのではないかという意見が出ています。
4Gamer:
では,何らかの調整が行われるのでしょうか。
ジェイク氏:
リヴァイアサンのHPを下げるとかではないですが,先ほどのノックバックスキルについて,プレイヤーをノックバック対象外にして,船だけノックバックさせるといった方向での調整を検討しています。おそらく,これくらいの調整で韓国では倒せるのではないでしょうか。日本でもアップデート後の状況を見て,適正な調整をかけたいと考えています。
4Gamer:
とすると,日本での今回のアップデートでは,調整前のいわばハードモードのリヴァイアサンと戦うことになるわけですね。
石元氏:
そうですね。ですが,この強さのリヴァイアサンと戦えるのは今だけかもしれないので,プレイヤーさんにはぜひ体験してほしいです。
ジェイク氏:
リヴァイアサンを倒すためには相当な戦略と戦術,そして練習が必要になりますが,日本のプレイヤーさんのファイトに期待します(笑)。まずはチャレンジしてみてください。
幽霊船は数隻でも楽しめる小規模な海洋コンテンツ
待望の中型帆船は「幻の船」?
4Gamer:
幽霊船についても教えてください。これはどのような意図で導入が決まったのでしょうか。
海のコンテンツとして追加したリヴァイアサンは,多くの人数が集まってプレイしなくてはならない最上位コンテンツです。一方で,これはすべてのプレイヤーが気軽に参加できるというものではありません。ですから,幽霊船は少ない人数で参加できるコンテンツとして企画しました。
4Gamer:
たしかにリヴァイアサンだけでは,誰もが気軽に楽しめるわけではありませんね。ちなみに,どれくらいの強さになるのでしょうか。
ジェイク氏:
幽霊船には強いものと,弱いものの2種類あり,だいたい3隻から5隻ほど集まれば倒せる難度で設定しています。
4Gamer:
海上では,どれぐらいの頻度で出現しますか?
石元氏:
強い幽霊船は全マップに1隻,弱い幽霊船は2隻までそれぞれ同時に出現します。倒したあとは,数時間ごとにリポップしますので,そこそこの頻度で遭遇できると思いますよ。
ジェイク氏:
この幽霊船は,旧大陸が滅亡したときに脱出できなかった,自分達の財産を守れなかった人達が亡霊となって海を彷徨っている,という設定なんですよ。某海賊映画に出てきたような,幽霊船のイメージですね。
石元氏:
あと幽霊船は,見た目こそ船で攻撃も当たりますが,ぶつかろうとしても衝突せず,すり抜けてしまうんですよ。
4Gamer:
船そのものがモンスターのような存在になっているんですね。幽霊船を攻撃して沈没させるというか,倒すわけですが,戦利品はどのようになりますか。そのまま海に沈んでしまうということは……。
ジェイク氏:
海の上に荷物が浮くので,それを回収してもらうことになりますね。
潜って回収するのかと思いましたが,それなら安心です(笑)。もう一つ,船と言えば,中型帆船も実装されます。
ジェイク氏:
はい。いまゲーム内に存在しているのは小型帆船だけですが,中型帆船はその約2倍の大きさになります。砲台も小型帆船に比べて多く装備させて火力を増やすこともできますし,船首部分を変えて突撃してダメージを与えられるようになります。
4Gamer:
船体が大きくなって,さまざまなタイプにカスタマイズできるのが特徴だと以前に石元さんから聞いています。
ジェイク氏:
そうです。さらに中型帆船は,大砲をいっぱい載せた戦闘タイプから,移動が速くなるスピードタイプへといった感じで,戦闘メカのようにモードを切り替えることもできるんですよ。そのときに,甲板の形も実際に動いて変わります。
4Gamer:
戦闘時に中型帆船の力をフルに発揮するには,やはり人員も小型帆船の2倍程度必要になりますか?
ジェイク氏:
小型帆船は片側の側面に四つずつ火砲が置けますが,中型帆船は五つ置けます。さらに櫂(かい)を漕ぐ人も必要ですから,倍では少し足りないかもしれません。
4Gamer:
なるほど。その中型帆船ですが,たしかリヴァイアサンの戦利品を使って建造するものですよね。つまり……。
ええ,実はまだ韓国でも獲得したプレイヤーはいません。私も開発チームがテストプレイしているのは見たことがあるのですが。
4Gamer:
ああ,やっぱり。では,リヴァイアサン以外で中型帆船を入手する経路を増やす予定はないのでしょうか。
ジェイク氏:
ありません。というのも,ノックバックスキルの修正で獲得できるプレイヤーは増えるはずだと考えていますので。
4Gamer:
なるほど。ただ,先ほどの話にもあったように,韓国で倒せるから日本でも,というのは難しい可能性もありそうです。
石元氏:
そうですね。あくまでお約束というわけではないのですが,何かできないか検討したいとは思っています。
4Gamer:
期待しています。では続けて,船舶のカスタマイズについて教えてください。カスタマイズできる船の種類は中型帆船のみになるのでしょうか。
石元氏:
いえ。小型帆船も,さらにはハープーン高速艇でもカスタマイズ可能です。
4Gamer:
それは嬉しいですね。どれくらいのカスタマイズができるんですか?
ジェイク氏:
先ほどお話ししたように,一つは船首部分ですね。スピード重視の船首像や,敵船に突撃してダメージを与える攻撃重視の衝角などが装備できます。また,大砲の設置や旗を変更したりなど,さまざまな改造が行えます。
個々のパーツはサルベージで入手できたりします。
4Gamer:
サルベージ……入手先が何だか生々しいですね(笑)。
石元氏:
ほかにも戦闘系のパーツだけではなく,小型帆船にあるようなパッケージが積み込めるコンテナをほかの種類の船に追加することで,貿易船として使うこともできますよ。
4Gamer:
用途も変えられるわけですか。カスタマイズによって,いろいろな船の使い方が楽しめそうです。ちなみに,カスタマイズには何らかの制限があるのでしょうか。
石元氏:
カスタマイズは,装備品と同様にUI上でパーツを付け替えるのですが,容量(スロットの数)という制限はあります。それ以外の制限はとくになく,自由にカスタマイズできます。
「海」の次は「陸」がメインのアップデートに
4Gamer:
今回のアップデートには入らない海のPvPコンテンツ「深淵の襲撃」についても聞かせてください。韓国での反響はいかがでしょうか。
かなり楽しんでもらえていますよ。高価な貿易品材料になる結晶を獲得するためにほかの船を破壊したり,戦いで混乱しているところをスッっとすり抜けて獲得したりと,いろいろな戦い方が試されています。
4Gamer:
船をカスタマイズできるようになりましたし,船を使った戦い方もこれまでのPvPとは変化がありそうですね。
ジェイク氏:
はい。船舶のカスタマイズは重要な役割を果たしています。たとえば船で突撃して相手の船を壊すスタイルを取るのであれば,船首に衝角を装備する必要がありますし,大砲での攻撃メインで戦うなら大砲をたくさん詰む必要があります。
4Gamer:
プレイヤーの個性でいろいろなカスタマイズの形がありそうですね。ところで,先ほど海の物理シミュレーションで,プレイヤー間の船の同期が難しいとおっしゃっていましたが,船が大量にぶつかりあうPvPとなると,開発はかなり大変だったのではないでしょうか。
ジェイク氏:
ええ,かなり難しかったです。しかし,プログラマーが頑張ってくれたおかげで,ちゃんとうまく動いています。
4Gamer:
日本での実装も楽しみです。続いて,今後予定しているアップデートについても教えてください。
ジェイク氏:
次のアップデートでは,二つの方向性を考えています。一つめはまだ日本には導入されていない国家システムの改善,もう一つがハウジングや農業コンテンツの追加や改善です。詳細な内容はまた話せる時期が来ましたら,お知らせできると思います。
4Gamer:
分かりました。海の次は「陸」がメインのアップデートになりそうですね。それでは最後に,アップデートを待つ読者に向けて一言お願いします。
ジェイク氏:
ArcheAgeが日本でサービスを開始して1年が経ちました。今までプレイしてくださった日本の皆様に感謝いたします。今回のアップデートでは,さまざまなコンテンツを追加しました。今後もいろいろとアップデートをしていきますので,どうぞよろしくお願いします。
石元氏:
僕がプロデューサーに就任してから約半年が経ちました。新しく始められた方も多いのですが,まだまだアプローチは足りていないと思います。今後もプレイヤーの皆さんの近くで,皆さんの意見を採り入れつつ良いゲームにできるよう頑張りますので,よろしくお願いします。
また,今回のアップデートは“海”ということで,これまであまり海や船を体験していなかった方も,この機会に触れて楽しんでいただければと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
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