インタビュー
「ArcheAge」と寝食を共に過ごした3か月を振り返る。“移住者もるちゃん”インタビュー
これは,東京都内に専用のアパートの部屋を借りたうえで,そこにPCや配信環境などを準備し,ゲーム内とリアル生活の両面においてArcheAgeの世界に正真正銘“移住”するというものだ。ゲームの実況配信といえば,公式/非公式という違いはあるものの,いまとなっては当たり前のように浸透している。しかし,オンラインゲームのプロモーションとして,ここまで大掛かりなものは前例がないだろう。
・3か月間「ArcheAge」を徹底的に遊んで100万円。プロモーションイベント「ArcheAge移住計画」の参加者募集が本日スタート
・「ArcheAge」のプロモーションイベント「ArcheAge移住計画」に挑戦する移住者が「AVA」の有名プレイヤー“もるちゃん”さんに決定
こうして,2013年8月8日からスタートした移住計画だが,現在3か月弱が経過しており,11月8日をもっていよいよフィナーレを迎える。今回は,移住者としての生活を続けるプレイヤー“もるちゃん”と,ArcheAge運営プロデューサーの野田真央氏に,この一風変わった3か月間を振り返ってもらった。
移住者として過ごした3か月
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。移住計画が始まってから3か月弱が経ちましたが,これまでの活動を振り返っての感想はいかがですか。
想像していた以上に,毎日楽しく過ごせています。自分はもともとかなりのゲーム好きで,ゲームの実況配信に関しても「Alliance of Valiant Arms」などで日常的に行っていました。ですので,生活する場所は変わっても,生活サイクルそのものはそれほど極端に変わってないんです。
4Gamer:
実家は京都とのことですが,家族と離れての不安はありませんでしたか?
もるちゃん:
それもまったく感じないですね。妻は京都に残っていますが,その気になれば実況配信を通じて安否が確認できますし。
4Gamer:
なるほど。一方のゲームオンからすると,プロモーションとしてかなりユニークな試みですが,いまどのように感じているのでしょうか。
野田真央氏(以下,野田氏):
まずは,3か月間無事に進んでほっと胸を撫でおろしています。そしてそれと同時に,ゲームの実況配信の力をあらためて実感しているところです。
4Gamer:
それは,どういった点でですか。
野田氏:
企画が3か月と長期間なので,移住者自身が途中で飽きてしまったり,逆に“仕事”の感覚で配信されてしまうと,見てる側にとってつまらなくなってしまいます。ゲームの魅力を伝えるための配信が,逆効果の内容になる不安もありました。でも,もるちゃんは生活の一部にArcheAgeが完璧に溶け込んでいて,それでいてゲームの魅力をきちんと伝えてくれます。
4Gamer:
もるちゃんは,長期間の実況配信を前提として,どういったプレイスタイルを心がけましたか。
もるちゃん:
まずは,ArcheAgeの初心者から中級者くらいの視聴者が共感してもらいながら,プレイヤーとして一緒にステップアップしていける内容ですね。それともう一つは,自分の普段のゲームプレイを,等身大で伝えることを心がけました。
4Gamer:
配信のために,とくに変わった遊び方をしたというのはないんですね。
もるちゃん:
ええ。例えば,インスタンスダンジョンを最速で攻略したりだとか,PvPで勝つための適性を追求したりといった内容になると,一部のトッププレイヤーしか楽しめなくなってしまいます。また,自分本来のプレイスタイルともちょっと違うかなと。
もるちゃんの配信を見ていて思うのが,なんというか“自然体”なんですよね。実況配信が前提のプレイだと,「視聴者を楽しませないと」といった考えも出てくると思うんですけど。プレッシャーはなかったですか?
もるちゃん:
極端にウケを狙ったり,といったことは考えませんでしたね。ゲームプレイの時間の割合としては,「生産やまったり系が6割,視聴者に楽しんでもらえそうなプレイを4割」位の配分で考えていました。
視聴者からは「もっとアツいバトルをやってよ!」と言われたりもしましたが,マイペースを貫きました。
4Gamer:
まったり遊べるのもArcheAgeの面白さですね。
もるちゃん:
ええ。農作業をしながら視聴者と雑談するだとか,そういう遊び方も大好きです(笑)。あと,自分の普段の生活,例えば夜食を食べたりする様子もそのまま配信したりと,ArcheAgeだけじゃなくて自分のリアル生活の配信も交えて楽しんでましたね。
4Gamer:
しかし,何でもかんでも自由に配信していいわけではないと思いますが,移住生活においての決まりごとはあったんですか。
もるちゃん:
毎日8時間はArcheAgeを遊んで,そのうち2時間は実況配信を行うというのが契約時の必要条件でした。そのうえで,一般プレイヤーにとってのコアタイムとなる夜間に配信したり,ブログを執筆してくれるとベター,といったところですね。
4Gamer:
おや,そうなんですか。実際の配信を見たことがありますが,けっこう長時間配信していますよね。
もるちゃん:
ええ。日にもよりますが,5〜6時間以上を配信することも珍しくないです。ゴールデンタイムから朝方まで配信して,空が明るくなったら布団に入るといった感じですね(笑)。
4Gamer:
ブログの更新を見ると,毎週2日間はオフの日が設けられているようですが,その間は例えば家に帰ったりしているんですか?
もるちゃん:
いえ,ArcheAgeで遊びながら配信してます(笑)。
4Gamer:
それは,ほとんどオフじゃないような(笑)。
もるちゃん:
オフらしいオフというと,知人の結婚式に出かけたのが1回と,自分が普段プレイしている「Alliance of Valiant Arms」で,お世話(※もるちゃんは,AVAの公式大会で選手として出場したり,大会の実況MCを務めたりしている)になっている井上氏(プロデューサー)と飲みに行ったくらいです。例えば都内を観光とか,友達と遊びに行ったりしたのはゼロですね。
4Gamer:
本当に,ArcheAgeと共に過ごした3か月なんですね。
もるちゃん:
そうですね。ちなみに家には1回だけ帰りました。実は,この部屋には最初2台のPCが用意されていたのですが,自分は3アカウントで同時プレイしたかったので,ノートPCを取りに帰ったというのが理由です(笑)。
4Gamer:
帰った理由もArcheAgeなんですね(笑)。
紆余曲折ありまくりのクラーケン討伐やギルドハウス建築
4Gamer:
実況配信を抜きにしても,かなりのハイペースでArcheAgeをプレイし続けてきたわけですが,先ほど野田氏が話していたように,途中で飽きてしまったり,配信するネタが足りないといったことはなかったんですか。
ないですね。ArcheAgeは遊びの幅が広いMMORPGですし,視聴者からイベントなどのアイデアをいただくこともあります。時間があればあるだけ遊べますね。
野田氏:
手前味噌ですが,今回の移住計画のプロジェクトは,ArcheAgeというタイトルだからこそ実現できたのかな,という気はします。
4Gamer:
なるほど。確かに,ゲームのシステムが,プレイヤーに何をやっても良いと許容しているからこそというのはありそうですね。では,この3か月間でとくに印象深いエピソードや,達成もしくは未達成のプレイ目標などがあれば教えてください。
もるちゃん:
やはり,現在ArcheAgeの世界で最強のモンスターとして君臨している,“クラーケン”の討伐ですね。せっかく実況配信しているのだからと,西大陸と東大陸のプレイヤー合同で挑戦してみたのですが,いざ行ってみると無謀にもほどがありました。
4Gamer:
西大陸と東大陸は,本来は敵対関係ですよね。それが一時的に手を組んだんですか。
もるちゃん:
はい。敵大陸のプレイヤーとはゲーム内チャットが通じないので,現場での戦術は自分の生放送を通じて伝達することにしました。
しかし,いざイベントを開催してみると,両大陸から数多くの船団に参加していただいて,海上で“渋滞”が起きてしまったんです。こうなると戦術どころの話ではなくて,船で押し合いへし合いしている間に,クラーケンに船ごと各個撃破されてしまい,最後にはやっぱりというかなんというか,無差別PvP大会になって失敗してしまいました。
4Gamer:
味方が多すぎても混乱してしまうのか。いや,なかなか難しいですね。
もるちゃん:
ええ。失敗したあとに,反省会の実況配信を4時間くらいかけて行いました。そして戦術を突き詰めてみたところ,もっとも現実的な方法は「50名による精鋭メンバーだけで挑戦する」というものでした。
4Gamer:
高度な戦術になると,どうしても人数を絞らざるを得ないと。
もるちゃん:
でも,そうなると1回目の討伐を共に戦った東大陸のメンバーが締め出される形になってしまいます。中には,不服に感じる人もいるでしょうし,そういった状況で実況配信を行ったら,まず間違いなく妨害行為を受けてしまいます。そんなわけで,2回目の討伐イベントはまだ実現できずにいるんです。
4Gamer:
「クラーケン討伐」という目標を配信するのは,なかなか難しそうですね。そのほかに,大きなプレイ目標はありましたか。
もるちゃん:
もう一つの大きな目標は,ゲーム内で一番大きなギルドハウスを建てることでした。最終的に建てることはできたのですが,これがもう想像を絶する大変さでしたね。
まずは設計図を入手するために,主に貿易で得られる“デルフィナードの星”を2000枚集めるわけですが,実況配信を行う都合上,どうしても邪魔が入るわけです。
4Gamer:
視聴者の敵対国のプレイヤーに,どうぞ襲ってくれと言ってるようなものですからね。
もるちゃん:
ですので,基本的には安全圏内での貿易ですね。その際はトラクターに貿易品を4個載せて,運転手にも1個担いでもらって,そのトラクターがぞろぞろと貿易する様子を延々と配信してました。一時期はサブキャラクターも含め,90名分の労働力を総動員して貿易を行っていましたよ。
4Gamer:
設計図だけじゃなくて,材料集めも相応に大変そうですね。
もるちゃん:
ギルドハウスの建築に必要な材料は,鉄が2000個,木材が5000個,石材が1万個で……。しかも今回は,競売所での材料購入は禁止というポリシーを設けていたんです。仮にこれを許してしまうと,いかにお金を集めるかに終始しちゃって面白みがないですから。
野田氏:
え,あの材料,全部自力で集めたんですか。
もるちゃん:
はい(笑)。でも,設計図や材料集めよりも何倍も苦労したのが,家を建てるための“土地”の確保だったんです。
野田氏:
相当でかいですよね。カボチャ農園の9面弱くらいだから。
もるちゃん:
ええ。あれほどの広さの土地,サーバー内どこを探しても,ぽっかり空いているわけがないんです。
4Gamer:
そんな広い土地が都合良く空かないですよね。
もるちゃん:
そこで,ある程度の広さを確保したあと,残りの土地を近隣のプレイヤーから買収することにしました。しかし,これがとんでもなく難航したんです。
一度交渉成立したかと思いきや,譲渡する土壇場になって地主にドタキャンされたり,相場の10倍以上の価格をふっかけられたりと,リアルに泣きたくなりましたね。
野田氏:
配信を見ていた地主もいたんじゃないかな。
もるちゃん:
やっぱりそうだったのかな。結局その土地の買収は取り止めになりました。それで,別の方角の土地の買収を進めてみたものの,今度は地主に連絡しても音沙汰がなかったりと,土地の確保だけで1か月半ほど掛かりました。
4Gamer:
そうやって苦労する様子も,そのまま配信してたんですか。
もるちゃん:
ええ。材料が毎日ちょっとずつ溜まる様子を配信しながら,「石材1万個はありえないわー」とか愚痴を垂れて,視聴者に慰めてもらったりもしました。仮にもう1回,同じことをやれと言われたら躊躇するでしょうね(笑)。
4Gamer:
小さい家でやっとの自分としても,心中お察しします(笑)。ところで,貿易の話を聞いて思ったのですが,敵対勢力のプレイヤーが実況配信を見ているというのは,プレイするうえで制約になりそうですね。
もるちゃん:
プレイの様子を普通に配信すると,自分の居場所が筒抜けですからね。ですので貿易に関しては,基本的にギルドメンバーに運搬を行ってもらって,納品作業のときだけ自分に渡してもらっています。
野田氏:
デルフィナードの星はトレード不可だからね。
もるちゃん:
自分が普段どのようにして遠征隊に貢献しているかというと,実況配信を利用しての囮や,ブラフを掛けることが多いです。例えば,「今からフリーダムロード(※)に行くから,かかって来いや!」と配信で煽ると,それを見た視聴者の敵対プレイヤーが,大勢襲い掛かってくるわけです。でも実はその陰で,ギルドメンバーの別働隊が大船団を組んで大陸間貿易を行っていたりします。
※東/西の2大陸と,北の旧大陸のちょうど中ほどにある小島。貿易の目的地点になるため,敵対国と遭遇することが多い
4Gamer:
情報が筒抜けであることを逆手に取って,陽動するわけですね。
もるちゃん:
あとは,船での貿易が終わったあとに「じゃあ家に帰るか〜」と配信しながら,船に乗ってカメラ視点をずっと真下の甲板に向けているんです。視聴者には元の大陸に戻ってるんだなと思わせていて,実はそれがブラフで,実際にはフリーダムロードに向かっているわけです。不意を突かれた敵対プレイヤーと,そこで大規模PvPが勃発といったこともありました。
4Gamer:
実況配信ならではのプレイを満喫されてますね。
視聴者とつながれたからこその3か月間
11月7日〜8日の24時間配信にも注目
4Gamer:
改めてお聞きしたいのですが,オンラインゲームの実況配信の魅力は,どのあたりにあるのでしょうか。
一番の魅力は,視聴者とダイレクトで,しかも双方向でのコミュニケーションが行えることですね。とくにArcheAgeのような,自由度の高いオンラインゲームとの相性は抜群です。ただ,実況配信では視聴者と密接に結びつきやすいのと同時に,揉めごとも起こりやすく,これへの対応が難しくもあります。
4Gamer:
匿名掲示板ほどではないですが,実況配信も荒れやすいですよね。何か心がけていることはありますか。
もるちゃん:
言われたことすべてを真に受けず,流すところは流して,決して口論には発展させないことでしょうか。
自分は一般的な視聴者と比べると,年齢が高めだと思うのですが,そこで歳相応の偉そうな態度を取ってしまうと「なんだコイツ」と思われてしまいます。多少変なことを言われても,適度に流す,ある意味ピエロになることも必要だと思います。
4Gamer:
対応を一歩間違えたら,炎上しかねないですよね。
もるちゃん:
さすがに暴言の類はBANしますが。でも,ただでさえネット上では言葉が荒くなってしまいがちですし,オトナの対応を心がけています。
4Gamer:
一般のプレイヤーに実況配信を行ってもらって,しかもそれをオフィシャルな契約を結んで長期間にわたって行うのは,相当大変だと思うのですが。そのあたり,野田さんから見てどう思われますか?
野田氏:
まったくその通りですね。インタビューの冒頭で“3か月間無事に進んでほっと胸を撫でおろしています”と言いましたが,心の底からそう思います。もるちゃんのような実況配信のスペシャリストは,オンラインゲームの運営会社にとって,今後求められる人材になるでしょうね。
4Gamer:
となると今後ローンチする別のタイトルでも,“移住計画”を行う可能性はあるのでしょうか。
野田氏:
今回の移住計画は,やはりArcheAgeの自由度だからこそ実現できた部分があります。ほかのオンラインゲームで同じ形というのは難しいかもしれませんが,実況配信をオフィシャルな形で上手に取り込んでいくためのアプローチは続けていくでしょうね。
4Gamer:
では今回の移住計画は,ゲームオンにとって期待どおりの成果が得られた,ということでしょうか。
そうなります。クラーケンの討伐の際は,実況配信の視聴者数が1万人を越えましたし,プロモーションとしても十分な効果がありました。
4Gamer:
もるちゃんは移住計画の終了後は,どうされるのですか?
もるちゃん:
とりあえず,普通のプレイヤーに戻ります(笑)。「Alliance of Valiant Arms」の実況配信がご無沙汰なので,そっちもやりたいですし。もちろん,ArcheAgeのプレイや実況配信も続けますが,さすがに今までのペースというわけにはいかないですね。
野田氏:
個人的には,ArcheAgeの公式配信のときにゲストとして招きたいですね。
4Gamer:
それでは,移住計画は11月8日を持って契約満了を迎えますが,ラストスパートに向けての意気込みをお願いします。
もるちゃん:
まずは,視聴者やコメントをくださった方々に,「ありがとう」と言いたいです。これだけの長時間,実況配信をし続けても苦痛に感じたことは一度もないのですが,それは視聴者とオンライン上でつながっているのが実感できたからです。仮に,ゲームプレイだけを毎日8時間行っていたら,途中で挫折していたでしょう。
ですので,残りの期間もこれまでどおり視聴者と一緒に和気あいあいと楽しくプレイしたいです。11月7日から8日の最終日にかけて,「24時間生放送」を行いますので,ぜひ見てください。
野田氏:
“もるちゃん”の配信で,ArcheAgeそのものや運営チームのスタッフのことも,多少なりとも身近に感じてもらえたと思います。もるちゃんが卒業したあと,この良い流れを継続していくため,頑張っていきたいです。
4Gamer:
最終日の24時間生放送,期待しています。本日はありがとうございました。
「ArcheAge」“移住計画”の最終回として24時間生放送を11月7日に配信
「ArcheAge」公式サイト
- 関連タイトル:
ArcheAge
- この記事のURL:
キーワード
Copyright © XLGAMES Inc. ArcheAge ® is a registered trademark of XLGAMES Inc.
GOP is a registered trademark of GOP Co., Ltd. All rights reserved.