インタビュー
売れる売れないではなく仮想世界が作りたかった――「ArcheAge」の開発者Jake氏が考えるMMORPGや日本サービスに関して聞いてみた
日本独自仕様という名の「改悪」はしません!
各国のローカライズは専門チームが担当
4Gamer:
とは言え,そういう理由があっても,認めてくれる人がいないと制作費が出てこないですよね。それもすごいと思えます。
そうですね。当時も今も,韓国ではLineageが商業的にうまくいっているので,そういったゲームの市場が健在であるという見込みがありましたし,私がLineageを作ったということがあるので,皆さんが信じて投資してくれたのだと思います。
4Gamer:
ちなみに,ゲームオンさんと最初に契約したのはいつなんですか。
Jake氏:
たしか2009年です(関連記事)。
野田氏:
もうずいぶん前になりますね(笑)。
Jake氏:
そのときはちょっとしたプロトタイプはありましたが,本当に開発の初期段階でして,ゲームオンはXLGAMESを信じて契約してくれたという感じだったんでしょう。
4Gamer:
それから韓国での正式サービスまで実におよそ3年半ほどだったわけですが,(ゲームオンから)せっつかれませんでした?
Jake氏:
そういうのはまったくなくて(苦笑する野田氏を見ながら),ずっと待っていただけました。
4Gamer:
僕だったらきっと胃がキリキリしてますよ(笑)。ところでゲームオンさんは,ArcheAgeが,こんなにガチガチのコアゲームだと知っていて契約したんですか?
野田氏:
もちろん知っていました,と言いたいところですが,ええと,なんというか「ブレそう」になったことはあります。
4Gamer:
というと?
現場レベルでは,3〜4年くらい前から日本側でもCBTに参加させていただいてました。当時,TERAなどの噂が出てきたころで,XLGAMESさんに戦闘をもっと派手にしてくれとか,1匹あたりの戦闘時間をもっと短くしてくれとお願いしていたんです。まぁ言うならば,僕達も時代に流されそうになっていたんですね。ですが,まったく変えてくれないんですよ(笑)。
4Gamer:
Jakeさんは考えを一切曲げなかった,と書いておきます(笑)。
Jake氏:
そんなわけではないんですが(笑)。CBT1〜2次のときは,派手さやスタイルではなく,打撃感で問題がありました。そのときにプレイヤーからいろいろな意見をもらって,のちにCBTを重ねて私達なりに,ちゃんと面白く修正したつもりです。たしかにBlade&Soulだったり,アラド戦記みたいな派手さはないですが,決して戦闘が単調ということはなく,ArcheAgeなりの面白さはあると思っています。
4Gamer:
ほかの作品とただ特徴を合わせていたのでは,ArcheAgeの魅力が薄れてしまうかもしれませんね。
Jake氏:
そうですね。ArcheAgeの戦闘は,戦略を練ってやらないとダメというのがあります。1対1のPvPに関しても,掲示板では「こうやったら勝てる」「こう反撃すれば勝てる」といったやり取りが続いていて,改善されたところを楽しんでもらえているのかなと思っています。
4Gamer:
PvP関連で言うと,日本の読者の多くが気になっているのは,いわゆるPK行為だと思います。本作ではどのようなルールになっているのでしょうか。
Jake氏:
最初に本作における勢力の関係を説明しておくと,東大陸の勢力と西大陸の勢力が対立しています。対立した勢力同士であればペナルティなしでPK(PvP)ができます。
4Gamer:
いわゆる戦争状態になっているわけですね。
Jake氏:
ただ,中立状態という言い方をしていますが,初期レベルの段階ではPKができなくなっています。そして一定のレベル以上になると,対人戦が可能になります。また,ショートカット(Ctrl+F)で状態を切り替えれば,同じ勢力のキャラクターもPKができます。ただ,それは犯罪になってしまいますが。
4Gamer:
「ホンモノのPK」というわけですね。
Jake氏:
そして同じ勢力のプレイヤーをPKすると,血痕というアイテムができるようになっていて,それをもって犯罪として申告できます。申告されると,PKしたプレイヤーにはPKポイントが貯まっていきます。一定数が溜まると裁判に呼ばれて,裁かれることになります。
そのとき陪審員として5人のプレイヤーが参加できるのですが,PKに至った事情を話した上で,例えばPKされた相手が怒らせても仕方がないような理由があれば,無罪になるかもしれません。あまりに悪質だと思われると,決められたペナルティよりも重いペナルティが課せられます。
4Gamer:
プレイヤーが直接裁くんですね。陪審員になるプレイヤーは匿名での参加になるんですか。
Jake氏:
いえ,匿名というわけではありません。
4Gamer:
プレイヤーがプレイヤーを裁くとなると,いろいろ大変だと思うんですよ。例えば,日本ではここが変わる可能性はありますか?
野田氏:
今のところありません。この特徴的な裁判の仕組みもArcheAgeの大きな楽しさの一つですから。システム的に一方的な私怨や逆恨みで,裁判へ招集されることはありませんので,そこはご安心ください。あくまでゲーム内で犯罪行為を繰り返すプレイヤー(キャラクター)が裁判の対象であり,陪審員のプレイヤーは,堂々と断罪していただく,といった方向で検討しています。
4Gamer:
なるほど。ペナルティの有り無しは置いておいて,PKプレイすらしっかりできるということは分かりました。
はい。基本的な考え方としては,PKはないよりも,あったほうが面白いゲームになるだろうと思います。ただし,それは一定の適正なコントロールができる範囲内であればの話ですが。
4Gamer:
そうですね。……ところで,PKに関して日本側はどうお考えですか。
野田氏:
まさにそこは協議中です。韓国のプレイヤーと日本のプレイヤーとでは意識が違うと思いますし,日本のプレイヤーの中にもPKが好きという人と,不快に思う人がいます。あくまで例えですが,時間や場所だったり,ルールの中でのPK/PvPはOKだけど,どこでもかしこでも無差別にPKができるというのは,やりたくないとは思っています。
4Gamer:
PKの仕様に関しては,日本独自仕様になる可能性があるわけですか。
野田氏:
先ほど僕が3〜4年前のテストプレイで,お願いが時代の流れでブレそうになったと話しましたが,4次CBT,5次CBTとやっていくなかで,キャラクターの成長や装備の強化,スキルの放つスピード,モンスターを狩る速さ,対人など,どれもすごく絶妙だと分かったんです。
ゲームオンとしては,その絶妙感を日本独自仕様という名で改悪したくないと思っています。PKに関しても,日本独自仕様ということで,大幅に仕様を変えるのではなく,韓国バージョンの良さを活かしつつ,日本のプレイヤーに評価されるものを一緒に考えたいと思っています。
4Gamer:
とくにPK問題は,なかなか難しいと思います。(UOの)トラメルとフェルッカの例があるように,単純に分けてしまうだけだと,人口の過密と過疎が極端な方向に振れる可能性もありますし,サーバーの移動ができないならなおさらです。
しかしJakeさん側では,日本独自仕様というものの存在自体は念頭に置いてるんですか?
Jake氏:
基本的にその国の市場やユーザー動向は,その国のパブリッシャが一番よく分かっていると思います。ですので,パブリッシャの要請だったり,各国の市場に合わせて,やっていくべきだと思っています。
4Gamer:
ということは,国ごとにいろいろなバージョンができていく?
Jake氏:
いえ,クライアントのバージョンをいくつも増やすのではなくて,サーバー側のスイッチのオン/オフで対応すると思います。
4Gamer:
なるほど,それならクライアントの差異は最小限で済みますね。ちなみに日本としては,独自仕様に関してPK以外に考えていることはありますか。
野田氏:
月並みかもしれませんが,アバターとかでしょうか。ArcheAgeの良さであるグライダーや騎乗ペットなどの,色であったり,形であったりですね。
4Gamer:
サービス形態としてはどうでしょうか。韓国では月額課金制ですよね。
野田氏:
うかつに答えられない質問ですね(笑)。「協議中です」とだけお伝えさせてください。
4Gamer:
分かりました。後日の発表をお待ちしていますね。
Jake氏:
ちなみにXLGAMESには,海外の事業チームの中にローカライジングの開発部門が入っていて,例えば日本独特の花見イベントをしたいというのであれば,メインプログラムチームではなく,そういう部門で対策できるんですよ。
4Gamer:
そういったサポートチームがあるのなら期待できそうですね。ご存じだと思いますが海外のMMORPGは,日本の独自仕様を作るという話があっても,実際には,そんなに独自なものは作れなかったりしますから。
Jake氏:
私は子供のころから日本のゲームをプレイしていましたが,そのゲームの先頭を走る国,つまり日本で成功させたいという夢があるんです。そのためにも,いろいろなサポートをより多くしないといけないと思っています。要は私の個人的な夢なんですが(笑)。
4Gamer:
夢とまで言われると,ゲームオンの責任は重大ですね!
先ほど「胃がキリキリしますよ」と言われましたが,僕も待っている間は平気だったんですが,今年に入ってキリキリし出しています(笑)。
4Gamer:
それは作品の大きさや期待感から見て,さもありなんというやつですね。
Jake氏:
ヨロシクオネガイシマス(と,野田氏に一礼)。
4Gamer:
XLGAMESとゲームオンの良好な関係について,よく理解できました(笑)。これほどコアな,いまの時代にサービスインするには難度の高いゲームですが,大丈夫そうだという安心が生まれた感じがします。
では最後に,多くの読者が気になっていると思う日本でのスケジュールですが……。
野田氏:
すいません,まだハッキリとは言えないのですが,ゴールデンウィークあたりに,何かある……かもしれません(笑)。
4Gamer:
十分具体的な気もしますが,何があるのか,いまから楽しみにしておきます。最後にJakeさんから,それなりにコアプレイヤーが多い4Gamerの読者に向けてお伝えしたいことはありますか。
Jake氏:
私なりに正統派MMORPGというものを,きちんと作り上げていきたいと思って努力してきました。ただ,不備だったり,不満のあるところも多々あると思います。ですが,MMORPGは1回リリースして終わりではなく,今後アップデートなどで発展していくものです。ですので,よろしくお願いします。
4Gamer:
……Lineageを作った人とは思えない,すごく謙虚な表現ですね。
Jake氏:
日本にはそれ以上の作品を作っている,神のような方々がいますから(笑)。
4Gamer:
日本での展開に期待しています。本日は,ありがとうございました。
MMORPG「ArcheAge」の韓国サーバーに潜入。MMORPG黎明期を知るプレイヤーの心を引くものとは
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