インタビュー
Mad Catz製アケコン&ゲームパッドの「ストリートファイターV」モデル4製品の使い勝手は? 「ストV」への意気込みと合わせてときど&マゴ選手に聞いてみた
格闘ゲーム用の製品については,これまでプロユース志向を貫いてきたMad Catzだが,今回のラインナップでは廉価モデルが用意されているのが特徴だ。それらを含めた使用感を,Team Mad Catzに所属するプロゲーマー,マゴ選手とときど選手に聞いてきたので,その模様をお届けしたい。
なお,記事の後半ではプロゲーマーから見た「ストV」への所感についても聞いている。こちらもお見逃しなく。
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「ストリートファイターV」公式サイト
Street Fighter V Arcade FightStick Tournament Edition 2+
Street Fighter V Arcade FightStick Tournament Edition 2+(以下,TE2+)は,名前からも分かるとおり,「Ultra Street Fighter IV Arcade FightStick Tournament Edition 2」(以下,TE2)のバージョンアップモデルであり,Mad Catz製品としては,現時点での最上位モデルに位置づけられる製品だ。天面の開閉機構によるカスタマイズやメンテナンスの容易さはそのままに,コントロールパネル部にタッチパッドと[L3][R3]ボタン,LEDライトバーが追加されている。そのほか,天板のクリアパネルの厚みが増したことにより,ベゼルとの段差が解消されるなど,細かい改善が施されているのがポイントと言える。
その半面,少々……というか,3万円弱というかなり高めの価格設定が玉に瑕だが,ストVを始め,最近の格闘ゲームではトレーニングモードのポジションリセットにタッチパッドの押し込み操作を採用するタイトルが多いので,長く使い続けることを考えれば,PS4用のアーケードスティックをこれから購入しようという人にとっては,間違いのない選択肢にはなるだろう。
マゴ選手のコメント
贅沢を言えば,コードの収納がもう少しやりやすくなれば,もっと便利だと思う。コードを取り外せるところや,そのロック機構がしっかりしているのはいいんだけど,外して収納しようとすると面倒なんで。掃除機のコードみたいに,ボタンを押したらシュルシュルっと収納できたら最高かもしれない! ……とまあ,無理矢理ケチを付けることはできるけど,普通に使う分にはベストなアケコンだと思うね。
ときど選手のコメント
※コパン辻式……ストリートファイターIVシリーズなどで用いられる特殊な入力方法。弱パンチ(コパン)と[SELECT(BACK)]ボタンなどを1フレーム(約16ms)ずらして押すことで,弱パンチを使ったコンボの入力難度を大幅に下げるテクニック。
Street Fighter V Arcade FightStick Tournament Edition S+
PlayStation 3およびXbox 360用アケコンの名機「ARCADE FIGHTSTICK TE S」の現世代機対応版が,このStreet Fighter V Arcade FightStick Tournament Edition S+(以下,TES+)だ。TE2+と同様,[L3][R3]ボタン,タッチパッド,LEDライトバーが追加されているほか,「Tekken Tag Tournament 2 Arcade FightStick Tournament Edition S+」と同じく,筐体底面に滑り止めシートが追加されたのが,大きな変更点となる。
TES+と比較すると,天面の開閉機構が省かれているため,カスタマイズ性には欠けるが,その分価格は若干控えめとなっている。
マゴ選手のコメント
ときど選手のコメント
Street Fighter V Arcade FightStick Alpha
Street Fighter V Arcade FightStick Alpha(以下,FSα)は,Mad Catzファンにとっては待望といって過言ではない,軽量廉価志向のアケコンとなる。ポイントは,標準価格で1万円を切る値段でありながら,上位モデルと同じ35φのレバーと30φのボタンを搭載していることで,そのため天面に腕を置いてみても,レバーやボタンの配置に違和感を抱くことはないだろう。
ただし,いわゆる現在のアーケード筐体のディファクトスタンダードといえるVEWLIXレイアウトとは微妙に異なっており,またレバーやボタンも,三和電子製ではなくオリジナルのものが用いられている。とくにレバーのポール部は三和電子製より若干長いため,アーケードの操作感に慣れている人は,斜め方向への入力時に大きな違和感を覚えてしまうはずだ。ボタンは若干固めで,タッチパッドと[L3][R3]の各機能が搭載されていないことも留意しておきたい。
マゴ選手のコメント
ときど選手のコメント
Street Fighter V FightPad PRO
「Street Fighter V FightPad PRO」(以下,FPPRO)は,「Street Fighter X Tekken FightPad S.D.」から約3年ぶりとなる,Mad Catz製“格闘ゲーム向けゲームパッド”の最新モデルだ。
かつてのサターンパッドを彷彿させる6ボタン式の仕様はそのままに,方向キーには,斜め方向への入力時にも確かなクリック感が得られるという「ファイティング D-Pad」を採用。筆者も少し操作してみたが,その謳い文句に偽りはないようだ。
一方,グリップは左側が延びた形になっているのが特徴で,かつ本体右側の底面部分にくぼみがあるために,“右手親指以外の指でボタンを操作するスタイル”でもプレイしやすいのがありがたい。
マゴ選手のコメント
あと,これは見慣れてないからかもしれないけど,SnakeEyezが常にゲームパッドをポケットに入れてて,試合が始まる前,それこそ銃を取り出すみたいに出してくるのが超カッコ良くて。あれ,羨ましいんだよね(笑)。
ときど選手のコメント
あと,ゲームパッドは周辺機器メーカーが自身の美学で正解を提案できるデバイスだと思うんです。アケコンの形はもう変えられないでしょうけど,ゲームパッドなら,例えば左右を分離したっていいかもしれないわけで,可能性を感じるんですよ。
“お勉強勢”は苦しい戦いになる?――発売迫る「ストリートファイターV」について,マゴ選手とときど選手に聞いてみた
Mad CatzのストVタイアップ製品4機種について,プロゲーマーに話を聞いてみた今回の記事だが,格闘ゲーマーとしては彼らプロゲーマーがストVをどう見ているのかも気になるところだろう。その辺りについても,話を聞いてみたのでお届けしよう。
4Gamer:
いよいよ発売となるシリーズ最新作,ストVについてお聞かせください。お二人とも,クローズドβテストはプレイされたと思いますが,現時点での感想はいかがです?
ストIVシリーズもシンプルさが売りでしたが,さらにシンプルという印象です。ストIVシリーズでは目押しコンボやセットプレイといった,細かいフレーム知識やそこから生まれる攻防が重要でしたけど,ストVはその辺りが大分緩和されていていて,「すべてのプレイヤーを平等にしよう」という意思が感じられます。
ときど選手:
僕は第3回目のクローズドβテストも3日間みっちりやりましたし,そのあとアメリカで行われたMad Catz V Cupにも参加してきたんですが……ええと,良いニュースと悪いニュース,どっちから聞きたいですか?
4Gamer:
じゃあ,良いニュースから(笑)。
ときど選手:
ストVは,マゴが今言ったように,いちいちフレームを覚えたりとかコンボを練習したりといった“お勉強”をしなくても,読み合いだけで勝てるゲームだと思うんですよ。それってつまり,新規層に優しい作りということなんですけど。で,これは個人的な印象ですが,北米にはそうしたお勉強は嫌いだけど,勝負勘はものすごく良いプレイヤーが多い。だから,ストVは北米ではすごく受け入れられていて,大きな盛り上がりを感じました。これが良いニュースです。
4Gamer:
ああ,お勉強の部分は,Capcom USAのCombofield氏が近いことを言っていました(関連記事)。
マゴ選手:
まだ発売されていない,やり込んでもいないゲームなので,俺としては評価を下すのはまだ早いと思ってるけど,ときどが今言った点は,「やり込んでも差が出ないんじゃないか?」という気がして,ちょっと不安に感じてるんだよね。
4Gamer:
そこは恐らく,日本のコアプレイヤー達が一番気にしているところですね。
で,ここから悪いニュースなんですけど,これまでの僕自身は,勝負勘ではなく知識量で勝ってきたプレイヤーなわけです。だから,ストVではものすごく苦労しそうだなと(笑)。実際Mad Catz V Cupでは,僕はLPNというプレイヤーに負けたんですけど,彼はエキシビショントーナメントとオープントーナメントの両方で優勝しているんですよね。どうやらリアルで柔道をやっているらしいんですが,それを聞いて思いだしたのが,日本のジョビンというプレイヤーと対戦したときのことなんです。
4Gamer:
闘神激突に合わせて放送された,ウメハラチャンネルで,ウメハラさんと共演されていたプレイヤーですね。彼もまた総合格闘技をやっていて,チャンピオンになったこともあるとか。
ときど選手:
そう。例えばジョビンとウルIVで対戦すると,知識の差で僕が勝つんです。でも,勝負勘はものすごくて,各々の局面だけを見たら,僕は3:7くらいで負けているんですよ。それが格闘技を経験しているせいなのかどうかは分らないけれど,もしかするとストVはそういう勝負勘のほうが大きく影響するタイトルなのかもしれない。
4Gamer:
ああ,なるほど。だとしたら,確かに日本のお勉強勢にとっては,苦しい戦いになるかもしれないですね。ちなみにときどさん自身は,使用キャラクターはもう決めたんでしょうか。Mad Catz V Cupではナッシュをプレイしていましたけど。
ときど選手:
うーん,多分ナッシュは使わないと思います。今の自分にとって,ナッシュは新しいチャレンジを運んできてくれるキャラクターではなそうなので。例えば,ストIVシリーズの後期は,僕は豪鬼というキャラクターにこだわってプレイしていたわけですが,これまでの“勝つためならキャラクター変更を前提にすべきだ”という方針を捨て去ることで,新しい可能性を探してみたいと思ったからです。
4Gamer:
豪鬼にこだわることが,プロゲーマーときどにとってのチャレンジだった?
ときど選手:
これは,「THE KING OF FIGHTERS XIII」(PC / PS3 / Xbox 360 / AC)(以下,KOF XIII)をやっていたとき,チリの強豪・Misterioのプレイに衝撃を受けたことも一つのきっかけなんです。KOF XIIIはキャラクターを変えるのが簡単ということもあって,誰もが強キャラのMr.カラテや炎を取り戻した庵を使っていたんですが,Misterioはキングやユリといった決して強くはないキャラクターで,ものすごく難しいことを実践しながら五分以上の戦いを繰り広げていたんですよね。その凄さは見た目にもわかりやすかったですし,「こうあるべきだよな」と反省させられたんです。
4Gamer:
見ている人をもっと感動させられるようなプレイスタイルであるべきだと。
ときど選手:
ええ。ウルIVでは残念ながら結果はふるいませんでしたが,新しいことに取り組む楽しさと手応えは感じることができた。だから,ストVではもっと勝負勘を養えるとか,今後のスキルアップにつながるようなキャラクターを選びたいですね。
4Gamer:
なるほど。マゴさんはいかがですか?
マゴ選手:
俺は,とりあえずかりんでプレイしてますけど,まだそれほど対戦できているわけじゃないんですよね。だから,ゲームそのものへの評価も含めて,まだどうなるか分らないと思ってます。そもそも,ストIVだって稼働当初はただ単に勝てるからプレイしていただけで,ゲーム自体の評価はいまいちでしたから。それこそ,「今更これかよ?」くらいのことを言ってましたからね(笑)。
ときど選手:
結果的には,ものすごいスルメゲーだったよね。最初はなかなか硬くて噛めなかったけど。
マゴ選手:
そうそう。何度もバージョンアップがあって,かつ開発側が意図していない戦い方やテクニックが見つかったことで,どんどん面白くなってきたわけじゃないですか。だから,今はストVにそこはかとない不安がありますけど,それ以上に期待している,というのが偽らざる気持ちです。
4Gamer:
ではもう一つ,Evolution 2016(以下,EVO2016)のメイン競技種目が発表されました(関連記事)。ストVがメイン競技種目となった半面,ウルIVは種目から外れた形ですが,これはどう思いますか。
マゴ選手:
EVOというみんなの目標になるイベントが,あえて旧作を外すことで,プレイヤーたちの移行を促してくれるのは,素直に嬉しいですね。というのも,家庭用の「スーパーストリートファイターIV」(以下,スパIV)がアーケードに先行して出たとき,新しもの好きのプレイヤーはそっちに移行したけど,アーケードの猛者たちはそのまま旧作を遊び続けるってことが起こって。それで結果としてコミュニティが分散してしまったんだよね。
4Gamer:
格闘ゲームでは,これまでにも繰り返されてきた光景ではありますが,それがより顕著だった?
マゴ選手:
そう。いちプレイヤーとしてはアーケードの猛者たちとももっと対戦したかったし,大会でも戦いたかったんだけど,それがなかなか叶わなくて。すごくもったいない状況だったんだ。もちろん,今回とは状況が違うけど,ああいう経験はもうしたくないし,コミュニティをまとめる取り組みをしてくれるのはありがたいですよ。
ときど選手:
これまでの僕らは,ただ純粋にゲームを楽しんできたわけだけど,格闘ゲームの歴史って,決して右肩上がりではなかったじゃないですか。「ストリートファイターII」というビッグバンから生まれたコミュニティめがけ,各メーカーさんが僕らを飽きさせないように次々と新作を提供してくれて。でも,その結果としてコミュニティは何度も分裂し,先細ることになった。ストIVでは様々な要因が重なって,再び大きなコミュニティが生まれ,プロゲーマーも誕生したわけだけど,言ってしまえばそれも偶然の産物ですよね。
4Gamer:
今後も同じように続いていく保証はないと。
ときど選手:
だから,格闘ゲームの暗い時代も乗り越えてきたEVOっていう団体がそうした選択をしたというのは,ひとつ大きなことだと思うんです。もちろんその選択に対して,プレイヤーがどう応えていくかは各々違うと思いますが,少なくとも僕らプロゲーマーは,コミュニティの拡大や維持をしっかりと考えていくべきだなと。
4Gamer:
なるほど。では,お二人はもうウルIVに未練はないですか?
マゴ選手:
うーん,ウルIVという完成されたゲームを遊ぶ機会がなくなるのは,やっぱり切なさを感じるかな。でもそれ以上に,新しいゲームを遊びたい気持ちが強いです。その方が,見たこともない強いプレイヤーに出会えるかもしれないし,プレイヤーとしても新たな発見がありそうじゃないですか。
4Gamer:
ときどさんは?
ときど選手:
ただ好きなゲームを遊び続けてもいいなら,僕はきっと今でもKOF XIIIをやり続けていたと思います。あの当時はもっと人を増やしたい想いがあったんだけど,それには失敗してしまった。最近ではずいぶんプレイヤーも減ってきてしまっていますし,そうした環境の中で,純粋に楽しいという理由だけでプレイし続けるのでは,プロゲーマーとして何も生み出せない。ただの趣味になってしまうから。
4Gamer:
プロゲーマーとして,プレイヤーが多いゲームに取り組むのが重要だというわけですね。
マゴ選手:
ただ,ストVにはゲーム内容で勝負して欲しいという気持ちはあります。ゲームが面白いことでプレイヤーが増えていくなら,やり込み続ける理由になりますし,そうでないなら無理にプレイし続ける必要はないんじゃないかって。それは今年1年を通じたCapcom Pro Tourで明らかになるでしょうから,「最初はとにかくやってみようよ」と言いたいんですよ。
4Gamer:
分りました。では最後に,皆さんを応援するファンに向けて,お二方からメッセージをお願いできますか。
マゴ選手&ときど選手:
ぜひ一緒にストVを楽しんで,やり込んでいきましょう!
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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