連載
【ミートたけし】「ヒト」が悪いのか? 「モノ」が悪いのか?
ミートたけし / 川村 竜 / ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー
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第13回:「ヒト」が悪いのか? 「モノ」が悪いのか?
さぁ,先月掲載分で無事連載開始から1周年を迎え,心機一転,今回からは無理やりゲームに絡めようとせず,最近思っていることを包み隠さず書いていこうと思う。
最近考える機会が多いのは,今回のタイトルのとおり「ヒトが悪いのか,モノが悪いのか」ということ。この場合のモノは文字どおり道具であったり,サービスであったりとさまざま。
例えば,僕もよく使う電動キックボードもよくこの議題において取り扱われがちだ。2023年7月に電動キックボードなどに関する改正道路交通法が施行され,16歳以上であれば運転免許がなくても一定の基準を満たす電動キックボードを運転できるようになった。以来,全国各地で電動キックボードの利用者を見かけるようになったが,それと同時に増えたとされている電動キックボードの事故件数も問題になっている。
警察庁の発表によると電動キックボードでの道路交通法違反検挙数は2023年7月には400件程度だったものが,2024年5月には3000件を超えたらしい。そして事故件数は1年間で200件以上,負傷者も200人を超えているそうだ。ちなみに,幸いなことに死者はゼロとのこと。この数字だけを見ると,なるほど電動キックボード反対派,根絶派の気持ちは分からなくはない。
なんて言うとでも?
今度は自転車に目を向けてみようと思う! こちらも警察庁の発表だが,自転車での交通事故件数は2023年に7万2000件以上。なんでも,2021年以降,死亡・重傷事故も増えている。
電動キックボード反対派はなぜ自転車に反対しないのか? それはきっと,こういう人達は「モノ」のせいにしているからだ。
このデータを引き合いに出して,「だから電動キックボードは悪くないんだ!」なんてことを言いたいわけじゃない。要するに俺が言いたいのは,交通違反や危険運転をするヤツは電動キックボードだろうが自転車だろうが自動車だろうが,関係なくやる! ってこと。つまり「モノ」ではなく「ヒト」が悪いという意見だ。
そして自転車で信号無視を繰り返し,歩道を爆走するような「ヒト」であっても,ニュースで電動キックボードによる事故の特集などを見て,「ホント,危ないわよねぇ」なんて言いながら「モノ」を批判するのだろう。なぜおばちゃん口調なのか? っていうのは,イメージの元が俺の母親だから。
あまり自分の家族の話をこういう例で出したくないが,うちの母親は一時期,生死をさまようような大病を患ったにも関わらず,現在は全快していまも元気に車の運転をしている。そんな母親だが,他者が車線変更で前に入ろうとすると激昂する。「なんなんだこいつ!」などと文句を言いながら渋々譲っている。しかし自分が車線変更しようとしてなかなか入れてもらえないときも激昂する。「なんなんだこいつ!」などと文句を言いながら車線変更をする。この手のタイプの「ヒト」が世の中には少なからずいて,この手のタイプの「ヒト」が「モノ」のせいにして文句を言っているんじゃなかろうか。
つまりこうした事故の原因が「モノ」を使う側の「ヒト」の問題だということをしっかりと理解して解決策を考えない限り,世の中の諸問題は改善しない。
嵐の二宮くんが電動キックボードの会社のアンバサダーに就任したことだけで,「ファン離れ」を見出しにした偏向的な報道がされた。そしてそれに対して同意するような書き込みを見ていると,世の中が良くなっていくようには思えなくてとても悲しい。
しかしこうした状況は悪いことばかりではなく,自分が電動キックボードを利用するときには,それまでよりもずっと気を付けて運転するようになった。やはり自分も聖人君子ではないので今まで歩き,自転車関係なく,信号無視をしたことがないのか!? と問われれば,おそらくものすごい回数の信号無視をしてきたはずだ。夜中の車も人も通らない感知式の信号を,赤になるまで延々と待つなんて耐えられない! と言わんばかりに渡ったこともある。いくらでも謝ろう。どうもすみません!
ただそんな俺でも今は,とくに電動キックボードに乗っているときは,どんな些細な交通違反もしないように気を配っているし,例え小さな路地の赤信号で車や人がいなかったとしても信号が青になるまで待つ。当たり前のことだ。だがこの当たり前のことに気を付けられるようになれたのは,いつどこで誰がスマホで撮影しているか分からない時代になっ……いや違う。電動キックボードをきっかけに,軽車両の交通マナーに対して目を向けるようになったからだ。
一部の「ヒト」が作り上げてしまうイメージ
長々と書いてきたが今回のテーマで俺が最も危惧しているのは,一部の「ヒト」が作るイメージで全体のイメージが決まってしまうことだ。
先ほどから書いている電動キックボードに関しても,交通ルールを無視して事故を起こすような人間が運転していたというイメージではなく,電動キックボードを運転したから交通ルールを無視して事故を起こすのだという偏見になってしまうのが恐ろしいのだ。
かくいう俺でさえ,先日,京都でのコンサートのときに上記のような偏見を抱きかけてしまう出来事があった。京都でも歴史ある舞妓さんのお稽古場を使ったコンサートの,本番前日リハーサルでのこと。
俺は石田純一さんのように1年中靴下を履かない,いわゆる素足派なのだが,その建物の中は基本,土足素足禁止でスリッパを履くことが義務付けられている。当然,用意されたスリッパで移動をした。問題はステージだ。舞台ではスリッパを脱がなければいけないらしく,ではどうするか,というと靴下の着用が義務付けられていた。
詰んだ。
詰んだがどうしようもないので素足のままリハーサルを行なっていた。正確に言うと,その瞬間が訪れるまで素足がダメなことを知らなかった。リハーサルが終わると建物の支配人がこう話しかけてきた。
「ウチは素足禁止なんですわ。舞台では靴下を履いてもらえますか?」
これをできる限りイヤミでクネクネした感じで脳内再生してほしい。この一言目ですでにイヤな空気にはなっているのだが,俺も大人だ。「そうだったんですね。初耳でした」と返すと,「○○さんにはそう伝えてあります」と支配人。さらに「そうなんですね。何も聞いてませんが」と返すと,「ですから○○さんにはそう伝えてあります」と支配人。
どうしよう。キレそう。だけど俺も大人だ。大人だが大人だってムカつくものはムカつく。「じゃあもうステージには立てませんね」と返すと,「そういうことにならはりますなぁ」と支配人。キレたね。ひっさしぶりにキレたね。「じゃあ帰るんで○○さんにはそちらからお伝えください」と言ったところで飛んでくる○○さん。「どうなさったんですか!?」とうろたえる○○さんに支配人は,「いやぁ,足の裏をケガされた困る思うて靴下をすすめたんですわ」と。
キーレたね。ほんっとうにキレたね。てめぇ嘘ついてんじゃねぇよ! さっき「そういうことにならはりほろひれはれ」とか言ってただろうが!? でもな! 俺が一番ムカついたのは,その後大急ぎで主催が靴下を買ってきてくれて,主催の顔を潰さないためにもグッと堪えて靴下を履いた俺の足の裏に舞台の板材のささくれがブッ刺さったことに一番ムカついてんだよ!!!! 靴下履いてもケガするんじゃねえかああ!!!!
閑話休題
取り乱しました。失礼しました。言いたいのはムカついたって話ではなくその後のこと。俺はこう思ってしまったのである。「だから京都のヤツは嫌いなんだよ!」と。これはとんでもない大間違いである。「京都のヤツ」が嫌いなのではなく「あの支配人」が嫌いなの。いけないいけない。本当にいけない。
今まで偉そうなことを書いてきた俺でも,こう思ってしまう瞬間がある。つまりこれも「ヒト」が悪いだけの話なのに,「モノ」……というかこの場合は「京都」のせいにしかけたのだ。非常に反省すべき出来事だった。大切なことに気付けた。ありがとう支配人。だがぜってぇに(略)。
ゲームをやるとバカになる,は本当なのか?
さぁ今回もいよいよ大詰め。「モノ」なのか「ヒト」なのかという話をしてきたが,最後はやっぱりゲームの話にしよう。
子供の頃,我々はよく親から「ゲームばっかりやってるとバカになるよ!」「マンガばっかり読んでるとバカになるよ!」などと言われて育ってきたはず。
もし子供を持つ親御さんがこれを読んでいて,子供がゲームやマンガにばかり没頭して学校の成績が振るわないことを悩んでいるならば,ゲームやマンガなどの「モノ」のせいにする前に,まず「ヒト」としての子供に向き合ってほしい。「モノ」のせいにするのは簡単なことであると同時に,「ヒト」を軽視することにもなりかねないと思うからだ。ちゃんと向き合ったうえで,その子に合う勉強法などを一緒に考えてみてはいかがだろうか。
先ほどは悪い例で母親の話を出したが,最後に感謝を込めて伝えたい。うちの母親は俺がどれだけゲームをやっていてもマンガを読んでいても,美大受験を途中でやめて音楽の世界に進むと言ったときも,決してそれをとがめることはなかった。自分で考えて自分で決めればいいと伝え,毎晩俺を家に残して飲み歩いていた。お母さん。あなたの自由な教育方針のおかげで,自分のことは自分で考える習慣ができて,今の俺になれたんだ。本当にありがとう。
母の愛が,みんなの優しさが,世界の平和が今日も俺を守ってるってわけ!
来月もお楽しみにね! ちなみに京都は大好きだからね!
■■ミートたけし / 川村 竜(ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー)■■ ベーシストとして国内外各所でライブやコンサートで演奏活動をしつつ,配信活動も活発に行っているミートたけしこと川村 竜さん。現在は主にYouTubeチャンネル「ミートたけし-MEAT TAKESHI-」とTwitchチャンネル「ミートたけしの『太くてニューゲーム』」で,雑談配信をしたりゲーム配信をしたりと大忙しの様子です。 |
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