連載
【ミートたけし】「好きこそものの上手なれ,は真理だ」
ミートたけし / 川村 竜 / ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー
ミートたけしの「世界の平和が俺を守る!」ミートたけしYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@meatalk |
第11回:好きこそものの上手なれ,は真理だ
「プロになるうえで必要な才能はなんですか?」
普段これ系の質問をされることがかなり多い。どの分野のプロなのかによってもいろいろと変わってくるだろうし,人によって重要視する部分も違うので一概に答えは一つということにはならないと思うけれど,僕がこの質問にお答えするなら“続けられる才能”。必要な才能はこれだと思う。
もちろんこれがあっても絶対にプロになれるか,というとそうではない。このあたりの理由だったり何だったりってのはみんな分かってるよね? ってのを前提にして話しちゃうのが僕のダメなところだなぁ,というのを最近SNSを見て痛感している。
多分この手の話が100%伝わらない人達は,そもそも僕のコラムなんか読まないとは思うのだけど,念のためにもっと詳しく説明する。
基本的に知識や技術というものは研究,勉強,いわゆる努力というものを積み重ね続けてさえいれば,永久に向上し続けるものだと僕は考えている。ただその向上のスピードや成果というものが人によって大きく違うので,そこだけにフォーカスしてしまうと「やっぱ天才は違うよなぁ!」みたいな話になってしまう。違う,そうじゃない。
大事なのはちゃんと「成長は止まらない」と,自覚することだ。でもこれを読んでくださっている人の中には「嘘だ! もうずっと○○しているのにまったく成長しないぞ!」なんて思う人もいるかもしれない。これは,実際には成長しているのに,それを実感することができないというパターンがかなり多いと思う。いわゆる「サチる」って奴だ。
「サチる」を自覚する
「飽和」を意味する「saturation(サチュレーション)」に「〜る」を組み合わせて,飽和し上限に達している様子を理工系の研究者や技術者のあいだで使われ始めたという「サチる」。この「サチってる」状態を自覚しないと,こんなに頑張ってるのに報われない! なんて精神状態に陥ってしまう。これは先述の,続けられるかどうかにおいてかなりの影響を及ぼす。“続けられる才能”にもやはり,創意工夫は必要なのだ。
目に見えた成果として顕現してこない練習や努力というのは後回しにすべきだ,と僕は考えている。これが創意工夫につながる。コスパ重視と言ってしまっても構わないと思う。
ステータス,パラメータで物事を考えたときに,1週間努力して10ポイント上がるものと,1ポイント上がるものがあるなら,ぜっっっっっっっったいに前者をやるべきだ。なぜなら,(当たり前のことだが)目に見える成果こそが物事を続けるときの,心のガソリンになってくれるからだ。そして次にまた10ポイント上がるようなカテゴリーを見つけて,そこに対して努力や時間を費やす。この繰り返しだ。
するとやがて,もう10ポイントも上げられるようなものは無くなってくるだろう。そうすれば次は8ポイント,5ポイントといったカテゴリーを見つけていけばいい。そしていよいよ,もう1ポイントずつしか上がらないカテゴリーしかない! なんてことになったとき,もうご安心いただきたい。その頃には,あなたは1ポイントの成長を自覚できるようになっている。もう「成長できない! 才能がない!」なんて嘆いていたあの頃のあなたはもういない!
これが“続けられる才能”の正体なのだ。
筋トレなんかでもよく,大きい筋肉から先につけていくことを勧められる。足の大腿筋から背中の広背筋や僧帽筋,腕の上腕二頭筋など。この理由はそう! 目に見えて成長を実感できるからだ。自分の成長を実感し,筋肉が確実についている! ということを自覚してから小さく細かい筋肉やインナーマッスルなどを鍛えることで,よりあなたの筋トレライフは充実し,続いていくことになるだろう! もちろんプロテインやBCAAなどの必須アミノ酸の摂取は忘れないでくれよな!? ニッコリ!!
このほかにもストレッチの重要性など,話したいことはたくさんあるのだが,ここでは空気を読んでやめておくことにする。
食通ライフにも重要な「サチる」の概念
ウメハラ氏主催の「味覚王」ではまさかの最下位の「バカ舌」の称号をいただいてしまった筆者ではあるが,もはやそれも時効(頼む,許して)。それなりに美味しいもの食べてきた自信もある。
だがしかし,例えば一貫500円のマグロと3000円のマグロを食べ比べたときに,その味の差が2500円分あるのか? と問われると答えは難しくなってくる。なぜなら「サチ」ってるから。ただ確実に3000円のマグロのほうが美味しい。さすがにそれは揺るがない。
しかし物差しを幸福度,というもので考えたとき,先ほども出てきた「コスパ」という考え方は非常に重要になってくる。お会計が1人あたり7〜8万円を超える高級寿司で得られる幸福もあれば,最近「ストリートファイター6」(PC / PlayStation 5 / Xbox Series X|S / PlayStation 4 / AC 。以下,スト6)ともコラボしていた「スシロー」さんで,お安く目一杯お寿司を食べたうえプレゼントまでもらって得られる幸福もある。
世の中にはいろんな幸福があるが,食において「サチる」を自覚できないと「まぁ,7〜8万円も払ってるんだから美味しくて当たり前じゃね?」という,何とも寂しい感想を持つことになる。先述の1ポイントの差を知覚,自覚できる人間でありたいものだ。
が! しかし! 最近は「え!? この値段でこんな美味しいの!?」というお店を見つけることに幸福度を見出すようにしているので,ぜひ,皆さんのおすすめのお店も教えてほしい。詳しくは「ミートたけしの食べログ」を検索してみてくれ。そしてフォローをしてくれ。これは僕と君との約束でありただの宣伝だ。
それではなんでそもそもこの話をしたかったか,というところに話を戻そう。
スト6マスターなんて誰でもなれる論争
この小見出しにおける議論がSNS上で巻き起こった。スト6においてマスターになれずに悩んでいるプレイヤー,配信者のお気持ち表明の嵐が吹き荒れた。誰でもなれる派の口調のキツさが目立つ部分はあったと思う。マスター「なんて」という言い方をされたらそりゃぁ腹も立つだろう。
だがそのうえで僕は「マスターには続けてさえいれば皆なれる」派として胸を張って声を上げていきたいと思っている。実際これをSNS上で発信したらこれでも反対意見やアンチが沸いた。一応,文章はていねいに以下に変更した。
・マスターなんて,をマスターには,に変更
・語弊のないように「続けてさえいれば」を追加
・「誰でもなれる」の語気が強いので「皆なれる」に変更
・だから頑張ろうぜ! 的なメッセージを全体に匂わせてみる
ここまでやったのに怒る人いるんだぜ!? そりゃもう知らねえよ!! 何なんだよ!
……失礼,取り乱しました。冗談っぽく言ってみたが,これだけ気を使って書いても真意が伝わらないくらい,つらい思いをしている人達がいるのだと知った。ので,そういう人は今から冒頭に戻ってすべてを読み直してここに戻ってきてほしい。そう,君はただ「サチ」っていただけなんだ。
そしてここでもう一つ,今回のタイトルである「好きこそものの上手なれ」を今一度考えてもらいたい。
それ,本当に好きでやってますか?
これはもうそもそも論になる。“続けられる才能”とか“サチるを自覚する”とかいろいろ言ってきたが,それよりも前に確認することがある。それは「君,本当にスト6好きでやってる?」ってことだ。
先ほどのSNSでの反論意見に「1年間マスターに上がれず苦しんでる人間の気持ちが分かるか?」というものがあった。いや,俺なんか「ストリートファイターV」(以下,ストV)のとき,マスターに上がれずに3年間苦しんだんだぞ? 3年だぞ? でもなぜ3年間腐らずに続けられたのか。それはストVが大好きだったからだ。
しかしながら昨今のスト6への取り組み方を見ると,「本当にこの人は好きでやってるのかな?」と疑問を抱いてしまうプレイヤーや配信者さんを目にすることがある,というのが正直な気持ちだ。
今,人気があるタイトルだから。スト6をやっていると視聴者が増えるから。まぁ,このあたりは実際問題,動機としては間違ってないのでいいかなぁ……とは思うが,やはり「本当に好きなの?」という部分では若干の怪しさを感じているということは書いておく。
○○さんはもうマスターなのに私はなれない。私は1年かけたのに○○さんはたった1か月でなった。このあたりになってくると「好きでやってる」感は相当怪しい。
好きでやるってのはどういうことかと言うと,好きでやるってことなのだよ。
なんかはやりのなんちゃら構文みたいになってしまった……。でも好きでやってるなら,人のことなんて気にならないし,好きでやってることなら,たとえ視聴者が減ろうとも続けてしまう。それが好きでやるってことなんだ。
なのでマスターになれずに悩んでる人はまず,そもそも自分はこのゲームを好きなのか? という自問自答をして,それからコスパだのサチるだのを考えて取り組んでみてほしい。
ちなみにこの記事は2024年8月25日に行われている「呪術廻戦」のイベント「じゅじゅフェス2024」の楽屋で書いているが,何を隠そう,音楽担当の照井順政さんはMR2000のケン使いだし,五条 悟役の中村悠一さんも格ゲー好きでウメさん好きらしい。
何が言いたいかというと,好きで格ゲー続けていればこんな出会いにも恵まれるよって話。
つまり! いきますよ!? 今日もやっちゃいます! 世界の平和が俺を守るってわけ!
ふぅ,今月もありがとうございました! 来月は東京ゲームショウ後のコラムになります。ではまたね!
■■ミートたけし / 川村 竜(ベーシスト,作編曲家 ,ストリーマー)■■ ベーシストとして国内外各所でライブやコンサートで演奏活動をしつつ,配信活動も活発に行っているミートたけしこと川村 竜さん。現在は主にYouTubeチャンネル「ミートたけし-MEAT TAKESHI-」とTwitchチャンネル「ミートたけしの『太くてニューゲーム』」で,雑談配信をしたりゲーム配信をしたりと大忙しの様子です。 |
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