連載
【ヒャダイン】「ライブアライブ」を新作としてプレイする令和4年
ヒャダイン / 音楽クリエイター
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第89回:「『ライブアライブ』を新作としてプレイする令和4年」
ども。私,RPG好きを自称してきたくせに,なんと! かの名作「ライブ・ア・ライブ」(1994年発売)を今までプレイしてこなかったんですよね。今考えてもどうしてなのかが分からない。スーパーファミコンだしスクウェア(当時)だし,やらない理由なんてないはずなのに。ですから,話のあらすじすらも知らない状態で生きてきました。「どうやら名作らしい」という程度の認識で。
そんな愚かな私のために,なんと2022年にNintendo SwitchでHD-2Dで「ライブアライブ」としてリメイク! やったね! これはやるしかない。ドット絵と3Dのいいとこ取りしたHD-2Dにも期待大!
てなわけでさっそくスイッチオン! ……え? お話を選べる,だと? そう。原始編,幕末編,功夫編,西部編,現代編,近未来編,SF編という七つのストーリーを選べるオムニバス形式なんですねえ。それぞれのストーリーに関連性はなく,どれから始めてもいい,と。ショート・ショートみたいな感じなのかな?
ということで,まずは天性のカンで近未来編からスタート!(後々,やはり自分のカンは正しいと実感)。超能力青年アキラが,液体人間を集めて世界征服を企む敵を,ロボットでやっつける,という熱血ヒーローもの。まず度肝を抜かれたのが,ドット絵に懐かしさを感じながらプレイしていたら,途中で近未来編オンリーのオープニング映像が! それがド迫力&生歌が入ってる! 歌っているのは影山ヒロノブさんなんですねえ。豪華すぎでしょ!! 近未来編は比較的ストーリーが長く,しっかり楽しんでクリア。松のくだりではホロッときた。てか,容赦なく死が描かれるゲームなのね。
続いて取り組んだのは現代編。同じような感じが続くのかなあ……。なんて思いながら始めてみたら,え? え? ゲームシステムがまったく違う! さっきはフィールドを歩いてシンボルエンカウントで敵と戦うスタイルでしたが,現代編は「ストリートファイターII」のように世界各地の特徴的な敵の顔が並んでいて,それを押すとその敵とタイマン対戦! いきなり格ゲーになるという。しかも音楽が下村陽子さん作曲だから,なおさら「ストII」味がすごい。
そして敵が特徴的な技を繰り出してくるんですが,それを食らったら主人公の高原が技を習得する。え! これは「ファイナルファンタジーV」の青魔道士のラーニングやん! ときめくぜえ! そして敵を全部倒したらラスボスが出てきてやっつけてクリア。プレイ時間は短かめでした。ラスボスに入る前,フルボイスで高原が相手の蛮行を咎めて戦闘に入るんですが,そこでBGM「メガロマニア」が流れるタイミングが神。鳥肌立った。現代編も死が描かれていてドキッとした。
続いて原始編。よしりんこと小林よしのりさん作画の原始人ポゴが,生贄にされそうな美女を助けながら敵や恐竜を倒していくRPGなのですが,なんと原始人だから言葉がない! ボディランゲージとウッホウッホ言う声だけで相手に意思を伝えたり,プレイヤーであるこちらも何かと読み取らねばならないという。近未来編のアキラが心を読めたのと真逆ですね。言葉がない状態で進めていくのは斬新でした。しかもそのウッホウッホだけの為にポゴの声優が緒方恵美さん! 贅沢すぎでしょ! プロデューサーの時田貴司さん,どうかしてるよ! 最高!
で,原始編では拾った素材を組み合わせてアイテムを作ることができるのですが,これって最近のゲームっぽくて。1994年の時点でこのシステムを取り入れていたことに驚きです。この原始編には裏ボスがいるらしいんですが,ほかのストーリーも進めたかったので今回はスルー。こういうやりこみ要素,取り返しのつかない要素もいいですね。
次にやったのが西部編。まず音楽がいいんですよ。マカロニウエスタン! って感じ。めちゃくちゃ渋い西部の世界観が最新のHD-2Dで描かれていて鳥肌ぞぞぞ。
寡黙なガンマンであり,賞金首でもあるサンダウン・キッドが主人公。そんなサンダウン・キッドとなって,悪党にめちゃくちゃにされそうな,とある街を助けるという王道西部劇。ゲームの内容はバトル少なめ,タイムリミット付きの物探し。これまた「ファイナルファンタジーV」のタイムリミット付きの城脱出を思い出すなあ。
悲しいかな私は腐った大人なので,最短で最良の結果を得るためにどこに何があるか,どう探せばいいかを攻略サイトでガッツリ調べたうえで始めましたが。それでも時刻を告げる鐘の音が焦燥感を煽ります。
フルボイスでしっかりとした演技。スキップなんてできない深い演技で「え,声優さん誰!?」と調べたら,サンダウン・キッドは大塚明夫さん,ライバルのマッドドッグは古川登志夫さん,そして勝ち気な娘アニーは沢城みゆきさん,という。どうなってんのよ。どこの外画よ。そして最後にマッドドッグと戦うのですが,そこでも生死のやりとりが。このゲームは本当に死が多い。
続いては幕末編。幕末,と言いつつも忍者なんですね。忍者が忍びながら囚われた幕末ヒーローを助けて,城主をやっつけるという内容。幕末編では体を忍術で隠しながら誰も斬らないで進む「0人斬り」ルートや,逆にすべての敵を斬って進む「100人斬り」ルートがあったりと,遊び方の幅が広い。
ややこしい城内の隠し扉や屋根裏を進むときは,「がんばれゴエモン」をちょっと思い出したり。このシリーズも隠しボスがいて,水の中にいるでっかい鯉なんですが,その名前が岩間さま。「いわまさま」と読むのかな,と思いましたが音読みしたらガンマ。「ファイナルファンタジーV」の最強隠しボスといえばオメガ。これは素敵なオマージュですねえ。
幕末編の主人公おぼろ丸も,寡黙かつ能力が高くてかっこいいのですが,バシバシ敵を殺していくんですよね。ときには無抵抗な女性すらも。やはり命の価値を意識した作品なのだなあと感じました。
いよいよ終盤かなあ,なんて思って始めたのが功夫編。内容は技を極めた一人の老師が弱気な青年,勝ち気な女性,食いしん坊の男性,という若者3人と出会い,自分の技を伝授していくという「ベスト・キッド」のようなストーリー。3人いる弟子の中から1人を選んで技を教えるのですが,そこに性格が出ちゃうんですよね。3人に均等に教えるのか,1人をえこひいきして教えるのか。私は平和主義者なので3人平等に教えましたが……。あとで攻略サイトを見てみたら,えこひいきが断然良いらしい……。
にしてもこの老師と食いしん坊の声優さんが,本物のカンフー映画でも吹き替えをされている方々。ほんとにディテールにこだわってる。大好き。そして最後,弟子の1人がラスボスに立ち向かうというストーリーなのですが,これが一番死を感じるストーリー。短い章なのに心が落ち込むレベルです。
ついに最後! と始めたのがSF編。これが強烈だった!! なにこれ!! これまで遊んできた6編とは全く違って,ラスボスとの戦い以外に戦闘がない! あとは会話だったりちょっとした謎解きだったり。ストーリーを楽しませることを最優先って感じでした。
宇宙船の中,コールドスリープから目覚めた乗組員達と主人公であるロボットのキューブ。不慮の事故だったりでどんどん人が死んでいく。発狂していく。そして宇宙船の中に囚われていた獣・ベヒーモスが脱獄。ベヒーモスにタッチしたら即死なので,移動中にいきなり追いかけられたら心拍数バクバク。しかもHD-2Dのグラフィックスも良いので怖さ倍増。ラスボスが人間達に示す「KILL YOU」のメッセージは夜中プレイするには怖いって! やめてよーー。
よーし。全部終わった! と思ったらおもむろに現れた中世編。ほう。そう来ましたか。と,始めるとめちゃくちゃ王道RPG。主人公の剣士オルステッドが魔王にさらわれた王女を助けるべく,親友の魔術師ストレイボウと共に助けに行く。途中で伝説の勇者や魔術師もパーティに加わって進むんですが,ここで「あれ?」と思うことが。
そう。主人公のオルステッドがしゃべらないんですよね。すでにクリアした7編の主人公は全員フルボイスでお話してくれたんです。原始編のポゴですら声があった。なのにオルステッドはまるで「ドラゴンクエスト」の主人公のように何もしゃべらない。そのことからも王道RPGなんだなあ,なんて思ってプレイしていくと……。
もうここからはネタバレにもなるのでやめておきますが,かの名セリフ「あの世で俺にわび続けろ」が出てきてすったもんだがあった後,引っ張って引っ張ってついにオルステッドがしゃべり出す。主人公がしゃべらないのが前提のゲームでしゃべりだすということは……。という,ある意味ベタなお約束を逆手に取った表現方法に,思わず「すげーーー!」と声が出てしまいました。この演出もフルボイスだからこそ,さらに映えるんだろうなんて思いました。
さて。“最終編”もあるのですが,これはもうほんとプレイして確かめていただきたい。2010年代かくらいからのハリウッド映画では,「ダークナイト」や「X-MEN」で「勧善懲悪って本当に正しいのか?」という表現が増えた気がするのですが,それよりも前から同じような表現をしていたんじゃないでしょうか。
てか,最終編からこのゲームはスタートするんじゃないか。今までのは壮大な前振り? と思えるくらいにすごかったです。本当にやって良かった「ライブアライブ」。みなさんもぜひプレイして,いろいろ考えてみませんか?
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ 最近のヒャダイン氏は,ずっと好きなユーミンについての話をした「関ジャム 完全燃SHOW」と「サウナを愛でたい」が,連日放送されたことがとても嬉しかったそうです。 |
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Gosho Aoyama, Yoshihide Fujiwara, Osamu Ishiwata, Yoshinori Kobayashi, Ryouji Minagawa, Kazuhiko Shimamoto, Yumi Tamura