連載
【ヒャダイン】ゲーム実況っていいよね。
ヒャダイン / 音楽クリエイター
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第57回「ゲーム実況っていいよね。」
ども。おかげさまで忙しくさせていただいております。TVのお仕事もいただき,PCの前で曲を作ることもたくさんあって充実しております。フリータイムも常に曲のことを考えております。
てなわけで,まだNintendo Switchを開封すらできていない! なんということだ。コラムを書くために「マリオカート8 デラックス」をやりたかったんだけど箱に入ったままだよ。つらみ。つらみだよ。
Nintendo Switchの開封,そしてセットアップからの逃避行として最近はYouTubeでゲーム実況動画をよく見ているんですよ。ゲーム実況。すげえ楽しい。
やったことのあるゲームでもやったことのないゲームでも,実況付きで見ているとワクワクしちゃいますね。思考回路まで声に出して説明してくれるから分かりやすいし。やはり人気実況者は人気なだけあってしゃべりが面白いですよね。
にしても,なんで実況主って関西弁が多いんだろう。もしくは,標準語をしゃべろうとしているのに,変な訛りになっている関西人が多いよね。やっぱり関西人のほうがしゃべりがうまいんだろうか。自分,関西人なんですがしゃべりがヘタで残念。
実際ゲーム実況を見たことのない人は,「他人がゲームをやって楽しんでいるのを見てるだけって,何が楽しいんだ?」って思いますよね。ネタバレにもなるしさ。
だけど,実況動画を見るたびに思い出すんですよ。小学校の頃の友達の家を。当時はもちろんファミコンですよね。スポーツがまったくできない自分が友達の家に遊びに行くとやることは一つ,ファミコンでした。
友達のお母さんにお菓子を出してもらって,4〜5人でファミコンをするんですよね。だけど今みたいに3人以上のマルチプレイができるわけでもないから,誰か1人がプレイする姿をただただ後ろで見ているだけなんですよ。それでああだこうだ言うのが本当に楽しくてねえ。1人用のゲームだって,みんなで共有できていたんですよ。
あと,高橋名人的な要素もありますよ。ゲーム名人。ゲームを超絶テクニックでクリアする姿っていうのは,スポーツ観戦と同じ爽快感ですよ。e-Sportsなんかもそういう感じですよね。いい言葉だな,と思います。もっと日本もe-Sportsに力を入れればいいのに。
自分と同じようにゲームをやっているのに,自分ではまったく到達できないテクニックを披露する実況主は,そりゃスターになりますよね。高橋名人の16連射フィーバーが歴史の刻印として残っています。
高橋名人,歌も出していたなあ。美声なんだよなー。「Bugってハニー」とか「ボンバーキングのテーマ」とか。いい歌だったなあ。
まず第一に「誰でもできるゲームで遊んでいるだけで,スター扱いされたりお金を稼いだりしていてムカつく」というのがあるのではないでしょうか。ズルを見せられている気分にでもなるんでしょうかね。
でもさ,そんなこと言ったらテレビの「東京フレンドパーク」的なアトラクションバラエティとかクイズバラエティとかまで否定しなきゃいけないですよね。終わっちゃったけど,フレンドパークなんて仲が良い友達とエアホッケーしたりダーツしたりしてワイワイキャッキャ遊んでるだけでギャラまでもらえるんだもん。
それに対してなんだかズルいなって感じて,不平不満を言う人が出てきてもおかしくない。うちの父親もそんな理由でバラエティ番組は嫌いだったもんなあ。俺,実際にそういったバラエティに出たこともありますけど,遊んでいるだけなわけはないんですよね。もちろん番組内では楽しく遊びますけど,しゃべることも考えるし,何より,すげえ大勢のスタッフが関わって繊細に番組を作り上げることで,ようやく「のんきな娯楽」に仕立て上げているんですよ。
あと,いきなり出てきて大人気になってリアルイベントでティーンの女の子達にわーきゃー言われているのをドヤ顔でスルーするあの感じも,反感を買いやすいんですかね。以前,何かのイベントで実況主が十代の女の子達に囲まれて,それをサングラス越しにいなしている様子を見かけたことがあるんです。どこか不自然で嘘っぽくて,でもそれが逆に変な魅力にも見えて奇怪な風景でした。
実際,その人気は地に足がついていないのが明らかで,本人にもプロ意識がなかったりすると(そもそもプロテストがあるわけでもないですし),簡単にファンと恋愛したりしちゃうんですよねえ。そこらへんもアンフェア感を助長しますよ。自分と同じゲームをやっているだけのアイツが! って。何だよ,ただのリア充じゃねえか,と。
こう考えてみると,友達と一緒にゲームをやっている感覚のアマチュアリズムがウケてる一方,攻撃的かつ異性に奔放なアマチュアリズムがバッシングを招いているということでしょうか。うーむ。
例えば,ゲームメーカーから正式にオファーを受けてゲーム実況をしたら,それはプロってことですよね。そうなったらきっと,発言にも行動にもある程度の抑制を求められるようになって,その結果として魅力が削がれることで人気が落ちてしまう気がします。
ってことは,実況主は超絶テクでe-Sportsの王者としてプロになるくらいしか,プロ化の道はないということでしょうか。あ,そうか。アマチュアであることに価値があるのだとしたら,「好きなことで生きていく」ためにはずっとアマチュアリズムを保たねばならないという修羅道が待っているわけだ。
……ああ。浮いては沈む実況主の刹那の輝きを俺は享受したいと思っております。もちろん,ゲーム動画をアップロードすることを公式が認めているやつだけね!
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ 今年のゴールデンウィークなどはるか遠い昔の出来事のような気がするという方も多いのではないでしょうか。ヒャダイン氏の場合,ゴールデンウィークはひたすら仕事漬けだったそうで,「もうゴールデンウィークなんて廃止になればいいのに……」ぐらいの気分だったとのことです。 |
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