連載
【ヒャダイン】遊び人が賢者になるだなんて!
ヒャダイン / 音楽クリエイター
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第46回「遊び人が賢者になるだなんて!」
そんな翔子ちゃんと小林幸子さんとのユニットしょこたん♥さっちゃんの「無限∞ブランノワール」を作らせてもらった縁でお邪魔したのですが,小林幸子さんとロックバンドと翔子ちゃんが歌でバトルをする楽曲! 鳥肌がゾゾゾゾゾゾです。すぎやま先生,植松先生,イトケン先生から見よう見まねで学んだバトルソングを歌で表現させてもらったのですが,小林幸子さん&中川翔子さんという素晴らしい才能により,自分が思っていた何億倍ものパワーを持って曲が成長しています。嬉しいなあ。
何という伝説的な瞬間に立ち会わせてもらったんだろうと感動していたら,終演後,バックヤードでこれまた神様が。そう。翔子ちゃんと仲良しの堀井雄二大先生! ひゃー!!! 嬉しいよ。もう何年もお会いしていなかったけど,すこぶるお元気で,「ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城」(PlayStation 4 / PlayStation 3)をやりこんだお話なんかをさせていただいたら,この連載に書いたことまで知っていておられ,これまた感涙。
そういえばこの連載をきっかけに,「ドラえもん」好きが知られて「アメトーーク!」に出演したり,「ポケモンの家あつまる?」のレギュラーが決まったりと,ほんと4Gamerさんには足を向けて寝られませんね。
そんな夢見心地の帰り道。ドラクエのことばっかり考えていたんですよね。いつもキャラ立ちしている「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」や「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」のことばっかり考えがちなんですけど,ふと「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」に思いを馳せていたんです。
IIIといえば,転職システムやセーブシステム,新しいものが詰まった奇跡のような作品ですが,その中でも有名なのは「遊び人がレベル20になると賢者に転職できる」というシステム。ほかの職業は苦労してゲットした「悟りの書」がないと賢者になれないというのに,遊び人だけはレベル20になるだけで賢者になれるなんて。理不尽すぎやしませんか。アリとキリギリスで言えば,キリギリスが勝ち組で勝利! みたいな。やるせないよー。
では,男から考えましょう。ピエロだから当然,顔が白塗りなんです。常に笑っているように見せるため,口紅で唇をグニーって書いて。この姿で勇者一行の旅。なんて昼夜を問わない非常に過酷なものなんですよ。オールナイトでモンスターと戦うこともしばしば。そんな中,素顔を隠して白塗りを続ける男遊び人のメンタル。うん。ヤバくね!? 絶対メイク落ちるじゃん。そのたびにおしろいを取り出してパタパタと。絶対に素顔を知られてはいけないという義務感で。それって365日,外出時はマスクしてたりウィッグしてたりカラコンしてたりするイマドキ女子と同じメンタルじゃん。やべえよ。
しかもね,遊び人が装備できる武器と防具を調べたんだ。その中でコーディネートしてみるね。「皮の帽子」「けいこぎ」「うろこの盾」に,武器は「くさりがま」。そして白塗りである。想像してみてください。皮の帽子をかぶって格闘技の稽古着をまとい,うろこの盾を持ちながら鋭いクサリガマを振り回すピエロ。……こええええええええ。まじこえええよ。常人のメンタリティじゃやってられん。
よし。少し視点を変えて女遊び人のことを考えましょうか。前述の通りバニーガールです。胸がこぼれそうな服を着ているわけです。あー,美勇伝を思い出すなあ。へそ出しバニーガールの石川梨華ちゃん。おっと。
でね。DQIIIでは,仲間との出会いの場は,ほぼすべてルイーダの酒場。酒場には屈強な戦士や武闘家,妙齢の魔法使いやヒゲの商人が集まっているわけです。そんな中で,肌面積多めのバニーガール。世界を救おうと日夜闘っている人達の中にバニーガール。店員じゃなくて客として来てるんですよ。……やべえええええ。やべえよ。そのメンタル,理解不能だよ!
いやいや。女の遊び人が屈強な男達の中で露出多めの服でいるからって,そんなやましいことをしているとは思いません。そういった意味の遊び人じゃないと僕は信じている。DQIIIは老若男女問わず愛されているゲームだもの。
でもさ。だとしたら,お前何しにきてんだよ! って話で。もちろんチャラついている自分がルイーダの酒場にいる違和感については,自分自身が一番よく分かっているだろうし,そんな肩身の狭い中で平気な顔して居座っていられる精神力の強さ,すごくない?
W杯日本戦でスポーツバーに突然放り込まれるくらいの居場所の無さだよ! 家に帰りたいよ! そんな場違いな自分が勇者のパーティに選ばれてごらんなさいよ? 選ばれた理由をいろいろと訝しんでしまうし,人間不信にだってなりそうさ。
そうなるとね,いろいろと納得できることもあって。というのも,遊び人って男も女もレベルが低いうちはコマンド通りに動いてくれるんです。装備もそれなりにできるから戦力として活躍できる。ってことで,ここからは男遊び人視点の日記調で書いてみますね。
7月4日
ロマリアに着いた。長い洞窟だった。何度もメイクを直したが,おしろいも底を付いた。明日城下町で化粧品を買わなければ。それにしてもモンスターが強くなってきている。アルミラージの群れと遭遇したときには,死を覚悟した。しかし仲間はそれ以上に強くなっている。昨日は魔法使いがギラでおばけアリクイを一掃した。私の攻撃では,一撃で倒せるモンスターなどもういない。呪文を使えるわけでもない。明日,ルイーダのところに戻されはしないだろうか。怖い。怖い。怖い。
7月26日
アッサラームだ。もう敵は強いとかいったレベルではない。巨大なあばれザルの一撃を喰らえば即死だろう。勇者や戦士が鉄製の防具で身を固めている。鉄でもなければ命を守れないということだ。打撃の戦力として見放された私は,道具を使うことに専念した。しかし今日,薬草を使うタイミングが遅れて魔法使いを死なせてしまった。みんなは何も言わない。しかし視線は冷たく感じる。棺桶の横でメイクを直す私の横で,戦士がため息をつく。どうすればいい。自分から脱退を申し出れば許されるのか。どうして私は選ばれたんだ。どうして私は弱いままなんだ。
7月28日
イシスに行くという。砂漠だ。日差しが強いよ,メイクが落ちるじゃねえか。ウォータープルーフのファンデーションは高いんだよ,てか,おっかねえカニが大量に出るらしいじゃねえか。ほかのみんなは鉄だか青銅だかの鎧を装備してるから大丈夫なんだろうけど,俺はどうすんだよ。あははは。はははは。楽しくなってきた。
そういや昨日,わらいぶくろって敵が出てきた。あいつ,ずっと笑ってやがった。ヘラヘラ。メラで焼けてるときも笑ってやがった。戦士が最後の一発を入れるときにも笑ってやがった。へへ。へへへ。うひひひひひひひひひ。笑ってるのってラクだなあ。楽しいなあ。
そうだ。俺はどうせ使えないポンコツだ。素顔を人に晒せないくらいの弱虫だ。どうしようもねえんだよ。砂漠で置いてけぼりにされて死ぬかもしれねえ。うひひひ。ひひひひ。もういいや。真面目にやるなんてしゃらくせえ。いっそ見捨ててくれよ。ラクになりてえよ。
そうだ。命令を無視しよう。そうすれば愛想を尽かしてくれっだろうよ。いひひひひひ。ひーっひひひっっひ。でっかいカニの化け物の目の前でダジャレを言うとか,最高じゃねえか。いーひっひひひひ。
うん。……うん。遊び人。お前は十分苦しんだよ! めっちゃ戦ったよ! 自分自身と戦い続けたよ!! ほかのメンバーがモンスターと戦っている間,お前は自分自身の中のモンスターと戦い続けたんだよ。レベル20で賢者になれるよ! なっていいんだよ!!
言わずもがな,僕の勝手な妄想で事実と反する部分がほとんどでしょうが,少なくとも自分の中では遊び人が賢者になれる理由がちゃんと理解できました。お付き合いありがとうございました。
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ 毎週日曜8:00から,テレビ東京系列で放送中の「ポケモンの家あつまる?」にレギュラー出演中のヒャダイン氏。最近では番組内でのちびっ子達との戦いに備え,ちょっとした空き時間にもひたすらポケモン育成に励んでいるそうです。 |
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ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III
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