連載
【西川善司】ここはリアル・グランツーリスモの街? 中東ドバイのゲーム事情とフェラーリ専門テーマパークをチェック
西川善司 / グラフィックス技術と大画面と赤い車を愛するジャーナリスト
(善)後不覚 |
米国ラスベガスでの2014 International CES の取材を終えて帰国後,わずか数日をおいただけで,1月下旬に今度はアラブ首長国連邦(以下,UAE)の都市,ドバイに行っておりました。
ドバイの街の景観はまさに,ゲームグラフィックスみたいな感じでした。ショッピングモール前のロータリーにはLamborghini(ランボルギーニ)やMcLaren(マクラーレン)が路駐していますからね。
この地では2009年に,「ドバイ・ショック」と呼ばれた景気後退に見舞われましたが,今ではすっかり平静を取り戻している印象を受けました。
ドバイの街中で,当たり前のように路駐しているスーパーカー達。「グランツーリスモ」の中かここは!? ……という感じ |
さて,「なぜUAEか,なぜドバイか」という話ですが,一言でまとめると,「東芝の液晶テレビ『レグザ』を中東諸国で広めるプロモーション活動のため」です。UAEは中東諸国の中でも群を抜いてゲームが盛んな国なんだそうで,そこに,低遅延をウリにしているレグザを売り込もうという話なのでした。
というわけで今回の使命は,東芝がメインスポンサーとなり,NVIDIAとGIGA-BYTE TECHNOLOGY,そしてアラビア語メディアであるArab Hardwareが協賛するイベント「STEP GAMING EXPERIENCE」で,約25分間のプレゼンテーションを行うこと。UAEはアラビア語が公用語ですが,英語が普通に通じますので,プレゼンテーションは英語で行いました。
ラスベガスで引いた風邪が治らぬままの病み上がりでのプレゼンとなった。栄養ドリンクを2本まとめて飲んでの強行出場である |
プレゼンのテーマは「テレビにおける低遅延の重要性」と,「4Kテレビ時代はPCゲームがメインコンテンツになる……かも」といったもの。「東芝レグザが低遅延性能に優れることをアピールする」という使命を帯びていたので,東芝製テレビをメインにフィーチャーした内容でしたが,現地の人にはまずまずの評判だったようです。プレゼン終了後には多くの人が質問に来てくれました。
日本では「ゲームプレイには低遅延性能を有したテレビが必要不可欠」という認知が進んできたようですが,中東諸国のゲームファンの間では「気にしたこともなかった」という人が少なくなかったようで,このイベントを取材した現地のゲームメディアも,表示遅延の話をアラビア語で伝えていましたね(関連ビデオ)。
ちなみに下に示したムービーは,プレゼンでも使った,レグザと他社製テレビの遅延比較デモ。コーエーテクモゲームスの協力を得て「DEAD OR ALIVE 5 Ultimate」を用いたものになっています。
ところが,壇上に上がって賞品を受け取ろうとしたところ,ブーイングが起きてしまいまして,仕方なく記念撮影だけをして当選は辞退。でも,もし当選した製品がGeForce GTX 780シリーズ搭載カードだったら,ブーイングを押し切ってでも,もらったかもしれません(笑)。
巨大ショッピングモールにてドバイの家電量販店事情をチェック
滞在期間が短かったこともあって,ほとんど観光らしい観光はできなかったのですが,ドバイのショッピングモールと,UAEの首都アブダビにある,世界で唯一「Ferrari」をテーマとしたテーマパーク「Ferrari World Abu Dhabi」には行くことができました。
モール内はアラブ風の民族衣装に身を包む人もいれば,西洋的な服装の人もいるといった具合。さまざまな人種や民族が当たり前のように混ざり合っている様子からは,なんだか「SF映画に出てくる宇宙文明時代の未来都市」という風情を感じます。
ドバイ最大級のショッピングモール,The Dubai Mall。ショッピングモールというにはあまりにも広大でゴージャス! |
モールの中には紀伊國屋書店が(左)。入口近くの商品棚には,英訳された日本の漫画が陳列されていた(右)。ちなみに,こちらでも日本の漫画は人気らしく,イベントでの登壇のあと,日本の漫画やアニメの話題を振ってくる現地の人も多かった |
The Dubai Mall内には大型の家電量販店が複数入っているのですが,それ以外にも,中東でも人気の高いSamsung Electronics(以下,Samsung)とLG Electronics(以下,LG),そしてソニーやパナソニックの直営店がありました。
ソニー(左)とパナソニック(右)の直営店。ソニー直営店はスマートフォンやテレビ,PlayStation関連製品が並んでいたが,パナソニック直営店はテレビからフードプロセッサまでと,幅広い商品ラインナップを展開していた |
ただ,いわゆるマニア層や中高年齢層には,日本ブランドに対する期待や憧れといったものがあるようで,あえて日本製品を指名買いで選択する人もいるとのことでした。日本では2008年にテレビ事業から撤退したJVCケンウッドが,中東では昔ながらの「JVC」ブランドでテレビを販売し続けているのも,そういった事情からかもしれません。
なお,いわゆる4K(3840×2160ドット)解像度のテレビは,UAEでは「Ultra HD TV」として訴求されています。価格は日本とほぼ同じで,84インチタイプの製品が大体150万円くらいでした。LGは日本でもテレビ事業を展開していますが,日本ではいまだ発売されていない湾曲画面の有機ELテレビがドバイでは普通に販売されていましたね。価格は日本円にすると100万円くらいだったかな。
PhilipsやHisenseなど,日本では見慣れないブランドのテレビ製品が並ぶテレビ売り場 |
LGの湾曲型有機ELテレビ。「ULTRA HD」と書かれているが,展示モデルはフルHD解像度 |
ドバイのゲーム事情
PS4は入荷するたびに即売り切れ
店員に聞いたところでは,UAEではPlayStation 3とXbox 360は同じくらいの人気だそうで,どちらが優勢というのは判断がしにくいとのことでした。一方,
現地を訪れた日本人が驚かされるのは,やはりXbox 360の健在ぶりでしょうね。日本では量販店でも縮小傾向にあるXbox 360関連の売り場ですが,UAEではかなり広めのスペースが取られ,商品も多く陳列されています。ゲームソフトコーナーだけでなく,周辺機器のコーナーも充実していました。
日本ではあまり見かけない「Xbox 360の試遊台でちびっ子がコントローラを奪い合うようにして対戦プレイしている光景」(左)。Xbox 360は本体と新作ゲームのほか,周辺機器も豊富だった(右) |
そうそう,日本では未発売のNintendo 2DSは,UAEだと普通に販売されていましたよ。
任天堂の人気はこちらでも強い。3DSの人気は上がり調子とのこと(左)。Nintendo 2DSもUAEでは正式に販売されている(右) |
PlayStation 4(以下,PS4)とXbox Oneはどうなんでしょうか。PS4はすでにUAEでも販売済みで,コアなゲームファンの間で相当な人気があるそうです。前出の店員氏によると,「1回の入荷は40〜50台で,入荷すると1日で完売する。その繰り返し」だといいますから,かなりのもの。ボクが店員氏に話しかけている間も,「PS4ありますか」と声をかけてくる家族連れがあったほどです。この家族にも聞いたところ,その日が週末だったこともあってか,ソニーの直営店を含め,The Dubai MallでPS4を取り扱っている店ではどこも売り切れだったとのことでした。
一方のXbox Oneは,UAEでもまだ発売されておらず,話を聞いた店員氏によれば,3月の発売予定だそうです。
ソニー直営店でもPS4は完売。試遊台では少年たちが「KILLZONE SHADOW FALL」をプレイしていた(左)。UAEでのPS4ローンチタイトルラインナップは北米と同じだ(右) |
PCゲームは,UAEでも一定の人気があるそうで,ハードコアなゲーマーは,PCゲームを好む傾向にあるらしいです。商品棚を見た感じでは北米のラインナップにほぼ等しいという印象でした。「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム3」のPC版なんて珍しいものも並んでいましたよ。
Ferrari World Abu Dhabi探訪記
ここは,Ferrariが世界で唯一,公式にプロデュースした屋内型テーマパークです(※一部は屋外)。屋内部分の敷地総面積は10万m2だそうで,東京ドーム2個分と行ったところでしょうか。広いことは広いですが,1日あれば回りきれる大きさだと思います。
ボクが訪れたのは週末だったのだが,意外に空いており(左),並んだのはジェットコースターくらいだった。右の写真はマスコットキャラクターとの記念撮影で,左のラクダは「Khalil」,右のクマは「Berto」というらしい |
主なアトラクションはジェットコースター系が2種類で,その他は多種多様なライド系が中心となっています。アトラクションはすべてFerrariをテーマとしたものですが,実態はごく普通の遊園地といったところ。車に興味のない家族がいても,問題なく楽しめるでしょう。Ferrariの名車を一堂に集めたミュージアム「Galleria Ferrari」などは,車好きの男性や子供なら,ハイテンションになること間違いなしです。
Galleria Ferrariに展示されているFerrari往年の名車たち。間近で見られるが,残念ながらお触り禁止で乗り込めない |
Galleria Ferrariを見て,Formula Rossaに乗れば,Ferrari Worldの大半を堪能したといえるでしょう。
一方,フラリと入った「Speed of Magic」という3D立体視映像を使ったライドアトラクションでは,Ferrari World設立の趣旨が現れているようで,その内容にはちょっと衝撃を受けました。
このアトラクションは,裕福な家庭のちびっ子がスポーツカーに憧れて,レーシングゲームをプレイしている導入映像から始まります。そこに父親がやってきて「そんなゲームなんかしてないで,ドライブに行かないか。父さん,新しい車を買ったんだ。そう,Ferrariさ!」とさらりと言います。「わーい,やったー!」とちびっ子は大喜びでドライブの準備をするんですが,その過程で,いろいろとファンタジックな事象が発生して,ちびっこはテレビゲームの世界でFerrariを運転することになります。来場者が体験するのは,その「ちびっ子が運転するテレビゲームの世界」です。
うがった見方かもしれませんが,Ferrari Worldは中東の子供たちに「車はFerrari!」という刷り込みを行うための,マーケティング施設なのでしょうかね。
日本でも人気の高いFerrari 458 Italiaの実車が,空中でグルグルと回転している展示(左)。普段はお目にかかれない実車の上部や裏面なども観察できる。右の写真は同車のV8エンジン。V8エンジンといっても,Ferrari車の中では入門クラス |
ディズニーリゾートでは終わることのない幻想的な夢が楽しめますが,Ferrari Worldでは,ふとした瞬間に我に返る現実味のある夢が楽しめるというわけです(笑)。
■■西川善司■■ テクニカルジャーナリスト。最近はPlayStation Vitaでのゲームにはまっていて,「ダンガンロンパ1・2 Reload」や「STEINS;GATE」を立て続けにプレイしたとのことです。「運動不足解消に始めたウォーキングの最中にプレイしている」「でも“ながらスマホ”はしてない」そうで,マナーを守っているのは大変よいことですが,ウォーキング中にいきなり立ち止まってVitaをプレイし始めるのも,それはそれでどうかと思います。 |
- 関連タイトル:
レグザ
- この記事のURL: