連載
【ヒャダイン】「ポートピア連続殺人事件」で磨かれる想像力についての考察
ヒャダイン / 音楽クリエイター
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第25回「『ポートピア連続殺人事件』で磨かれる想像力についての考察」
「ジョジョの奇妙な冒険」の電子書籍カラー版を読み倒したり,ひたすら寝倒したり。あと,ゲームざんまい。一日中ゲームをしていた日もありました。翌日,眼精疲労で頭がガンガン,目元フラフラで大変でした。もう歳だなあ。
で,どんなゲームで遊んでいたかというと。PlayStation 3の「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」。ええ,5年ほど前に発売された作品ですね……。何を今さらと思われるかもしれませんが,「アンチャーテッド」シリーズの第三作「アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-」はプレイ済みで,すべての宝物もゲットして,トロフィーもコンプしていたのですよ。
アンチャーテッドシリーズは,ざっくりいうとアクションアドベンチャーゲームで,射撃で敵を倒したりしつつ探索して,ストーリーを進めていくゲームなんですが,グラフィックスがもの凄いのです。最近では「グランド・セフト・オートV」(PlayStation 3 / Xbox 360)のグラフィックスのクオリティの高さに驚かされたものですが,うん,大ざっぱに言うと似た感じです。細かいところまで手抜きがまったくないです。まるでハリウッド映画の世界に入り込んだかのような錯覚に陥ります。しかも,ロード時間が短いのでスルスルスルーとムービーも楽しめるという,細部まで行き届いた気遣い。
これはどうしても一日でクリアしたかったのです。齢33。ゲームを中断して時間が経つと,ストーリーが分からなくなるのが玉にきず。TVドラマも連載漫画も,翌週になると「えっと,これどういう流れだったっけなあ……」となって,Googleであらすじまとめを探して復習するというありさま。
ということで,お正月くらいしか一日中ゲームできないから,常々やりたかったアンチャーテッドシリーズの第二作である,黄金刀と消えた船団をクリアすることにしたのです。感想としては……,すげえ楽しかった! 楽しすぎて溶けるかと思うくらい。ゲームって本当に最高!
で,ですよ。アンチャーテッドなのですが,アクションだけではなく途中に謎解き要素もあります。持っている手帳を読んでヒントを探して,パネルを合わせたり,石像を移動したり,移動する道順を考えたりとと,いろいろ頭を使わなきゃいけない。これがまた楽しいんですよねえ。
しかしまあ,次の手がまったく思いつかないシーンもあるんです。そういう時,手がインターネットに伸びてしまうのは本当にいけないことだと思います。攻略サイトをググって該当か所の攻略チャートをフムフムと読んで,ゲーム再開,という。うん,スムーズに事が運ぶのは確かですが,なんだかもったいない。考えて考えて考えて考えて答えが出たときのあの達成感は,めったに味わうことが出来ないからこそ,貴重だと思うのです。ひたすら同じステージでグルグルグルグル回って,かなり時間が経ったあとに「これか!!」と次の道が分かったときの快感ね。
今回のお正月はその快感を味わうために,ネットを禁止してゲームにふけりました。しかしこの達成感。どこかで味わったことがある。かなり前に。なんだろうか,と考えたら答えが出ました。
「ポートピア連続殺人事件」だ!!!
「ドラゴンクエスト」シリーズの堀井雄二さんがゲームデザインを担当した作品で,もともとはPCゲームだったそうですね。ファミコンへ移植されるときに,開発を担当したのがチュンソフトで,これがのちのドラゴンクエストにつながるのだと思ったら,何だか胸が熱くなります。
日本一有名な犯人が登場する(?)作品としても知られる,ポートピア連続殺人事件。日本を舞台に密室殺人事件の謎解きをするというゲームは,当時としては異色だったようです。確かに,“ゲーム=架空の世界”という概念をぶち壊してますもんね。
だって,舞台は日本で,しかも実在する神戸で,内容も怨恨がらみの殺人事件となると,現実感しかないですよ。ゲームシステムもやはり革新的で,プレイヤーキャラクターは顔も分からない状態。部下の「ヤス」(!)にあれやこれやと指示を出して物語を進めていくというものです。自分から動かないあたりが新しいですよね。
そして,さすが初期ファミコン作品。カスタマーに何の遠慮もないあたりが素晴らしいです。たくさんいる関係者に証拠,行くべき場所もたっぷり。その中から正しいフラグを立てて進めて行かなきゃいけないのですが,周囲にクリア済みのお友達がいるか,攻略本を持っていなかったらかなり厳しいレベルです。今みたいに攻略サイトがあるわけでもないですから,当時は放り出した人も多かったのではないでしょうか。
しかし,先述のアンチャーテッドとも被りますが,その謎解きを独力でこなしたときのあの達成感たるや!! ポートピア連続殺人事件は,平面的で必要最低限のグラフィックスですから,その分だけ脳内補完もあったわけで,そんな達成感にもさらに加速がかかったのだろうな,と思います。
最近思うのが,脳内補完最強説。下ネタになりますが,ほら,若いときにはオカズがなくても想像だけでスッキリできていたでしょう。脳内でいろいろと思いを巡らせて膨らませていたら,余計なものも膨らむっていう,ね。はは。
何が言いたいかというと,ポートピア連続殺人事件をリアルタイムでやっていた人は,自分自身である「ボス」や「ヤス」,さらに「耕造」や「おこい」の声や表情を,自然と想像して脳内で膨らませていたからこそ,謎解きへの没入具合も今の比じゃなかったのかもなあ。ってことです。
この当時に“ゲーム実況”をしていたビートたけしさんの尖り方も凄いですが,やはり結末が分かっているのに夢中になってしまえるというのは,ゲームの特異性ですよね。小説やドラマだとオチが分かったら一気に冷めてしまうのに,ゲームだと逆にやりたくなるという不思議さ。
その一因,ファミコンにおける情報量の少なさ,そこからの想像力の喚起にあるのではないか? ……なんて固い言葉を使ってみたりして。
でも,今の時代にははやらないよなあ,不親切なゲーム。難しかったらググってチーンだしなあ。しかし,少なくとも僕はファミコンによって想像力を鍛えられたと思っています。ゲームに没入して現実を忘れて主人公になりきる。そして謎を解決して爽快感を得る。
攻略サイトもいいけれど,まごまごしようがもたもたしようが,自分の想像力を活かして自力でクリアしていく喜びを忘れちゃいけないなぁ。そんなことを思ったお正月でした。明日からもう2月だけど。
■■ヒャダイン(音楽クリエイター)■■ 2014年2月12日に8thシングル「半パン魂」をリリースするヒャダイン氏。大人になっても変わらない少年の心を歌うこの曲は,TVアニメ「ガンダムビルドファイターズ」のEDテーマです。初回限定盤には,ミュージッククリップを収録したDVDが付いています。なお,ミュージッククリップは,YouTubeなどで公開中なので,そちらもぜひチェックを。 |
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アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団
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