連載
【ヒャダイン】ハラショー・ピロシキ・ボルシチ・テトリス
ヒャダイン/前山田健一 / 歌手・作詞家・作曲家・編曲家・プロデューサー
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第18回「ハラショー・ピロシキ・ボルシチ・テトリス」
ども。先日,私がMCを務めておりますNHKワンセグ2の「ワンセグ☆ふぁんみ」という番組に,声優のすみぺこと上坂すみれさんが来てくださいました。たいへんお若いのに,ロシアマニアということで,旧ソビエト連邦およびロシアの魅力について語っていただきました。
自分もチャイコフスキーやラフマニノフといったロシアの作曲家の作品を好んで弾いてきましたし,チェブラーシカの映画が好きだし,何かとロシアの文化に親近感を持っていたのですが,すみぺ嬢のマニアックぶり,本気ぶりには頭が下がる思いでした。ああいう風に,一つのことをとことん突き詰められる人って,格好いいなぁと思いました。声優界にとんでもない新星が表れたものだと驚愕しております。
ルールはとてもシンプル。四つの正方形を組み合わせて作られた7種類の物体「テトリミノ」が,一個ずつ上から降ってきます。それを地面で組み合わせて,横一列が揃ったらその列の正方形が全部消える。そんな,単純かつ分かりやすいルールとあって,日本でも老若男女に受け入れられ,ファミコン版,ゲームボーイ版が大ヒット。ゲームセンターでも,レバー片手にぐるんぐるんと高速でテトリミノを操って消していくテトリスプロのような方を見かけることが多々ありました。
2013年の現在,携帯ゲーム機やスマートフォンのスペックは,少し前の据え置き型ゲーム機並と言われています。しかしそんな最先端の小型機器でも,この元祖落ちゲーであるテトリスが,人気コンテンツとして常に多くの人々に愛されているのは,ご存じのとおりでございます。
また,元祖テトリスだけでなく,さまざまな進化系が制作されるのも世の常で,複雑なシステムが追加された新世代テトリスもたくさんリリースされており,それらも人気を博しているようなんですが。
個人的には,やはり元祖テトリスが好きです。小さい頃,父親以外の家族全員がハマっておりました。とくに母親はそっちの才能があったようで,ものすごい高速のレベルでも,ばっしばし消して,ロシアのお城に花火をぶっぱなすエンディングを何度も見ておりました。
さて,今回はそんなテトリスについて,ちょっと掘り下げて考えてみたいなぁ,と思っています。ただのパズルゲームと思って生きてきましたが,よくよく考えると謎な部分がけっこう多いんですよね。
ちょっと調べたところによると,ソ連の科学者アレクセイ・パジトノフさんら三人が,1984年に教育用のソフトウェアとして開発したのが始まりらしいです。うわお。教育用だったんですね。
あの頃,ゲームばっかりやってると頭が悪くなるなんて言われ,一日一時間という制約が課せられてたりしていたものですが,当時のPTAのおばちゃま達に言ってやりたい。教育用のゲームだってあるんだぞ! と。
でまあ,そんなこんなで生まれたゲームを,セガや任天堂などがそれぞれのプラットフォーム向けにアレンジして大ブレイクしたということのようです。なるほど。その3名の科学者に敬意を表して,グラフィックスがソ連のお城のようだったり,BGMがロシア民謡だったりするわけですね。
でも,少し考えた。1984年のソ連。社会主義体制が限界を迎えつつあり,民主化運動も活発化していた時代です。そんな時代に,教育用として開発されたテトリス。これでいったい,何を教育するつもりだったんでしょうか? 何やら妄想するすき間がたっぷりありそうだぞ。「ゴルゴ13」の読み過ぎかな……。
ちょっと調べてみると,「テトリス・ハイ」という言葉を発見しました。「ランナーズ・ハイ」という言葉は皆さんご存じかと思うのですが,ランナーって走り始めは苦しいけど,ある段階でドーパミン的なものが脳内からどばーっと出てきて,なんだかふわーと気持ちが良くなり,体が勝手に走ることを選んでいるような状態になるそうなんですよね。
それと似たような感じで,テトリス・ハイというものが存在するようです。長時間にわたり,素早く物を動かすことを瞬間的に判断し,操作し続けることで,その思考が自動化されるとのことです。
このテトリス・ハイに入ると,何時間もプレイが可能になるとのこと。それどころか脳が一種の催眠状態に入り,プレイしていることが快感に変わるのだとか。そうそう,テトリスに限らず,何かの作業に没頭しているうちに時間が経つのを忘れ,気付けばチュンチュン雀が鳴いてるといったこと,ありますよね。とくに単純作業。
学生時代,文集かなんかをひたすらホッチキスでとめる作業をしたことがあるんですけど,紙をとんとんしてホッチキスでバチンバチンととめて,また紙をそろえてホッチキスでとめて。最初はもたもたするんですが,途中から自動運転に変わると,もうトランス状態。時を忘れてひたすらとんとんバチン。とんとんバチン。その一連の動作をしていること自体が,楽しくて仕方がなくなったものです。思えばあれ,「文集・ハイ」だったんでしょうねぇ。
さてさて,冒頭にも書いたとおり,四半世紀(!)にもわたって人気が続くテトリスですが,さすがに中毒性が高いと勉強の妨げにもなりかねない。寝る間も惜しんでテトリステトリス。これをソ連のアレクセイ・パジトノフさん達は,「教育用ソフトウェア」として開発したわけですよね。そして,民主主義国家を含む世界中で大ヒット。画面はロシアの風景。そして延々とループで流れるのはロシアの伝統音楽。
……そういえば僕も,テトリス・ハイ経験者であり,なおかつチャイコフスキーやラフマニノフをよく弾いていた。ヒャダインのシングル「Start it right away」のミュージックビデオに出てくれた外国人キャストも,ほとんどがロシア人だった。そもそも「ヒャダイン」というのも氷の呪文。北国のイメージ。
ま,まさか。いや,そんなわけあるまい。いや,しかし。ありえない話でもない。テトリスにおける「教育用ソフトウェア」の「教育」というのは,自国の国民を教育する,という意味ではなく,他国の人々にロシアの文化をインプリンティングするという意味合いだったのではなかろうか。
だって,いまだにあの3和音のコロブチカを聴くと脳がテトリスを欲しがって疼きだす。そしてあのロシアの城を思い出す。まさか,気付かない間に……!!
いや,大丈夫です。だって,「ストリートファイターII」で使っていたの,春麗とダルシムだったもん。ザンギエフは使わなかったもん。
……? はぁ?(怒)
海外の方も「がんばれゴエモン」シリーズなんかを繰り返しプレイして「ゴエモン・ハイ」になり,日本の文化を体にインプリンティングさせてくれていたりして。そういう人が浅草あたりで「侍」Tシャツとか着ていたりして。
いやぁ,自国の文化を伝えるゲームという装置。世界平和にも使えそうですよね。ゲームを通してみんななかよくやりましょう!
……えっ? アレクセイ・パジトノフさんが作ったオリジナルのテトリスには,あの音楽もあのお城もなかった?
1988年末にBPSが日本で発売したPC版やファミコン版,そして1989年に任天堂が発売したゲームボーイ版あたりから,ロシア色の強い演出が追加されたという話が……。
えー,ゴホン。いやぁ,他国の文化を学べるゲームという装置。世界平和にも使えそうですよね。あまり細かいことは気にせず,ゲームを通してみんななかよくやりましょう!
■■ヒャダイン/前山田健一(歌手・作詞家・作曲家・編曲家・プロデューサー)■■ ヒャダインとして初となる単独ライブが,9月16日(月・祝)に行われることになりました。しかも,14:00開始の昼公演と,19:00開始の夜公演という,2回! タイトルは「ヒャダインクエスト 2013 〜勇者ひやた゛よ、旅の始まりだ〜」です。会場は渋谷のWWWで,チケットは7月27日(土)に3800円(税込)で発売予定。なお,このライブはオールスタンディング(整理番号付)となっていますので,前のほうで見たい方は早めの購入がオススメです。 |
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TETRIS Premium
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TETRIS for iPad テトリス
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