連載
【ヒャダイン】“オーバーキル”という至福の喜び
ヒャダイン/前山田健一 / 歌手・作詞家・作曲家・編曲家・プロデューサー
ヒャダインの「あの時俺は若かった」 |
第16回「“オーバーキル”という至福の喜び」
さて。僕は小さい頃からRPGが大好きなんですが,当時から今に至るまで,いわゆる“オーバーキル”できる状態までレベルを上げて遊びがちです。
4Gamer読者の皆様には釈迦に説法かもしれませんが,あえて説明すると,本来ならレベル10くらいで倒せる相手と戦うにあたって,事前にレベル20くらいまで鍛えあげ,ヘタしたらノーダメージで敵をボッコボコにしてやんよ! というのが,オーバーキルでございます。
みんな大好き「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」で説明しますと……。
まず主人公は,アリアハンという田舎の島で生まれます。その島でとうぞくのかぎをゲットして,複雑なダンジョンをクリアし,たびのとびらを通じてロマリアという王国のある大陸へワープしていく。これが序盤の流れです。
ただ,たびのとびらがあるダンジョンは,けっこう難関なんです。敵のまほうつかいにメラを唱えられたらHPをがっつり削られるし,アルミラージが大量に出てきてラリホーを唱えられた日には手も足も出ずボッコボコにされちゃいます。
終盤には,三つに分かれた道を選ぶところが出てくるんですが,一つが正解,ほか二つはドン付き,そう,行き止まりなんですね。ハズレを選んじゃうと引き返すハメになるわけです。もちろん敵は出まくります。おばけアリクイがグループで襲いかかってきたりして,もう涙目ですよ。アリクイのくせに攻撃力すごいんだもん。アリクイのくせに! アリクイはアリでも喰ってろよ!
はい。ということで,そんな厳しいロマリアへの旅。やっぱり地方から都会へ出て行くにはたいへんな苦労がつきまとうんですね。上京ならぬ上ロマ。
オーバーキル派の自分としては,余裕綽綽で上ロマしたいので,フィールドで昼夜を問わずモンスターを倒しまくってコツコツレベルを上げるのです。
メタルスライムもはぐれメタルも出てこないようなフィールドで,わずかな経験値しか持っていない敵を相手に,ひたすらコツコツ。いや,コツコツを通り越してもう“作業”です。ゲームって楽しむためにやるもののはずなのに,いつのまにか作業になっちゃうんですね。でもやめられない。ひたすらフィールドを歩き,エンカウントした敵を瞬殺。そしてまた歩く……。この繰り返し。
きっとフィールドのモンスター達にとって,我々はさぞかしおっかない4人組でしょう。表情一つ変えることなく,淡々と剣を振り,呪文を唱えて同胞を殺していく“死の4人組”。それが勇者パーティです。でも! 何と思われたって構いません。すべては順調に上ロマするために!
そんなこんなで,片田舎で長時間をかけて最強パーティになった勇者御一行様。といっても,レベル14くらいなんですけどね。でもこの島国でベギラマを唱えられるのは凄いことなんだぞ!! と,誰にともなく胸を張りつつ,万全の体制でダンジョンに臨みます。
もうね。サックサク。最初はあんなに強かったアルミラージなんて,こっちのレベルにビビって自ら逃げ出す始末。ふふふーん。気分いいぜ! おばけアリクイが4匹出たって? はい,魔法使いさん,よろしく!! 「ベ ギ ラ マ」。HP最大20くらいの敵に40くらいのダメージを与えるベギラマで燃やし尽くす。くーーーーっ! 爽快っ!!!! 俺に勝てるとでも思ったかぁ! オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!!
そしてあっさりロマリアに到達。ドラゴンクエストIIIの面白いところは,フラグを立てたり特定のイベントをクリアしなくても,自由に遠い地域まで行けちゃうところなんですよね。とくにロマリアに到達したら,一気にイシスというピラミッドがある王国まで歩いていくことができます。
もちろん想定されている行程を無視しているので,敵はめちゃくちゃ強いんですよ。あばれザルなんてHPが60ぐらいありますもん。あと火力がエゲツナイ。だってあばれザルですよ。見た目はマウンテンゴリラですよ。それが暴れてるんですもん。そりゃ強いわ。
アルミラージ(紫のうさちゃん)とは大違い。兎をボッコボコにしていい気になっていたあの日から一変,凶悪な巨大猿に瞬殺されてしまうのです。「嗚呼。俺って,井の中の蛙だったんだな……」と溜息を付くハメに。
……オラを怒らせたな。許さねぇぞ,あばれザル。オラは激おこぷんぷん丸だぞ!! と,ひとまずロマリア周辺,ちょっと足を伸ばしてカザーブの村まで移動し,昼夜問わずモンスターを倒しまくる毎日が始まります。あれ,デジャブ? なんかアリアハンでも同じことをやっていたような。
そう。オーバーキル道とは,忍耐の道なのです。キャタピラーやポイズントードなど,比較的倒しやすいイモムシやカエルを倒しまくる毎日。顔色一つ変えず,モンスターを倒しまくる見知らぬ外国人4人組。ロマリア国民も戦々恐々としたことでしょう。
やがて,経験値だけでなくゴールドも溜まっていきます。ある程度の額になったら,ルーラでイシスに移動して,超強い武器や防具を購入するのです。イシスって物価超高いの。だけど物がいいの。
高価な武器や武具を買うと,いきなりパラメータが上がるわけで,てつのよろいなんかを買った日には,今まで戦闘でけっこう痛い目に遭わされていた敵を相手にしても,傷一つ負いません。ペロリリンって音がして「さまようよろいはダメージをあたえることができない!」となるんです。ニヤリですよ,ニヤリ。
こうしてある程度レベルを上げつつ,装備をそろえたら,いざイシスへ。だけどピラミッドにはまだ行きません。イシスの周りでひたすらレベル上げ。だってピラミッドって時間かかるし敵が強いんだもん。ミイラおとこの進化系,マミーなんかが集団で出てくると怖いんだもん。色んな意味で。だけどニフラムで逃げちゃダメだ。
なので,イシス周辺では,ひたすらじごくのハサミというカニを狩りまくります。砂漠だからベギラマなどの炎系の呪文に耐性のある敵が多いので,ヒャダルコを唱えまくり。
そんなこんなでレベルを上げて,最大HPも最大MPもバッチリになったところで,ピラミッドに突入。もうサックサク。マミー? 弱っ! 弱いのお,マミーさんよお。そんなんだから成仏できねえんだよ,ミイラ野郎が! いひひひひ。
その後,まほうのかぎを手に入れてちょっとしたイベントこなしたら,ダーマ神殿の北にある,ガルナの塔へ直行! 最上階近くまで行ったら,今度はメタルスライム狩りですよ。武闘家のかいしんのいちげきと魔法使いのどくばりに頼って,ガシガシ狩っていくのです,ここからレベル上げは飛躍的に早くなります。だってメタルスライムが持っている経験値,パないもんね。
ほかのモンスターが出たら,にげる。メタルスライムが出たら,アドレナリン全開! たとえ逃げられたって構わない。ひたすら叩く。この段階で大体レベル30あたりまで鍛えあげます。呪文でいうと,ベギラゴンを覚えられるレベル。
このあたりで,序盤のメインイベントです。ルーラでロマリアまで戻り,ロマリアの王様の王冠を盗んだという,盗賊カンダタの討伐に向かいます。ちなみにファミコン版では,このイベントをガン無視してもストーリーを進められるんですよねぇ。ともあれ,王様の宝物を盗むとは,何たる不届き者! でも町の人に聞くと,怖い人みたい……。ふぅん……。
弱ぇ! 弱ぇよ,アンタ!! そんなご立派な斧を持ってるくせに,こちらに与えるダメージが3とかダセェよ!!!! ヒィヒヒヒヒヒ。しばらく,こちらのパーティーは何もしないのが僕の流儀です。相手にまず,実力の差を思い知らせて絶望の淵に落としこんでから,こちらは攻撃を始めます。
カンダタの子分はもはや1ターンでさようなら。カンダタ? ベギラゴン。かいしんのいちげき。あ,終わった。キタネエ花火だ。
これぞオーバーキル!! 気持ちいい!!!!
その後に出てくるボスや難ダンジョンも,事前の執拗なレベル上げによりオーバーキルを繰り返し,最後のボスすら楽々葬ってエンディングを迎えるのです。
さあ皆さん,こうした愚直なまでのレベル上げからのオーバーキル。とても気持ちが良くてスカッとするものなんですが,その後に残るのが何か分かりますか?
そう。虚無。
そこには虚無しか残りません。
「あー,俺,何やってるんだろう」
と,ゲームの電源をリセットボタンを押しながら切って,カートリッジを抜き取ったら,そこには虚無の現実。時間だけが過ぎている。せめてずっと,ゲームの世界に入っていられればな……。現実世界では,オーバーキルに相当する体験なんて,基本的にできませんからね。
そうそう。僕の「戦国BASARA3 宴」,あと4人を鍛えあげたら全員レベルMAXの200になります。もうすぐトロフィーもらえるんだ……。あは。あははははは……。
■■ヒャダイン/前山田健一(歌手・作詞家・作曲家・編曲家・プロデューサー)■■ 5月29日(水)にニューシングルとして,日本テレビで放送中の「笑神様は突然に…」のテーマソング,「笑いの神様が降りてきた!」(ミュージックビデオはこちら)をリリース予定。ちなみにこのシングルには,日本テレビの「PON!」のテーマソングである「PON!」と,もう一曲が収録されるとのこと。しかも「Men's Disc仕様」と「Lady's Disc仕様」の2バージョンがリリースされ,3曲目のカップリングが,それぞれ男子目線,女子目線と異なる内容になっているとか。価格はどちらも1200円(税込)です。 |
- 関連タイトル:
ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III
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