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[TGS 2009]「売れそうなものを作るのではなく,好きなことを売れるよう考えること」――名越稔洋氏,日野晃博氏らによるクリエイターズトークショウをレポート
トークショーは,浜村氏の司会のもと,「ゲームユーザーの広がりと変化」「これからのゲームについて」「これからのゲームクリエイターに望まれるもの」という,主に三つのテーマに沿って進められた。
日野氏は,「弊社で開発した『レイトン教授』などは,“お母さんにも解けるゲーム”をコンセプトに作り込みました」と,レイトン教授も,業界の将来に危機感を持って作られた作品であると説明。「ゲーマーなら自然に分かるような部分も,あえてフォーカスしたりした」と,既存のゲームにとらわれない姿勢も大事だとコメントした。
一方で名越氏は,「僕のは,むしろお母さんに『やめなさい』って言われるゲームだと思いますけど」と冗談を飛ばしつつ,龍が如くシリーズはプレイヤー層が,30代以上が7割,50代以上はなんと2割近くもいるという事実を報告。ゲームマーケットが子供向け以外にも広がりつつあるのだと解説した。
龍が如くの功績については,日野氏も大いに感じ入るものがあるようで,「龍が如くが数字をどんどん伸ばしていく様を見て,ゲームの未来も明るいと感じた」と,掛け値のない賛辞を送っていたのは印象的。日野氏と名越氏,それぞれ逆のアプローチではあるが,双方共に「ゲームのお客さんを増やす,広める」といった点に関しては,共通したものを持っているようであった。
というのも,日野氏曰く「今の時代ただゲームを作って出すだけでは,誰にも注目してもらえない」「遊んでもらうためには,いろいろな仕掛けが必要」とのことで,ゲームシステムや新しい遊び云々といった部分以外にも,「どう売るか」というプロデューサーの能力が重要だという話である。
この点については,名越氏もかなり同感だったようで,「龍が如くも,いろいろな仕掛け/フックを考えた作品でした」と,売るための努力の大事さを語る。このあたりの話は,以前4Gamerで行った名越氏へのインタビューでも語られていたのだが,ポジショントークであることを抜きにしても,ゲームが産業として存続していくためには,これら“お金の話”が必要になるのは至極当然である。
さて,最後のテーマは,業界の将来にも絡む話,すなわち「これからのゲームクリエイターに望まれるもの」についてである。会場に集まった視聴者,もしくはこの記事を読んでいる読者にも,ゲーム業界人/ゲーム業界志望者は多々いると思うのだが,日本を代表するトップクリエイターの二人は,次代にどうった才能を求めているのだろうか?
筆者がとくに興味深かったのは,やはり日野氏と名越氏の談話。日野氏が「最近は,携帯電話やWebサービスなど,世の中の環境そのものの変化が激しい次代です。ゲームを作るうえでは,自分の置かれている今の環境がどういうものかを理解したうえで,筋の通った作品を目指すべき」だとしたうえで,名越氏がそれをフォローする形で,「仕事としてやる以上は,どういったものが売れるのかというマーケティングの勉強は大事。だけど,それはそれとして,作るものはやっぱり“好きなもの”“作りたいもの”であるべきだと思う」とコメントしていた。
筆者なりに解釈すると,おそらく,マーケットの動向だけを見て「今はこれが売れるから」という理由でゲームを作っていては,エンターテイメントとしては失格だという話である。日野氏の言う「筋の通った作品を」という点も,恐らくは似たような部分を指していたであろう雰囲気で,これらは,クリエイティブとは何か,そしてそれを仕事にするとはどういうことかという本質を突くような発言だった気がしてならない。
名越氏は,さらに「自分が本当に好きなものじゃないと,面白いものは作れない」「だから,自分が好きなものを売れる(広める)ようになってほしい」とコメントするなど,マーケティング的な視点を持ちつつも,小手先の企画ではない,どこかプリミティブな面白さを持つ企画作りが,これからの時代はとくに重要なのではないかとし,次代を担う若者達にエールを送った。
ともあれ,軽快なトークならがらも,節目節目で重みのある言葉が飛び出した今回のトークセッション。最後には,名越氏が「実は,龍が如くチームによる完全新作も動いてます」と発言するちょっとしたサプライズ(?)もありつつ,講演は締めくくられた。
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