インタビュー
よくよく考えるとまだ珍しい“本格的な国産TPS”はいかにして生まれたのか。「ロスト プラネット 2」プロデューサー竹内 潤氏にインタビュー
「バイオハザード5」では,人気シリーズ最新作に相応しいゲームデザインに,シリーズ初のCo-op要素を大胆に組み込んで,世界中から高い評価を受けた竹内氏だが,「ロスト プラネット 2」に関しても,グローバル展開を見据えた作品作りで,順調なセールスを記録している。
4Gamerでは,「ロスト プラネット 2」の狙いや制作秘話,ゲーム開発に関するこだわりについて,竹内氏にインタビューする機会を得た。よくよく考えるとまだ珍しい,この“本格的な国産TPS”に興味がある人は,ぜひ本稿に目をとおしてほしい。
「ロスト プラネット 2」公式サイト
手応えは上々。不満点に関しては迅速な修正パッチで対応
4Gamer:
2010年5月20日,「ロスト プラネット 2」がついに発売されましたが,同作のプロデューサーである竹内さんの,現在の率直な気持ちはどのようなものでしょうか。
やはり,「大きい荷物を下ろした」という感じはありますね。
4Gamer:
「バイオハザード5」などとも開発が重なっていましたし,相当苦労をされたと思うのですが,「ロスト プラネット 2」に関しては,やろうと思っていたことはすべてやり切れましたか?
竹内氏:
はい。おかげさまで現場も高いモチベーションを保ち続け,最後まで詰め込めるだけ詰め込んでやろうという意気込みで開発できました。そういう意味では,やり残した感じはありません。
ただ,クリエイターって勝手なもので,いざ発売となると,アレをやればよかった,コレをやりたいな……という考えが浮かんでしまいます。時間さえ許すならば,生涯ゲームを作り続けられるんじゃないかと思うことがありますね(笑)。
4Gamer:
私も発売日からプレイさせてもらっているのですが,個人的には非常に満足感が高いです。実際にプレイしたプレイヤーからの評価はいかがでしょうか。
竹内氏:
セールス的には,正直まだまだ頑張ってほしいところはあるんですけれど,おかげさまでプレイヤーからの評価は非常に高いですね。とくに海外では,メディアとプレイヤーそれぞれの評価のズレが,図らずとも浮き彫りになった印象があります。
4Gamer:
確かに,海外のレビューサイトなどでは,やや厳しめの評価がなされていましたね。失礼を承知で言わせてもらうなら,私もそれを見て若干心配だったのですが,実際にプレイしてみると,想像以上に楽しめました。
竹内氏:
ありがとうございます(笑)。ユーザーレビューなどを見る限り,そういったプレイヤーさんはかなり多いようです。そういった意味では,一番届いてほしいところに届いたのかもしれません。非常に満足しています。
4Gamer:
「ロストプラネット」シリーズも,ジワジワと売り上げを伸ばし,最終的には全世界で280万本を売り上げています。
竹内氏:
はい。「ロスト プラネット 2」に関しても,プレイヤーの反響を見る限りでは期待できそうです。もちろん好評だけでなく,不評に対しても注目していますよ。プレイヤーの意見をもとに,6月7日にはPS3版の,6月11日にはXbox 360版のオンラインアップデートを実施しました(関連記事【1】 【2】)。
4Gamer:
なるほど。ちなみに当初から,発売後の反響などを見つつ,ゲームバランスの調整などを行うつもりだったのですか?
竹内氏:
ええ,もしプレイヤーの不満が募るような要素があれば,発売後でも可能な限り対応していこうと考えていました。
4Gamer:
具体的には,とりいそぎどのような部分を調整したのでしょうか。
竹内氏:
コンティニューの仕様や,一部武器のパラメータ,それと協力プレイ時にプレイヤーが“厳しい”と思う部分に関して,調整を入れました。
4Gamer:
私は主に友人と2人で遊んでいるのですが,いくつかのチャプターで,かなり苦戦した記憶がありますね(笑)。
竹内氏:
いやぁ,厳しかったでしょう,多分(笑)。開発側としては,「このバランスならギリギリいけるんじゃないの?」と,やや難しめに作ったのは事実なので。多くのプレイヤーが「厳しい」と感じる部分があるなら,それは真摯に受け止め,対応すべきだと考えています。
4Gamer:
「ロスト プラネット 2」は,非常に協力プレイがしやすい環境が整えられているので,ちょっと厳しめのバランスのほうが盛り上がったりもするんですよね。
竹内氏:
はい。2人でも4人でも,協力プレイを楽しんでもらえれば,厳しいからこその面白さが味わえるんですけど,それを我々が,すべてのプレイヤーに強要するのは良くないかなと。
4Gamer:
協力プレイがしやすい環境とはいえ,知らない人と一緒に遊ぶことに抵抗がある,という人の気持ちも理解できますし。
竹内氏:
そうですね。とくにエピソード3だと,ボイスチャットを用いた協力プレイが非常に面白いんです。ただボイスチャットとなると,単なる協力プレイよりもさらにハードルが高くなってしまう。
4Gamer:
私も,リアルの友達以外とボイスチャットをするのは,若干抵抗がありますね……。
竹内氏:
そういう人が多数派ですよね。ほかにも,ゲームをオンライン環境で遊びづらいプレイヤーもいる。出来る限り多くのプレイヤーを満足させようと考えるなら,修正パッチでのバランス調整は欠かせません。
4Gamer:
ちなみに,特定のマップでのBOTの挙動を改善するような,AIの調整も検討しているんですか?
竹内氏:
そのあたりにも手を加えたいところなんですが,AIが万能になりすぎても困りますし,それに関しては検討中といったところですね。
ロスト プラネット 2の遊びの幅
今回の「ロスト プラネット 2」では,オンライン対戦も大きなウリの一つになっていますが,こちらに関しての評判はどうでしょう。
竹内氏:
モードの種類やゲーム内容については,おおむね好評をいただいているようですが,勢力マッチでの“麗隊”人気が,あれほど高くなるとは思いませんでした(笑)。
4Gamer:
そういう意味では,勢力マッチでのバランシングが若干気になるという感じですか。やはり,有利な勢力にはどんどん人が集まってしまいますし。
竹内氏:
本当は勢力マッチを国別でやりたかったんですが,やはり国別となると,現実世界でのニュースに関連して,必要以上にエキサイトしてしまうこともあるでしょうし。
4Gamer:
それにつられる形で,ボイスチャットやインターネット上のコミュニティも荒れてしまうことも考えられます。
竹内氏:
ええ。……いまでも国別に興味はあるんですが,楽しく遊べる環境を提供するという意味では,今の形がベターなのかなと思います。
4Gamer:
おそらく,キャンペーンモードを1周したプレイヤーが,とりあえずという形で麗隊を育成しているケースが多かったでしょうし,勢力バランスは徐々にフラットになっていくかもしれませんね。
竹内氏:
その傾向はありますね。ところで今回,「ロスト プラネット 2」をプレイした人なら分かるところもあると思うのですが,普通のシューターのゲームでは起こりえないことが起こるゲームに作ったつもりなんですよ。
4Gamer:
確かに,キャンペーンモードだけを取っても,チャプター毎に工夫が凝らされていて面白いですね。
プレイヤー毎に戦い方,攻略法が違いますし,できるだけ“遊べる”システムを組み込んだつもりです。先日もあるメディアの方から聞いたのですが,オンライン対戦で3人乗りのバイタルスーツ(VS)の両サイドに,敵チームと味方チームが乗ったらしいんですよ。
4Gamer:
乗れてしまうんですか(笑)。
竹内氏:
乗れてしまうんです(笑)。で,敵と味方が同じVSに乗って,バルカンを撃ち合っていたところ,片方がVSから降り,操縦席に乗り移ってそのまま崖のほうまで動かした。
4Gamer:
なるほど,VSを敵ごと落としてしまおうと考えたわけですね。
竹内氏:
ええ。そのプレイヤーは敵をVSごと落として,自分は緊急脱出しようと考えたんでしょう。しかし相手に気付かれ,先に緊急脱出されてしまい,自分がVSごと落ちてしまったそうで。
僕らは,そういう幅とかゆとりをあえて残す設計をしているので,とくにオンライン対戦では,そういった“遊びの幅”みたいな部分に注目してプレイしてもらえると嬉しいですね。
4Gamer:
「ロスト プラネット 2」は,アバター要素にも注力されたタイトルだと思うのですが,それに関しての反響はいかがでしょうか。
竹内氏:
かなり好評ですね。やっぱり,日本人の方にはアニメ的なもの,という発想は先入観なのかなと,あらためて思いました。
4Gamer:
「ロスト プラネット」シリーズはSFということで,日本では特別有利な世界観ではありませんが,コスチュームやオブジェクトのデザインは素直に格好いいと思えるものですもんね。ちなみに「ロスト プラネット 2」のデザイン面に関して,竹内さんも結構関わっているんですか?
竹内氏:
「ロスト プラネット」のときは,きっちりと世界観を構築する必要があったので,かなり口出ししたんですけれど,そのときのアートディレクターが「2」でも続投ということで,今回は安心して任せられました。
4Gamer:
アバターといえば,自社作品だけでなく,他社作品とのコラボレーションも話題になりました。
「Gears of War」も「KILLZONE」も,大好評でしたね。「モンスターハンター」シリーズとのコラボ装備に関しては,問い合わせ件数がもっとも多いという状況です。
4Gamer:
キャラクターのカスタマイズ要素に関しても,TPSとしてはかなり充実していますね。
竹内氏:
海外産のTPSでは,こんなにカスタマイズ要素が充実しているものってあまりないじゃないですか。海外のプレスに見せても,「これはRPGじゃないよね?」というような感想をもらうことが少なくなかったです。そこはもう,「しめしめ」といったところです。
4Gamer:
しかし,自社の他タイトルだけでなく,他社タイトルともコラボレーションというのは,いろいろと大変そうな気がするのですが,実際のところどうだったんでしょうか。
竹内氏:
確かに,「どうやったの?」と良く聞かれます。しかし意外なことに,皆さんウェルカムで,いずれもスムースにことが進んだんですよ。これはもう,コラボしなきゃもったいなんじゃないかなと思うくらいに。
4Gamer:
かつては「真・女神転生III-NOCTURNE マニアクス」と「デビルメイクライ3」,最近では「METAL GEAR SOLID PEACE WALKER」と「モンスターハンター」のコラボレーションが大きな注目を集めましたが,今回の「ロスト プラネット 2」で,“他社タイトルとのコラボに強いメーカー”というイメージがより強くなりました。
竹内氏:
なんで皆さんがやらないのか,逆に不思議なんですよね。ゲームが好きな人からしてみれば,他社タイトルとのコラボは純粋に盛り上がりますし,今後も積極的にやっていけたらいいなと思いますね。
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ロスト プラネット 2
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(c) CAPCOM CO., LTD. 2010 ALL RIGHTS RESERVED.
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- ビデオゲーム
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