レビュー
「ウォーハンマー40,000」の知識ゼロでもすんなり世界に入り込める,爽快すぎるTPS
ウォーハンマー40,000: スペースマリーン
2011年10月27日,サイバーフロントより,「ウォーハンマー40,000: スペースマリーン」(PlayStation 3 / Xbox 360 / PC)が発売された。価格はいずれも7140円(税込)。
「ウォーハンマー」といえば,もともとはミニチュアゲームとして展開され,のちにテーブルトークRPGやRTS,トレーディングカードゲームなど,さまざまな分野に派生していった人気シリーズ。
今回紹介する「ウォーハンマー40,000: スペースマリーン」は,シリーズ初のSF TPS(サードパーソンシューティング)だ。いち兵士の視点で,ウォーハンマー40,000の世界を楽しめるのが特徴となる。
ゲームの舞台は,はるか遠い未来の世界。この時代の人類は宇宙に進出して帝国(インペリウム)を築き上げたのだが,「オルク」という緑色の肌を持つ種族と戦争に明け暮れているという状況だ。
帝国が戦争を続けていくために必要不可欠な軍事力は,「グライア」という工業惑星によって支えられているのだが,ある時この星に,オルクの侵攻を許してしまう。駐留していたインペリアルガードが必死の抵抗を見せるものの,戦況はオルクが優勢で,惑星そのものが壊滅の危機に陥っている。
この状況を打開すべく,帝国はエリート部隊「スペースマリーン」の派遣を決定する。彼らの任務は援軍である帝国解放艦隊の到着前に主要拠点を確保し,惑星内に存在する軍事資産を死守することにある。
プレイヤーは,スペースマリーンの中でも最大規模を誇る「ウルトラマリーン戦団」に所属するタイタス中隊長を操作し,任務に当たることになる。なお,タイタスの部下として,AI制御のスペースマリーンの隊員が2名同行してくれる。彼らは事実上無敵なうえに,ある程度は自発的に敵を倒してくれる頼り甲斐のある存在だが,もちろん基本的にはプレイヤー自身で戦わなければゲームは進まない。
ゲームのキーパーソンの1人である,帝国のドロガン審問官。惑星グライアに留まり,なにやら新技術の試験を行っている |
オルクを率いる「いくさ頭」。長だけあってほかのオルクと比べて,見た目はかなり凶悪そうで,数々の強力な攻撃も行なってくる危険な相手だ |
ちなみにスペースマリーンとは,肉体改造や厳しい訓練によって,驚異的な戦闘力や体力,精神力を身につけた兵士のことだ。彼らは主要拠点の確保という目的以外にも,「味方の盾」という役割を担っており,どんな局面でも怯まず,たとえ多くの敵と対峙しようが,コソコソ隠れるような真似もしない。ド派手な青い鎧を着込んでいるのは,あえて目立つ格好をして敵の目を引くためなのだ(そうだ)。こういった背景があるため,「ギアーズ オブ ウォー」タイプのTPSであるにもかかわらず,ゲームシステムとしてカバーアクション(遮蔽物に身を隠す)があえて(?)用意されていない。
以上のような設定でゲームはスタートするのだが,序盤はキャラクターの移動方法や武器の使い方などを学べるチュートリアルステージを兼ねている。これによってゲームを遊びながら操作に慣れていくことが可能だ。
ローカライズは英語音声に日本語字幕というオーソドックスなスタイル。字幕がちょっと小さめな印象で,少々見にくいかもしれない。
また,ローカライズに際し,敵キャラクターであるオルクの死体の内臓描写が削除されているが,部位欠損などは海外版同様の表現となっている。
本作は1人用モードである「キャンペーン」と,最大16人での対戦が可能な「マルチプレイ」が用意されているが,今回は発売前にプレイしていることもあり,キャンペーンのインプレッションを中心に見ていきたい。なお,レビューではPlayStation 3版を使用しており,ボタン表記などもそれに準拠している。
「ウォーハンマー40,000: スペースマリーン」公式サイト
銃や近接攻撃武器を使って
敵との激しい戦いを勝ち抜いていく
ゲームのメインモードとなるキャンペーンの難度は,イージー,ノーマル,ハードの3段階が用意される。ステージは第I〜第V編の5編用意されており,エピローグを含めて全18のチャプターで構成される。
難度を上げると敵の攻撃が激しさを増したり,こちらの被弾時のダメージが増したりと,クリアするのが難しくなるが,高難度でクリアすることで解除されるトロフィー/実績もあるようだ。
緑色の肌を持つため「グリーンスキン」とも呼ばれるオルク。戦闘時は毎回大量に出現してくる |
中盤以降に登場するケイオスは,オルクと共闘しているわけではないので,人類,オルク,ケイオスの3種族による三つ巴の争いに発展していく |
ゲームの仕組みとしては,一本道を進んでいくリニア形式となっている。チャプター内にはさまざまなミッションが用意されており,それをクリアすることで,新たなミッションが発生する仕組みだ。STARTボタンを押してゲームをポーズした際に現在のミッション内容を確認できるほか,目的地が青いカーソルで示されるので,進行方向が分からなくなるということもなかった。
ゲームの基本的な操作方法は,左アナログスティックでキャラクターの移動,右アナログスティックで照準のコントロール,□ボタンで近接攻撃,△ボタンでスタン攻撃,○ボタンでとどめの一撃,×ボタンで回避,R1で射撃,L1ボタンで照準モードへの切り替えといった具合。普段からFPS/TPSを遊んでいる人なら,すぐに馴染めそうなキー配置になっている。
また,タイタスは身を包む「アーマー」に守られており,敵の攻撃を食らうと,まずはアーマーの耐久値が減っていく。そしてアーマーがなくなった状態で敵の攻撃を食らうと,いよいよ体力が減っていくことになる。アーマーは安全な場所に隠れていれば,時間経過によって耐久値を回復させられるものの,体力は特殊な行動を取らないと回復しない。このあたりは後ほど詳しく紹介していきたい。
タイタス達の前には,オルクのほか,中盤以降には「ケイオス」と呼ばれるデーモンなどが立ちふさがる。敵の攻撃は銃撃,白兵戦,さらには超能力といったものがあり,鎧を着込んだ屈強な敵や,「ボム・スクイッグ」という自爆攻撃をする敵も登場。さらに特定のチャプターにはボスキャラクター的な存在の敵も登場し,スペースマリーン達を苦しめる。
タイタスが使える武器は,「ボルトガン」と呼ばれるマシンガンや,高倍率のスコープによって狙撃が可能な「ストーカー・ボルター」などの実弾系武器と,チャージショット(溜め撃ち)が可能な「プラズマピストル」,強力なエネルギーをショットガンのように広範囲に撃ち出す「メルタガン」といったエネルギー系武器がある。銃は一度に4種類まで携行できる。
そのほかに剣とチェーンソーをミックスしたような「チェーンソード」,まばゆい光を放ち,厚い装甲をも切り裂ける「パワーアックス」,敵を叩き潰すのに最適な「サンダーハンマー」など近接攻撃用の武器,敵をまとめて吹き飛ばせるグレネードも用意されている。
銃と近接攻撃用武器の切り替えは一瞬なので,例えばボルトガンを撃ち尽くしたところで,チェーンソードに切り替えて攻撃といったことが可能だ。ただし,サンダーハンマー装備時には,武器の重さから特定の銃しか使えなかったり,移動速度が通常より落ちたりといった制約も出てくる。
白兵戦では格闘ゲームのように,ボタンの組み合わせでコンボを繰り出すことが可能だ。例えば□ボタンを3連続で押すと,武器を素早く振り回して敵を攻撃できたり,□ボタンに続けて△ボタンを押すと,ソードやアックスで敵を斬りつけてからキックを行い,相手を一定時間気絶させたりできる。気絶中の敵の頭上にはオレンジ色のマークが目印として浮かんでおり,その時に○ボタンを押すことで「とどめの一撃」という追い討ち攻撃をかけられる。この攻撃を行うと体力を回復できるので,自ずと使用頻度の高いアクションにはなるが,発動中は無防備になるという弱点もあるため,ある程度敵の数を減らしてから使用したほうがいい。
本作はいわゆる「無双系」のように,1人で敵の大群に突っ込み,ソードやアックスを振り回して敵を屠ったり,銃で敵を攻撃できたりと,戦闘はバラエティに富んでいて楽しい。
また,敵によっては実弾よりエネルギー系の攻撃が効きやすいなど,弱点もあるようだ。相手に合わせて使用する武器を変えるというのも,ゲームを攻略していくうえで重要といえるだろう。
気絶からのとどめの一撃。武器によって演出は異なるものの,頭部を破壊したり,真っ二つに切り裂いたりといずれもかなりのインパクト。血しぶきも結構すごい |
ゲームポーズ時に操作説明を見ると,各近接武器のコンボを確認できる。これを使いこなして厳しい戦いを勝ち抜いていこう |
なお,冒頭でも触れているように,ゴア表現の規制は入っているものの,とどめの一撃によって敵がバラバラになるような描写はそのまま残されているし,返り血を浴びて鎧が真っ赤に染まったりもする。それなりに過激な表現なので,苦手な人にはちょっとお勧めできない。
フューリーモードやジャンプパックからの攻撃など
敵を蹴散らす手段は豊富に用意されている
銃撃や近接攻撃以外にも,いくつもの攻撃方法が用意されている。タイタスはL3(左アナログスティック押し込み)でダッシュするのだが,この最中に□ボタンを押すと,ショルダータックルのような攻撃「猛進」を行える。猛スピードからのタックルは十分な威力があり,敵との距離を一気に詰めつつ攻撃できるため,非常に重宝する。
それ以外に,使用できる場所は限られるものの,「ジャンプパック」という,一定時間滞空できるブースターを装備できるシーンがある。縦横無尽に空を飛べるが,このとき空中で□ボタンを押すと,上空から地面まで急降下し,敵を踏みつぶしたり,着地時に発生する衝撃波で攻撃したりできるという「グラウンド・パウンド」という技を使用可能だ。
ショルダータックル,グラウンド・パウンドともに相手を気絶させる効果があり,いずれもとどめの一撃につなげることが可能だ。とくにグラウンド・パウンドは一方的な攻撃が可能で,これで次々と敵を蹴散らしていくというのは,派手な効果音と相まって楽しかった。
そのほか,チャプターを進めると,「フューリーモード」というアクションがアンロックされ,敵を倒した際に獲得したエネルギーがMAXまで溜まると使えるようになる。使用時には攻撃力の増大,体力の自動回復ができ,ゲージが空になるまで効果は持続する。敵の大群を相手にするときや,自身がピンチに陥ったときに使うといいだろう。
こちらは最初,上記の2つの効果のみ得られるが,ゲームが進むと,どんどんアップグレードが可能になる。その内容としては,フューリーモード使用時に照準モードにすると,敵の動きが遅くなる「精密射撃モード」や,ゲージの消費量を減らし,フューリーモードの持続時間を延長する「スペリア・フューリー」などがあり,ゲームを進めるほど,使い勝手は良くなっていくのだ。
フューリーモード使用が可能になると,画面左下にあるアイコンが輝く。使用中はタイタスの武器が金色のオーラに包まれ,圧倒的な力で敵の大群を片付けられる。攻撃時のエフェクトも派手になる |
精密射撃モードは敵の動きがゆっくりになるので,とても狙いをつけやすくなる。この最中に10体の敵を倒すと解除されるトロフィー/実績もあるが,なかなか難しい |
ストーリーが終盤にいくほど,敵の攻撃は激しくなるので,こういったシステムを適宜使用していかないとクリアするのはなかなか難しい。
マルチプレイは最大16人でのプレイが可能
スキルの装着,外見のカスタマイズなどで個性も出せる
マルチプレイについても簡単に紹介しておこう。本作は8対8のチーム戦を行える。用意されたモードは,ステージ内にある目標を確保してポイントを稼ぐ「制圧」と,相手より多くの敵を倒してポイントを稼ぎ,より多くを獲得したほうが勝ちとなる「せん滅」の2つがある。
マルチプレイでは専用のクラスが3つ用意されており,それぞれのクラスに特徴づけがなされるようだ。例えば「タクティカルマリーン/ケイオススペースマリーン」ならば,射撃と白兵戦のバランスが取れている,「アサルトマリーン/ラプター」は白兵戦のエキスパート,「ディヴァステイター/ハボック」は,ほかのクラスが扱えない重火器を使用できるといった具合だ。
また,マルチプレイにはレベルがあり,プレイして経験値を稼いでいくことによりレベルアップして,「クラススキル」を会得できるようになる。経験値は「敵を倒す」「目標を確保/解放する」(制圧モードのみ)といったもののほか,「ヘッドショットを決める」「ジャンプパックで飛行中の敵を撃墜する」など,特殊な倒し方をしても,スキルボーナスという形で余分に経験値を得られる。
武器ごとにもチャレンジが設定されており,それをクリアすると「兵器スキル」をアンロックできるようだ。
スキルはいくつも用意されるが,同時に装備できるのは2つまで。自分のプレイスタイルに合わせてチョイスする必要があるといえるだろう。
そのほか,クラスごとに設定されている基本装備の変更,オリジナルの兵装の作成,アーマーのカラー変更など,外観のカスタマイズなどにも対応する。
「ウォーハンマー40,000」という作品を知らなくても大丈夫
丁寧に作られた良質のTPSだ
筆者は「ウォーハンマー40,000」に関しては,もともと「PC向けのRTSですよね?」という程度の知識しか持っておらず,とりあえず名前だけは聞いたことがあるというレベルだった。
ゲームを遊ぶ前は正直,「固有名詞がいっぱい出てきて,分かりにくそうだな……」とちょっと偏見すら持っていたのだが,実際に遊んでみるとそんなことはなく,SFの世界を舞台にしたTPSとして,何の問題もなく遊ぶことができた。
もちろんシリーズのファンのほうが,より世界観に入り浸ることができ楽しく遊べるのだろう。しかし知らなくても,話についていけないということはまったくない。
「ウォーハンマー40,000」のフランチャイズでは初のシューティングゲームだが,初めてとは思えないほどゲームは丁寧に作られており,しっかり遊べる作品に仕上がっている。
キャンペーンも適度なボリュームでだれることなく遊べたし,マルチプレイもあるため,長く楽しめるのではないかと思う。SFの世界観や一騎当千の爽快感を味わいたいというのなら,オススメできるタイトルといえる。
「ウォーハンマー40,000: スペースマリーン」公式サイト
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