レビュー
すべてが高い次元で融合した,傑作アクションシリーズの最終章
ゴッド・オブ・ウォーIII
本作は主人公のクレイトスが,鎖でつながる双剣を武器に,ギリシャ神話の怪物や神々を相手に戦う3Dアクションゲームだ。プラットフォームはPlayStation 3となり,開発はこれまでのシリーズすべてを手掛けてきたSony Computer Entertainment Americaのサンタモニカスタジオが行っている。
神々に弄ばれるスパルタの戦士・クレイトスが,その神に復讐をすべく戦いを繰り広げるという展開は従来作通り。3年前に発売された前作「ゴッド・オブ・ウォー II 終焉への序曲」をラストまでプレイした人にとっては待望といえる続編で,物語はその「II」のエンディングから続くシーンから始まっている。
クレイトスの顔半分がアップになるタイトルはシリーズ伝統。メニューの“トレジャー”は特典で,最初はメイキング映像だけを見られる |
“最初からクライマックス”と,ユーザー間で評判になる本シリーズ。ほかのゲームではラスボスと思えるような巨大な敵の登場や,ダイナミックなカメラワークが序盤を盛り上げる |
ただ綺麗なだけじゃない! グラフィックスをさらに引き立てる演出の妙
馬の頭と甲殻類の脚を持つ不気味なリヴァイアサン。ガイアに襲いかかるとともに,クレイトスもそのターゲットとなる。リヴァイアサンの戦闘では,壁や天井に張りついて戦うというアクロバティックなシーンもある |
巨大化して襲いかかるポセイドンが登場すると,リヴァイアサンが彼の身体の一部だったということが分かる。体全体を流れる水で表現するセンスに脱帽 |
普段からPS3やXbox 360のゲームを遊んでいる人にとって,美しいグラフィックスは見慣れたものかもしれない。だが,GOW3はもう一段上をいっており,何よりそれを見せるのがうまい。その具体例を紹介しよう。
ゲームを始めると最初に繰り広げられるシーンでは,クレイトスがガイアの上で戦っており,その向こうで別のタイタン族がリヴァイアサンや空を飛ぶヘリオスと戦っているのが見える。やがてリヴァイアサンはクレイトスが戦っているガイアの腕に襲いかかる。そして一旦引いたカメラが,苦しむガイアの表情を映しながら再び腕にフォーカスすると,ガイアの腕にぶら下がってリヴァイアサンと戦うクレイトスがいる。リヴァイアサンに一定のダメージを与えるたびに状況が変わる様子を,大胆なカメラワークで見せていくこのシーンでは,GOW3の演出のマジックをたっぷりと味わえるはずだ。
巨大なタイタンが山肌をのぼり,自分もガイアの上で戦っている。もちろんこれらのシーンは,シームレスで展開する |
ステージ内の仕掛けなどのヒントをカメラワークによってさりげなく見せる手法により,プレイヤーは攻略方法を直感的に思いつく。レベルデザインの妙がここに |
従来の操作をベースに大幅に進化したアクション
「○」ボタンで敵を掴んだあとは,「○」「×」「△」「□」それぞれで動作が異なる。「□」ボタンで敵を盾に突進していく動作が強力で,ザコ敵が多い場所でとくに重宝する。これも新要素の一つだ |
とくに後半の強敵相手や難度の高い“タイタン”以上のモードを遊ぶときは,防御や右スティックを使っての回避などのアクションを使いこなさないと厳しい戦いになるだろう。ゲームを進めていくと,“ハデスの鈎爪”“アポロの弓矢”“ネメアのカエストス”など,ブレイズとはひと味違う武器も入手でき,戦闘中の選択肢はさらに増え,ゲームの厚みが増す。
「L1」ボタン+「○」ボタンで出る“ヒュペリオン・ラム”は,敵をブレイズで引き寄せて,その勢いでタックルする新技。このように,「L1」ボタンでガードしながら出せる技も増えた |
クレイトスの武器は,敵を倒すと手に入る赤い“オーブ”を使って強化できる。攻撃力が上がるのはもちろん,使える技も増えていく |
ネメアのカエストスは,PSP版のガントレット・オブ・ゼウスに近い武器で,敵を殴りつけて攻撃する。殴るさいにヒットストップの演出が入り,クレイトスの力強さを体感できる |
敵を残虐に倒すCSアタックもパワーアップ
CSアタックは,画面に表示されるマークと同じボタンを押せば成功となる。ただしスティックを回す場面などもあるので,気は抜かないように。ミスするとダメージを受けたり,最悪やり直しとなる |
サイクロプスの目玉を素手で引きずり出すシーン。殺るほうではなく,殺られるほうの動きにも注目だ |
CSアタックは本作の残酷描写が際だつところで,大型の敵やボスクラスの敵に対して成功したときのシーンは本当に惨い。サイクロプスの目玉を抜き出す,ケンタウロスを引き倒してはらわたをぶちまける,ゴルゴンの尻尾を踏みつけて首を後ろに引きちぎるなど……。CEROレーティングがZ指定になっただけあって,この手の残虐描写は北米版とほとんど変わりがないようだ。激しい血しぶきが飛ぶ戦闘をしたあと,クレイトスの身体に返り血がしばらく残っているという演出などもあるので,その手の表現が苦手な人は注意してほしい。
サイクロプスやケルベロスなどの一部の敵は,CSアタックのあとに操れることがある。これを使わないとクリアできないシーンもあるのだ |
伝説の怪物を見事にキャラクター化。ゲームに違和感なく溶け込んでいる凄さ
ゴルゴンはかなり早い段階で登場。アルビノのニシキヘビを思わせるてかりのある下半身の表現には驚かされるはず。CSアタックで倒せば,周囲の敵を一時的に石化できる |
ボスキャラクターとなるのは,ゼウスやポセイドン,ヘルメスにヘラクレスなど,誰もが一度は名前を聞いたことがあるであろう神々だ。みんな“いい顔”をした個性派揃いで,その雰囲気は特撮ヒーローものに出てくる敵幹部のようでもある。
相手が誰であろうが,一貫して殺害することで目的を果たすクレイトス。しかし,物語の後半に,ある人物との接触で,それまでとは少し違った態度を見せる |
ヘリオス惨殺のシーンは北米版と比べても,若干カメラワークが違う程度の変更になっている。彼の頭は,暗所を照らし見えないものを探すアイテム「ヘリオスの頭」として持ち歩かれることとなる |
冥界の鍜治屋ヘファイストスの妻のアフロディーテは,クレイトスの“お相手”として登場。ベッドの上で“激しい一戦”が繰り広げられる |
クレイトス最後の戦いの結末は……!?
前作の発売から約3年,プラットフォームをPS3に移し,北米版ともそれほどズレのないタイミングで発売となった本作。ボリューム的には,シリーズ全作品をデフォルトの難度でクリアできた程度の筆者の腕で,“神(普通)”の難度での実質プレイ時間は14〜15時間程度。時間だけ見るとやや短めな印象を受けるかもしれないが,ここまで書いてきたようにゲームプレイの密度は圧倒的に濃く,十分満足のいく内容だった。
ゲームクリア後のお楽しみの一つとして遊べるようになる“オリュンポスの試練”。丸いアリーナの上で,特定のクリア条件を目指して戦う |
ゲーム中の自由度はあまり高くなく,マルチプレイもないが,そのぶん演出やステージの作り込みに力を入れることで,クレイトスの最後の物語に華をもたせている。長いシリーズを経て,クレイトスや敵キャラクターのアクションは高度なレベルまで進化し,さらに絶妙な難度調整によって,プレイヤーのスキルに応じて楽しめるのもポイントだ。
少しだけ気になったのは,ローカライズ周りについて。前々作と前作の日本版では,神々がクレイトスのことを“スパルタの亡霊”と読んでいたが,本作では“スパルタ人”と呼ぶことがほとんどで,なんとなくニュアンスが違った。そのほかにもクレイトスと神々との会話のいくつかに微妙な違和感を感じることもあった。また,特典のメイキング映像の日本語字幕が見づらいのが残念だ。もっとも,こういった些細な点ぐらいしか気になることがなかったほど,本作のアクションゲームとしての完成度は高い。
もちろん残酷な描写もあるうえにZ指定なので,万人にお勧めできるわけではない。だが,プレイするかどうかを迷っているのであればぜひ遊んでほしいし,仮に過去のシリーズ作を遊んでいないからという理由で本作のプレイを躊躇しているのであれば,それはもったいないと断言できる。本作からでも遊ぶべきだ。ちなみに,PlayStation 2用ソフト「ゴッド・オブ・ウォー」「ゴッド・オブ・ウォーII 終焉への序曲」の2タイトルをPS3向けにHDリマスターし,一枚のBlu-rayディスクに収めた「ゴッド・オブ・ウォーコレクション」がカプコンより発売されている。シリーズを最初から楽しみたい人は,こちらの購入を検討してみるのもいいだろう。
物語の詳しい結末は書かないが,一応はここで終わりを見る「GOW」シリーズ。開発陣も2009年のE3の時点で最終作として開発していると語っていたが,現在はどう考えているのだろうか。新たな作品に着手するのか,それとも終わったはずのシリーズを続けるのか,今年あるいは2011年のE3あたりで,ぜひ発表してほしいものだ。
「ゴッド・オブ・ウォーIII」公式サイト(要年齢認証)
- 関連タイトル:
ゴッド・オブ・ウォーIII
- 関連タイトル:
ゴッド・オブ・ウォー コレクション
- 関連タイトル:
ゴッド・オブ・ウォー トリロジー
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- ゴッド・オブ・ウォー III(初回生産版:主人公クレイトスの「スキン」ダウンロードプロダクトコードチラシ封入)
- ビデオゲーム
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