プレイレポート
絶妙に表現された手術シーンの緊張感がたまらない。医療シミュレーションWii用ソフト「HOSPITAL. 6人の医師」のインプレッションを掲載
「HOSPITAL. 6人の医師」公式サイト
各医師にはそれぞれドラマティックなシナリオが用意されており,それが同時間軸の中で絡み合いながら進行していく。シナリオのインターバルごとに自由に主人公を切り替えられるので,一人の医師のシナリオを進められるだけ進めていってもいいし,複数のシナリオを並行して進めても構わない。また,6分野それぞれのゲーム性が異なっており,その1分野ずつをパッケージソフト化してもおかしくないぐらいのクオリティに仕上げられている。
6つの医術分野と6つのシナリオがしっかりとまとめ上げられており,ゲームとしての完成度はかなり高い。そんな本作の概要を紹介しつつ,インプレッションをお届けしよう。
●外科
●救急
●整形外科
●内視鏡
●診断科
●検視
カドゥケウスシリーズと比較すると,難度はかなりやさしめ。より手軽に楽しめるゲームへと変貌
発売前から公言されていた通り,HOSPITAL.の難度は誰もがクリアできることを前提に調整されている。初心者向け難度の「INTERN」では,オペに失敗したとしてもその場面から再開できるようになっており,カドゥケウスシリーズで挫けそうになった人でも,トライを続ければ必ず先に進めるよう配慮されている。
一方,通常難度の「RESIDENT」は,どれだけ処置が進んでいようとも,失敗してしまうとオペの最初からやり直しとなる。とはいえ,患部に施すべき器具のアイコンが逐一表示されるなど,症状ごとの対処法を記憶していなくてもオペがスムーズに進行できるので,カドゥケウスシリーズでランクS以上を余裕で叩き出すような人は,RESIDENTの外科手術もあっさり突破してしまうに違いない。それ以外にオペが必要となる救急,整形外科,内視鏡に関しては術式内容や操作方法が各々異なるため,慣れるまではちょっと苦労するかもしれない。1周目はオペのランクは気にせずストーリーを存分に堪能し,突き詰めたプレイは高難度が開放される2周目以降の楽しみにとっておくといいだろう。
ひとまずエンディングまで進めてみたが,挫けそうになるぐらい難度の高いオペは見当たらなかった。難しいのではないか……と思っている人は安心して問題ない |
内視鏡は操作がやや特殊。一気に進めようとすると器官の内壁にぶつかり患者にダメージを与えてしまうし,器具の選択もその都度「Cボタン」を押す必要がある。感覚に慣れるまでは少々苦労するかも |
手術の緊張感が絶妙に表現されたCO-OPプレイにも注目!
本作は「カドゥケウス NEW BLOOD」(以下,NB)と同様に,CO-OP(2人協力)プレイモードが実装されている。NBにおいては,外科手術では2人ともすべての器具が使用可能であり,あらかじめ担当器具を決めておいたとしても,危ないときはどちらかがすぐ手助けに入ることができた。だが本作では担当器具をあらかじめ分配しておかねばならず,自分の作業は責任を持って遂行する必要があり,そして相手の作業には一切手を貸すことができないという仕様だ。ルールとしては若干厳しくなったように思えるが,このもどかしさが逆によい意味での緊張感の増幅へとつながっている。息詰まるオペの最中に「早く縫って!早く!」「バイタルやばい!バイタル!」「ちょっと黙ってて!」などと言葉を投げ合う回数も圧倒的に増えたし,オペ後に反省会(?)を開いて道具の担当を変えてみるといった,CO-OPプレイならではの楽しさが飛躍的にアップしていると感じた。
しかし残念なことに,6つの医術すべてでこの楽しさが味わえるわけではない。整形外科は1作業ごとの交代制,内視鏡医は時間ごとの交代制,救急医は患者ごとの交代制でCO-OPプレイを行うのだが,診断医や検視は完全に1人プレイ専用となっている。NBでは全編を通して2人で進められたが,本作では一時的にどちらかが手持ち無沙汰になってしまうことがあり,その点には物足りなさを感じた。次回作があるのならば,CO-OPプレイも完全に融合させた,さらなる進化形を見せてほしいところだ。
CO-OPプレイが一番盛り上がるのはやはり外科手術だろう。どちらがどの器具を担当するかは自由に決められる |
救急のCO-OPプレイもなかなか白熱する。患者ごとに担当が決まるので,自分がモタモタしたせいでパートナーの担当患者が力尽きてしまうことも |
医療ゲームといえどもエンターテイメント作品
重く考え過ぎずに手にとってみてほしい
医療の現場が題材となると,堅かったり重かったりといったイメージが先行しがち。とはいえ,医者は人の命を預かる職業であるからして,あまりにチャラけた内容もどうかというもの。その点,本作は重いテーマとエンターテイメント性をバランス良くミックスしていると感じた。登場する6人の主人公はおよそ医者とは思えない風貌であったり,性格であったりと,シナリオにおいてもそのフィクション部分がかなり際立つ。テーマが重いと内容も説教臭くなってしまいがちだが,それを現実離れしたキャラクター達が程よく緩和してくれているのだ。
反面,医療に関わる部分に突飛な設定はほとんどないように感じられ(あくまでも素人意見ではあるが),むしろ自分が医者になったような感覚に陥るほどにしっかりと,それでいて専門知識を持たずとも診断が進むようスマートに作り込まれているのが印象的。医療ものだからといってリアルさだけを追求するのではなく,ゲームとしての楽しさを前面に押し出したこのバランスは,絶妙というほかない。テーマの重さから敬遠している人も,たまには装備を医療器具に持ち替えて,人々の命を救ってみるのはいかがだろうか。
ところで,冒頭に「新タイトルという位置づけ」と記したものの,「カドゥケウスZ 2つの超執刀」の主役の1人だったミラ・キミシマが,本作でも6人の医師のうちの一人として登場している。したがって,カドゥケウスシリーズとは完全に違う世界観なのかと問われれば,答えはノーということになるだろう。ストーリー的に直接的なつながりがあるわけではないものの,どこかでカドゥケウスシリーズとのクロスオーバーがあるのではと,シリーズファンなら期待せずにいられない。そこはぜひ,実際にプレイして確認してほしい。
懲役250年の天才外科医など,個性的すぎる6人の主人公達。だが医療に懸ける熱い思いを持っているという点は皆共通しているようだ |
個別シナリオ6人分をクリアしないと解除できないものもある。この封印が解かれてからが物語の本番だ |
「HOSPITAL. 6人の医師」公式サイト
- 関連タイトル:
HOSPITAL. 6人の医師
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(c)ATLUS CO.,LTD. 2009