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Xbox 360向けのサイコスリラーアドベンチャー「Alan Wake」,その概要と魅力を開発スタッフに直接聞いてみた
この先行体験会では,発売に先駆けて「Alan Wake」をプレイできただけでなく,本作のデベロッパである,Remedy Entertainmentのマネージングディレクター,マティアス・ミリン氏による直々のプレゼンテーションとショートインタビューも合わせて実施された。
ここでは,プレゼンおよびミリン氏の合同インタビューの模様をお伝えする。なお「Alan Wake」のプレイレポートは,後日あらためてお届けする予定なのでお楽しみに。
「Alan Wake」は,フィンランドのデベロッパであるRemedy Entertainmentが開発したアクションアドベンチャーだ。ミリン氏曰く,本作はサイコスリラー調のストーリーとなっており,海外ドラマのテレビシリーズのようなエピソードが進行していくそうだ。
主人公のアラン・ウェイクは,ベストセラー作家でありながら,もう2年以上も新作を書いていないという,いわゆるスランプ状態。そんな彼が,妻のアリスとともにバケーションで郊外に出向くこととなった。しかし,滞在先のブライトフォールズに着いたその夜,アリスは何者かに連れ去られてしまい,アラン自身も気づいたときには山中の大破した車の中にいた。
その道すがら,アランは書いた記憶のない“自分自身の原稿”を1ページ,また1ページと発見する。さらに不可思議なことには,その原稿──失われたページ──に書かれた内容は,現実となってアランの身に降りかかる。こうしてアランは,アリスの失踪に始まる不可解な謎に挑むことになるのだ。
ミリン氏への合同インタビューでは,開始から長きにわたった開発の経緯や本作のコンセプト,そしてダウンロードコンテンツなど,今後の展開について早くも話を聞くことができた。以下にその概要を掲載しよう。
──「Alan Wake」は開発が長期に及びましたが,実際にはどのくらいかかったのでしょう?
Alan Wake自体は,2005年に開発を始めました。しかしその前段階として,2004年からRemedy Entertainmentの技術を使って新たにどういうことができるか,検討と検証作業を行っていました。
大変長いプロジェクトがようやく完了したわけですが,ディテールにはそれだけの情熱を注いだ成果が表れていると自負しています。そういった部分を,とくに日本の皆さんにはご理解いただけるのではないでしょうか。
──最も注力した部分,チャレンジした部分を教えてください。
まずゲームデザインに関しては,非常に苦労しました。ストーリーを語る部分と,実際にゲームをプレイする部分をいかにうまく組み合わせるか,ですね。
我々は,ストーリーパートがあって,ゲームパートをクリアして,またストーリーの続きが始まって……というような構造にはしたくなかったんです。
次に“光で戦う”ことの実現でした。これはゲームパートで掲げた高いレベルのコンセプトで,一般的なガンアクションゲームのように,照準カーソルで狙いを定めるのではなく,光を当てることで攻撃するというものです。
また,このゲームには三つの重要な要素が存在します。一つ目は主人公の顔,二つ目はフラッシュライト(懐中電灯)を使うこと,そして三つ目は銃を使うことです。この三つをうまく組み合わせようと考えました。
──E3 2009以降のポストプロダクションでは,編集/改善作業を行っていたとのことですが,具体的な内容を教えてください。
まず“アクティブカメラ”を採用しました。これはアランの背後から敵が迫っていることを,プレイヤーに知らせるためのものです。敵がまさにアランに襲いかかろうとする場面を見せるため,カメラを切り替えるわけです。
もう一つ採用したのが,通称“自由の女神効果”です。これは敵が振りかざした斧をギリギリのところでかわしたときなどに,スローモーション効果を入れてニアミス感を鮮明に演出するものです。
ただ,こうした効果は,ゲーム側でトリガー判定を行っているので,必ず発動するわけではありません。実は今日の私のデモプレイ中も,発動していないケースがありました。
──エピソードの総数を教えてください。
全6章です。エピソードそれぞれにロジックが存在し,お互いに関連しながらクライマックスに繋がっていきます。また,各エピソードは時間軸に沿って進んでいきます。
ゲーム内では,アランがあたかもテレビの登場人物であるかのように,トークショーに出演し,スクリーンが複数表示されるような場面もあります。どのスクリーンが現実なのか,あるいはすべてが現実なのかを問うようなシーンですね。
ある事象が頭の中にあることなのか,それとも実際に発生していることなのか,プレイヤーに考えさせる仕組みになっています。
──エンディングまでの総プレイ時間はどのくらいですか?
ミリン氏:
プレイヤーによって変わるので,答えるのは難しいですね。一般的なアクションアドベンチャーと同じくらいのボリュームですが,サンプルとしては,10時間程度でクリアする方がいる一方で,15時間以上かけている方もいます。
ゲーム内に存在する全100ページに及ぶ原稿や,探索コンテンツを全部見つけることにチャレンジしたり,戦闘シーンで敵のパターンをすべて経験したりと,時間をかけて楽しむことができます。
──“光”と“闇”のコントラストが見た目に印象的ですが,それは“街”と“森”の雰囲気の対比にも現れているように感じました。これは意図的なものですか?
ミリン氏:
そのとおりです。
現実的な問題としては,真っ暗で何も見えない中でゲームをプレイしても楽しくありません。そこで“暗い”といっても,その中でぼんやりと物が見えるようにしました。例えばブライトフォールズの住人が“闇”に支配されていく──青と黒のインクが水に溶けていく――シーンです。あれが真っ暗では何だか分かりませんが,後ろから光を当てることで目で確認できるようになっています。
──「Alan Wake」では,音楽へのこだわりを非常に強く感じました。
ミリン氏:
ペトリ・アランコ氏というフィンランドの著名なクラシックの作曲家を起用し,総計4時間分の曲を書いてもらいました。また,それらの曲は主にシンセサイザーを使って演奏しているのですが,2010年初頭に,ドイツで録音したオーケストラのライブ演奏を取り込んでいます。
これは,ライブ演奏を入れることでゲームに暖かみを出すためです。大部分の曲はリミテッドエディションに収録されていますが,それとは別個にCDをリリースしたいとも考えています。
──ノリのいいロック調の曲もありますよね。
クラシックな曲調が大半を占めますが,中にはロック調のものもあります。その歌詞は,ゲームの次の展開を匂わせるような内容です。
ゲーム序盤のダイナーでアランが出会う二人のオールドロッカーがいますが,彼らは1970年代に活動していたバンド「OLD GODS OF ASGARD」のメンバーなんです。またエピソード4のステージで流れているのは,そのバンドの曲です。
これはRemedy Entertainmentのサム・レイクが,神話から引用した言葉を散りばめて書いています。実は歌詞が密接にゲームとリンクしています。
──発売前で気が早いのですが,追加ダウンロードコンテンツの配信予定はありますか?
ミリン氏:
マイクロソフトさんがこの場にいるので言葉を選ばないといけないのですが(笑),2010年内に,二つ以上のコンテンツを提供する予定です。今回の「Alan Wake」がテレビシリーズの“シーズン1”だとすると,大団円を迎えて皆さんに大きな達成感を抱いてもらうことが重要です。
その一方で,私たちは,皆さんをストーリーの中のもっと広い世界に導きたいとも考えています。そのためダウンロードコンテンツは,“シーズン2”が始まるまでの間に放映される“スペシャル版”のような存在になります。
──ということは,「Alan Wake」続編の開発にすでに着手しているんですか?
率直に質問に答えるなら,続編が出るかどうかはプレイヤーの皆さん次第です。
ただ我々としては,「Alan Wake」をこの1タイトルだけで終わらせたくない,という思いはあります。そのために,我々はこのタイトルの開発に5年も費やしたのです。物事には順序というものがありますから,我々も一歩一歩着実にビジネスを展開していきます。
例えばリミテッドエディションには,「Alan Wake」にまつわる本やサウンドトラックが同梱されています。また,これらのダウンロードバージョンも2010年内にリリースする予定です。こういったものは,「Alan Wake」の世界をより深くお伝えしたいという,我々の気持ちの表れなんです。
我々は「Alan Wake」を,このタイトルでしか味わえないものにしていきたいと考えています。
──「Alan Wake」はグラフィックスが非常に美麗ですが,より高解像度でプレイできるPC版での展開予定はありますか?
ミリン氏:
Xbox 360版のみです。これはパブリッシャであるマイクロソフトさんの判断でもありますが,我々は50人という少数体制ですので,一つのプラットフォームに集中したほうが,最大限の力を発揮できると考えています。
──「Alan Wake」はシングルプレイ専用のタイトルですが,Co-opプレイなどマルチプレイに対応する案はなかったんですか?
太古の昔から,人々は焚き火の周りに集まって,一人のストーリーテラーの話に耳を傾ける,ということをやってきました。我々は,アランをそのストーリーテラー役にしようと考えたのです。アランの口を通じて,皆さんにストーリーを提供していく。その考えを持って,「Alan Wake」を作りました。ただし,今後も同じかどうかは未定です。
──ネタバレにつながるかもしれませんが,教えてください。最高難度「ナイトメア」でしか出現しない原稿があると聞きました。これは,ナイトメアをクリアしないと「Alan Wake」のストーリーは完結しないということですか?
ミリン氏:
いえ,そんなことはありません。どのような楽しみ方をしても,エンディングに到達すれば主なストーリーの内容を知ることができます。詳しくは言えませんが,
質問で挙がった原稿は,ナイトメアをクリアした人に対する,“よくできました”という評価のようなものです。その内容は,ゲーム本編に出せなかった登場人物の裏話です。何しろ我々は,5年間もAlan Wakeを作っていたんですから(笑)。
また,ゲームシステムは,プレイヤーのゲーム進行をチェックしています。スムースにクリアしている場合は敵が徐々に手強くなっていきますし,また苦労している場面で挫折しないよう,若干難度が下がったりもします。我々は,皆さんがストーリーの展開と完結していくさまを楽しめるように,このゲームを作っています。
──最後に,Alan Wakeに期待している日本のゲームプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
ミリン氏:
今回,マイクロソフトさんのサポートを受けて,「Alan Wake」が日本語にローカライズされ,日本での展開ができることは大変幸運でした。我々は,かつて日本のゲームから多大な影響を受けました。今度は我々が日本の皆さんにゲームを提供して,その恩返しが少しでもできれば,と考えています。
私達は非常に楽しんでAlan Wakeを作りました。日本の皆さんにも同じ思いを味わっていただきたいと思います。長年の作業がようやく結実し,皆さんにお届けできることを嬉しく思っています。
――ありがとうございました。
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