レビュー
今年一番のお買い得作? 「Unreal Engine 3」で開発された2D風の3D横スクロールアクション「Shadow Complex」のレビューを掲載
過去にXBLAで「Undertow」という2Dアクションゲームを発表した,Chair Entertainmentが本作の開発を担当しており,同社は現在「Gears of War」シリーズで知られるEpic Games傘下の開発会社となっている。その縁もあってか,Shadow Complexのグラフィックスエンジンには,Epic Gamesが開発した「Unreal Engine 3」が採用されており,最新のエンジンによって描かれた美しいグラフィックスや,洗練された演出,軽快なゲームプレイが評価され,欧米のゲームサイトでは,軒並み非常に高い評価を受けた。
なお,日本版は,ゲーム内の音声すべてが日本語音声で吹き替えされており,ローカライズにもかなり力が入っている。
3Dグラフィックスと2Dアクションが融合した,独特の操作感が楽しい
物語はワシントンDC郊外の山中からスタート。ガールフレンドのクレアと洞窟の探検にやってきた主人公のジェイソンだったが,突然,彼女が荷物を残して姿を消してしまう。彼女を捜すジェイソンは洞窟内で謎の施設を見つけ,中に潜入したところ,クレアが尋問されている現場を目撃。
実はジェイソンは軍人の息子で,自身も軍事訓練を受けているが,戦うことには否定的であり,軍人である父親とはあまり良い関係が築けていない……といった背景がある。しかし今回,クレアの身に危険が迫っているため,やむなく戦いに身を投じることになってしまうのであった。
本作のグラフィックスは3Dで描かれており,世界には奥行きの概念もあるが,ゲームそのものは一部を除いて2Dの横スクロールアクションだ。ステージは美しい自然に囲まれた山間部や,冷たい印象を受ける地下の秘密施設など,かなり広域にわたる。マップは三次元的な構造ではなく,上下左右のみの二次元的に広がっており,連続した1枚のマップで全世界が構成されている。
プレイヤーは最初,フラッシュライト一つしか持っていないが,ストーリーを進めていくと,「ハンドガン」や「グレネード」といった武器,壁の縁に掴まれるようになる「クライミングギア」や,2段ジャンプが可能になる「ジェットパック」といった数々のアイテムが手に入る。これらのアイテムを使うことで,アクションはより派手で多彩になり,探索できる範囲はどんどん広がっていく。
メインストーリーモードは親切な作りで,マップ上に目的地までどうやっていけばいいかラインが表示される。基本的にそれに従って進めばいいのだが,時には行き止まりにぶつかってしまうこともある。一例を書くと,「先に進みたいのに目の前に壁があって,周囲に迂回できそうな通路もない」「通路に特殊なブロックが置かれ,進路がふさがっている」といった状況だ。こういう謎解き要素がいくつもあり,プレイヤーを悩ませることになる。
でも,そんなときでも心配は無用。フラッシュライトで床や箱などを照らすと,特殊な武器で壊せるオブジェクトがあれば色が変化し,どうやって突破すればいいかが分かる。例えば黄色のオブジェクトは銃撃で破壊でき,緑色ならグレネードで壊せるといった具合だ。
武器のアップグレードを手に入れたら,「あそこの壁は,これで突破できるよな」といった具合に来た道を戻り,新たなルートを切り開いてアイテムを入手したり,隠し通路を見つけたりといったことができる。このように,新たな手段によって徐々にマップを踏破していくのがとても楽しく,このプレイ感覚は任天堂の「メトロイド」や,コナミの「悪魔城ドラキュラ」など,日本の伝統ある2Dアクションゲームの要素が強く感じられる。
基本操作は上下左右に移動,ジャンプ,しゃがむ,射撃とシンプル。特徴的なのは攻撃方法で,右スティックを傾けると,プレイヤーはその方向へ銃を構える。自動的にレーザー照準器が作動して着弾点が分かる仕組みだ。画面の奥からやってくる敵など,プレイヤーが移動できない位置から攻撃してくる敵を倒すときも,これで狙いをつけないといけない。
横スクロールアクションながら,なかなか精密な射撃が可能で,頭部に狙いをつけて攻撃すれば,小気味よい効果音とともにヘッドショットが成立する。移動に関しては2Dなのに,射撃ではFPSやTPSのような3Dシューティングの要素が取り入れられているのがユニークだ。うまく攻撃を当てるには若干練習が必要になるが,慣れてくるとどんどんヘッドショットを決められるようになる。
また射撃以外に,格闘攻撃でも敵を倒せる。とくに背後からの格闘攻撃は相手を静かに倒せるため,こっそり潜入するシーンなど,敵に気づかれたくないときに重宝する。また,格闘攻撃で敵を倒すと,得られる経験値のレートが上がるという利点もある。
さらに特定の場所では,ステージに設置された固定銃座で攻撃をすることもある。このときは画面が2Dから3Dに切り替わり,3Dシューティングになる。右スティックで狙いをつけ,Rトリガーで攻撃していくのは,まさにFPSやTPSで遊んでいる感覚。現れる敵を圧倒的な火力でどんどん倒していくのは気持ちがいい。
敵の集団にはグレネードやミサイルで攻撃。一発でまとめて倒すことができ,とても気分がいい |
格闘攻撃は正面から向かうと反撃される危険性あり。背中を向けている敵なら気づかれることなく静かに倒せる |
アクションゲームといえば,特定の場所で「ボス」が待ち構えているのが常だが,本作も例外ではない。ステージを探索中,謎の組織に所属する兵士や,小型のロボットが敵として立ちふさがるが,ストーリーを進めていくと,巨大なボスとの戦いが何度も発生する。
クモのような多足型ロボット,強化スーツを着込んだ兵士など,ボスの種類はさまざまだ。いずれも3Dグラフィックスで描かれており迫力満点で,随所に挿入されるボス戦はストーリーを盛り上げるのに一役買っているだろう。各所に登場するボスはいずれも強力かつクセのある攻撃を仕掛けてくる。防御も固く,正面からただ攻撃しているだけではなかなかダメージを与えられないが,戦闘中は随時ヘルプメッセージが出て,弱点や有効な武器の使い方などを教えてくれる。この指示に従って隙をついて弱点を狙い,敵の攻撃時にはしっかり遮蔽物に身を隠し,ダメージを受けないようにすれば,倒すのはそれほど難しくなかったりする。
やりこみ派のプレイヤーも大満足! 充実のモード群
Shadow Complexは1回クリアしたら終わり,ではない。むしろ2周目からが本番といえるほどだ。筆者の場合,1周目は若干謎解きにつまり,隠しアイテムや隠しルートの探索など,いろいろ寄り道をしていたため,クリア時間は7時間(難易度ノーマル)を超えた。
エンディングを見終えると,「クリアにかかった時間」や「アイテム回収率」などから総スコアが割り出され,ランキングに掲載される。このスコアはランキングボードから確認でき,「Shadow Complex」を遊んだフレンドとも比較できる。「○○君は3時間でクリアした」とか「ヘッドショットを150回も決めた」とか,ランキングボードからいろいろな情報を得られるので,つい競争心に火がついてしまい,2周目,3周目と周回数を重ねてしまうわけだ。
ハイスコアを出すには早くクリアするほうがいいし,アイテムはできる限り回収したほうがいい。そのため,何度も遊んでベストなルートを見つけたり,このアイテムはこのタイミングで取ろうと考えたりなど,2周目以降はやりこみ系のゲームに早変わりするのだ。
用意された「実績」を見ても,アイテム回収率100%でクリアする実績,逆にアイテム回収率13%未満でクリアする実績などがあり,やりこみ系のゲームであることが分かる。筆者は実績を全部解除するために本作を4周したが,クリアのたびに過去の経験が生かされていき,最初は7時間かかったクリア時間は5時間,4時間,3時間とどんどん短縮され,アイテム回収率100%,13%未満も達成できた。頭を悩ませた謎解きも簡単に突破できるようになり,スムースにストーリーが進んでいく。このように「腕が上がったなあ」と実感できるのは気持ちいい。ちなみに,特定の実績を解除すると,同時にゲーマーアイコンも得られる。これはゲームをやりこむことで獲得できる勲章のようなもので,フレンドに自慢できるかもしれない。
また,本作にはRPGのような「レベル」の概念があり,キャラクターを成長させられる。経験値は敵を倒す,アイテムを入手するなどで得られ,レベルが上がるとヘッドショットの精度や,スタミナが上がるなど,多くのメリットを得られる。さらに,レベル10,20,30,40,50と特定のレベルに到達すれば,「マップ全体を見られるようになる」「フォームガンの弾薬が無限になる」といった,特別な能力を獲得できる。
なお,ゲームをクリアした状態で最初から遊び直すと,レベルが引き継がれるほか,あるアイテムをすべて入手すれば,最初から隠し武器が置かれた部屋にアクセスできるようになる。この武器は,ボス敵ですら簡単に沈めてしまうほどの威力を誇り,「マスターチャレンジ」(実績との絡みはなし)という,超上級者向けのチャレンジをクリアするのに必須の武器になっている。
「マスターチャレンジ」は四つあり,その内容を簡単に紹介すると,「アイテム回収率100%で2時間以内にクリア(難易度は任意)」「アイテム回収率4%でクリア」といった,非常に厳しい条件が並んでいる。筆者は現在「アイテム回収率100%で2時間以内にクリア」に挑戦しているのだが,どうやれば無駄なくアイテムを回収できるか,そのためにどういうルートを使えばいいかと,多くの課題にぶつかっている。かなり苦戦しているが,いつかはクリアしてみたいと思っている。
ほかにもメインストーリーモードとは別に,「トレーニングモード」内には「チャレンジパック」というものが用意されている。これはチャレンジごとに異なる装備が用意され,その装備を駆使してお題をクリアしていき,いかに早くゴールに着いたかを競うタイムアタック風の内容になっている。コースには敵がいたり,即死トラップがあったりと,さまざまな障害が立ちはだかる。
チャレンジパックには全部で21個のお題が収録されていて,成績によって「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」の4種類のいずれかのメダルを獲得できる。プラチナメダルは規定タイムが厳しく,獲得はかなり難しい。プレイヤーにも相当な技量を求められるだろう。最初は「こんなのどうやればいいんだよ」と試行錯誤することになるが,クリア方法が分かり,何度もやっていればテクニックに磨きがかかり,クリアタイムも短くなってくる。実力の向上を実感できるのは嬉しい。
チャレンジパックのスコアも,もちろんランキングボードに掲載される。しかしチャレンジ別のスコアは見られず,総スコアだけしか見られないのは残念に思う。
1200MSPも納得の出来。XBLAの可能性を広げた野心作
ゲームをクリアしてみて,何よりその完成度の高さに改めて驚かされた。Unreal Engine 3が生み出す美麗なグラフィックス,ストーリーの随所に挿入される贅沢なCGムービー。2Dと3Dが融合したダイナミックな操作感覚。「本当にXBLAのタイトルなの?」と何度も思わされるほどの作品だ。XBLAといえばカジュアルゲームが中心で,手軽に遊べるゲームが多かったのだが,「Shadow Complex」はXBLAのイメージを一新させたのではなかろうか。
価格は1200マイクロソフトポイント(約1800円)で,XBLAのタイトルの中では高額の部類に入るが,値段以上に楽しめるのは間違いなく,正直へたなパッケージソフトに5000〜6000円出すなら,こっちを買ったほうが断然お得だと思ったくらいだ。ちなみに本作の売上げは配信初週で20万本を超え,XBLAタイトルの売上げ新記録をマークしたという。ただ,本体のサイズが850MB近くあるので,HDDの空き容量などに注意が必要。それでも,未体験の人はぜひともHDDの容量を確保し,まずは体験版を遊んでみてほしいと思う。
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