レビュー
ブランド初の薄型軽量モデルは一点を除いて完成度の高いゲーマー向けノートPCだ
ALIENWARE m15(2018)
「ALIENWAREのノートPCは,細部に至るまで完成度が高いが,ゴツくて重くて,そしてなにより高価」というのが,ゲーマーの一般的な評価だろう。ややもすればとっつきにくいという印象もあったわけだが,その印象を変える存在として去る2018年にデビューしたのが,ゲーマー向け薄型ノートPCという位置づけの新シリーズ,ALIENWARE mだ。
ALIENWAREと,エントリー市場向けのノートPCシリーズで,「まずまず薄く軽く,そして安価だが,ゲーマー向けと言える要素はほとんどない」存在であるDell Gとの間にある大きなギャップを埋める存在とも言えるALIENWARE mだが,実際のところ,どういう個性を持ったゲーマー向けモデルに仕上がっているのだろうか。4Gamerでは2018年10月に国内発売となった第1世代の「ALIENWARE m15」をDellの日本法人であるデルから入手できたので,いつものように評価してみたい。
なお,今回入手した個体のハードウェア構成は下にまとめたとおり。デルが「プラチナVR」と呼ぶアッパーモデルのBTO標準構成という理解でいいようだ。
●入手したALIENWARE m15(2018)の主なスペック
- CPU:Core i7-8750H(6C12T,定格2.2GHz,最大4.1GHz,共有L3キャッシュ容量9MB,TDP 45W,cTDP:35W)
- チップセット:Intel MH370
- メインメモリ:PC4-21300 DDR4 SDRAM 8GB×2
- グラフィックス:GeForce GTX 1070 with Max-Q Design(グラフィックスメモリ容量8GB)
- ストレージ:SSD(容量256GB,M.2/PCI Express接続)
×2(※非RAID構成) - パネル:15.6インチIPS液晶,解像度1920×1080ドット,垂直最大リフレッシュレート144Hz,輝度300nit,ノングレア(非光沢)
- 無線LAN:IEEE 802.11ac+Bluetooth 4.1(Rivet Networks「Killer Wireless-AC 1550」,2x2)
- 有線LAN:1000BASE-T(RJ45
×1,Rivet Networks「Killer E2500」) - 外部インタフェース:Mini DisplayPort 1.3
×1,HDMI 2.0 Type A ×1,Thunderbolt 3(Type-C) ×1,Alienware Graphics Amplifier ×1,RJ-45 ×1,USB 3.1 Gen.1 Type-A ×3,4極3.5mmミニピン(※ヘッドセット用)×1 - スピーカー:内蔵4chステレオ
- マイク:内蔵2chステレオ(※アレイマイク)
- インカメラ:解像度1080p
- バッテリー容量:7500mAh/90Wh,11.4V
- ACアダプター:定格出力180W(19.5V 9.23A)
- 実測サイズ:362(W)×276(D)×30(H)mm(※突起部含む)
- 実測重量:2.32kg
- OS:64bit版Windows 10 Home
※本稿では,FPSによるテストをBRZRK氏,ベンチマークによるテストを宮崎真一氏,それ以外を4Gamerの佐々山薫郁が担当します。
全体的に完成度は高く,それだけにキーボードの仕様がとても残念
- 解像度3840
×2160ドット,垂直最大リフレッシュレート60Hz,輝度400nit,sRGB色域比100%,IPS方式 - 解像度1920
×1080ドット,垂直最大リフレッシュレート60Hz,輝度400nit,IPS方式
また,少なくともゲーム用途を前提とする限り,発色は良好。IPS方式ということもあり,斜めから見たときの違和感もほぼない。
多くのプレイヤーにとってマウスとマウスパッドを置くスペースになる本体右側面側をすっきりさせることのできるインタフェース配置は基本的に従来どおりということになる。
本体正面向かって左側のインタフェースは有線LAN接続用のRJ-45とUSB 3.1 Gen.1 Type-A,4極3.5mmミニピンが各1系統 |
こちらは本体正面向かって右側面のインタフェース。USB 3.1 Gen.1 Type-Aが2系統だけで,すっきりした印象だ |
折り畳んだ状態で本体正面から見たカット。天板部の中央が盛り上がっているのが分かる |
本体底面のゴム足。ざっくり3mm以上の高さがあり,これが机上に置いたときの高さに“貢献”する |
大きなゴム足があるとことからも想像できると思うが,ALIENWARE m15は底面吸気を採用し,正面向かって背面側の2か所と,側面奥側の2か所,4つある開口部を使って排気する仕様になっている。
実際,エアフローを可視化してみると,4か所ある排気孔は効率的に機能していることを感じさせてくれる。ファンは底面で両サイドに寄っているため,今回のような「本体正面中央からエアを送る」という厳しい条件だと吸いきれない様子も見てとれるが,4方向に向かうエアの勢いは十分に強く,これが[W/A/S/D]キー周辺の低い温度に寄与しているのが分かると思う。
それでいてファンの音は「うるさすぎて聞くに堪えない」こともないので,冷却機構はかなり優秀なほうということになる。
……と,ここまでは「とてもALIENWARE」な感じなのだが,実のところ,ALIENWARE m15の問題点は,ほぼキーボード部に集中している。
いろいろな組み合わせを試してみると,FPSやTPSの操作で使われることの多い操作系を中心に,ざっくり以下のとおり問題があった。
- [A/S]キーを押しながら[Z]キーを押しても入力が入らない
- [S/D]キーを押しながら[C]キーを押しても入力が入らない
- [W/A]キーを押しながら[Q]キーを押しても入力が入らない
- [W/D]キーを押しながら[D]キーを押しても入力が入らない
さらに言えば,前出の「ゲームも積極的にプレイする学生」や「ゲームをちょっとプレイしてみたい,高性能ノートPCの欲しい人」が,日常用途で使うときにも,ALIENWARE m15のキーボードは残念な仕様だ。「mなし」のALIENWAREノートPCが採用する「TactX」キーボードとは異なり,mSeriesキーボードはいわゆるアイソレート型デザインになっているのだが,英字配列のアイソレート型デザインに無理矢理日本語配列を当てはめたことで,一部でキー同士が不自然にくっついてしまっているのである。
人生で最初に触れるキーボードがmSeriesで,ノートPCのキーボードとはこういうものだと割り切れるなら許容できるかもしれないが,いわゆる普通の日本語キーボードでタッチタイプを学んだ人であれば,まず間違いなくつらいと感じるはずである。
もう1つ,これはマイナスポイントというわけではないが,「mなし」ALIENWAREノートPCとの違いとして,定格出力180W仕様となる付属のACアダプターで,「mなし」ALIENWAREノートPCのそれにはある「端子部の青色LED」が付いていなかった点は指摘しておきたい。このあたりにはコストダウンの影響が見てとれるわけだ。
専用コントロールパネル「Command Center」は充実。それだけに一部の仕様が惜しい
Alienware製PCの専用コントロールパネルである「Command Center」(コマンドセンター)は,2018年仕様の最新バージョンがプリインストールされている。
最新版Command Centerでは,ユーザーインタフェースの刷新が入っただけでなく,これまで別になっていたりそもそも用意されていなかったりした機能を統合し,「統合ソフトウェア」感が強まっているが,その恩恵はALIENWARE m15でも受けられるという理解でいい。
Fusionの「オーディオプロファイル」。左は標準の「Alienware」プリセットを選んだ状態だが,工場出荷時設定で「ALIENWARE 7.1バーチャルサラウンド」が有効になっていた |
本体が搭載するマイク入力の調整もFusionのオーディオプロファイルから行える。ゲーマーはヘッドセットを使うことのほうが多いと思われるが,統合されていること自体はいいことだ |
また,「FX」タブから,LEDイルミネーションの制御も行える。Windowsの「設定」ではフォローできない,ALIENWARE m15ならではの機能の多くはここから管理,設定可能だ。
ただ,それだけに画竜点睛を欠くのが,「Killer DoubleShot」,つまりRivet Networks製の有線および無線LANコントローラの設定メニューが別建てになっている点である。
こちらの専用コントロールパネル「Killer Control Center」では無線LANの混線状況をチェックできたり,帯域幅を制御できたりと,使い方次第では有用な設定項目があるのだが,これを利用するにはユーザーが自分でKiller Control Centerの存在に気付いたうえで起動しなければならない。統合できないまでも,せめてCommand Centerから呼び出せるくらいのことはできていいように思われるので,今後のアップデートに期待したい。
相変わらずユーザーフレンドリーな内部構造
底面を開けて分かるのは,本体正面向かって右奥がGPUであるGeForce GTX 1070 Max-Q Design(以下,GTX 1070 with Max-Q),左奥がCPUであるCore i7-8750Hをそれぞれ搭載する配置になっていることと,ユーザーがアクセスできるのはメモリモジュールとM.2接続型SSD,2.5インチHDDとその互換ドライブ,無線LANカードだということだ。
SO-DIMMスロットとM.2スロット,2.5インチドライブトレイは2基ずつで,Mini PCI Expressスロットは1基という構成になっている。今回入手した構成の場合,2.5インチドライブトレイは2基とも空(から)である。
相変わらずユーザーフレンドリーなのは,バッテリーパックのカバーに「各種部品を着脱する前にはバッテリーパックを取り外しましょうね」(Please Disconnect and Remove Battery Before Accessing Thre Rest Parts and Devices)という注意書きがあり,バッテリーパックの取り外しにあたってどのネジを外せばいいかも「▲」マークで示してあるところだ。
筆者(=佐々山薫郁)の正直な思いを書かせてもらうなら,底面カバーを開けようとしただけでメーカー保証が切れるゲーマー向けノートPCを展開しているメーカーにはAlienware開発チームの爪の垢を煎じて飲ませたいレベルである。
PUBGで80〜90fps,Fortniteで100fpsは十分に狙えるALIENWARE m15
ここからはPUBGとFortniteの実地でどれくらいのフレームレートが出るのかをチェックしていこう。いずれのタイトルでも,144HzというALIENWARE m15側液晶パネルの垂直リフレッシュレートを踏まえ,「描画解像度1920
まず,遠くの敵の視認性を上げるアンチエイリアシングは「高」にし,フレームレートに影響を与えるポストプロセスは「非常に低い」に設定。影も消してしまえばフレームレートを稼げるのだが,そうすると世界がのっぺりしてしまうので「中」に。エフェクト効果は「高」,草花のディテールは荒くても問題がないので植生は「低」にした。描画距離は遠くの敵を視認できるかに関わってくるので「高」にしている。
これで試してみると,マップ「Erangel」の,建物が多く立ち並ぶYasnaya Polyanaでも70fpsを切ることはまれになり,全体として90fps前後とまずまずな感じになった。それでもまれに60fps前後まで落ち込むこともあるが,これはPUBGというゲームの特性上,やむを得ないだろう。
両タイトルのグラフィックス設定で重要なのは,遠くの敵の視認性を最大限確保しつつ,最大フレームレートと最小フレームレートのギャップを小さくすること。そうすることで,ALIENWARE m15の144Hzという垂直リフレッシュレートの恩恵を最大限受けられるようになる。
なお,IPSパネルということで気になる表示遅延は,PUBGやFortniteをプレイするうえで,マウス操作に対して気になるレベルで照準が遅れるようなこともなかった。少なくとも,普通にプレイしていて大きな違和感を覚えることはないという理解でいいだろう。
ゲームプレイではヘッドセットを使って音もチェックしたので,そのインプレッションもまとめておきたい。
前述のとおり,ALIENWARE m15では工場出荷時設定でバーチャル7.1chサラウンドサウンド機能が有効になっていたため,その状態でテストしたが,まず標準のAlienwareプリセットはいかにも標準的な,音の広がりを重視したものになっていて,そのため斜め前後方向の音源位置を把握しづらく,さらに銃声もくぐもった感じだ。ビデオを観たり,RPGでゲームの世界に浸ったりするならいいだろうが,FPSやTPSにはまったく向かないと断言できるレベルである。
筆者(=BRZRK)としては,DTS Headphone:X対応のUSB接続型ヘッドセットを購入するか,一定レベルの出力品質を持つアナログ接続型ヘッドセットを購入して,Windowsストアでやはり購入できるDolby Atmos Headphoneを組み合わせるほうがベターだとお伝えしておきたい。
デスクトップPCとの比較からALIENWARE m15の実力を推し量る
体感レベルの性能評価を終えたところで,ここからはベンチマークテストに入っていこう。
今回,ALIENWARE m15の比較対象としては,表1に示したとおり,2台のデスクトップPCを用意した。1台は「Core i7-8700T」(以下,i7-8700T)と「GeForce GTX 1070」(以下,GTX 1070)もしくは「GeForce GTX 1060 6GB」(以下,GTX 1060 6GB)とを組み合わせたもので,要するに,ALIENWARE m15が登場した2018年モデルのデスクトップPCと比べてどの程度の性能があるかをチェックするためのものだ。
もう1つは「Core i7-4790K」(以下,i7-4790K)と「GeForce GTX 780」(以下,GTX 780)を組み合わせたもので,こちらはALIENWARE m15が5年前のハイエンドデスクトップPCからの買い換え対象となるか否かを見るためのものとなる。
テストに用いたグラフィックスドライバだが,今回,ALIENWARE m15のみRelease 396世代の未公開版リリース「GeForce 399.31 Driver」となる。これは,筆者が試した限り,ALIENWARE m15ではAlienwareの配布するグラフィックスドライバしか導入できなかったことによる。そのため,テスト開始時点の最新版となる「GeForce 417.35 Driver」を導入済みのデスクトップPCとは異なる点に注意してほしい。
なお,OSはOctober 2018 Updateを適用した64bit版Windows 10で揃え,また電源プランはとくに断りのない限り「高パフォーマンス」で揃えている。
テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション22.1準拠。解像度はALIENWARE m15の搭載するパネル解像度の1920
さらに今回は,ALIENWARE m15の総合性能を評価するため,CPUベースで3Dのレンダリングを実行する「CINEBENCH R15」(Release 15.038)と,UL製のベンチマークソフト「PCMark 8」(Version 2.10.901),動画のトランスコードテスト「ffmpeg」(Version 4.1)でのテストも実施することにした。これらのテストをどのように実施したかは考察の直前でそれぞれ紹介したい。
GTX 1060 6GB搭載のミドルクラスデスクトップPCを上回る性能を発揮
以下,文中,グラフ中とも,比較対象のデスクトップPCを「i7-8700T+GTX 1070」「i7-8700T+GTX 1060 6GB」「i7-4790K+GTX 780」というようにCPUとGPUの組み合わせで表記することを断りつつ,「3DMark」(Version 2.7.6283)の結果から見ていこう。
グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものだが,ALIENWARE m15はi7-8700T+GTX 1070比で90〜91%程度,i7-8700T+GTX 1060 6GB比では122〜124%程度となった。低消費電力に振ったMax-Q Design版のGTX 1070を搭載するため,デスクトップPC版GTX 1070には及ばないが,それでも“1割引き”なら上等だろう。2018年のミドルクラス市場向けゲーマー向けデスクトップPCを圧倒できるポテンシャルがあると言ってよさそうだ。
i7-4790K+GTX 780に対しては64〜75%程度のスコア差を付けている点も押さえておきたい。
続いてグラフ2は,Fire StrikeからGPUテスト編である「Graphics test」のスコアを抜き出したものになる。
ALIENWARE m15と比較対象とのスコア差は総合スコアを踏襲しており,i7-8700T+GTX 1070比だと89〜91%程度,i7-8700T+GTX 1060 6GB比では122〜124%程度,i7-4790K+GTX 780比では167〜177%程度という結果だ。
同じくFire Strikeから事実上のCPUテスト編となる「Physics test」の結果を抜き出したものがグラフ3だが,ここでALIENWARE m15のスコアはi7-8700T+GTX 1070やi7-8700T+GTX 1060 6GBと横並び。デスクトップPC向け第8世代Coreプロセッサ6コア12スレッド対応モデルの低消費電力版と同等の性能は期待できるわけである。
やはりFire Strikeから,GPU性能とCPU性能の両方がスコアに影響を与える「Combined test」の結果がグラフ4となる。
ここでALIENWARE m15のスコアはi7-8700T+GTX 1070比で90〜92%程度,i7-8700T+GTX 1060 6GB比で124〜144%程度。貸し出しスケジュールの都合上,追加の突っ込んだテストは行えていないため,より描画負荷の低いFire Strike“無印”でi7-8700T+GTX 1060 6GBとのスコア差が開いている理由は何とも言えないが,ひょっとすると,描画負荷が低く,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)上の余裕が生まれ,CPUがより高いクロックで動作したという可能性はある。
ちなみに,i7-4790K+GTX 780とのスコア差は66〜74%程度で,ここでも圧倒している。
グラフ5は,3DMarkのDirectX 12テストである「Time Spy」の総合スコアをまとめたものだ。
ここでALIENWARE m15はi7-8700T+GTX 1070比で89〜90%程度,i7-8700T+GTX 1060 6GB比で118〜121%程度。Fire Strikeとほぼ同じ傾向だが,あえて言えば後者とのスコア差は若干小さくなっている。
なお,i7-4790K+GTX 780とのスコア差は87〜95%程度にまで開いているが,これはGPUの世代差に起因するところが大きい。
Time Spyの総合スコアからGPUテストの結果を抜き出したものがグラフ6だが,ここで注目したいのは,i7-8700T+GTX 1070との力関係は総合スコアを踏襲しているのに対し,i7-8700T+GTX 1060 6GBに対しては22〜25%程度のスコア差を付け,Fire Strikeと似たような結果になっていることだ。DirectX 11でもDirectX 12でも,ALIENWARE m15の搭載するGTX 1070 with Max-QはGTX 1060 6GBに対して2割以上高い3D性能を期待できると言ってよさそうである。
ではなぜ,総合スコアでFire Strikeと異なる傾向が出たのか。それを知る手がかりとなるのが「CPU test」のスコアを抜き出したグラフ7で,見てもらうと分かるとおり,ALIENWARE m15のスコアはi7-8700T+GTX 1070とi7-8700T+GTX 1060 6GBの双方に対して9割強になっている。
DirectX 12では一定レベルでCPUを活用するが,そういうケースではノートPCという筐体の熱設計枠という制限から,CPU性能をデスクトップPCほどには発揮できないということだと思われる。
以上を踏まえつつ,実ゲームアプリケーションを使ったテストに移っていこう。
まずグラフ8,9は「Far Cry 5」のテスト結果だが,平均フレームレートを見ると,ALIENWARE m15はi7-8700T+GTX 1070比で約88%,i7-8700T+GTX 1060 6GB比で106〜113%程度で,後者とのスコア差が3DMarkと比べて小さくなった。
1600
なお,i7-4790K+GTX 780とのスコア差は平均フレームレートで88〜90%程度。ここまでのスコア差が付いている要因は1にも2にも約2.67倍という違いのあるグラフィックスメモリ容量だと思われるが,それにしても強烈だ。
続いてグラフ10,11は「Overwatch」のスコアをまとめたものだが,ここでALIENWARE m15の平均フレームレートはi7-8700T+GTX 1070比で86〜87%程度,i7-8700T+GTX 1060 6GB比で約115%程度。ざっくり言えばFar Cry 5と同様のスコア傾向だが,最小フレームレートも平均フレームレートと似たようなスコア差になっているのはFar Cry 5と異なっている。
「ウルトラ」プリセットの1920
グラフ12,13はPUBGのテスト結果で,ここでのテスト結果はなかなか興味深い。というのも,ALIENWARE m15がi7-8700T+GTX 1060 6GBを上回っているのが1920
PUBGでは最小フレームレートにおいてCPU性能がスコアを左右しやすいのだが,こういうアプリケーションでは筐体設計という制限もあってGPUとCPUの両方で高いクロックを維持するのが苦手なノートPCは不利ということになる。
もっとも,i7-4790K+GTX 780に対してはそれでも最小フレームレートで26〜28%程度高いスコアを示し,平均フレームレートではさらにスコア差を広げているので,5年前のゲームPCと比べれば地力が違うのも見てとれよう。
一方,Fortniteのスコアは3DMarkをほぼ踏襲したものとなった。グラフ14,15で平均フレームレートを比較すると,ALIENWARE m15はi7-8700T+GTX 1070に対して91〜92%程度,i7-8700T+GTX 1060 6GBに対して122〜123%程度,i7-4790K+GTX 780に対して168〜169%程度のスコアを示している。ここでは最小フレームレートでもi7-8700T+GTX 1060 6GBよりALIENWARE m15のほうがスコアは有意に高い。
グラフ16,17は「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)の結果だが,ここではまた異なるスコア傾向になった。平均フレームレートで比較すると,ALIENWARE m15はi7-8700T+GTX 1070の約92%程度と,おおむね妥当と言えるスコアを示す一方,i7-8700T+GTX 1060 6GBとの比較では96〜101%程度と,まったく奮わないのである。
グラフィックスメモリに対する負荷の大きなShadow of Warなので,GTX 1070 with Max-Qの持つメモリバス帯域幅の大きさが有効に機能してしかるべきなのだが……。正直,このスコアは謎としか言いようがない。
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアがグラフ18だが,スコア傾向は基本的にFar Cry 5のそれを踏襲する印象だ。ALIENWARE m15はi7-8700T+GTX 1070比で87〜90%程度,i7-8700T+GTX 1060 6GB比で103〜104%程度である。
FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの平均および最小フレームレートをまとめたグラフ19,20で最小フレームレートを見ると,ALIENWARE m15のスコアは2018年モデルのデスクトップPCよりも劣勢になっており,CPU性能がスコアの足を引っ張っているのが分かる。
3Dゲーム検証の最後は「Project CARS 2」だ。グラフ21,22で平均フレームレートを見ると,ALIENWARE m15はi7-8700T+GTX 1070比で88〜93%程度,i7-8700T+GTX 1060 6GB比で116〜123%程度,i7-4790K+GTX 780比で182〜188%程度で,大筋ではOverwatchと似たようなスコア傾向になっていた。
デスクトップ向けCPUと比べると一段落ちるものの,6コア12スレッド対応CPUの基本性能は高い
続いては非ゲーム系アプリケーションの性能を確認しておこう。
グラフ23はCINEBENCH R15のテスト結果だ。ここでは,CPUコアとスレッドを使い切る「CPU」(以下,文中に限り「総合スコア」と表記)と,1コア1スレッドの性能を見る「CPU(Single Core)」を実施した。
ALIENWARE m15の総合スコアは,i7-8700T+GTX 1070およびi7-8700T+GTX 1060 6GBの91〜92%程度。ALIENWARE m15の搭載するCore i7-8750Hだと動作クロックは定格2.2GHz,最大4.1GHzなのに対し,比較対象として用意したデスクトップPCのCore i7-8700Tは定格2.4GHz,最大4.0GHzなので,定格クロックの違いがほぼそのまま総合スコアに反映されたという理解でいいだろう。
定格4.0GHz,最大4.0GHzと定格クロックの高いi7-4790KよりもALIENWARE m15のほうがスコアが高いのは,純粋にCPUコア数とスレッド数の違いによる。
それが証拠に,1コア1スレッド処理のスコアだとi7-4790Kが最も高かった。
続いてはPCMark 8のテスト結果である。ここでは,無料版である「Basic Edition」でも実行できる「Home」テストを使って,OpenCLのアクセラレーションを利用しない「Run Conventional」を実行している。
総合スコアはグラフ24のとおりで,なんとALIENWARE m15のスコアが最も低いが,これには2つの理由がある。1つは,前述のとおり,ALIENWARE m15の搭載するCore i7-8750Hの動作クロックが低いため。もう1つは,PCMark 8がGPUテストで単体GPUを使用せず,CPU型の統合型グラフィックス機能を使ってしまうためである。
総合スコアとは別に,スコアの詳細を表2にまとめてみたので,CPU性能の比較にはこちらを使ってもらえればと思う。
ffmpegを用いた動画トランスコードのテストでは,FFXIV紅蓮のリベレーターを実際にプレイした,計6分42秒で解像度1920
その結果はグラフ25のとおりで,H.264におけるスコアだと,ALIENWARE m15はi7-8700T+GTX 1070およびi7-8700T+GTX 1060 6GBと比べてざっくり2分程度遅い。これはCore i7-8750Hの動作クロックが低いためだろう。
ただ,H.265ではどういうわけか逆転現象が起こり,ALIENWARE m15のほうが数十秒早く処理を終えられている。これがどういう理由によるものかは皆目見当が付かないので,不思議としか言いようがない。
ノートPCらしく消費電力はかなり低めながら,CPUの温度は高めに
ALIENWARE m15の消費電力もチェックしておこう。消費電力の測定にあたっては,ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いて,システム全体のそれを計測し,比較することにした。なお,ALIENWARE m15のバッテリーは先に紹介したとおり内蔵型となるため,フル充電を行い,バッテリーの充電が消費電力に影響しないようにしている。
また,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,ここでは電源プラン設定を「バランス」に戻し,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
その結果がグラフ26となるが,ALIENWARE m15は,3DMarkを含めたゲームアプリケーションで,i7-8700T+GTX 1070より63〜92W,i7-8700T+GTX 1060 6GBと比べても14〜70W低いスコアを示している。液晶パネルという大きなハンデを抱えていることを考えると,消費電力は相当に低いと言っていいだろう。5年前のハイエンドPCとは156〜174Wものスコア差が開いている点や,アイドル時の消費電力が傑出して低い点にも注目したい。
最後に,CPUとGPUの温度も確認しておきたい。
ここでは,3DMark Time Spyを30分間連続実行した時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども,CPUは「Core Temp」(Version 1.13),GPUは「GPU-Z」(Version 2.16.0)から温度を取得した。
結果はCPUがグラフ27,GPUがグラフ28となるが,ALIENWARE m15のCPU温度は高負荷時において100℃近くなっている。許容温度上限を示す「Tjunction」の値はCore i7-8750Hだと100℃なので,それを下回っている以上は問題ないのだが,薄型筐体らしいデメリットが出ているとは言えるだろう。
一方のGPU温度は高負荷時でもおとなしめで,何の問題もないレベルにあった。なお,アイドル時のGPU温度がN/Aなのは,アイドル時に単体GPUが無効になり,CPU側の統合型グラフィックスが用いられるためである。
とにかくキーボードが残念。それ以外はほぼ文句のない「薄型軽量かつ若干安価なALIENWARE」に
今回も長くなったが,いつものように3つのポイントでまとめてみよう。ALIENWARE m15のプラチナVRモデルにおける良いところと残念なところ,人によって評価が割れるであろうところは,おおむね以下のとおりだ。
良いところ
- ALIENWAREらしいデザインのまま,少なくとも既存のALIENWAREノートPCと比べれば明らかに薄く,軽くなった筐体
- 低く保てているキーボード盤面温度
- デスクトップPC向けミドルクラスゲームPCの2018年モデルを圧倒する3D性能
- GPUとおおむねバランスの取れた,垂直最大リフレッシュレート144Hzの液晶パネル
- 極めてユーザーフレンドリーなストレージ&メモリモジュール交換周り
残念なところ
- 打鍵感以外に評価すべきポイントがまったくないキーボード
- ゲーム用途としていま1つな,標準のバーチャルサラウンドヘッドフォン出力機能
人によって評価が割れるであろうところ
- 統合度合いが十全でない専用コントロールパネル
- 今回の構成で軽く税込20万円台後半になるBTO標準構成価格
Alienwareは第2世代のALIENWARE m15をCES 2019で世界市場に向けて発表済みなので(関連記事),おそらく,そう遠くない将来に国内でも販売が始まるはずだ。第2世代モデルでキーボードが改善しているのであれば,ほぼ文句のないゲーマー向け薄型ノートPCということになり,そうならないならALIENWARE m15は当面の間,「かなり優秀だが,キーボードに致命傷を抱えているノートPC」という立ち位置に留まるものと思われる。
デルのAlienware m15製品ページ
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