レビュー
自称「真の新世代据え置き型ゲーム機」を,ゲーム機としてガチ評価してみる
ALIENWARE Alpha
Valveのゲーム配信システム「Steam」と高度に融合したとされるAlphaは,Windows 8.1プリインストールながら,ゲームパッドでの操作を前提とするユーザーインタフェース「Alpha UI」を採用しており,基本的にはゲームパッドだけで,システムメニューを操作できる。そして,Alpha UIからSteamのテレビ向け動作モード「Big Picture」を起動すれば,そのままSteamのゲームをプレイできるというのがウリだ。つまりは,「Big Pictureを前提とすれば,ゲームパッドだけでSteamのゲームを起動できるので,その点ではゲーム機風」だから「据え置き型ゲーム機」というわけである。
……であれば,PlayStationやXbox,Wiiといった据え置き型ゲーム機と比較しても問題はないはず。今回は,ゲーマー目線で,据え置き型ゲーム機としてのAlphaを評価してみたいと思う。
AlphaのスペックをPS4&Xbox Oneとガチ比較
〜Alphaの優位性はどこにある?
PS4 |
Xbox One |
もちろんOSが異なり,また,組み合わせられるメモリの仕様も異なるので,スペックの違いイコール絶対性能の違いという単純な話にはならないのだが,それでも,ざっくりであれば,AlphaとPS4,Xbox Oneを比較することはできるだろう。
というわけで表は,AlphaとPS4,Xbox Oneのスペックを比較したものだ。Alphaは,採用するハードウェアコンポーネントによって「スタンダード」「プレミアム」「プラチナ」の3モデルがあるので,それを加味したものになっている。
また,Alphaはとにかく小さい。体積ベースで比較すると,PS4比で約71%,Xbox Oneの約44%だ。この小ささは,リビングなどに置く据え置き型ゲーム機として魅力的だろう。
ただ,PS4やXbox Oneと比べた場合,見劣りする部分もある。なかでも最も重要だと思われるのが,3Dゲームをプレイするうえで最大のキモとなる,GPUおよびメモリ周りだ。
かたやNVIDIA製カスタムGPU,かたやAPUに統合されたAMD製GPUコアなので,直接比較自体にそれほど大きな意味があるとは言えないものの,とくにPS4のGPUコアが持つスペックと比較すると,Alphaのそれは明らかに数字が小さく見える。また,とくに重要なのがメモリ周りで,Alphaはメインメモリとグラフィックスメモリのスペックで,“競合”にまったく歯が立たない。
付け加えると,Alphaにとって厳しいのは,いくらDellが「据え置き型ゲーム機」だと言っても,Alpha自体はPCそのものだという点である。
PS4やXbox Oneは,少なくとも向こう数年間,そのハードウェア仕様に大きな変化が生じないことがほぼ約束されている。しかし,GPUのスペックが現時点でも十分すぎるほどエントリークラスで,交換のできないAlphaは,今後も,進化し続けるPC用GPUという“脅威”に晒され続けるのだ。
価格を見ても,PS4やXbox One(あるいはALIENWAREの上位モデルなどといった一般的なゲームPC)のほうが魅力的だとしか思えない。このことは,Alphaを据え置き型ゲーム機として導入するに当たって,最大のハードルになるのではなかろうか。
付け加えるなら,据え置き型ゲーム機として見た場合は,「付属のワイヤレスゲームパッド用レシーバーがUSB接続で,本体からだらりと垂れ下がる」というのが,見栄えを大層損ねている。
実際にAlphaを動かしてみる
Steamを使えるようになるまで90分程度は必要
では,実際にAlphaの火を入れてみよう。
もちろんこの設定も付属ゲームパッドのアナログスティックとボタンで行えるので,基本的にはゲームパッドとインターネット接続ができていれば問題なくセットアップできる。ただ,セットアップ周りは全力でWindowsなので,別途キーボードとマウスを接続したほうが,手っ取り早く作業を行えるとは思う。
ここまでで最も気になったのは,Microsoftアカウント周りに何の説明もなかったことだ。「Steamと連携したゲーム機なのに,利用にはMicrosoftアカウントが必要」というのは非常に分かりづらいわけで,そこの説明が皆無というのは,不親切だと思う。
なお,Alphaで初めてWindows 8.xへ触れる人のため,簡単に述べておくと,Microsoftアカウントというのは,複数のWindowsデバイスで共通して利用できるアカウントのこと。MicrosoftはMicrsoftアカウントの利用を推奨しており,実際,使わないと後々不都合があったりするので,どうしても使いたくない理由がない限りは,Microsoftアカウントでのサインインするか,新規に作成するのをお勧めする。
さて,Windows 8.1のセットアップが終わると,ついにAlpha UIがお目見えする。
が,この時点ではまだAlphaのセットアップは終わっていない。画面にも「電源を落とさないように注意」とあるとおり,電源ボタンを押したりしないよう注意しよう。ここでゲームパッドの[A]ボタンを押すと,画面中央にあるとおり,「コンソールモード」が立ち上がる。
もっとも,ダウンロード中に,接続先のテレビ(≒ディスプレイ)解像度や画面サイズ,サウンド出力方法の設定を済ませておけるのはグッドだ。
しかし,今度は「『新しい更新プログラム』があるから,それをダウンロードしてインストールせよ」と言われてがっくり。「何で1回で終わらせないんだよ!」と激高してもしょうがないので,泣く泣く従った次第である。後で分かったのだが,この「新しい更新プログラム」は「システムアップデート」と呼ばれており,NVIDIA製カスタムGPUのグラフィックスドライバなど,重要なアップデートが含まれているようだった。
今度こそ,今度こそAlpha UIの操作を開始できる。選択肢は「Steamの起動」「設定」「ヘルプ」「電源」で,いずれも問題なく日本語化されているのだが,いわゆる中華フォントな字体なのはちょっと気になる。
ほかの3項目も気になるところだが,何はともあれSteamを起動。すると,言語選択を行って,次に利用規約をチェックという流れになる。規約をよく読んだら[同意する]を選択。その後は,手持ちのSteamアカウントでログインする(「Login」)か,新規にSteamのアカウントを作成する(「Join」)かを選ぼう。
と,いうわけで,ついにBig Pictureモード(関連記事)のSteamが立ち上がった。初回の電源投入から,ここまでざっと90分といったところで,ゲーム機のセットアップとしては,さすがに時間がかかりすぎとは思う。
ここで,Alpha UIに用意された「『Steamの起動』以外の項目」も簡単に紹介しておくと,「設定」メニューでは,Alpha UIのセットアップ時に行った,ディスプレイやネットワーク,サウンドといった基本設定の確認や変更を行える。「ヘルプ」では,「アナログスティックでマウスカーソルを動かすための操作法」などといった特殊な操作法を確認可能だ。最後に「電源」は基本的に文字どおりだが,ここからWindowsのデスクトップへ移動することもできる。この点は後述したい。
インストールしたタイトルをプレイできるだけでなく
ストリーミングやWindowsデスクトップも利用可能
実際にSteamのゲームタイトルをプレイしてみよう。ここでは,
- AlphaでSteamタイトルをプレイする
- Alphaからゲームの家庭内ストリーミングを利用する
- 非Steamゲームをプレイする
ことを考えてみたい。
1.AlphaでSteamタイトルをプレイする
ちなみに,キーボードとマウスが必要なゲームではタイトル名の横にキーボードのアイコンが表示されるのだが,このアイコン付きタイトルをプレイしようとすると,注意を促すダイアログが表示された。
なお,ゲームパッドとキーボード&マウスの両方に対応しているタイトルの場合,全部の入力デバイスを接続した状態で起動すると,自動的にキーボードとマウスが無効化されるケースがあった。初めからキーボードでプレイするときは,起動の前にゲームパッドを外しておくのが(面倒だが)安全かもしれない。
2.Alphaからゲームの家庭内ストリーミングを利用する
ホームストリーミングにあたっては,まず,ホスト上でSteamを起動し,ログインしておく。次に,同じ家庭内LAN内に置いたAlphaから,ホストと同じSteamアカウントでログインする。これで準備完了だ。
このとき,ホスト側でプレイしたいタイトルを起動しておいたり,ホストあるいはクライアント側で追加のネットワーク設定を行ったりする必要はとくにない。
ホームストリーミングでは,家庭内LANのルーターがよほど低性能なものでない限り,操作上の遅延をあまり感じない。ただ,スポーツ系FPSや格闘などといった,シビアな操作や瞬時の判断が求められるようなタイトルにはあまり向かないのも確かだ。この点は押さえておいてもらえればと思う。
あと,使っていると,ちょっと困ったことがあった。Alphaからホスト側のゲームを起動するとき,何らかの原因によってホスト側でエラーが出ると,Alphaが操作を受け付けなくなるケースがあったのだ。
筆者の場合は,解決にあたって,ホストまで歩いて行ってホスト上のSteamを終了させ,再起動することになった。まあ,頻繁に生じる問題ではないと思うが,念のため付記しておきたい。
3.非Steamゲームをプレイする
具体的には,ワイヤードもしくはワイヤレスのマウスを接続した状態で,Alpha UIの「電源」メニューから「デスクトップにアクセス」を選択するだけだ。マウスの接続がカギになっており,マウスを接続しない限り,本項目はグレーアウトして選択できないようになっている。
あとは,初回起動時に入力したWindowsのアカウント情報――前々段で「Microsoftアカウント」を推奨したアレだ――を選択して,ログイン情報を入れてやれば,グレイ型エイリアンの鎮座するデスクトップを利用できるようになる。
このデスクトップは,Windows 8.1そのものだ。なので,マウスとキーボードがあれば,何の問題もなく利用できる。
こうなってくると,ゲーム機でもなんでもないといった感じのAlphaだが,1つだけ,Alphaらしい部分があった。それが,前段でも軽く触れたグラフィックスドライバ周りだ。
AlphaはMaxwellアーキテクチャに基づくNVIDIAのカスタムGPUを搭載するのだが,これには型番がなく,そして何より重要なことに,NVIDIA公式WebサイトからダウンロードできるGeForce Driverを導入できないのである。
Alphaのグラフィックスドライバは,システムアップデートで提供される。この点を押さえておいてもらえればと思う。
最後に,デスクトップからAlpha UIへの戻り方だが,Alphaを再起動するしかない。再起動すると,また自動的にAlpha UIで立ち上がる仕掛けである。
実際にAlphaで遊んでみる
重要なキーワードは「リビング」だ
以上,基本的な使い方と使い勝手を紹介してみたが,ここからは,Alphaを日常のゲーム生活においてどう使うべきかを考えてみよう。
筆者は買い物をするとき,「買った後どうするか」をアレコレ考えて,具体的なビジョンが見えてから行動に移すことが多い。そこで,ここまでのテスト結果を踏まえて,「買ったらどのように使えばいいのか」を考えてみたところ,そのパターンは下記のとおり4つ想像できた。
- メインのSteamゲーム機として使う
- リビング専用のSteamゲーム機として使う
- リビングに置いて“接待用Steamゲーム機”化して使う
- Steamのホームストリーミングにおけるリモートプレイ用クライアントとして使う
というわけで,現実的な選択肢は2.〜4.のいずれか,ということになるだろう。
実際にやってみたが,まず2.の,リビングに置いて遊ぶというのは,環境が整っていればアリだと思う。たとえば,「メインのゲームPCだと画面は24インチワイドクラスだが,リビングには,ゲームで使っても違和感のない遅延仕様を持つ,より大きな画面サイズのテレビがある」という場合は,Alphaをリビングに常設しておくと,なかなか贅沢な気持ちでプレイできる。
続いて3.だが,「オンラインでプレイするより,ローカル対戦したほうがはるかに面白い」とか,「そもそもローカル対戦しかサポートされていない」といったSteamタイトルを,友人知人とワイワイ遊びたいなら,Alphaの手軽さはアリだ。自分の家にそういうスペースがなかったとしても,Alphaの小ささなら持って歩くのも苦にはならないので,自宅にそういったポータル的な場所がなくとも,友人宅にあるなら,Alphaの使い道はあると思う。
ただ,ここは日本である。そういった米国的な,広くて,人の集まりやすいリビングを持った家が,果たしてどれくらいあるだろうか?
最後に4.は,Alpha側の処理能力では厳しいタイトルを自室のメインPCで実行し,リビングの大画面テレビでプレイするといったスタイル。これはこれで便利なのだが,「なぜこんなことをしなければならないのか。自室でプレイすればいいのではないか」という思いは最後まで拭えなかった。自室とリビングの物理的な距離が遠い,一部の恵まれた環境では意味があるのだろうが。
いずれにせよ,Alphaをゲーム機として使いこなすうえでキーワードになるのは「リビング」だ。そして,実のところ,ここが日本におけるAlphaの取捨選択において,大きなハードルになるような気がしている。
3.のところでも触れたように,「オフラインで集まって,Steamを中心としたPCゲームをプレイする」スタイルが,日本で定着しているかというと,大きな疑問が残る。もっというと,PS4やXbox One,Wii U,PlayStation Vita,ニンテンドー3DSなどを差し置いて,主にSteamのゲームを皆でわいわいプレイする姿を想像できないのである。Dellと日本法人であるデルは,どういう使い方を想定しているのだろうか。そのメッセージは,公式に出てしかるべきだと思う。
Steamの入門機としてはまずまずだが,
それを求めるユーザーがどれだけいるか?
以上,「据え置き型ゲーム機のレビューで3Dベンチマークなんて回さないだろう」と,とにかく据え置き型ゲーム機としての使い勝手にフォーカスを当てながら,Alphaを使ってみた。
確かに,キーボードとマウスを前提とするようなPCゲームに抵抗を感じるような人にとって,Alphaはとっつきやすいと思う。しかも,キーボードとマウスを差せば,それを使ってもゲームはプレイできるので,懐も深い。
もちろん,ホームストリーミング端末にすれば延命も図れるが,すべてのPCゲームをホームストリーミングでプレイするというのも考えづらい。初めからタワー型のゲームPCを購入したほうが手っ取り早いうえ,コストパフォーマンス的にも有利だ。
Steamというゲームプラットフォームの入門機として,Alphaはまずまずの完成度を持つエントリーモデルと言える。しかし,Steamを本気で楽しみたいなら,「ゲーム機」ではなく「ゲームPC」を購入すべきだろう。これが,筆者の正直な感想である。
DellのALIENWARE Alpha製品情報&販売ページ
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