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ロックスター・ゲームスのノウハウと第1作へのオマージュを注ぎ込んだ「マックス・ペイン3」は,“シネマティック・アクション”と呼ぶにふさわしい内容に
2001年に発売された「マックス・ペイン1」は,ガンアクション時に周囲の動きをスローにする“バレットタイム”を初めてゲームに導入したり,カットシーンがアメコミ調の演出になっていたりと,当時のシューティングゲームにはあまり見られなかった要素が大きな反響を呼んだタイトルだ。
本作ではそれらの演出をオマージュとして採り入れ,最新の技術で再現しており,シネマティック・アクションとして磨きをかけたものになっている。
今回は,そんな本作の特徴をあらためて紹介していこう。なお本作はCERO Z(18歳以上のみ対象)であり,また記事の性質上,本稿にはネタバレが含まれているので,ストーリーを楽しみにしている人はご注意を。
「マックス・ペイン3」公式サイト
マックスは再び刑事を辞して,ブラジルでボディガードに
まずは,「マックス・ペイン」シリーズの流れを軽くおさらいしておこう。
「マックス・ペイン1」では,主人公のマックス・ペインが,彼の妻子を殺した敵に復讐するというハードボイルドなストーリーが描かれた。
そしてマックスは,「Max Payne 2: The Fall of Max Payne」(マックス・ペイン2: マックス・ペインの没落)で起きた事件のあと,再びニューヨーク市警の刑事を辞め,アルコールとペインキラー(鎮痛剤)に依存する日々を過ごしていた。
そんな荒んだ生活の中,マックスは警察学校時代の旧友ラウール・パソスと再会。そしてパソスに誘われたマックスは,過去のしがらみから逃れるべく,ブラジル・サンパウロの実業家ロドリゴ・ブランコ一族のボディガードとなる――というのが,本作のプロローグだ。
ちなみにリアルな話でも,マックスのような元刑事が,南米諸国で富裕層のボディガードとして雇われるケースは珍しくないそうである。
ボディガードとして悪くない日々を送るマックスだったが,ほどなくしてブランコの若く美しい妻ファビアナが,クラブでギャングに誘拐されるという事件が起こる。
ギャングは,ファビアナの身代金として300万ドルを要求し,マックスはギャングに身代金を引き渡すため,パソスとともにサッカースタジアムへと向かうことになる。ここで謎の一団がスタジアムに現れ,ギャングの何人かが殺され,マックスも狙撃されて左腕に怪我を負ってしまう。
さらにストーリーを進めると,ファビアナを探してマックスがスタジアム内を単独で捜索し,パソスがスナイパーライフルで援護する展開になる。そして,ギャングや謎の一団との銃撃戦を乗り越え,マックスを撃ったスナイパーと対峙することとなるのだが,その先がどうなるかは,実際にプレイして確かめてほしい。
「マックス・ペイン3」のカットシーンでは,オブジェクトが二重三重に見えたり,本来の色とは異なる色に見えたりといった演出が施されている。「マックス・ペイン1」の“悪夢”のシーンを彷彿とさせるこの演出は,アルコールとペインキラーでいく分朦朧とした,マックスの状態を表現しているのだ。
さらに演出面では,シリーズおなじみのマックスの皮肉めいた“心の声”も健在。また,ところどころでセリフの一部が漫画の描き文字調に表示されるのだが,これも「マックス・ペイン1」で使われたアメコミ調カットシーンのオマージュといえる。
日本語版では,英語音声の日本語字幕という形になるが,描き文字調の字幕は英語のままとなる。なお,ギャングなどブラジル人が話すポルトガル語には,字幕が用意されない。これは,マックスがポルトガル語を理解できていないという演出の一環のようだ。
徹底的なリサーチで再現されたサンパウロの街に注目。ニューヨークでの生活が描かれるシーンもあり
本作が発表された当時,スキンヘッドになったマックスのビジュアルに衝撃を受けた読者も多いと思うが,この理由もゲーム中で明らかにされる。マックスは,ファビアナの捜索を続けるうちに誰も信じられなくなり,正体を隠すためにスキンヘッドにしたのだ。
ちなみに,スキンヘッドのマックスはやたらトロピカルなアロハシャツを着ているのだが,これは半可通の観光客がやってしまいがちなミスをあえて表現したもの。
ブラジルの現地では,こんなシャツを着ている人は誰もおらず,一目でよそ者だと分かってしまうため,ゲーム内では情報収集しようとしているマックスが,現地の人々に煙たがられる様子が描かれている。
また,サンパウロの街並みが非常にリアルに再現されているのも,ロックスター・ゲームスらしいこだわりといえるだろう。公式サイトの「こちら」では,ブラジルのサンパウロで活躍する特殊警察部隊“GATE”(Grupo de Acoes Taticas Especiais) やファヴェーラ(いわゆるスラム街)などを画面写真と比較して,忠実に再現していることをアピールしている。
なお,クラブなどで流れる音楽も,ブラジル現地のラップを使ったり,独特のアレンジを施したりと,こだわったものになっている。
そのほか,ニューヨーク時代のマックスがフラッシュバックするシーンもあり,彼のアルコールとペインキラー漬けの生活や,なぜそうなってしまったのかが描かれるシーンもある。
進化した“バレットタイム”と“シュートドッジ”。ゲーム全体に施された映画的演出は必見
アクションパートのキモとなるのは,シリーズ伝統の“バレットタイム”と“シュートドッジ”である。
あらためて説明すると,バレットタイムは周囲の動きを一定時間スローにし,エイムをより簡単かつ正確に行えるというものだ。バレットタイムを使用している間はゲージが減っていき,ゼロになるとゲージが溜まるまで使えなくなるが,回数制限はなく何度でも発動できる。
シュートドッジは,簡単にいえば飛び込み動作をするアクションで,敵の攻撃を避けたり,障害物を飛び越えたりと,映画の主人公さながらのスタントを見せてくれる。シュートドッジはバレットタイムとは異なり,ゲージがない状態でも発動可能だ。なお本作では,シュートドッジの際,着地点にある障害物に応じてマックスが受身を取るのだが,その動きはかなり自然だ。
この二つを組み合わせてプレイすることで,「マックス・ペイン3」では既存シリーズ以上に,ジョン・ウー監督の映画作品さながらのアクションを,キャラクターを操作しながら楽しめるのである。
ちなみに,アクション中にポーズをかければ,弾の軌跡や排出された薬莢など,360度さまざまな角度からマックスのアクションを眺めることもできる。
また,アクションパートの最後の敵を倒すときには,「ファイナル・キルカメラ」による演出が加わる。これはカメラをマックスや敵,発射された弾などに寄せつつ,スローモーションでとどめのシーンを表現する演出手法で,アクションパートが終わることが明示的に分かるようになっている。
なお「マックス・ペイン3」では,ファイナル・キルカメラ後にカットシーンへと続く場合,シームレスにつながる演出が採り入れられているのもポイントだ。
たとえば,建物の屋根の上にいる敵を最後に仕留めてカットシーンに移行した場合,イベントシーンで建物が映っているときは,倒した敵が建物から落下する様子も描かれる。本筋には関係のない部分ではあるが,カットシーンで「プレイシーンであったものがなくなっている」ようなことがないため,没入感を高めるのに一役買ってくれている。
回復は手動だが救済措置の“ラストスタンド”もあり。シリーズ初のカバーアクションも採用
以前の記事でも何度かお伝えしているが,本作では体力の回復は手動で行う。戸棚などマップ上のさまざまな場所に置かれているペインキラーを拾い,ダメージを受けたら随時それを使用し,体力を回復するというシステムになっている。
時間経過で体力が自動的に回復するシステムが主流となっている昨今では,不便な仕様とも解釈できるが,手動回復のほうが,回復アイテムが切れて窮地に陥ったときのスリルをより感じられるし,「物陰に隠れて,撃たれて減った体力の回復を待つ」ようなことがなくなるので,ゲームのテンポを保つのにもプラスに働いているように思う。
なお,本作ではシリーズ初となるカバーアクションが採用されている。オブジェクトに身を隠すことで銃弾を避けられるようになり,戦術の幅が過去作よりも広くなっている。
体力回復が手動のため,回復が間に合わず死んでしまうこともあるのだが,本作には“ラストスタンド”と呼ばれる救済措置が用意されている。
敵の攻撃を受けてマックスの体力がゼロになってしまったとき,ペインキラーを一つ以上持っていれば,自動的にバレットタイムが発動する。このバレットタイムが終わる前に,マックスを倒した敵を仕留めると,体力が半分回復した状態でプレイを継続できるのだ。しかし,相手を仕留め損なうなど条件を満たせなかったときは,ゲームオーバーになってしまう。
本作の照準モードには,手動/ハードロック/ソフトロックといった複数の設定が用意されている。ソフトロックでは近くの敵をロックオンできるなど,シューティングが苦手な人に向けた配慮もなされている。ただ,難度の高いモードでは,エイミングや先述のラストスタンドといったサポート要素に制限が加わる。ちなみに,本作には難易度設定が用意されているが,同じアクションパートを何度も失敗した場合,徐々に難度が下がっていくようにもなっている。
ゲーム中では,マックスは最大3種類の武器(片手用銃器2丁/両手用銃器1丁)を携行できる。使用する武器は“武器ホイール”メニューで切り替えることで状況に応じて使い分けができ,どの武器を持っているかはゲーム中のグラフィックスに反映される。
たとえば,片手用銃器2丁と両手用銃器1丁を持っている場合,片手用銃器を構えているときは,もう一つの片手用銃器をホルスターに収め,空いた手に両手用武器のストック(のフォアエンド)部分を持って移動する。2丁拳銃スタイルで戦うことも可能だが,そのときは“両手がふさがる”ので,両手用銃器をドロップすることになる。
ちなみに,武器を3つ持っているときは,両手用銃器を脇に挟みながらリロードするという,ロックスター・ゲームスらしいこだわりのモーションになっている。
英語が苦手なら日本語版を待つべき? シネマティックな演出とストーリーを堪能してこその「マックス・ペイン3」
繰り返しになるが,「マックス・ペイン3」は,「マックス・ペイン1」へのオマージュという側面を持つ。そのため,現在のTPS/FPSにおける主流とは異なるシステムをあえて採用したり,あるいはマックスのボイスに「マックス・ペイン1」と同じ俳優を起用したりしている。
その一方で本作は,シューティングゲーム本来の魅力をあらためて問い直し,いかに現在のロックスター・ゲームスのシネマティック・アクションとして昇華させるかにチャレンジしたタイトルでもある。
個人的には,英語が分からなくてもなんとなくゲームを進められるし,アクションゲームとしての完成度も高いので,日本語版の発売を待ちきれない人は,すでに発売されている海外版でプレイする価値はあると思う。
しかし,マックスの皮肉めいた心の声を含め,シリアスで陰のあるストーリーの全貌が分かってこそ,本作を十分に楽しめると言えるのも確かだ。
また,本作はマルチプレイに対応しており,対人対戦を楽しめるが,その中でも目玉となるのが,「ギャング・ウォーズ」モードである。これは,デスマッチやチーム・デスマッチなどと対戦ルールが異なるだけでなく,シングルプレイモードでは描かれなかった,本作の世界観を補完するストーリーを知ることができるようになっている。
このように本作は,映画的な演出とストーリーに重きを置いた作品であり,それを楽しまないのはもったいないところ。日本語版の発売は9月6日としばらく先の話だが,英語が苦手な人は,日本語版を待ったほうがいいかもしれない。
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