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  • 発売日:2009/05/14
  • 価格:6090円(税込)
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“隠れた名作”がPSPで蘇った! ストーリー展開の熱さや工夫しがいのある戦闘システムなど,色あせない魅力に満ちた「グローランサー」のレビューを掲載
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印刷2009/07/25 11:34

レビュー

シリーズ最高傑作の呼び声が高い第1作が,PSP版となってさらにパワーアップ

グローランサー

Text by 御簾納直彦

画像集#001のサムネイル/“隠れた名作”がPSPで蘇った! ストーリー展開の熱さや工夫しがいのある戦闘システムなど,色あせない魅力に満ちた「グローランサー」のレビューを掲載
 アトラスから発売中のPSP用“ノンストップドラマチックRPG”「グローランサー」は,1999年11月25日にPlayStation用ソフトとして発売された,同名タイトルのリメイク作だ。プレイヤーは,「世界を滅ぼす闇にも,世界を救う光にもなる」と予言された一人の少年となり,17歳になったことを機に王都ローザリアを旅立ち,多くの仲間と共に壮大な冒険を繰り広げることとなる。
 PSP版では,新たなキャラクターや新ルート/新エンディングが追加され,ボリュームが大幅にアップしているほか,携帯ゲーム機用ソフトならではのチューニングも施されている。
 本稿では,新たに生まれ変わったグローランサーの魅力について,さまざまな角度から語っていこうと思う。PlayStation版をリアルタイムで楽しんでいたという人も,PSP版で初めて知ったという人も,ぜひ目をとおしてほしい。

■ストーリー■

かつて,人々が住んでいた世界は魔法エネルギー「グローシュ」が満ちていた。
人々は大気中に浮遊するグローシュから魔法を使い,生活していた。
しかし、ある時から太陽が異常をきたし、大地は徐々に死へと向かった。人々は時空融合計画を行い別の世界と「重ね合わせ」ることで生き延びた。だがその結果グローシュは失われ、魔法を使うためには2つの世界の歪みからもれる僅かなグローシュを使うほかになかった。

画像集#002のサムネイル/“隠れた名作”がPSPで蘇った! ストーリー展開の熱さや工夫しがいのある戦闘システムなど,色あせない魅力に満ちた「グローランサー」のレビューを掲載

そしてしばらく後…、この大陸にはローランディア王国、バーンシュタイン王国、ランザック王国の3つの国が栄えていた。
ローランディア王国は,隣国バーンシュタイン王国と共同で魔法学院を創り,平和的に魔法を活用しようとしていた…。
ローランディアの宮廷魔術師サンドラに拾われた少年は「世を滅ぼす闇となる」「世界を救う光となる」と,相反する2つの暗示を受ける。

彼の将来を案じたサンドラは,自立できる年齢になるまで彼を王都の外へださず,外界との接触も持たせぬようにしてきた。

そして,少年が17歳になった朝,彼女は彼に告げた。
旅立ちの日が来たこと,自分の目で世界を見てくるようにと…。
少年は初めて王都を出て,外の世界へ旅立つ。
それが,すべての始まりであることを知らないまま…。


RPGというよりはセミリアルタイムストラテジー?

戦略性/戦術性に富んだRMC戦闘システムが熱い


画像集#003のサムネイル/“隠れた名作”がPSPで蘇った! ストーリー展開の熱さや工夫しがいのある戦闘システムなど,色あせない魅力に満ちた「グローランサー」のレビューを掲載
 グローランサーの戦闘システムは“リアルミッションクリア戦闘システム”(以下,RMC戦闘)と銘打たれている。本作には“戦闘もシナリオの一部”という開発思想が反映されており,一つの戦闘を“ミッション”として扱った,ドラマチックな戦闘パートが多数盛り込まれているのだ。
 このRMC戦闘では,戦闘シーンに敵と味方だけでなく,その場に居合わせた人も,戦闘に巻き込まれる形で登場することがある。つまり,戦闘が発生した場所が街なら,戦闘画面に市民なども登場することがあり,か弱い市民や,あまり強くはない兵士などを守りつつ,敵を殲滅するといったミッションも発生するわけだ。
 ちなみに,敵はマップ上にシンボルエンカウントとして表示されるので,ザコ戦であれば,ある程度戦闘の頻度をコントロールできる。

画像集#004のサムネイル/“隠れた名作”がPSPで蘇った! ストーリー展開の熱さや工夫しがいのある戦闘システムなど,色あせない魅力に満ちた「グローランサー」のレビューを掲載

 戦闘システムそのものは,一般的なRPGというよりはシミュレーションRPGのそれに近く,誤解を恐れずに言えば“コマンド選択式のセミリアルタイムストラテジー”のような印象だ。
 守るべきか弱いキャラクターが存在することも多々ある,戦術性の高い戦闘システムが搭載されているだけに,本作の戦闘難度は決して低くはない。実際,筆者が初めてグローランサーをプレイしたときには,序盤のザコ敵にあっさりとやられてしまったほどだ(筆者がヘタなだけという話かもしれないが)。
 だが,それは決して理不尽な高難度というわけではなく,しっかりとした戦略/戦術が要求される,本作ならではの魅力でもある。とくに,特定のクリア条件が定められたイベント戦闘では,キャラクターの配置/移動ミスや,ちょっとした判断の遅れがゲームオーバーに直結するのだが,逆に知恵を絞れば,一見「無理でしょこれ」と思える戦闘でも,何とか勝利を収めることができる。

画像集#005のサムネイル/“隠れた名作”がPSPで蘇った! ストーリー展開の熱さや工夫しがいのある戦闘システムなど,色あせない魅力に満ちた「グローランサー」のレビューを掲載
 序盤,ある山小屋で盗賊をすべて倒し,魔導書を取り戻すというイベントがあるのだが,まだ本作に慣れていなかった筆者は,そこで何回もゲームオーバーになった。何しろ,盗賊を一人でも逃がしたらゲームオーバーになってしまうのだ。しかし,キャラクターの特性をしっかりと考慮し,適材適所を心がけつつ配置場所/戦術を工夫したら,何とかクリアできるようになった。
 仮にある場面で行き詰まってしまっても,キャラクターがレベルアップしたときにボーナスポイントを任意に振り分けて,スキルや魔法を覚えさせることができるので,状況に応じた,あるいは想定されるその後の展開に対応するためのキャラクターを育てることも可能だ。
 ともあれ,「序盤でこの難度!?」と,何度か心が折れそうになったりもしたが,それだけにクリアしたときの達成感は格別であった。ボタンを連打しているだけでは戦闘に勝利できない,手応えのある戦闘に興味があるというRPGファンは,ぜひ一度本作のRMC戦闘に挑戦してみてほしい。


まさにノンストップドラマチックRPG!

盛り上げ方や伏線の回収が巧みなストーリー展開


画像集#006のサムネイル/“隠れた名作”がPSPで蘇った! ストーリー展開の熱さや工夫しがいのある戦闘システムなど,色あせない魅力に満ちた「グローランサー」のレビューを掲載
 グローランサーは,“ノンストップドラマチックRPG”と銘打たれているだけあり,ドラマ性が非常に重視されている作品でもある。特筆すべきは,イベント戦闘中やフィールドでの移動中などに突然シナリオが挿入され,そこで現れる選択肢にどう答えるかによって,戦況が大きく変化することもある“ノンストップドラマチックシステム”だ。
 本作のストーリー展開については,ネタバレの絡みもあるので詳しくは触れないが,先の展開が気になってしょうがないストーリー運びや,やり込んだ人ほど感心してしまう巧みな伏線の配置/回収などには,プレイしていて何度も感心させられた。その,物語るRPGとしての完成度の高さを語るうえで,戦闘中や移動中などにも積極的にドラマ性を盛り込む,ノンストップドラマチックシステムの存在は欠かせないものだといえよう。

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 古くからのグローランサーファンの中には,シリーズ第1作である本作(のPS版)をベストに挙げる人が少なくないように思えるのだが,実は筆者もその一人だ。こうしてあらためてPSP版を遊んでみても,その面白さは決して色あせていないところが印象的だ。
 また,ストーリーを盛り上げる装置の一つである,“休暇システム”の存在も忘れてはならない。
 ストーリーが進むと,主人公達は王宮に仕官して,さまざまな任務をこなすようになる。そして任務終了時には“休暇”が与えられ,そのタイミングで仲間達との絆を深めることができるのだ。
 休暇中,プレイヤー(主人公)がほかのキャラクターに対して取る言動が,個々のキャラクターの感情に影響を与え,その後のゲーム進行(イベントやエンディングなど)にも変化を及ぼす。うるし原氏が描く魅力的なキャラクター達と親睦を深められるというだけでも魅力的だが,こういった,一見“お遊び要素”のようなシステムが,ストーリー性に大きく関わっているという点からも,開発陣の徹底したこだわりが感じられて好印象だ。

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PlayStation版のコアプレイヤーも見逃せない

PSP版ならではの新要素/システム改良


 ここからは,PSP版「グローランサー」ならではの魅力について紹介していこう。PlayStation版を遊んだことがある人にとってまず気になるのは,何といっても新規キャラクターの追加だろう。

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 PSP版からの追加キャラクターは3人(仲間になるキャラクターは一人)。一人めのキャラクターは,メガネっ娘好きに人気が出そうなアメリア(CV:田村ゆかり)。冷静で,何事も完璧にこなしそうな彼女だが,焦ると肝心なところでポカをやってしまうという,ドジっ娘属性が魅力の女の子である。


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 二人めは,フェザリアン(翼を持つ種族)の少女,メルフィ(CV:富田麻帆)。フェザリアンは,本来協調性を大事にする種族なのだが,彼女はなぜか単独で行動することを好む。そして,人間に強い憎しみを抱いているようだ。


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 そして三人めの追加キャラクターが,メルフィが唯一心を許しているという青年,ジャスティン(CV:増谷康記)だ。心優しい性格で,人間同士の争いに遭遇すると,露骨に辛そうな顔をして嘆くのが印象的だ。


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 さらに,PlayStation版では仲間にできなかった14歳のナイツ・マスター,リシャールが,仲間に加えられるようになった点も,PSP版ならではの魅力である。
 もちろん,キャラクターの追加に伴い,新規のイベントルートも用意されている。それらのイベントには,新たに描かれたCGイラストが用意されているので,それらをすべて閲覧することも,古くからのファンの目標になりそうだ。
 ほかにも,アメリア役の田村ゆかりさんと,メルフィ役の富田麻帆さんがそれぞれ歌うオープニングテーマ(二種類あり)とエンディングテーマ(こちらは富田さんが歌っている)が新たに追加されているほか,戦闘のテンポが改善されている点も見逃せない。ここは,PlayStation版の戦闘でストレスを感じていた人にとっては,非常に嬉しい改善だろう。


キャラデザやグラフィックスで敬遠していた人にこそ

プレイしてもらいたい,意外なほどの名作


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 PSP版「グローランサー」は,約10年前に発売されたPlayStation版のリメイク作ということで,当然のことながらグラフィックスは,昨今のPSP作品と比べて若干見劣りする部分がある。また会話シーンなどで,テキストが表示されたあとに少し遅れてボイスが流れるなど,音声絡みのラグも不満点として挙げられる。
 加えて,新キャラクター関連のイベントや休暇などでボイスの入りが中途半端な点も,(とくにPSP版を楽しみにしていたPS版の)プレイヤーの感情移入を妨げる一因になっていると感じられた。もし,グローランサーシリーズが今後もリメイクされるのであれば,そういった部分をぜひとも改善してもらいたいなぁと,一プレイヤーとして強く願う。

画像集#015のサムネイル/“隠れた名作”がPSPで蘇った! ストーリー展開の熱さや工夫しがいのある戦闘システムなど,色あせない魅力に満ちた「グローランサー」のレビューを掲載 画像集#017のサムネイル/“隠れた名作”がPSPで蘇った! ストーリー展開の熱さや工夫しがいのある戦闘システムなど,色あせない魅力に満ちた「グローランサー」のレビューを掲載

 しかしこれらの不満点を考慮しても,本作は間違いなく良作の部類に含まれると筆者は思う。ストーリー展開のうまさや戦術性の高い戦闘システムなど,実際にプレイしてみなければなかなか理解できない部分が魅力であるため,本作は“隠れた名作”というポジションに甘んじていたような印象があるのだが,10年振りくらいに再び遊んでみても,やはり本作は“名作”だった(この際,隠れている/隠れていないは置いておいて)。それなりにボリュームのあるゲームだが,クリア後も2周,3周と遊びたくなるくらいの魅力を,本作は備えている。

画像集#018のサムネイル/“隠れた名作”がPSPで蘇った! ストーリー展開の熱さや工夫しがいのある戦闘システムなど,色あせない魅力に満ちた「グローランサー」のレビューを掲載

 「RPGは食傷気味だ」という友人が,久しぶりにRPGを遊んでみたくなったとしたら,筆者は迷わずPSP版「グローランサー」をオススメするだろう。リハビリにはちょっとヘビーなゲームかもしれないが,プレイヤーをぐいぐいと引っ張ってくれるストーリー展開や,試行錯誤が楽しい戦術的な戦闘システムなどが,RPGの面白さを再認識するきっかけになると確信できるからだ。
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