レビュー
オープンワールドゲームの最先端にして最高峰。延々と遊び続けられる生きた箱庭世界を体験せよ
Red Dead Redemption
一応は2005年に発売されたPlayStation 2 / Xbox用ソフト「レッド・デッド・リボルバー」(Red Dead Revolver)の続編にあたるのだが,ゲーム性はまったくの別物。設定的な繋がりもほとんどなく,主人公の容姿が前作の主人公を彷彿とさせる程度の共通点しかない。同じ西部劇モチーフのアクションアドベンチャーではあるが,RDRはほぼ完全新作と考えて差し支えないだろう。
本稿では,RDRを実際にプレイした感想を交えつつ,ゲームの魅力を紹介していこう。
「Red Dead Redemption」公式サイト
火を噴く銃口,はじけ飛ぶカウボーイハット
圧倒的な技術力で再現された西部開拓時代のアメリカ
RDRの舞台となるのは西部開拓時代のアメリカ。家族と平和な生活を送るためにギャングの世界から足を洗った主人公ジョン・マーストンだったが,連邦捜査官にハメられ,妻と子供を人質にとられてしまう。家族を解放する条件として提示されたのは,かつての仲間達を“捕縛または抹殺”しろという非情なミッションの遂行だった。
もはや選択の余地はない。ジョンは銃を手に取り,再び血と硝煙の世界へと足を踏み入れる。
ロックスター・ゲームスのオープンワールドゲームらしく,アウトローが主人公となっている本作。身も蓋もない言い方をしてしまえば,西部劇版のGTAといった作品なのだが,もちろんゲームの雰囲気はまったくの別物だ。
眼前に広がるのはビル街ではなく,あまりにも広大な荒野。そこには牙を抜かれたマヌケ面の都会人などひとりもおらず,人々は狂った食人鬼や凶悪な盗賊,凶暴な野生動物などがうろつく過酷な環境下で,弱肉強食の掟のもとに生きている。
そんな世界を生き抜くための武器は“銃”だ。それも,西部開拓時代に数々の伝説を残した名銃ばかりが登場する。どれもこれも鉄の臭いさえ伝わってきそうなほど,ディテールにこだわって再現されており,ガンマニアや西部劇マニアなら,心の琴線を激しくかき鳴らされること間違いなしである。
馬は,本作での主な移動手段となる相棒的存在だが,病気の老馬から,驚異的な能力を誇る名馬まで,バリエーションは非常に豊かだ。馬はショップでも購入できるが,投げ縄を用い,野生の馬を捕まえて持ち馬にすることも可能となっている。
乗馬には,GTAシリーズで高級車を乗り回すのとはひと味違った楽しみがあり,人馬一体となって荒野を疾走する感覚は,爽快の一言に尽きる。操作自体も,車の運転に比べるとはるかに簡単で,なにより舞台設定上,進路を邪魔する障害物が少ないのが嬉しい(もちろん走りにくい地形はある)。かなり大雑把に目的地を目指しても問題なく辿りつけるあたりは,ストレスフリーで非常に好印象だ。
まぁ馬は生き物なので,スタミナに気を配りながら走る必要はあるが,タイヤがパンクしてスリップすることもなければ,爆発炎上することもない(死んじゃうことはある)。馬すげぇ。馬最高である。
次に投げ縄について。カウボーイといえば,これを頭上で振り回している絵が真っ先に思い浮かぶという人も多いはず。まさに西部劇の象徴ともいえるアイテムだが,本作でも賞金首を縛るのに使ったり,野生の馬を慣らすために使ったりと,活躍の場が多い。縛り上げた人間を馬で引きずりまわしたり,身動きの取れない状態にしたうえでナイフで喉を掻っ切ったりと応用性も高く,実に幅広い用途で使えるアイテムなのだ。
ちなみに,海外で本作が発表された当初は,縄で縛り上げた人間を線路上に放置して,機関車に轢かせるというシーンが物議をかもした。これは西部劇においては,日本の時代劇で芸者が帯をつかまれクルクルされるのと同じくらいお約束の展開とも言えるのだが,確かに残酷といえば残酷ではある。筆者も「日本版では確実にカットされるだろうな……」と思っていたのだが,なんと発売されてみれば,まさかの規制なし。キャラクターから「牧場娘はバックが好きらしいぜ」などという下卑た発言がサラリと飛び出すあたり,翻訳に関しても「いい感じ」に自重していないようだ。全国のCEROレーティングZ戦士達は,元気玉を放たんばかりに大喜びである。
なお,機関車による轢殺はストーリー進行上,必ずしもやらなければならないアクションではないので,「ゲームとはいえ抵抗がある……」という人も安心だ。俺はやるけどな!
リアルタイムで発生する事件
GTAを超える自由度と没入感
盗賊に襲われている馬車から助けを求められたり,女性がクーガーに追いかけられていたり,悪党がこちらをハメようと声をかけてきたり……ときには,野生動物の生存競争まで目撃できる。どれも軽めのサブイベントばかりだが,不意に遭遇するそれらのイベントは,ゲーム内世界のリアリティの向上に,確実に貢献している。
RDRの箱庭世界は,ただ絵が綺麗だから,西部開拓時代の雰囲気が忠実に再現されているからリアルなのではない。そこにしっかりと,人間や動物が生活していることを,プレイヤーが自然に感じ取れるからリアルなのだ。
また本作では,ハンティングやギャンブルといった遊びの要素も非常に豊富で,プレイしていると,人質にとられた妻子のことなど忘れてしまうこともしばしば。それだけ,このスリルとロマンに満ちた世界は魅力的なのだ。寄り道に夢中になり,メインストーリーがちっとも進まないというのは,良質なオープンワールドゲームをプレイしていてよく経験することだが,本作ではその傾向がやたら顕著だった。
また,この時代は犯罪への対応もアバウトで,高額の懸賞金がかけられた極悪犯罪者でも,ちょろっと保安官の仕事を手伝うことができたり,罰金を払えば罪がチャラになったりする。強盗プレイにハマるのも,傑作西部劇「シェーン」のように,弱き人々のために戦う正義のガンマンを演じるのも,プレイヤーの自由だ。ちなみに,適切な形でミッションをクリアし,名声や名誉を高めていけば,ちょっとした犯罪なら保安官が見て見ぬふりをしてくれたり,買い物をするときに商品が安くなったりもする。
これは余談だが,筆者が操作するジョンは,ポーカーで負けるたびに銃をぶっ放すわ,通りすがりの馬車を襲って金目の物を奪うわと,ナチュラルボーンキラー的にフリーダムな外道ライフを楽しんでいる。まぁ,懸賞金が上がりすぎて定期的に賞金稼ぎ達が襲ってくるのだが,獲物を探す手間がはぶけて一石二鳥である。
“自由”を遊ぶマルチプレイ
協力,裏切り,何でもアリ
シングルプレイだけで長時間ミッチリと遊べる本作だが,独特のマルチプレイ要素も忘れてはならない。同じフィールドに最大16人のプレイヤーが集い,自由気ままに遊ぶことができるのだ。
FPS/TPSの一般的なマルチプレイモードのように,ハッキリした目的は定められておらず,荒野を放浪しながらギャングの住処を壊滅させたり,対戦モードを遊んでみたり,その時々にやりたいことをやれるのが最大の魅力となっている。もちろんほかのプレイヤーと協力することもできるし,いきなり襲いかかることも可能だ。復讐を恐れないのならば,パブリックエネミーとして世界中をかき回すのも面白いだろう。ただし,あまりやりすぎると,民警団を組織したプレイヤー達に追い回されることになるので,その点はご注意を。
またマルチプレイでは,経験値を稼いでレベルアップしていくことで,新たな武器やキャラクターがアンロックされる。容姿はアウトフィッターモードに切り替えることで,いつでも変更可能だ。
経験値はギャングの襲撃やハンティングなどで獲得できるので,積極的に挑戦していこう。なお,ほかのプレイヤーを殺すことでも経験値は入手できるが,その量は微々たるものだし,常に復讐のリスクがつきまとうため,あまり効率がいいとは言えない。レベルアップを目的とするならば,素直にミッションをこなすことをオススメする。
しかし,シングルもマルチもボリュームがありすぎて,どちらか一方に専念しにくいというのが困りものだ。本作に手を出すと,ほかのゲームをプレイする時間がなくなってしまう。名作ならではの贅沢な悩みである。
文句なしのクオリティ
GTAに続く伝説の誕生
オープンワールドゲーム,かつ西部劇モチーフということで,人を選ぶ作品であることは確かだが,とりあえずは食わず嫌いをせず,ぜひ一度プレイしてみてほしい。しばらくガンマン気分が抜けなくなること請け合いだ。
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(C) 2005-2011 Rockstar Games, Inc.
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