6月18日,ソニー・コンピュータエンタテインメントから,PSP用ソフト「
銃声とダイヤモンド」が発売された。本作は,フリーランスの交渉人(ネゴシエーター),鬼塚陽一となり,交渉術を駆使してさまざまな事件を解決に導くのが目的の
“交渉アドベンチャーノベル”だ。
ネゴシエート=交渉というあまり一般的ではない題材を,ゲームにうまく溶け込ませていることや,ハードボイルドで渋い雰囲気の漂うキャラクター達など,見どころの尽きない本作。全体演出/シナリオ監修を担当しているのが,
「弟切草」「かまいたちの夜」「街」などの作品で知られる麻野一哉氏という点も見逃せない。やや地味なタイトルではあるが,サウンドノベルファンはもちろん,アドベンチャーゲーム全般が好きな人にとっても,注目の一作と言えるのではないだろうか。
本稿では,そんな「銃声とダイヤモンド」の概要を紹介しつつ,その魅力に迫ってみよう。
■ストーリー■
ゲームの舞台は近未来の東京。人質立てこもりや,誘拐事件など,急増する凶悪犯罪に対応するため,警視庁は民間の専門家を捜査員として登用している。
警視庁交渉準備室。通称「ゼロ課」。現場の最前線にたつ交渉人の使命は,一滴の血も流さずに事件を解決すること。それがたとえ,犯人の血であったとしても。
犯人逮捕より人質解放による事件解決を目指すゼロ課には………「警察機構に所属しないプロの交渉人=ネゴシエーター」が配置された。
プレイヤーは,ニュ―ヨークで交渉術を学んだ交渉人,鬼塚陽一となり,数々の事件に挑むことになる。
ゼロ課発足後,次々と起こる凶悪事件。解決したかに思われた事件の意外な共通点。事件の背後に見え隠れする,巨大な犯罪組織の影。
まるで連続ドラマのように,すべての事件が一つの真実に収束していく。
■主な登場人物■
![画像集#001のサムネイル/確かな“緊迫感”が味わえる交渉アドベンチャー,PSP「銃声とダイヤモンド」の魅力を紹介](/games/081/G008130/20090707062/TN/001.jpg) ●フリーランスの交渉人/鬼塚陽一32歳 ゼロ課・専属交渉人20代後半に警視庁捜査一課で「交渉人」として活躍。その後,ニューヨーク市警に留学し,本場の交渉術を学ぶ。犯罪都市の厳しい現実を目の当たりにして,帰国後に退官。フリーランスの交渉人として活躍後,「チーム・ゼロ」に参加。交渉術の主な駆け引きには定評があるが,時に味方をあざむく奇策を弄することがあるため,「変人」という評価も定着しつつある。 |
![画像集#002のサムネイル/確かな“緊迫感”が味わえる交渉アドベンチャー,PSP「銃声とダイヤモンド」の魅力を紹介](/games/081/G008130/20090707062/TN/002.jpg) ●交渉をサポートするパートナー/神崎ひろみ28歳 ゼロ課・交渉人助手「捜査一課の刑事」を夢見てキャリアの道に進んだが,配属されたのは組織犯罪対策部(通称「マル暴」)。日夜,やくざ者とにらみ合うマル暴の雰囲気に耐えかねて,転属を希望。しかし新しい配属先は,正式な部署とは認められていない「ゼロ課準備室」だった。気が強くて頑固。ときどき鬼塚と衝突するが,公証人としての鬼塚の力は素直に認めている。 |
![画像集#004のサムネイル/確かな“緊迫感”が味わえる交渉アドベンチャー,PSP「銃声とダイヤモンド」の魅力を紹介](/games/081/G008130/20090707062/TN/004.jpg) ●アメリカ帰りのプロファイラー/中村啓介35歳 ゼロ課・専属プロファイラーFBIに深い関わりのアメリカのシンクタンク勤務。専門は「プロファイリング」。犯人像を予測する従来の手法にこだわらず,幅広いデータを駆使して,捜査に活かす。冷静沈着で頭脳明晰。独自のネットワークを駆使し,瞬時に犯人のデータを洗い出す。 |
![画像集#003のサムネイル/確かな“緊迫感”が味わえる交渉アドベンチャー,PSP「銃声とダイヤモンド」の魅力を紹介](/games/081/G008130/20090707062/TN/003.jpg) ●鬼塚の上司であり良き理解者/片桐勇作48歳 ゼロ課・指揮官ゼロ課の指揮官であり,鬼塚の上司。テロ対策部隊・SATにいた経歴を持つ。階級は警視。包容力があり温厚な性格だが,リーダーとしての決断は早くて的確。つねに公明正大で上層部に媚びることをしないため,部下の信頼は厚い。反面,現場優先の姿勢が上層部の反感を買うこともある。フリーランスの交渉人をしていた,鬼塚をスカウトしてきた張本人。 |
交渉は常にリアルタイムで進んでいく
一瞬の判断が命取りに!?
本作の醍醐味ともいえる交渉は,すべて1対1で行われ,その時々に適した対応がリアルタイムで求められる。交渉時の会話内容はもちろん,わざと返答を遅らせたり,犯人の発言を遮るように喋ったり,あえて犯人の質問に返答しなかったりと,実際のネゴシエーション同様に,さまざまな駆け引きが必要とされるわけだ。
また交渉では,“感情メーター”の存在が重要となる。これは交渉相手の感情を表すメーターで,プレイヤーの交渉次第で大きく増減する。感情が高ぶってきた犯人は思わぬ行動に出ることもあるので,それを防ぐ意味でも,交渉中は常に感情メーターに気を配りながら対応しなければならない。
交渉が終了すると交渉結果が表示される。完璧な交渉を行った場合はA評価,不備はあるがなんとか交渉に成功した場合はB評価と,交渉中のあらゆる行動が結果として表れるわけだ。ちなみに,積み重ねてきた評価によっては,謎の確信に迫るラストエピソードが見られないこともあるので,評価を常に意識しつつ,事件を解決していきたいところである。
また,警視庁ゼロ課に在籍するプロファイラー,中村啓介に交渉のヒントをもらうこともゲームを進めていくうえで重要となる。ヒントを得るためには中村と1対1の“プロファイリング”を行う必要がある。
まず,プレイヤーが捜査中に見聞きした内容を,キーワードという形で中村に提出,すると中村が,交渉中にどんな点に気を付けたらいいのかなどをアドバイスしてくれる。間違っているキーワードを提出してしまうと,アドバイスは得られないので注意しよう。
なお,現在PlayStation Storeと
公式サイトでは,「銃声とダイヤモンド」の体験版が配信されている。体験版でプレイできるシナリオは,製品版には収録されていない書き下ろしのシナリオとなっているので,興味のある人はぜひともダウンロードしてほしい。
私生活にも応用できる?
交渉成功時の快感は本作のならではの魅力
本作の見どころは何といっても,交渉シーンにある。交渉はリアルタイムで進行し,状況が刻一刻と変化するため,ノベルタイプのアドベンチャーとは思えないほどのスリリングなプレイが楽しめる。リアルタイム進行が生み出す交渉パートの緊張感が,ほどよいスパイスとなっており,テキストを読み進めるという作業もさほど単調にはならず,常にモチベーションを維持しながらプレイできるわけだ。
交渉がなかなか思いどおりにならないところも,犯罪心理の複雑さがうまく表現されているようで興味深い。会話の流れや相手の表情などをしっかりと確認しつつ,言っていいこと/ダメなことだけでなく,言葉を発するタイミングまでも考えなければならないゲーム性は,ノベルタイプのアドベンチャーではそうそう味わえないもの。交渉の難度が若干高いだけに,成功したときの達成感はたまらないものがある。
ちなみに,画面写真を見てもらえば分かるように,本作ではテキストウィンドウ内ではなく,(基本的に)登場人物の近くに会話内容が表示されるほか,“大きな声”が“大きなサイズ”で表示されたりもする。これらも,ゲームの雰囲気を盛り上げる見逃せない要素といえるだろう。
シナリオのテーマや交渉パートのゲーム性がちょっと珍しいので,最初は戸惑うことがあるかもしれないが,本作独特の世界観や“テンポ”に慣れてくれば,交渉人としての仕事にどっぷりハマってしまうこと請け合いだ。アドベンチャーゲームが好きな人はもちろん,刑事ドラマや推理小説が好きな人にも,ぜひ一度プレイしてもらいた秀作である。