レビュー
ダートレースを骨の髄まで楽しみたいなら,コレ!
Colin McRae: DiRT 2
» Colin McRae Rallyシリーズといえば,一台ずつ走ってタイムを競う,一般的なラリースタイルのレースゲームだ。だが,2007年にリリースされた「Colin McRae: DiRT」は,ラリースプリントに加えて山岳コースやサーキットなど,さまざまなスタイルのレースが楽しめる作品に変わった。今回は,そんなシリーズの第2弾となる「Colin McRae: DiRT 2」を,4Gamerの車両部門を統括するライターのUHAUHA氏がレビューする。
伝説的ラリードライバー コリン・マクレー氏の名を冠した
シリーズの最新作
リスクを恐れない攻めの走りで多くのラリーファンを魅了した,伝説的なドライバー,コリン・マクレー(Colin McRae)氏。2007年9月のヘリコプター事故によりマクレー氏が突然この世を去ってから,考えてみれば約2年になる。月日が経つのは早いものだ。彼の名を冠したCodemastersのColin McRae Rallyシリーズは筆者のお気に入りのタイトルで,訃報に接したときにはゲームがどうなるのか気になったものの,いまだに健在で人気も高く,マクレー氏もきっと喜んでいるだろう。
そんなColin McRaeシリーズの最新作にあたるのが,2009年11月5日にCodemastersの日本法人であるコードマスターズから発売となった,「Colin McRae: DiRT 2」(PlayStation 3/Xbox 360/PSP)である。今回,Xbox 360版でホコリっぽいコースをさんざん走り回ることができたので,DiRTシリーズ最新作がどんな出来映えになっているのかをお伝えしていこうと思う。
さて,Colin McRae Rallyシリーズというと,コ・ドライバー(Co-driver。ナビゲーターとも)が読み上げるペースノートを頼りに,一つのスペシャルステージ(SS)を走破する一般的なラリーがメインになっていた。しかし,本作は前作「Colin McRae: DiRT」と同様――タイトルにRallyという文字が入っていないことからも分かると思うが――どちらかというと,一般的なラリーよりもライバルカーと同時走行して競い合うさまざまなダートレースにポイントが置かれており,ここがDiRTシリーズの大きな特徴になっている。
コリン・マクレー氏の冠がついているものの,パッケージのスバル・インプレッサからも分かるとおり,マクレー氏ともラリーで勝負したこともある,神がかったドライビングテクニックで知られるラリードライバー,ケン・ブロック(Ken Block)氏がナビゲーターとして登場する。ちなみにブロック氏のイカれた走り(誉め言葉)は,Youtubeなどを検索すればわんさか登場するので,一度は彼の超絶テクニックをご覧あれ。
ほかにもTravis Pastrana氏,Dave Mirra氏,Tanner Foust氏,Mohammed Ben Sulayem氏など,エクストリームスポーツの大会であるX Gamesにも出場している有名ドライバーが次々に登場するので,彼らを相手に戦えるところもファンにはたまらないだろう。少なくとも筆者はたまらなかった。
オープンフィールド,あるいはクローズドコースで
いろんなダートレースを楽しもう
ラリーが少なく,ダートレースが多いと書いたが,それではどんなダートレースが用意されているのか気になる人も多いだろう。そこで,まずはレースモードの紹介といこう。
RALLY(ラリー)
RALLY CROSS(ラリークロス)
TRAIL BLAZER(トレイルブレイザー)
RAID(レイド)
LAND RUSH(ランドラッシュ)
GATE CRASHER(ゲートクラッシャー)
DOMINATION(ドミネーション)
LAST MAN STANDING(ラストマン スタンディング)
世界各国で開催されるレースイベントに参加して
トップドライバーを目指す
レースモードに合わせ,オープンフィールドやクローズドの周回コースなどさまざまなコースが用意されている。場所も世界の各都市にあり,例えばマレーシアではぬかるんだ路面,クロアチアは乾燥した砂地,日本は渋谷に設営された急コーナーの多いダートコースなど,それぞれの国の特徴,特色が生かされたものになっている。
世界一のトップドライバーを目指すキャリアモード,「ダートツアー(DiRT TOUR)」では,ロサンゼルス,ユタの砂漠地帯,モロッコ,ロンドン,クロアチア,マレーシア,中国,日本といった場所で開催されるレースイベントに参加し,ラリーとダートレースで戦っていくことになる。
具体的には「ダートツアーマップ」の中からレースイベントを選ぶことで戦いが始まるのだが,最初からすべてのレースに参戦できるわけではなく,参加できるレースで良い結果を残すことで経験値を稼ぎ,レベルアップすることで次第に新たなレースがアンロックされていくという,レースゲームでは定番のシステムとなっている。
いずれにせよ,ひたすらレースに挑戦してランクアップすることが先決だろう。多くの経験値と賞金を手に入れるには,レース難度を高くして優勝するのがベストだが,高難度で優勝するには相当なテクニックが必要になる。
ちなみに,レース難度はイベントごとにイージーからハードコアまで6段階に設定可能で,難度の違いによりライバルカーの速さ,そしてミスをなかったことにしてくれるフラッシュバック回数などに違いがある。
レースゲームのビギナーや手軽に遊びたい人は難度を下げて挑戦すればいいし,上級者向きの高難度ならかなりシビアな戦いが楽しめる。もちろん,上級者でも自信のあるレースは難度を上げ,なければ下げるなんてのもありで,腕に合わせてレースごとに難度設定を変更できるのは,幅広いプレイヤーが楽しめるシステムとして良いと思う。
ライバルカーと接触したりクラッシュすると,相手のドライバーから無線が入り,カチンとくるようなことを言ってくる |
条件が満たされたために経験値ボーナスが入った。レースに挑戦していれば自然に達成できる条件ばかりなので安心だ |
また,ドリフトやジャンプの累積距離といった条件を満たすこと(これはミッションと呼ばれる)で経験値ボーナスが入るが,いずれもレースをこなしていくうちに自然に達成できるものばかりなので,がむしゃらにボーナスを狙う必要はないだろう。どんな条件で経験値ボーナスが入るかは,"MY STUFF"の"DiRT TOUR MISSION"で確認できるので,チェックしておこう。
ツアーを進めていくと,ブロック氏などのスタープレイヤー達の間で評判が確立され,それが友好関係につながっていくところが楽しい。鮮やかな勝利を見せつけたときや,マナーの良い紳士的なレース展開などで好感度が高められるとのことだ。筆者はとくに気にせず暴れまくりのレースを続けているが,友好関係に問題はなさそうで,このへん,神経質にならなくても大丈夫なようだ。
また,直接スタードライバーから挑戦(スローダウン)を受けることもある。スローダウンはガチンコ勝負の「ワン・オン・ワン」,複数のライバルとレースをして3位以内に入ることを目指す「シュートアウト」,相手の持つラップタイムを上回る「タイム・スローダウン」がある。さらに評判を高め経験値を稼ぐためにも,挑戦に応えて相手の鼻をへし折ってやろう。
経験を積んでレベルが上がると,最高のプレイヤー達が腕を競う世界的に有名な大会「X Games」のほか,スタードライバー達が各国を転戦して戦う「ワールドツアーイベント」に参加できるようになる。これらのイベントで勝利できてこそ,世界のトップドライバーになったといえるのだ。
という感じで,次々にレースをこなして賞金と経験値を稼ぎ,必要なレースカーを購入したり,車をアップグレードさせたりして新たなレースに挑んでいくのがダートツアーで,全体的に,レースゲームによくあるオーソドックスな流れになっている。こういったアンロックを作業に感じることもあるが,本作ではゲームを進めるために同じレースを何度も走らされるようなことはなく,実にテンポ良く進んでいく。
世界は強豪だらけ! 手軽に楽しめる
人間相手のマルチプレイが熱い!
ダートツアー以外のモードとしては,シングルプレイとタイムトライアルが用意されている。実はこの二つのモード,ダートツアーマップのイベントレース選択画面の下のほうにひっそり存在し,ダートツアーに夢中になっていた筆者が,これらに気づくまでにかなりの時間がかかったことは内緒にしておきたい。
シングルプレイはダートツアーとは異なるレースで構成されており,スタートポジションが自由に設定でき,経験値も稼げるので,一通り挑戦して損はない。
一方のタイムトライアルでは,ラリー用のコースをバギーで走るなど,通常では選択できない組み合わせでのアタックができるところが面白い。Xbox LIVEに接続していれば,コース&マシンごとのタイムとゴーストデータが記録されるので,トップタイムのゴーストデータをダウンロードして一緒に走ることも可能だ。同じコースをいろいろなマシンで攻めたい人にはうってつけのモードといえるだろう。
プレイしたのがXbox 360版ということで,マルチプレイにはXbox LIVEを利用したが,プレイヤー数が非常に多くて対戦者探しに困ることはまったくなかった。このへんはプレイヤー数の多いコンシューマ機ならではという感じで,悲しいかな,これがPCだったりすると……,いや,言うまい。また,Xbox 360同士をつなぐシステムリンクもサポートされているが,果たしてどれだけの人が使うものかはよく分からない。マイマシンを持ち寄ってレースパーティ,なんてのが欧米で盛んなのかも。
それはさておき,マルチプレイには「プロツアー」と「ジャムセッション」の二つのモードがあり,プロツアーでは各ドライバーが接触なしのタイムトライアルに挑む「タイム・ボム」(TIME BOMB),接触ありで抜きつ抜かれつのレースに挑む「スマッシュ・アップ」(SMASH UP),ファンキーな裏レースに挑む「ファンキー」(FUNKY),そしてすべてのレースに挑戦する「トータル」(TOTAL)が用意されている。
マルチプレイには,「どれだけ経験を積んでいるのか」といったプレイヤーのレベルを示す名声ポイントがあり,これはプロツアーのレースに挑戦したり,定期的に開催されるオンライントーナメントの成績によっても獲得できる。また,ツアーモードと同様に「特定距離を走破する」「特定回数追い越しをする」といった,ダートツアーとは違うマルチプレイ用のミッションも用意されており,それを達成することでも名声ポイントが加算される。
ちなみにオンライントーナメントとは,オンラインプレイをすると自動的にエントリーされるもので,期間内に「プロツアーのレース結果でオンライン名声を獲得しましょう」などと表示され,オンラインランキングの順位によって名声ポイントが加算されたりするもの。定期的に新たなトーナメントが開催されているので,トーナメント内容をこまめにチェックしておきたい。
マルチプレイで良い成績を残しておきたい理由の一つとして,成績優秀なプレイヤーやそのコースの自己ベスト保持者など輝かしい実績を持つプレイヤーなどが,「注目ドライバー」として,ゲーム開始時に紹介されることが挙げられる。しかも,注目ドライバーに選ばれてトップでゴールできれば名声ボーナスがもらえてしまうという。
自慢じゃないが筆者は一度も注目されたことがないし,近々選ばれそうな気配もまったくないため,本当に名声ボーナスがもらえるかどうか確認不可能なのところが悔しいったらありゃしない。
カウンターステア当てまくりの暴れん坊の挙動を
制御できるか?
さて,最後にドライブゲームの主役となるマシン(ラリーカー)や車の挙動について触れていこう。
本作には公式ライセンスを受けた実際のラリーカーのほか,オフロード専用バギーカーや,かつて活躍したラリーカーなど,30種類以上が収録されている。ラリー,ラリークロス,トレイルブレイザーでは同一のマシンを使えるが,実際にはレースモードに合わせたマシンが必要で,一台のマシンを改造パックを使って仕様変更することになるため,同じマシンなのにそれぞれのモードごとに外観や挙動特性がまるで違うものになるのだ。
とくにトレイルブレイザー仕様のマシンはド派手なエアロパーツに身を包み,ハイパワーなダートマシンと化すので,タイムアタックモードでいろいろなコースを爆走するのが個人的に好き。
もちろん,マシンごとに挙動特性の違いは再現されており,マシンの選択時に基本特性がどうなっているのか分かるようになっている。基本特性は最高速度,加速,ドライバビリティの三つのバーで表され,数値が高いほど各項目の性能が高いことを意味する。三つの特性のバランスが取れたマシンが使いやすいわけだが,最高速度を最優先するなど,プレイヤーの好みに合わせた選択をしてもいいだろう。
マシンのセッティングは「マシンセットアップ」をオンにしておくことで,レース開始直前に調整できるようになっており,ギア比,ダウンフォース,サスペンション,車高,ディファレンシャル,ブレーキバランスをそれぞれ5段階で調整可能。好みに合わせてセットするといいだろう。また,セッティングを保存しておいて読み出すこともできるので,いろいろな組み合わせを試して走り比べるのも面白い。
車の挙動についてはCodemastersのレースゲーム全般の味付けともいえるアーケード寄りのものになっている。荷重移動や路面の状況,起伏による挙動の変化などがしっかり再現されているので,レースゲームのファンに限らず,幅広いプレイヤーがドライブの楽しさを味わえるはずだ。
とはいえ,ダート走行の醍醐味ともいえるドリフトコントロールは,慣れるまで難しいかもしれない。アーケード寄りとはいえ,アクセルベタ踏みでコーナーをドリフトで抜けられるほど甘くはない。微妙なハンドルとアクセルの操作も必要になるし,ブレーキングするところはしっかりブレーキを踏まないと,簡単にコースアウトしてしまう。
どちらかというと,リアが流れ出してからの挙動がピーキーなので,カウンターステアを当てても横滑りが止まらず,そのままコースアウトしてしまったり,カウンターステアを当てるたびにリアが流れてタコ踊り状態になったりすることが多いようだ。
また,オープンフィールドのコースでは,道幅が狭い道を猛スピードで走り抜けることになり,思わずアクセルを緩めてしまうようなスピードの恐怖と戦うことになる。ぜひ思い切りビビってほしい。
今回,筆者はXbox 360版をプレイしたが,ゲームパッドでプレイしていると,細かい挙動変化に操作が対応できず,ややストレスを感じてしまった。しかし,Xbox 360 ワイヤレス レーシングホイールを持ち出すと,ハンドルとアクセル,ブレーキの細かい操作ができるようになり,格段に走りやすい。操作性が向上するので,存分にドリフト走行を楽しめて面白さ倍増。というわけで,可能ならステアリングホイールでのプレイをオススメしたい。
もちろん,挙動変化についていけずにコースアウトしたり,ライバルカーに激突されたり激突したり,さまざまな理由で激しいクラッシュにも見舞われる。
細かい接触ならまだしも,ときに走行不能になるほどの致命的なクラッシュに見舞われることもしばしばある。そんなときには,ミスの直前まで時間を戻せる「フラッシュバック機能」の出番だ。難度ごとに使用回数は異なるが,これがあるお陰でクラッシュを恐れない攻めの走りができるのだ。
流れるリアを制御しながらコーナーを攻め続ける,豪快なラリー&ダートレースを手軽に楽しめる本作。最初はコースアウトしたり,クラッシュしたりして悔しい思いをしてほしい。しかし,レースゲームはある意味,"覚えゲー"であり,繰り返しプレイすることで「このコーナーはこのぐらいの速度でこれだけハンドルを切って」というのが分かってくる。そして,頭を使うことなく身体が自然に反応するようになったら楽しさ倍増。きっと止められなくなるはずだ。
ぜひ,オンロードレースでは味わえない,豪快なレースを楽しんでほしい。
登場車種リスト
RALLY CAR
・Nissan 350Z
・Subaru Impreza STI Group N
・Mitsubishi Eclipse GT
・BMW Z4M Coupe Motorsport
・Pontiac Solstice GXP
・Mitsubishi Lancer Evolution IX
・Colin McRae R4
・Mitsubishi Lancer Evolution X
・Subaru Impreza WRX STI
BAJA
・Hummer HX
・Dodge Power Wagon
・Honda Ridgeline
・Toyota FJ Cruiser
RAID T1
・Mitsubishi SHI Racing Lancer
・Bowler Nemesis
・VM Race Touareg 2
・Hummer H3
BUGGIES
・Kincaide Ford F-150 Trophy Truck
・Herbst Smithbuilt Buggy
・Chevrolet Silverado CK-1500
・Dodge Ram Trophy Truck
・West Coast Choppers Stuka TT
・Dejong MXR
・PRC-1 Buggy
・Brian Ickler Buggy
BONUS CARS
・Mitsubishi Lancer Evolution X [X Games]
・Colin McRae R4 [X Games]
・GM Metro 6R4
・Subaru Impreza WRX STI [X Games]
・Ford Escort MK II
・Toyota Stadium Truck
・Ford RS200 Evolution
・1995 Subaru Impreza WRX STI
・Dallenbach Special
・Mitsubishi Pajero Dakar 1993
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