レビュー
「GTA」のゲームシステムを応用した学園生活アドベンチャー
Bully(ブリー)
スカラーシップ・エディション【日本語版】
「GTA」でお馴染みのRockstar Gamesが放つ
ハチャメチャな学園活劇
ブリーは学園を舞台としているものの,ゲームの基本部分はGTAの流れを踏襲している。一本のストーリーに沿って展開されるミッション(課題)をクリアしていくことで,新たな展開へと進んでいくスタイルだ。真面目な内容のミッションは無に等しく,ちょっと幼稚すぎて呆れてしまうようなものや,ブラックジョークに満ちたものばかりが用意されている。もちろん,ストーリーとは関係のない突拍子もないミッションも大量に用意されており,数々のミッションをクリアして報酬やアイテムを獲得しながら学園生活を送るのである。
舞台として,ブルワース・アカデミーを中心としたブルワース・シティを丸々再現。広さはGTAの最近の作品ほどではないものの,徒歩で移動するには少々苦労するほどの広さの街の中を,自由に行動できる。序盤は学園内のみ移動可能で,ストーリーが進むにつれて徐々に行動エリアが広がっていく。ブルワース・アカデミーのほかにアトラクションや屋台ゲーム,見せ物小屋などを実際に楽しめるカーニバル,ブルワースの中心街ブルワース・タウン,高級住宅街ブルワース・ベイル,下町ニュー・コヴェントリー,工場が集まるブルースカイ工業地域,そしてアルコール中毒者などを収容するリハビリセンターなどがある。
カーニバルではいろいろなミニゲームやアトラクションが楽しめる。あんまり面白くないのが残念。ここでデートするミッションも登場する |
ゲーム画面のミニマップ上にもいろいろなデータがマークで表示されるが,ブルワース・シティ全域マップでさらに詳しく表示される |
箱庭内での行動の自由度はGTA並に高いものの,ブリーは学園生活がテーマなだけあって,GTAほど非合法なことができるわけではない。車で轢いたり銃で撃ったりといった,度を越えた暴力行為は当然無理で,せいぜい殴る蹴るのケンカレベル。若干,悪戯にしては度が過ぎると感じられるものもあるが,昔の悪ガキならやっていたかもしれない,笑って許せる“悪戯レベル”のものばかりだ。もしかすると青春時代に似たような悪戯をしてきた悪ガキ読者もいるんじゃないかしら? とか思ってしまう,そんな青春ドラマを描いているのがブリーなのだ。
国内ではすでにプレイステーション2版とXbox 360版がゼニマックス・アジアから発売されているが,このPC版はXbox 360版の移植作となる。ゲーム中のテキストはすべて日本語化されており,操作はキーボードのほかXbox 360ゲームパッドにも対応している。Xbox 360版と比較して,ゲーム中に登場するミニゲームを二人でプレイできるマルチプレイモードがなくなったなど,若干の違いがある。
自由に過ごせる学園生活
真面目に生活するなんてつまんないよね
学園に着くなり,ほかの生徒から喧嘩を吹っ掛けられ,ゴチャゴチャとうるさい校長に脅されて散々なジミー。そんなジミーに声をかけてきたのが,いじめられっ子のピートと,学園を乗っ取るという大きな野望を抱いているゲイリーであった。ここからブルワース・アカデミーでの,奇想天外で長く短い1年間の学園生活が始まるのだ。
風紀委員や警官から逃げるために殴ったり武器を使ったりするとトラブルメーターが上昇して,大人数で追いかけられる。捕まっちゃった,クソっ! |
馴れ馴れしく声をかけてくるゲイリー。学園を乗っ取るという野望を抱いているようだが,何を考えているのか分からん危険なヤツだ |
学園では生活スケジュールに沿って一日が流れていく。まず8:00に起床,9:00から午前の授業があり,13:00から午後の授業,15:30から放課後になる。そして19:00には校舎の戸締まりが行われ,23:00に学園の門限を迎えて真夜中の2:00になると強制的に一日が終了する。もちろん,この間にどう行動するかは自由なので,規則正しく生活スケジュールどおり授業に出て勉学に励むもよし,授業時間になっても教室に行かずに夜中まで遊び回っても構わない。
ただし,学園内には風紀委員が,街には警官が巡回しており,監視の目を光らせている。ジミーが授業をサボっていたり,暴力&破壊行為などのルール違反を起こしたりすると,彼らは血眼になって追いかけてくるのだ。授業が始まってから30分以上経過しても教室に入らなかったり,19:00以降に校舎内に残っていたり,23:00以降に学園の敷地内をウロウロしていたり,あるいは女子寮に忍び込んだりしても,同様に追われることになる。
風紀委員や警官に追われても,視界から外れた隙に何かに隠れてしまえば追っ手をまける。へへへ,馬鹿でノロマなヤツラめ |
深夜2:00までにベッドに入らないと,その場で気を失ってしまう。ちなみにここは女子寮のシャワールーム。なんてところで気を失ってんだ |
風紀委員や警官に捕まると,ミッションの途中でも強制終了させられてしまうし,授業時間中であれば強制的に授業に出席させられる。それに一部の武器アイテムが没収されてしまうのだ。
こいつらに追いかけられた場合,コブシで殴り倒すには手強いので,ひたすら逃げ回って死角に入ったところでゴミ箱やロッカーに飛び込み,トラブルメーターが下がるまでやり過ごせばいい。もし捕まっても“掴む”ボタンを連打することで,すねを蹴ったり,股間を握りつぶしたりして逃げられるかもしれないので,最後まであきらめちゃいけない。
こんな感じで,スケジュールによって行動にある程度の制限を課しているところなどは,規律ある学園生活を送っている雰囲気が出ていて良い感じ。ルール違反をすれば生活指導の対象になるところも「ち! 見つかった!」なんて逃げ回ったりして,ゲーム性を高める要素になっていると思う。
ミニマップ上のベルマークが付いた教室に移動して授業を受けよう。受講前にセーブしておくといいかもしれない |
学園を飛び出し,ブルワース・シティで遊び倒せる。夜間だけ発生するミッションや,お手伝いなどもあるから街中も要チェックだ |
学校といえば授業,授業といえばサボる……そんな授業は毎日,午前と午後に行われる。授業には「数学」「英語」「生物」「美術」「音楽」「地理」「化学」「写真」「体育」「技術」の10科目があるが,時間割は決められていないので,時間が来たら地図を頼りに授業が行われる教室を目指すといった感じ。授業は本校舎内の教室だけでなく,体育館やガレージで行われることもある。授業時間になればミニマップにベルのマークが表示されるので,急いで向かえば大丈夫だ。
どの授業もミニゲームもしくは課題形式で行われ,成功するとジミーの能力が上がったり,新しいアイテムがもらえたりする。授業をサボりまくる絵に描いたような不良を演じようが,真面目に勉学に励む変わった不良を演じようが,プレイヤーの自由だ。しかしついついマメに授業を受ける,真面目な不良を演じることになりがちで,ちょっぴり悔しかったりする筆者。
それぞれの科目に異なるミニゲームが用意されており,各科目には五つのレベルがあって,レベルが上がるごとにだんだん難しくなっていく。もしかすると「美術は得意だけど音楽は苦手なんだよなぁ」……なんて具合に,得意科目/不得意科目という現実的な問題に直面するかもしれない。
やっぱり悪さをしなきゃ楽しくない!
悪戯し放題の学園生活を送ろう
ほかにも学園内には学園の華である女子,ルール違反を取り締まる風紀委員,学園外には街の不良のタウニー,治安を守る警官,そして一般市民がおのおの行動しており,その様子を眺めているだけでも面白い。
相手をロックオンするとコミュニケーション用のコマンドが表示され,対応ボタンを押せば実行される。操作性を考えるとXbox 360ゲームパッドがオススメだ |
グループごとに縄張りがあり,図書館にはインテリ,体育館には体育会系,ガレージにはロカビリー,特別寮にはお坊ちゃまが集まる |
学園内には多くの生徒が行き交い,おのおのが喧嘩や悪戯をしたり,女子生徒といちゃついたりしている。抱き合ってキスしているヤツらを見ると,ついつい殴りかかりたくなるのが悲しいところだ(筆者だけかもしれない)。ブルワース・シティも工業地域には酔っぱらいやホームレスがはびこり,高級住宅地には警官が多いなど,エリアごとに住んでいる人や生活環境の違いがしっかり再現されており,まるで本当に生活しているかのようなNPC達の行動を見ているだけで楽しめる。このへんはRockstar Gamesの得意とするところで,GTAで培われたノウハウやセンスが生かされている。
武器として利用できるアイテムもたくさん登場するが,目的のアイテムをダイレクトに選択できれば使いやすかったのになぁと思う |
見ているこっちが恥ずかしくなるほどの情熱的なキス三昧。音がリアルというか実にイヤらしい。ちなみに男子ともキスできるようだ |
すべてのNPCに対しては,ロックオンすることでコミュニケーションが図れる。「挨拶する」「謝罪する」「挑発する」「屈辱を与える」「プレゼントをする」「パンツを釣り上げる」「お尻タッチ」「キスをする」といったコマンドを利用でき,これらのコマンドに対する反応は,相手との関係,そしてグループのリスペクトによって変化する。からまれたときに謝罪して許してもらったり,気にくわないヤツに屈辱を与えたり,うまく使いこなして学園生活に役立てよう。
ブルワースの学園生活で一番使うのはパンチやキックだ。気にくわないヤツがいれば,ぶん殴って黙らせてしまえばいい。前述のコマンド「屈辱を与える」を使えば,パンチやキックを食らわせてライフゲージが減った相手に唾を吐きかけるなど,文字どおり屈辱的な攻撃も加えられる。ほかにも体当たりで転ばせたり,掴んでから殴ったりと攻撃オプションは多彩で,体育の授業以外に,どういうわけか学園に住み着いているホームレスからパンチとキックのコンビネーションを習得できる。なお,ここでは先にちょっかいを出したほうが風紀委員や警官のターゲットになるので,ときには挑発して相手に手を出させるのも作戦の一つだ。
自転車レースに参戦すれば賞金をゲット。クリアすれば上位レベルのレースに挑戦できる。決められたルートをひたすら連打で突っ走る |
カメラを手に入れたら,学園にいる生徒の写真を撮ればイヤーブックが埋められていく。全員の写真を撮れるように探し回ろう |
また,悪戯に使用できる武器アイテムも大量に登場する。派手な炸裂音で相手を驚かせる「クラッカー」,投げつけるとビンが割れて臭い煙を放つ「スティングボム」,相手の全身を痒くさせる「カイカイパウダー」,地面にまいて相手を転倒させる「ビー玉」,食べるためではなくぶつけるためにある「卵」,ジャガイモを打ち出してダメージを与える「ポテトガン」,悪戯兵器の定番「パチンコ」,ロケット花火を打ち出す「ボトルロケット」などだ。これらの武器を使って相手を攻撃したり,逃走時の足止めに使ったりすることで,一段と学園生活は楽しくなる。
こんな感じなので,死人が出るような血生臭くドロドロとしたアクションは一切ない。GTAなどをバリバリ遊んでいる業深きプレイヤーは物足りなさを感じるかもしれない。というか,風紀委員や警官の目を盗んで喧嘩をしたり,子供の頃やったようなくだらない悪戯をやるのがブリー流のキャンパスライフなのである。
男気溢れるジミーが挑む
ブラックジョーク満載の多彩なミッション
どれもクリアすることで報酬やアイテムを獲得できるから,ストーリーミッションや授業と並行してサブミッションもこなしていくのがベストだ。というか,次から次へとサブミッション関係が登場するせいか,ストーリーミッションそっちのけで挑戦してしまうことが多い。どのミッションも思わず「馬鹿だなぁ」「下らなすぎ」「普通はそんなのやらない」など呆れてしまうような突拍子もないものばかりが揃っており,ブラックジョークを受け入れられる人ならば,ブリーのミッションを笑って楽しめるだろう。
女子や下着には興味ないはずのジミーだが,ストーリーが進むに連れて自分の部屋の壁には女子の写真と下着が飾られていく。この変態め! |
ハロウィーンでは全員が妙なコスチュームを着ている。犬のウンチに火を付けて先生を驚かせる“いたずら大作戦”はバカすぎだ |
それぞれのミッションは,マップ上に星マークで表示される開始ポイントに行けば始められる。夜間など特定の時間帯のみ出現するミッションもあるし,同時に複数のミッション開始ポイントが表示されることもある。どれから挑戦しても構わないが,どれがストーリーミッションでどれがサブミッションなのかはプレイしてみないと分からないので,お手伝いやアルバイトのようにマークを変えて区別してくれれば良かったと思う。
ミッションのほとんどが,学園内にいるグループや先生から受けるものばかりだ。序盤のミッションをいくつか紹介してみると,転向初日にチョコレートを取られて泣いている“ぽっちゃり系”ユニスのためにチョコを取り返してあげたり,手に入れたパチンコでアメフトの練習中の体育会系を狙い撃ちしたり,インテリのアルジーをいじめっ子から護衛したり,生徒会長に立候補したオタクなアーネストの演説を妨害しようとする体育会系から彼を守ったり,バートン先生に頼まれて女子寮に侵入して下着を回収してきたり,ホームレスのお願いを聞いたり,サンタコスチュームを着たおじさんルディの頼みを聞いたり……。こんなミッションばかりが登場するのだ。
新聞配達や芝刈りは小遣い稼ぎに便利。芝刈りは地味ながらも面白くて,いろんな難度でいろんな場所の芝刈りをしてぇと思った |
調理中の鍋に向けて豪快にくしゃみ(隠し味)をする給食室の天使エドナさん。ジミーは彼女の恋のキューピットにもなるのである |
実際にプレイしてみると,一見すると不細工で頭の悪そうなジミーだが,実に魅力的なキャラクターである。次から次へと妙な依頼を押しつけられるのに,文句は言いながらもすべて引き受けてしまう,いいヤツなのだ(チョコを取られたと号泣している見ず知らずの太っちょな女の子のために,あなたは喧嘩できるか?)。しかも見事成功させてしまい(プレイヤー次第なのだが),その結果,学園のあらゆる人々から信頼や尊敬を得ていく。ジミー本人は誰かさんのように学園を乗っ取ろうといった邪念は抱いておらず,馬鹿なんじゃないかと心配になるほど,素直にほいほいと使いっ走りに徹してしまう憎めない悪ガキなのだ。
そんなジミーなので,最初はどうしようもない悪ガキだと思っていたのに,ストーリーを追っていくに連れて彼の魅力に悔しいくらいどっぷりと引き寄せられてしまった。それに主要な登場人物達が「こんなクラスメイトや先生がいたら本気でイヤだなぁ」と強烈なインパクトを放つ連中ばかりなのも,ジミーの引き立て役になっていることは間違いない。
Rockstar Gamesファンならば当然のこと,懐かしの人気ドラマ「あばれはっちゃく」気分を味わってみたい人,青春時代に悔いを残したまま大人になってしまった人,今パッとしない学生生活を送っている人は,ぜひブルワース・アカデミーに入学してブラックユーモア溢れる学園生活を味わってもらいたい。
息抜きに男子寮や隠れ家にあるビデオゲームもプレイできるのだが,う〜む,面白いんだけれどもちょっと簡単すぎる印象だ |
雑貨屋ではチョコレートや花束,缶スプレーなどを購入できる。洋服屋では新しいコスチュームも購入できるぞ。金を貯めてどんどん買おう |
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