インタビュー
[gamescom]「FINAL FANTASY XV」はさらに進化する。新たに発表された展開について,ディレクターの田畑 端氏に聞いた
具体的には,4K(将来的には8K)解像度およびHDR10に対応したPC向けの「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」,FFXVの冒険をデフォルメされたキャラクターで楽しめる「ファイナルファンタジーXV ポケットエディション」(PC / iOS / Android),PlayStation VR向けの「MONSTER OF THE DEEP: FINAL FANTASY XV」の発売日決定(11月21日)である。
また,8月2日から13日まで「オンライン拡張パック:戦友」のクローズドβテストが実施されるなど,リリースから9か月が経とうとしている現在も,FFXVの動きは活発だ。
それぞれの詳細は,別途掲載している各記事を参照してほしいが,本稿では,今回発表されたタイトルの狙いや,これまでの手応えなどを,ディレクターを務める田畑 端氏に聞いているので,その模様をお届けしよう。
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リリース作品にはそれぞれ異なる意味がある
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは先日クローズドβテストが行われた「オンライン拡張パック:戦友」のお話から聞かせてください。
「エピソード グラディオラス」や「エピソード プロンプト」をプレイしたとき「『戦友』はこのシステムを流用して,プレイヤーがノクト,グラディオ,イグニス,プロンプトを操作するのかな」などと思っていたのですが,実際はアバターを作成してプレイする仕様になっていますね。
一番重視したのは,「FFXVの世界にプレイヤー自身が存在する」というところです。もちろん主人公達で遊ぶものにするという選択肢もありましたが,オンライン拡張パックの開発チームからそのアイデアが出てきたとき,より楽しくなるだろうと思いました。
実はオンライン拡張パックも,今回発表したPC版もポケットエディションも,すべてFFXVを企画した当初からプランとしてありました。
4Gamer:
まずPS4/Xbox One版ということではなく,最初から違うプラットフォームまで含めて計画していたんですね。
田畑氏:
それぞれに別の意味を持たせていて,オンライン拡張パックは“FFXVの世界で皆が遊べるようにする”“コンシューマゲーム機のユーザーが楽しめる内容にする”ものを目指して作りました。
4Gamer:
なるほど,オンライン拡張パックと同様に「MONSTER OF THE DEEP」も,プレイヤー自身がFFXVの世界に入り込むという趣向ですが……。
田畑氏:
はい。「MONSTER OF THE DEEP」にはさらに別の意味もあって,FFXVファンに満足してもらいつつ,釣りにしか興味のない人であっても楽しめるコンテンツという狙いです。
ただ,オンライン拡張パックも「MONSTER OF THE DEEP」も,FFXVの根っこにあるSNS的な部分を表現してはいます。
4Gamer:
SNS的な部分,ですか。
田畑氏:
FFXVは,誰もが同じ体験をするようなゲームではありませんから,自分が体験したことをSNSなどを使ってほかの人と共有してほしいんです。そもそもオープンワールドを採用したのも,それが理由の一つでしたし。
4Gamer:
それは分かります。何度かプレイしていると,単純にサイドミッションをやるやらない以外にも,さまざまな展開の違いがあると気づきますし。
田畑氏:
例えば,FFXVはリリース直後のTwitchのゲーム配信ランキングで上位につけていて,アメリカでは,そういった配信を見てFFXVに興味を持った人がダウンロード版を買うというサイクルが作られました。これはやっぱり,プレイヤーごとに異なる体験ができることがうまくいったからでしょうね。
だから今回も,「オレのキャラクターはこれ」「オレが今回釣った魚はこれ」というように,パーソナルな体験をしてもらいたいんです。
4Gamer:
それでは「ポケットエディション」についても教えてください。発表時にも驚きましたが,実際に触ってみてさらに驚いたのがこれでした。うまく伝わるか分からないのですが,自分がプレイしたコンシューマ版FFXVとは大きく違うにもかかわらず,しっかりFFXVになっているというか……。
例えばストーリーでは省略されている部分が多いのに,個人的に印象深かったシーンはちゃんと押さえられていたり,操作方法が違うのに何故かプレイ感は似たところがあると感じたり……。
田畑氏:
それはおそらく,最初にコンシューマ版とまったく同じコンセプトでモバイル版を作ると決め,並行して開発していたからだと思います。仮にコンシューマ版がなかったとしても,モバイル版がFFXVだと思えるようにしようと。だから「ポケットエディション」は,コンシューマ版の移植ではないんです。
4Gamer:
そうですね。コンシューマ版をスマホに合わせたのではなく,スマホアプリとしてFFXVを一から作ったのだろうということは感じました。
田畑氏:
ゲームを遊ぶということが多様化,細分化しているので,それぞれのプラットフォームにしっかり向き合う必要があります。単なる移植では,向き合うことにならないんですよね。
4Gamer:
オープンワールドを採用したコンシューマ版のFFXVだと,たとえばゲーム開始直後にフィールドを歩いているとき,上空を飛ぶズーと遭遇したりしなかったりと,オープンワールドらしい体験の違いがありますよね。「ポケットエディション」でもプレイヤーによって遭遇するイベントに違いはあるのでしょうか。
田畑氏:
「ポケットエディション」で発生するイベントは,あらかじめ決まっています。実は「ポケットエディション」を作っているのは「BEFORE CRISIS -FINAL FANTASY VII-」のプロデューサーで,ずっとモバイルゲームに携わっている人なんですよ。だからモバイル版ならではのFFXVを体験できるよう,イベントの取捨選択をしています。
4Gamer:
では「ポケットエディション」とコンシューマ版の共通する部分,別の言い方をするとFFXVである以上外せない部分は何でしょうか。
田畑氏:
“仲間”でしょうね。このゲームは要素を削いでいくと,仲間と旅することしか残らない。そもそもFFXVの企画書の冒頭で「仲間と旅をするゲーム」と書きましたから,それがコアです。ゲームデザインも,それを実現するために設計していますし。
4Gamer:
あぁ,言われてみれば仲間との旅というのは,当初からのコンセプトでしたね。そこはまったくブレていないと。
ちょっと話がそれるのですが,先日4Gamerに,ノクトの成長を親の視点で感じ取ったという内容のコラムが掲載されて,大きな反響があったのですが,田畑さんはFFXVを作るにあたってそういった点は意識していましたか。
田畑氏:
もちろんです。もっとも根本的な部分は「仲間と旅をする」ですが,その旅とは無秩序にどこかから別のどこかに行けばいいというものではありません。仲間と一緒に成長することや,父親との物語,あるいはもともと「Versus XIII」にあった要素を融合して,旅のストーリーを織りなしています。
ただ,最初は親の視点を意識したというよりも,僕自身が父親からクルマをもらったという経験のほうが大きかったですね。
4Gamer:
レガリアのエピソードは,田畑さん自身の経験がもとになっているんですか。
田畑氏:
そうなんです。そのクルマに乗っていると,父親がそばにいるような気がして。その意味では,ノクトはレガリアに乗ることで父親とも一緒に旅をしていることになるわけです。それが途中で別れることになると。
4Gamer:
あれはプレイしていてグッと来るシーンでした。
田畑氏:
当初は,もっと太いエピソードでした。ゲームの序盤では父親の代わりであるレガリアに守られていたノクティスが,最後には壊れたレガリアを自国に連れて帰るという形でメタファーを込めようと考えていました。
「FFを知らない層」に向き合う
4Gamer:
「ポケットエディション」について,もう少し教えてください。先日リリースされた「ドラゴンクエストXI」は,PS4版とニンテンドー3DS版があります。同じ物語を違う手段で表現するという意味において,FFXVのコンシューマ機版やPC版と,「ポケットエディション」の関係に近いのかも……と感じたのですが。
田畑氏:
近しい部分もあれば,当然違う部分もあると思います。
僕がFFXVに関わることになったタイミングで,世間のゲームを遊ぶ環境は多様化していましたから,なるべく多くの人にこのゲームを知ってもらう,できれば触ってもらうために,スマートフォン版は必要だと考えていました。そこでコンシューマ版に全力を注ぎつつ,モバイルやPCに向けて,単に今作っているFFXVを移植するだけではないものを作ろうとしたわけです。
4Gamer:
田畑さんの考える「ドラゴンクエストXI」との違いは,どこにあるのでしょう。
田畑氏:
「ドラゴンクエストXI」は,基本的には「ドラゴンクエスト」の名前や歴史を知っている人,実際に遊んだことのある人に向けて作っているのではないかと思います。だから,PS4版とニンテンドー3DS版のどちらを遊ぶ? という提示の仕方になるのかなと。
一方,FFXVはコンシューマ版と「ポケットエディション」をそれぞれ異なる層に向けて作りました。もっと言えば「ポケットエディション」はFFを知らない層に向けて開発していて,例えば見た目はコンシューマ版のアートスタイルと大きく異なります。こうした点が違いとしてあるかもしれません。
4Gamer:
FFXVのスマートフォンアプリとしては,配信中の「ファイナルファンタジーXV:新たなる王国」(iOS / Android)もありますが……。
田畑氏:
「新たなる王国」はまた意味が違うんですよね。僕らにはないモバイルのノウハウを持つMZさんにFFXVをライセンスアウトしてゲームを作ってもらうことで,これまで僕らと接点の少ない層にアプローチしようと考えました。実際,「新たなる王国」でFFXVを知ったという人も多いと思いますよ。
4Gamer:
そうした施策によって,これまでFFに馴染みがなかった人が入ってきたり,しばらく離れていた人が戻ってきたりといった実感はありますか。
田畑氏:
施策全体としては,すごく効果が出ている実感があります。「新たなる王国」に関していえば,「FFXVとはまったく別のゲームじゃないか」という指摘もありますが,逆に「ストラテジーも面白い」という感想も寄せられます。結果としてはよかったんじゃないかと。
そもそもコンシューマ版では,プレイヤーの年齢層が大きく下がりましたね。
4Gamer:
若年層が流入してきているわけですか。
そうですね。長年のFFファンでFFXVを購入してくれた方と,初めてのFFがFFXVだった方が,かなり混在しています。そういった状況なので,ある程度意図したところには来ているのですが,まだまだやるべきことはたくさんありますね。
たとえば,Nintendo Switchがここまでヒットすると発売前に予想していましたか?
4Gamer:
いえ……さすがに発売から半年経っても入手困難という状況になるとは思っていませんでした。
田畑氏:
僕もです。一つのゲーム機が,据え置き機にも携帯機にもなる。ずっとゲームに触れている僕達からすると,割と“普通”に近いアイデアでも,一般にはそうじゃなかったわけです。それなのに僕は,その部分を見落として「性能が〜」という全然違う尺度で考えてしまっていた。そこには一般との大きなズレがありました。
今やNintendo Switchは,テレビの情報番組にも取り上げられる存在です。それ以前にゲーム関連で取り上げられたのは「Pokémon GO」でしたから,すごいことですよね。
4Gamer:
FFXVが目指すのは,そういう存在ですか。
田畑氏:
そうです。一般化です。ただ,全然達成できていないので,まだまだやるべきこと,学ぶべきことがあるなと。
4Gamer:
自分もゲームの情報を扱っていて,“世間一般とのズレ”を感じることがあります。凄く大きなニュースだと思っても,世間的にはまったく……というような。そういったことを普段から意識されているんですね。
田畑氏:
常に意識はしています。それが「やらねば」や「やる」に変わるのは,具体的にデータで示されたときですね。たとえば「10代の70%以上がFFを知らない」という調査結果を見たら,何かやらなければと思いますよ。そのFFを知らない10代に,いかに知ってもらうかということを。
4Gamer:
「10代の70%以上がFFを知らない」というのは,確かに衝撃的です。ただ,その一方で,従来のFFファンに向けたものもきちんと作らなければなりませんよね。
田畑氏:
それはもちろん大前提です。両方とも大切なんです。ファンの皆さんには,FFXVの新しい施策の意図を理解し,受け入れてくださっている方も多いと感じます。ユーザーの皆さんは本当に賢いですし,逆にこちらが適当だと受け入れてくれません。
4Gamer:
FFXV UNIVERSEのスマホ向けタイトルとしては「キングスナイト -Wrath of the Dark Dragon-」(iOS / Android)もあります。ファミコン時代からのゲーマーにも響きそうなのですが,発表されたとき,「キングスナイトはFFシリーズではないよな……」と少々意外に思いました。
田畑氏:
まずゲームの中で,ノクト達が楽しんでいるものを作りたかったんです。それで,できればリアルのゲームにもしたかった。
そこでスクウェア・エニックスのソフトであれば問題なく使えるだろうと,古いファミコンソフトである「テグザー」と「キングスナイト」をまず候補にしました。ところが「テグザー」の権利はゲームアーツさんが持っていると分かったので,消去法で「キングスナイト」になりました。
4Gamer:
そんな経緯があったとは。個人的にはテグザーも見てみたかったですね。
田畑氏:
坂口さん(FFシリーズおよび「キングスナイト」の生みの親である坂口博信氏)に「キングスナイト」を使うことを報告すると「(FFXVがリリースされた)2016年は『キングスナイト』も30周年だからいいんじゃない」と。もっとも「キングスナイト」30周年に関しては,とくにフィーチャーしませんでしたけどね(笑)。しかし,当時「キングスナイト」をどう開発したのか聞くことができて,この選択で良かったなと思いました。
4Gamer:
あぁ,そういえば坂口さんつながりでした。まったくの無関係でもないですね。
田畑氏:
実際,「キングスナイト」はFFXVと相性がよかったんです。ゲーム的にはシューティングですが,少し大人なファンタジーの世界で4人のキャラクターがフォーメーションを組んで……と。それにノクト達がハマるのも悪くないですよね。
PC版のコンセプトは「同じゲームであっても,また冒険したくなる」
4Gamer:
それではPC版について聞かせてください。実際にデモを拝見して,格段に表現力が上がってると分かりましたが,PC版で実現できるようになったのは,技術的に言うとどのあたりになるのでしょうか。
田畑氏:
物理計算による表現です。現実世界はすべて物理現象で動いていますから,その環境をゲーム内に作り出せれば,現実世界に近づくことができます。たとえば霧は,雨露が草木などから蒸発するといった形で空気中に含まれる水分が冷やされることで発生するわけですから,そこまですべて計算で表現するのが理想です。
しかし現行のコンシューマ機ではスペックの関係で,どうしても限界がある。その上限がPC版ではかなり上がりました。僕自身,実際に歩いてみたくなるレベルになりました。
4Gamer:
ガルラの体毛のフサフサ感とか,フィールドに生えている草の感じとか,コンシューマ版をプレイしていても新鮮に感じました。確かに,あの世界を歩きたくなる気持ちはよく分かります。あのグラフィックスは,やはりNVIDIAの協力があってということでしょうか。
田畑氏:
NVIDIAさんは,GPUを開発しているだけでなく,数百人のエンジニアがそのハードのためのソフトを作っている企業です。そのNVIDIAさんに協力していただくことで,僕らが独自に開発するよりも短期間で数々の優れた表現が可能になりました。
そもそもPC版の狙いは,「同じゲームであっても,また冒険したくなる」ことでした。繰り返しですが,FFXVは“仲間との旅”を掲げていますから,舞台が魅力的になればもっと冒険したくなると思っています。
4Gamer:
その一方で,「あくまでゲームなんだから,そこまで見た目にこだわらず,ほかの部分に力を入れた方がいいだろう」という意見もあります。田畑さんはそれにどう答えますか。
田畑氏:
クルマで考えるといいかもしれないですね。スポーツカーに乗って運転そのものを楽しみたい人もいれば,移動手段として買い物のときに乗れたらそれでいいという人もいる。あるいは一つのクルマのモデルにも,いろんなグレードがある。ゲームも同じで,暇つぶしの道具として捉える人もいれば,ゲームを遊ぶこと自体が趣味という人もいる。どちらが間違っているということはなく,どちらも正しい。
4Gamer:
それぞれに最適なものがあると。
田畑氏:
はい。ただ僕らは,ゲームを趣味にしている人に向けて「ゲームが好きでよかった」と思ってもらえるものを提供したい。僕自身,優れたグラフィックスを作るのが好きなんですよね。よく「3年後のゲームのグラフィックスはどうなっているだろう」とか考えています。そんな「ゲームが見せてくれる未来」を,ゲームファンにも提示したいから,今回のPC版は意味があるんです。
大事にしたのは「FFXVを10年待った」というファンからの意見
4Gamer:
まだまだアップデートや追加コンテンツのリリースが予定されていますが,リリースから9か月が経っていますし,これまでの反響についても聞かせてください。
田畑氏:
リリース直後は,本当にいろんな意見がありました。我々も,それらをきちんと把握するのが難しかったのですが,今は整理整頓できています。今現在,FFXVを遊んでくださっている方,もう遊んでいない方,興味はあるけれどもまだ遊んでいない方と,それぞれどんな意見を抱いているのか,リリース直後よりもいろいろ見えるようになっています。
4Gamer:
整理整頓ですか。
田畑氏:
直接見える意見と,データを合わせた分析ですね。たとえば,クリアせず放置している方は,どこでプレイを止めてしまったのか,といったことを把握するわけです。
2017年1月にSNSを使ってFFXVのゲームクリアキャンペーンを実施しましたけれども,そのタイミングでのクリア率は30%くらいでした。それが今,約60%まで上がっています。それに伴って各施策の情報に対する関心度なども上がっているので,僕らとファンの皆さんがお互いに信頼し合い,共感し合える関係を構築できてきたと感じています。
4Gamer:
そうした反響は,リリース前の予想と比べてどうでしょうか。
田畑氏:
発売直後の反響はポジティブとネガティブ両方がありますが,まず我々が目にしたのはネガティブな意見です。FFXVは「仲間と一緒に旅をする体験を一番楽しんでいただこう」と考えて作りましたから,それが届いたかどうかがもっとも気になるわけですが,しかしその前に,プレイヤーが期待していたものとのズレなどがネガティブな意見としてあがってきます。それを見て,「ああ,この方のことは満足させられなかったな」と思います。
4Gamer:
真っ正面から受け止めるんですね。
田畑氏:
我々も必死になってゲームを完成させたという思いがありますし,社内の品質管理部門を通っているわけですから,スクウェア・エニックスのゲームとして恥じないものを提供している自負もあります。実際,セールスも予想以上に好調です。
でも現実には,プレイヤーの皆さんが抱く不満を目の当たりにして「実力が足りなかったな」ということを痛烈に感じました。数字はよくても,満足していない人もいる。そこで何ができるかを考えて実行したのがアップデートです。
4Gamer:
確かにアップデート内容の充実度は予想以上でした。
田畑氏:
当初から四半期ごとにDLCを配信する計画はあったのですが,それをもっとアクティブにして,本編そのものを進化させよう,DLCもより充実した内容にしようと。それが発売直後のことでした。「ここがよかった」というポジティブな意見が多く届くようになったのは,そのあとからですね。
4Gamer:
FFシリーズのようなビッグタイトルだと,はなから「ダメ」と決めてかかるような,いわゆるアンチも少なからずいるかと思うのですが,そういった意見も含めて受け止めるのでしょうか。
田畑氏:
遊んでくれてるファンの意見はすべて受け止めますが,明らかなアンチ的意見であれば,それはさすがに受け止めませんよ。そもそも気にしませんし。
現在世界で650万本以上,そのなかの2割が日本で売れていますが,その中で一番響いたのは「10年待った」という人達の声です。「10年待って満足した」という方もいれば,「申し訳ないけれども10年待った価値はなかった」という方もいました。そうした愛情を持ってFFXVを待ってくださった皆さんを満足させられなかった点に対しては,繰り返しですが実力が足りなかったなと。
4Gamer:
10年待った人達が不満を抱いたのは,どんな部分だったのでしょうか。13章にはアップデートで大幅に手が入りましたが……。
田畑氏:
データからも意見からも,13章での離脱が圧倒的に多いのが分かります。
また僕らが「10年待ってよかった」と思っていただきたいポイントは“旅”であり,そこにストーリーも戦いも冒険も,あるいはAIで動くキャラクターに対する親近感も込めたつもりだったんですが,「ストーリーで,もっと別の感覚を味わいたかった」という意見も結構ありました。
ただ,リリースから時間が経つにつれて「よかった」という意見が増えたこと,そしてずっと遊び続けてくださっている皆さんが増えていることは自信につながっています。やっぱり自分達の作ったゲームを楽しんでいただけるのは嬉しいですから。
次のプロジェクトは「FFXVを作ったからこそ」というものに
4Gamer:
今回の発表で,「まだまだFFXVは終わらない」という印象を受ける人も多いかと思います。
田畑氏:
明言しているとおり,2017年内はFFXVを続けます。もちろん会社として,事業としてやっているわけですからどこかで終わりは来ますが,我々としても,長く付き合ってくださったファンの皆さんにとって納得のいく終わり方にしたいですね。
そして次に作るゲームは,「FFXVを作ったからこそ」というものにしたいです。
4Gamer:
次のプロジェクトはもう構想されているのでしょうか。
田畑氏:
はい。確定していないので何ともいえないところではあるのですが,個人的にはFFではなく新作に取り組みたいですね。
4Gamer:
おぉ,新規IPですか。
田畑氏:
新規IPというと,なんか無駄にハードルが上がって,周囲にそれは無理だと言われるので,単に新作と言ってます。FFXVで得たものを基盤として,新しいものに挑戦したい。欲をいえばAAAサイズの新しい何かを作ってみたいですね。
4Gamer:
期待が高まります。
まだまだ年内いっぱい,いろいろなお仕事が残っているとは思いますが,ここまでFFXVを作ってきた感慨のようなものはありますか。
田畑氏:
ある区切りの場で,協力してくださった開発会社やパートナーなど,たくさんの方々から「このプロジェクトに参加してよかった」「あなたと仕事ができて良かった」と言っていただいて,その時にようやく「このプロジェクトをやってきてよかった」と思えました。
ファンの皆さんに対して一定の責任を果たすという使命感の一方,それを実現するために本当に多くの人達を巻き込んでFFXVを作り上げましたし,その中には社運を懸けて協力してくださった会社さんもたくさんありました。そんな皆さんから「参加してよかった」と言っていただけて泣きそうになりましたし,だからこそこれで終わらせたくない,次を大事にしたいという気持ちも強くなりました。
4Gamer:
まさに戦友ですね。
ちなみに,以前田畑さんとバンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘さんの対談で「FF病」というパワーワードが出ましたけれど,田畑さんが入ったころと今で,チーム内の意識が変わったという実感はありますか。
田畑氏:
確実に意識は変わったと思います。「FFだから〜」という先入観や思考停止がなくなったというか。
それだけでも十分大きな改革なんですよね。今,世の中は大きく,かつ速く変化しています。その変化に企業や社員が対応しなくなったら,もう世の中の流れとは別の何かニッチなものに向き合っていくしかなくなります。
4Gamer:
確かにそうですね。ゲーム業界に限らず,同じことだけをやっていたら,あっという間に置き去りにされる時代だと思います。
田畑氏:
やはり,現実から学ぶべきことはきちんと学び,現実を歪めずに理解し,現実こそ自分達の実力そのものと知ること。そして,そこから今やるべきことと,それを提供するべき相手を正しく認識することが重要だと思います。
4Gamer:
では最後にFFXVの展開に注目している人に向けて,メッセージをお願いします。
田畑氏:
ある意味,皆さんが“無視できない”ゲームとしてFFXVを提供できたことはよかったと思っています。発売しておしまいではなく,買ってくださった皆さんに向き合い,僕らとしてやれるだけのことをやってきました。それに対して「楽しむ」ことで返してくれるファンの皆さんの存在が嬉しくて,発売以来,ずっと「次はもっといいDLCやアップデートを提供したい」という思いでやっています。それはオンラインゲームの運営に近いものかもしれません。
その意味でFFXVでは発売前と発売後の二度,大きく成長させてもらえたので,僕達はとてもパワーアップしました。皆さんに深く感謝するとともに,引き続きFFXVに全力を尽くし,その次はその時の僕らでなければ作れないものに挑戦します。さらに多くの人が無視できないものを目指しますので,応援よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
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