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「FINAL FANTASY XV」レビュー。日常を共有することで,“軽くてウザい男子達”がいつの間にか“真っすぐな青年達”になる
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印刷2016/12/22 00:00

レビュー

「FINAL FANTASY XV」レビュー。日常を共有することで,“軽くてウザい男子達”がいつの間にか“真っすぐな青年達”になる

 2016年11月29日,人気RPGシリーズの最新作「FINAL FANTASY XV」PS4 / Xbox One。以下,FFXV)が発売された。
 オンライン専用タイトルである「FINAL FANTASY XIV」PC / PS4 / PS3)を除けば,2009年リリースの「FINAL FANTASY XIII」以来,7年ぶりのナンバリングタイトルであり,前身となった「FINAL FANTASY Versus XIII」の発表からは10年を経てのリリースということで,首を長くして待っていたファンも多いはずだ。

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 発売元のスクウェア・エニックスによると,発売当日の出荷数と配信数の合計が全世界で500万を超えたとのことで,まさに世界中のゲーマーが待望していた一作と言えるだろう(関連記事)。

 4Gamerでは,発売前のビルドによるプレイレポートを何回か掲載しているが(関連記事1)(関連記事2)(関連記事3),今回筆者は製品版をエンディングまでプレイできたので,そのうえでのレビューをお届けしたい。使用したのはPlayStation 4版で,記事中に掲載しているスクリーンショットはPS4のSHARE機能を利用して撮影している。

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シリーズの色は残しつつも,現実と非常に近い世界


 本作の舞台は「イオス」と呼ばれる架空の世界。高い科学技術力を誇る強大な軍事国家,ニフルハイム帝国が勢力を強める中で,主人公のノクト(ノクティス)王子が暮らすルシス王国は,クリスタルと魔法の力によって独立を維持してきた。
 だが,長きにわたって戦争が続くうち,ルシスは徐々に領土を失い,かろうじて王都のみを,国王の力によって展開される「魔法障壁」で守っている状態にまで陥った。

 そのような中,ルシスとニフルハイムは停戦協定を結ぶことになり,その和平の証として,ノクトはニフルハイムの属州,テネブラエに住む“神凪の巫女”,ルナフレーナと結婚することになる。
 ルナフレーナは神と言葉を交わし,世界を浄化するという特殊な力を持っており,その人々を癒やす力で,世界中から敬愛される存在。ルシスの王子と神凪の巫女の結婚式自体が和平のアピールになるというわけだ。

ある種の「政略結婚」ではあるが,ノクトとルナフレーナは幼なじみであり,両者ともまんざらではないことがうかがえる。ノクトにとっては平和と生涯の伴侶,その2つが同時に手に入る幸福な旅になるはずだったのだが
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 そしてノクトは,結婚式が行われる隣国オルティシエへ向かうため,王国警護隊の一員で肉体派のグラディオ(グラディオラス),ノクトの側近で参謀役を務めるイグニス,ノクトの親友でムードメーカーのプロンプトと共に,国王である父レギスの愛車「レガリア」で旅立つ。

左からグラディオ,ノクト,プロンプト,イグニス。グラディオとイグニスは王子に仕える立場の人間だが,いずれも付き合いは長く,会話の雰囲気はプロンプトと同様に長年の親友といった感じ
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 これが実際にプレイを始めるまでの大まかなストーリーだが,聞き慣れない固有名詞も多いはずなので,最初にチュートリアルモードの「ストーリーチュートリアル」を一読しておくことをお勧めしたい。本作の世界観が簡潔にまとめられているので,理解がぐっと進むはずだ。

 また,より深く本作の世界を楽しみたいなら,映像作品「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」「BROTHERHOOD FINAL FANTASY XV」を鑑賞するといいだろう。とくに本作をこれからプレイするなら,ぜひその前に見ておくことをお勧めする。同じシーンでも,いきなりプレイするときとは違った感情が湧き起こってくるはずだ。

チュートリアルでは基本操作のほか,物語における設定なども確認できる。内容は基礎知識といった感じなので,読んでおいて損はない
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故障したレガリアを押すシーンから始まるFFXV。冒頭からかなりコミカルだが,仲間との協力や車の存在など,本作を象徴するシーンでもある
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 強大な軍事帝国の存在や,魔法が非常に希少であることなどはFFVI,テクノロジーが発達しているところはFFVIIといったシリーズ作品を彷彿とさせるが,街並みや道路を行き交う車,ノクトが使うスマートフォンといったところは現実世界と非常に近く,本作を特徴付けている。これが後述する“日常”の雰囲気作りにも役立っていると感じた。


広大なオープンワールドを仲間と旅する


 FFXVの大きな特徴の1つは,シリーズで初めて採用されたオープンワールドだ。
 王都の外に広がる世界は非常に広大で,最序盤のChapter 1こそ移動範囲は限られるが,メインストーリーを進めれば早い段階で大部分の場所がアンロックされ,自由に行動できるようになる。最も離れた地点間の移動になると,レガリアを使っても実時間で10分程度かかるほどの広さだ。

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 地形は砂漠,山岳地帯,海岸,湖,火山,草原などバラエティに富んでおり,そこに住んでいるモンスター(生き物)もさまざまだ。草原にはサイやキリンに似たものが出てくるし,川や海沿いならワニ風など,「いかにも」といった感じになっている。
 昼夜はもちろん,天候も時間によって変化するので,同じ場所でも,訪れるごとに表情が変化する。美しいグラフィックスと相まって,まさに「旅をしている」といった雰囲気が画面全体から感じられるのだ。

近づくだけで戦闘が始まるモンスターが多いが,危害を加えない限り襲ってこないタイプもいる。世界が敵だらけでないことにちょっと安心
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 そうした世界に,より深みをもたらしているのが,夜になると現れるモンスター「シガイ」や,屋外での「キャンプ」,そしてパーティメンバーのスキルといった存在だ。
 シガイの強さはかなりのもので,ゲームを中盤まで進め,相当に成長したキャラクターで挑んでもあっさり負けてしまうことがある。つまり,本作の夜道には危険がいっぱいで,出歩くのには大きなリスクをともなうのだ。

夜に現れる「シガイ」の一種。相当に強くなってから挑んでも,倒すのは一苦労
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 とはいえ,探索やクエストが予定どおりに進むとは限らず,「いつの間にか日が暮れてしまう」ことも珍しくない。宿泊施設がある町に帰ってもいいが,移動に時間がかかる場合もあるので,せっかくなら各所にある「標」(しるべ)でキャンプとしゃれ込みたい。

 近場でキャンプすれば遠くの町に戻る必要がないのは当然として,キャンプの魅力はイグニスが作る「料理」が楽しめることにある。
 料理が登場するゲームは数多いが,ここまで気合いが入ったモデリングは筆者の記憶になく,プレイしているこっちの食欲が炸裂してしまう。
 また,料理を食べることで追加されるバフ(ステータスアップ)効果も大きく,「達成が厳しそうなクエストも,事前にガッツリとうまい料理を食べて挑んだら楽にクリアできた」といったケースも珍しくない。見た目と実用性の両方でおいしいのだ。

夜の危険を安全に避けつつ,食事でパワーアップ
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深夜にプレイすると,思わぬ“飯テロ”に遭遇することになる
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料理に必要な食材は,敵を倒したり,マップ上のポイントで収集したり,店で購入したりして手に入れる。レストランでも食事にはありつけるが,結構な値段のものが多く,毎日外食しているとあっという間に金欠となる。野生動物を倒して肉を手に入れ,野原を巡ってハーブを摘み,川や海で魚を釣って……といった自給自足が必要だ
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 イグニスは,店で外食をしたり,料理本を買ったり,特定の食材を入手したりすると,新たなレシピを思いつく。場合によっては「他人が食べてる料理を見ただけ」で閃くこともあり,どんどん作れる料理が増えていくのが楽しい。外食でもバフ効果は得られるが,メニューの種類は少なめで,バフが大きいものはそれだけ値段が高くなる。“自炊最強”といった感じなので,冒険がてら食材を調達していこう。

「こんなところで?」と思うような場所でも新レシピを思いつくイグニス
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 イグニスの料理に触れたので,ほかのキャラクターが持っているスキルも紹介しておきたい。
 ノクトはマップ上の海や川,池といった場所で,趣味の釣りができる。最初から釣り具一式を持っているが,各地のショップや釣具屋で,さらに性能がいいロッド(竿)やライン(釣り糸),リールのほか,釣りやすい魚が異なるさまざまなルアーを購入可能だ。
 釣った魚はギャラリーで閲覧できるほか,一部のものは料理にも使用できるので,実用性も悪くない。釣るのにそこそこ手間がかかるせいか,魚料理は強力なバフが得られるものが多い印象だ。

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 グラディオは「サバイバル」のスキルを持っており,戦闘終了時,敵がドロップするものとは別のアイテムを入手できる。ほかのキャラに比べるとだいぶ地味で,しかも毎回拾えるわけではないのだが,入手できるのは主に回復アイテムなので,“縁の下の力持ち”的に役立ってくれる。いつの間にか回復アイテムが増えていたら,それはグラディオのおかげだ。

 プロンプトのスキルは「写真撮影」。移動中や戦闘中を問わず,仲間やモンスター,風景などをいつの間にか撮影していて,宿やキャンプで一泊するときに見せてくれる。実用性はないに等しいのだが,イベントの一コマを切り取ってくれたり,戦闘中のカッコいい(あるいは失敗)シーンを捉えていたりと,その日を振り返れるのが面白い。プレイするうち,「プロンプトの写真がないと一日が締まらない」という感じになっていくのだ。

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 プロンプトが撮影した写真は,好きなものを保存しておける。ストーリーを進めると,思ってもいない場所で写真を使うことがあるので,できるだけ残しておくことをお勧めしたい。

ストーリーに関わる人物の初登場シーンなど,必ず撮影されるものもあるが,基本的にはランダム。思わぬものが撮れていたりするので,宿泊時の確認が楽しみになる
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 本作では,こういったシステムやスキルが自然に“旅の空気”を演出している。
 クエストを受注したら,まず行ける場所までレガリア,途中から徒歩で目的地付近に到着。もう日が暮れ始めていて,ここまま進むとシガイが出てきて危険だし,戻るのも面倒なので,今日はキャンプすると決める。夕食は釣った魚を使ってバフが大きいものを作り,翌日の冒険に備えつつ,寝る前に昼間撮った写真を見ながら一日を振り返る……。このような流れを,ゲームを楽しむというより,日常生活のように行っていることに気づいたとき,正直驚いてしまった。もちろん世界はオープンワールドなので,これが特定のエリアでしかできないということはないし,途中で長いロード時間も挟まない。

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 本作のコンセプトの1つが「ロードムービー」であることは,発売前からたびたび公言されてきたが,ここまでうまくゲームに実装されたのには,素直に感心するほかない。戦闘やスキルアップが楽しいゲームは数多いが,「旅自体が楽しい」と感じたのは,個人的にかなり久しぶりのように思う。


アクション性が高いバトルはやり応えあり


 FFXVのバトルは,これまでのシリーズ作品から大きく変わって,完全リアルタイムのアクションバトルになった。プレイヤーが操作するのは,基本的にノクトのみ。オープンワールドらしく,フィールド上にいる敵に近づくとシームレスに戦闘が始まり,逃げたい場合は素直にそこから離れればいい。
 基本的には敵に近づかなければバトルをせずに移動できるのだが,ストーリーをある程度進めると,帝国軍が襲撃してくるようになる。あえて難を挙げれば襲撃の頻度はもう少し落としてほしかったが,予期しないバトルの発生はいいアクセントになっている。

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 戦闘の基本操作は[○]ボタンで攻撃,[□]ボタンでガードとなっている。[○]ボタンを押し続ければ連続攻撃になり,ガードも相手の攻撃にタイミングを合わせる必要はなく,[□]を押し続けているだけでいいなど,アクションが苦手な人にも優しい仕様だ。
 ただし,ガードはMPを消費する。MPは後述する「シフト」にも使用するため,ずっと敵の近くで攻撃を避け続けるというわけにはいかない。
 画面上に大きくガードマークが表示されたときにうまく反応できれば,そのままカウンター攻撃の「パリィ」につなげられるので,攻撃と防御をタイミングよく切り替えるのがバトルのコツだ。

ガードからのパリィは,戦闘の基本。とりあえずは様子見も兼ねてガードしておき,パリィから攻撃に移るとスムーズに戦える
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 戦闘で積極的に利用したいのが,ノクトの瞬間移動能力である「シフト」。王家の関係者のみが持つというこの力は,[△]ボタンで発動する。ロックオンした敵に使えば瞬時に肉薄して攻撃(シフトブレイク)でき,ピンチになったら特定の地点に避難(マップシフト)もできる。マップシフトで移動できる場所はHP/MPの回復スピードが上がるうえ,シフトブレイクは敵から離れた場所から発動するほど攻撃力が上がるので,マップシフトで離れた場所に避難して態勢を整えたあと,シフトブレイクで再び戦闘に戻る,という流れを繰り返すのが有効だ。

マップシフトが可能な場所は青く光って表示される。遠くて高い場所は敵の攻撃を受けにくいが,飛び道具を持つ相手は普通に攻撃してくるので気をつけよう
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 シフトは空中や高い構造物の上など,通常では届かない場所にいる敵にも攻撃できるだけでなく,うまく使いこなせばケレン味あふれるスタイリッシュな戦いができるので,早めに慣れておくといいだろう。
 なお,うまく地形にシフトできないときは,シフトのマークを画面中央に捉えたうえで,[△]ボタンを長押しするとスムーズに移動できるはずだ。

 魔法も大きくシステムが変更され,フィールド上にあるポイントから吸収した炎や氷,雷のエレメントに素材アイテムを組み合わせて精製し,「マジックボトル」と呼ばれるビンにつめて,戦闘時にそれを投げつける,といったものになっている。

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 マジックボトルは武器と同じスロットに装備して使用する必要がある。前述したように精製の手間なども発生するようになったが,それだけに威力はかなりのもので,うまく使えば簡単にバトルの決着を付けられる。味方も巻き込んでしまうので乱戦では使いにくいが,戦闘開始と同時に敵が固まっている場所に投げれば効果抜群なので,いくつかストックを作っておこう。

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タイタンやリヴァイアサン,ラムウ,イフリートなど,FFシリーズおなじみの召喚獣がもちろん登場。中には戦って力を示さないとノクトを受け入れない者もいる。そのスケールと攻撃力は天変地異そのものといった感じで,ノクト達がどう戦うのかを自分の目で確かめてほしい
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キャラクターはクエストを通して成長していく


 ノクトの仲間達は基本的に自動で戦闘を行うが,戦闘時に時間経過で溜まっていく「コマンドゲージ」を消費すれば,「コマンド」と呼ばれる特殊スキルを任意のタイミングで発動できる。
 コマンドは敵に大ダメージを与えたり,ステータスを低下させたり,味方を回復したりと,キャラによって様々なものが用意されているが,キャラごとに1つしか装備できないので,何をセットするかなかなか悩ましい。コマンドによって消費ゲージ量が違い,強力なものだけセットしているといざというときに使えなくなるので,バランスを考えよう。

コマンドを発動すると視点が仲間の背後に移ってアクションが展開される。その間ノクトの操作はできないが,条件によっては画面表示に合わせて[○]ボタンを押すことで追加ダメージが入ったりするので,気が抜けない。コマンドは使うほど熟練度が上がって効果が大きくなる。ゲージが溜まったらどんどん発動しよう
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 ここまで説明してきたように,FFXVのバトルはアクション性が非常に高いのだが,あくまでRPGなので,自分の腕だけですべての敵を倒すのは不可能に近く,キャラクターの育成が必要になる。

 キャラクターの成長手段は,スタンダードな経験値によるレベルアップに加え,レベルアップやクエストの報酬として取得できる「AP」を消費しての「アビリティ」取得がある。
 アビリティの取得はメニューにある「アビリティコール」から行う。仲間の新しいコマンドをアンロックするのもここからだ。
 アビリティコールの画面はノクトを強化する「アクション」,能力値アップの「パラメータ」など,アビリティのタイプごとに分かれており,好きなものから強化していける。当然だが,強力なスキルや大幅なステータスアップほど大量のAPが必要になるので,手軽な強化を優先するか,じっくりとAPを溜めて強力な強化をおこなうか,迷うところだ。

アビリティコールはFFXのスフィア盤に近いイメージ。種類ごとに分かれており経路もシンプルなので,誰でもすぐ理解できるだろう
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 レベルアップに必要な経験値を稼ぐには,フィールドを駆け回って敵を倒すのもいいのだが,どちらかといえばクエストをクリアしていったほうが効率はよさそうだ。
 クエストはストーリーを進めるメインクエストと,話の進展には影響を与えないがお金やアイテムが取得できるサブクエストに分かれており,一部を除き並行して進められる。

 サブクエストは各地にあるレストランで受注できる「討伐依頼」と,さまざまな人物から依頼されるミッションに大別され,前者は基本的に戦闘のみで,後者はアイテムの回収や写真の撮影など,お使いっぽいものが含まれるなど,バラエティに富んでいる。
 サブクエストはストーリーの進行に応じて追加されるので,サブクエストだけをひたすら進めることはできないようだ。やれることがなくなったら,メインクエストを進めよう。

マップなどに表示される「?」マークが付いた人に話しかけると,サブクエストを依頼される
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 メニューからクエスト画面を開き,進めたいクエストをアクティブにすれば,目的地が表示されるため,迷うことはほとんどない。メニュー画面ではクエストの推奨レベルも表示されるので,手頃なところから進めていこう。できる範囲でサブの方も進めておけば,メインクエストの敵が強すぎて進めない,といったことにはならないはずだ。

 なお,本作ではいくら経験値を溜めても,それだけではレベルアップしない。宿泊時にそれまで稼いだ経験値が加算され,そこで初めてレベルが上がる仕組みだが,このときキャンプではなくホテルやモービルキャビンといった宿泊施設に泊まると,経験値にボーナスが付く。しかも宿泊料が高いところほどボーナスの倍率が高くなるので,「今日は頑張ったなー」という日は,野宿せずに寝心地のいいベッドでぐっすり休むといいだろう。


冒険の相棒,レガリア


 世界を旅するうえで欠かせないレガリアは,本作の“隠れた主役”とでも呼びたくなるような存在だ。オープニングでさっそく故障し,最初の拠点であるハンマーヘッドまでノクト達が押していくことになって少々不安になるが,ゲームが始まれば実に頼れる相棒として活躍してくれる。

 前述したようにFFXVの舞台は広いため,徒歩はもちろん,途中で使用可能になるチョコボを利用しても移動には相当な時間がかかってしまう。レガリアは基本的に道路上しか進めないが,どこへ行くにもまずはレガリアで目的地付近まで移動し,道がなくなったら別の手段でさら進む,ということになるはずだ。

 レガリアの操作には,イグニスが指定場所まで運転してくれる「オート」と,ノクト(プレイヤー)が運転する「マニュアル」の2種類がある。
 マニュアル操作時はアクセルとブレーキを自由に調節できるが,ハンドルは補正が強く効いており,それこそ意図的に「ぶつけよう」としない限りは,事故が起こることはほとんどない。交差点での右折・左折さえ間違えなければ,アクセルを踏んでるだけで目的地に到着できる感じだ。オートで運転を任せたほうが楽なこともあり,個人的には車というより路面電車に近いような印象を受けた。

マニュアル運転時にほかの車やガードレールなどにぶつかると,車体がボコボコになる。修理はハンマーヘッドでしか行えず,もちろん有料
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 本作には,一般的なオープンワールドゲームと同様に,行ったことがある拠点やパーキングに瞬間移動できるファストトラベル機能があるが,これもフルに使うならレガリアに乗っていなければならない。車を降りているときにファストトラベルできるのは,最後に宿泊した場所と,レガリアを駐車している地点だけで,言ってみれば緊急避難用だ。

 なお,レガリアにはアイテムの売買機能も付いており,イグニスに目的地まで運転してもらっている最中に回復アイテムなどを補充し,冒険の準備を整えるといったことができる。宿泊機能こそないものの,ここまで多機能となると,一種の「動く拠点」といった感じだ。

さすが国王の愛車というべきか,車内販売(?)もある
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 車体のカスタマイズ要素もあり,カラーリングやホイールを変更したり,ステッカーを貼ったりできるが,個人的に一番嬉しかったのはカーステレオで再生できる音楽だ。各地のショップでは「FF3のおもいで」や「FF6のおもいで」といったアイテムが販売されており,これを購入すると,それぞれの作品の音楽を車内で楽しめるのだ。

レガリアのカスタマイズは,ハンマーヘッドにいるシドニーに依頼する。また,ハンマーヘッドでレガリアに給油すると,シドニーが窓を拭いてくれて,男ばかりの旅の中で,数少ない清涼剤になってくれるのだ
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 確認した限り,オンライン専用のFFXIとFFXIVも含めてナンバリングタイトルの音楽はほぼすべて入手できるようなので,筆者のようなオールドファンも,最近の作品しか知らない人も,お気に入りのナンバー(おもいで)が見つかるだろう。曲のラインナップも,各シリーズ作品のメインテーマや戦闘シーンはもちろんのこと,FFIIIの「悠久の風」,FFVの「ビッグブリッヂの死闘」など,名曲揃いだ。

 懐かしい音楽を聴きながら,広大で美しい世界をレガリアでドライブするのは格別で,個人的には「ファイナルファンタジーもここまで来たんだな……」としみじみした気分になってしまった。おもいで(音楽)系のアイテムは価格も安く,少しストーリーを進めるだけでほとんどが入手できるので,ぜひ自分のお気に入りを購入して楽しんでもらいたい。

「ビッグブリッヂの死闘」をかけながら海岸をドライブするのは最高! ちなみに音楽は車内だけでなく,レガリア内のショップで販売されている「ミュージックプレイヤー」を購入すれば,車を降りても楽しめる。個人的にはFF3とFF6のおもいでが好きです
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「仲間との旅」自体がとても楽しい


 エンディングまでプレイして,「メインクエストを急いで追いかけすぎないこと」が本作をより楽しむポイントだと感じた。広大な世界にはいくつものクエストや探索ポイントが用意されているし,メインストーリーを追いかけるだけでは行くことのない場所も山のようにある。そもそも,仲間たちとの旅をスルーしてしまうのは,ストーリーを進めるうえでも相当に惜しい。

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 というのも,本作は物語が佳境に入ると,今まで旅をしていたオープンワールドから離れ,別のマップでのリニアな展開になるからだ。元のマップには戻ってこられるが,物語を脇に置いたような状態になってしまい,「先が気になって探索どころじゃない」といった感じになる人も多いと思う。できればリニアな展開になる前はいろいろな場所で寄り道しつつゲームを進めてほしい。

チョコボに乗れば車で進めないところもスピーディに移動できる。レンタル料金も安くてかわいいし,何より仲間と並走するのが楽しい
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 オープンワールドと寄り道が大好きっ子の筆者としては,贅沢を言うなら最後までストーリーを進めつつ世界を渡り歩きたかったが,後半の展開は物語を重視した作品ゆえの決断だろう。繰り返すが,ゲーム的にはいつでも戻ってこられて,「残したクエストがクリアできない」といったことにはならないので,安心してほしい。

 ちなみに,筆者はクリアまで40時間強かかったが,メインクエストを優先したので,討伐依頼やクリアが必須でないダンジョンの探索はほとんど進んでおらず,サブクエストのコンプリートにはほど遠い感じだ。ボリュームは十分すぎるほどと言っていいだろう。

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 仲間とレガリアに乗って知らない町まで移動するシーンでは,子供のころに友達と自転車で遠出したことを思い出したし,キャンプするときは学校の体験学習で山奥に出かけ,ご飯が生煮え気味のカレーを食べた記憶が蘇ってきた。
 ドラマチックな冒険だけでなく,日常の一部を共有するからこそ,彼らへの感情移入が深まる。4人の外見や口調は今風で,最初は軽薄さも感じたが,ストーリーを進めるうちに,全員“好感が持てるまっすぐな青年”になっていた。それだけに激動の物語をクリアした後は,ホロリと来てしまったのだ。

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 あまりにも有名なシリーズの作品ゆえ,逆に手が出しづらくなっている人もいるかもしれないが,これだけのスケールを誇る国産RPGはそうそう出てこないので,体験しない手はない。日本のゲームらしく,細かいところまで丁寧に作られているので,誰でも問題なく楽しめるはずだ。近年“むさ苦しい中年男性”ばかりを操作してきた筆者などは,“美形男子”の4人パーティに馴染めるのか少し不安だったのだが,実際にプレイして,それは杞憂だったことにすぐ気がついた。それはFFXVがプレイヤーの世代をあまり選ばない,友情と冒険の物語だからだ。

 根っからのシリーズファンから,筆者のように国産RPGから離れ気味だった人,FFシリーズをプレイしたことがない人まで,ぜひ「最新のファイナルファンタジー」をプレイしてもらいたい。

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