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  • 発売日:2009/02/26
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なぜ面白い? 「龍が如く3」がどう優れたゲームなのかを考察してみる
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印刷2009/03/07 11:00

レビュー

極道の世界をテーマにした“大人向け”のアドベンチャーシリーズの最新作

龍が如く3

Text by TAITAI

»  バイオレンスかつドラマティックな極道社会をテーマにしたアクションアドベンチャー「龍が如く」シリーズの最新作,「龍が如く3」が2月26日に発売された。“大人のエンターテイメント”と銘打たれた本シリーズだが,その魅力と面白さはどこにあるのか。ゲームとみるや,ところかまわず考察したがる編集部のTAITAIがレビューしてみる。



なぜ面白い? 「龍が如く3」がどう優れたゲームなのかを考察してみる


初週販売本数37万2000本(メディアクリエイト調べ)と,PLAYSTAITON 3の歴代2位を記録(ちなみに1位は「メタルギアソリッド4」だ)。名実共に,国産の代表的なタイトルへと成長した「龍が如く」シリーズ
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 仕事柄多くのゲームに触れるためか,筆者はよく知人に「最近,何か面白いゲームはない?」と聞かれることが多い。なんやかんやでいまや三十路を超える筆者が,同世代の知人に「あれって面白いの?」とよく質問されるタイトル,それが今回取り上げる「龍が如く」シリーズだ。

 先に結論から述べてしまうと,龍が如くは,エンターテイメントとして非常に完成度の高いシリーズである。上記の例でいえば,本作は,そうした知人の質問に「面白いよ」と自信を持って答えられるゲームの一つ。毎年“積みゲー”の山を築いている筆者ではあるが,龍が如くシリーズは,積まずに「ちゃんとクリアした」数少ない作品でもある。



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よりリアルに,そしていっそう渋さを増した桐生の兄貴。かっこいいです
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 とはいえ,具体的な面白さを聞かれたときに,なんとも説明が難しかったというのも,本シリーズで同時に感じていた大きな特徴だろう。東京の歓楽街を再現? いろいろな遊び場(プレイスポット)がある? 爽快な戦闘パート? それとも登場キャラクターやストーリーが魅力的? どれもこれも重要な要素ではあるが,「ここがこうだから面白い!」と論理的な説明ができない“もやもや”とした感じがあったのだ。「このゲームの肝はなんだろう?」と考えると,これがなかなか難しいというか。
 端的に言えば,本シリーズの魅力は「一貫したテーマ性とゲームシステム」そして「溢れんばかりのサービス精神」といったあたりになるのだが,そう伝えたときの「なんじゃそりゃ」という知人の反応を見るたび,「あとで白黒ハッキリさせる」と心に誓ってきたのだ。

 というわけで,今回の記事では,そんな龍が如くシリーズの最新作であるPLAYSTAITON 3(以下,PS3)専用ソフト「龍が如く3」を紹介しながら,本作および本シリーズの面白さはどこにあるのか,あるいはどう面白いのかを考察してみたいと思う。
 ややもすれば,「なんか,いろいろなミニゲームが遊べるゲームなんでしょ?」というだけの見方をされてしまう龍が如くシリーズなのだが,これがなかなかどうして,一本筋の通ったゲームデザインが施された作品ではないかと思うのだ。

真島の兄さんや伊達さんももちろん登場。今作でも活躍してくれる
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“伝説の龍”が再び。今度の舞台は東京と沖縄だ!


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 さて,まずは龍が如く3の概要を説明しておこう。まぁ最近いろいろな場所でプロモーションを見かけるので,すでご存じの読者も多いかもしれないが,龍が如くシリーズは,極道をテーマにしたちょっと大人向けのアクションアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは,“伝説の極道”こと「桐生一馬」を操りながら,東京は神室町を中心に巻き起こる,極道社会の抗争を体験していく。

 東京を中心に関東最大の組織「東城会」の内紛を描いた初代「龍が如く」,続く「龍が如く2」では,東京のほかに大阪にまで舞台が広がったわけだが,最新作となる本作では,南国情緒漂う沖縄が舞台として登場する。
 今回の物語は,前作の近江連合(関西の極道組織)との抗争から一年後の話。極道の世界から足を洗った主人公の桐生一馬は,遥(はるか)と共に沖縄で養護施設“アサガオ”を営んでいた。子供達に囲まれながら,平穏な日々を送っていた桐生達。しかし,そんなアサガオに土地買収というトラブルが持ち上がる。土地の権利を持つ地元の極道,琉道一家との交渉に向かう桐生だったが,やがてそれは1000億を超える利権が絡む,政治と裏社会を巻き込んだ事件へと発展していく。

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穏やかな雰囲気を醸し出している琉球街。「おきなわ屋」や「サムズマウイ」など,実在の店舗も多数登場する
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 任侠映画さながらの骨太なストーリーと,ゲーム全般に漂う“お茶目なノリ”は,これまでのシリーズと同様だ。「伊達 真」や「真島吾朗」といったお馴染みのキャラクター達の活躍はもちろんのこと,「島袋力也」「名嘉原 茂」「峯 義孝」といった新たなキャラクターを交えての人間ドラマは,本作の見どころの一つだろう。
 声優陣には,藤原竜也,中村獅童,宮迫博之,宮川大輔,高橋ジョージ,徳重聡,泉谷しげる,渡哲也(以上,敬称略)ら有名俳優/タレントが起用されており,迫真の演技で物語を盛り上げてくれる。

沖縄の基地拡大法案とリゾート開発計画。1000億を超える利権を生むというこの二つの計画を巡って物語は動き出す
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―――琉道一家―――

琉道一家の若頭,島袋 力也(CV:藤原竜也)は,新たな登場人物のなかでももっとも“いい味”を出しているキャラの一人だろう。本人のイメージからはほど遠いにも関わらず,まったく違和感のない藤原竜也の演技力にも脱帽
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琉道一家の組長,名嘉原 茂(CV:泉谷しげる)
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琉道一家の若衆,幹夫(CV:宮川大輔)


―――東城会―――

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堂島大吾(CV:徳重 聡)
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峯 義孝(CV:中村獅童)
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浜崎 豪(CV:高橋ジョージ)
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神田 強(CV:宮迫博之)



すべてがパワーアップ。シリーズ最高傑作という言葉に偽りなし


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 現代から一転,まさかの時代劇というスピンオフ的な「龍が如く 見参!」の発売から約1年。待望とも言える正統な続編となる本作だが,ハードウェアをPS2からPS3に移したことで,映像やボリューム,そのほかのあらゆることがパワーアップしている。まさに「シリーズ最高傑作」という売り文句に偽りなし,といった印象だ。

 龍が如くシリーズといえば,日本の歓楽街を再現した“箱庭”を闊歩して,さまざまな遊びを満喫できる自由度の高さが大きなウリ。最新作となる龍が如く3でも,ゲームセンターにボーリング場,ダーツやビリヤードが楽しめるBARなど,多くの遊戯施設が街中に設置されており,プレイヤーは,それらを使って思う存分遊興にふけることができる。
 またCERO:D区分(17歳以上対象)のタイトルということもあって,キャバクラや賭博場などといった“大人の遊び”が用意されているのも,龍が如くシリーズの大きな特徴だろう。メインストーリーも魅力的な本作だが,事件そっちのけで夜遊びに興じるというのも,シリーズに共通した至極まっとうな(?)楽しみ方なのだ。
 龍が如く3では,新たなプレイスポットとして,人気アーケードゲーム「Answer×Answer」や新人キャバ嬢を育成する「No.1 キャバ嬢をつくろう!」などが追加されており,その合計は20種類以上というボリューム。近年発売されたゲームのなかでも,類を見ないバラエティの豊富さとなっている。

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既存のプレイスポットのなかでも最も進化しているのが“キャバクラ”だろう。ファッション雑誌「小悪魔 ageha」のトップモデルである荒木さやかさん,桃華絵里さん,桜井莉菜さんらがキャバ嬢として登場するのだ
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キャバ嬢を育成できる“キャバつく”モード。街でスカウトした女の子に話術や接客術を叩き込み,No.1キャバ嬢を目指すのだ
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 さらに街中で繰り広げられる「ケンカバトル」も,龍が如く3になって大きく進化している部分だろう。蹴って殴って,刃向かう敵を叩き伏せる爽快なゲームシステムこそ変わらないが,必殺の「ヒートアクション」は状況に応じてより多彩に,そして龍が如く 見参!からは,街角の出来事から技を編み出す「天啓」システムを継承している。
 また何より嬉しいのが,街中のアドベンチャーパートから戦闘パートへとシームレスに移り変わるようになった点だ。これまでは,街中で因縁を付けられるたびにロード>戦闘パート>ロードを繰り返していて,正直少し煩わしかったのだ。本作を遊び込もうとすると,自然と街中を歩き回ることになるわけで,結果としてチンピラなどに遭遇することも多くなるだけに,ここの問題が解消されたのは,地味ながらかなり嬉しい要素だといえるだろう。


看板やゴミ箱など,あらゆるものを武器として利用できる,何でもアリのケンカバトルの爽快さは変わらず。繰り出されるヒートアクションの数々も,相変わらず痛そうです
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涙あり笑いありのさまざまなサブストーリーがあるのも,龍が如くの魅力の一つ。困っている人がいると,助けずにはいられないのが桐生さんなのだ
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人生,何事も経験なんです。「男を磨く」をテーマにしたゲームシステム


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 ……さて,ざっと本作の概要を紹介してきたわけだが,ここで一つの疑問を提起してみたいと思う。というのも,本作にはたくさんのプレイスポット/サブストーリーが用意されていることは説明したとおりなのだが,読者の皆さん,とくに「硬派なゲーマー」と自負する人のなかには,プレイスポット/サブストーリーが沢山と聞いて,逆に嫌悪感というか,いやーな感じがするという方はいないだろうか?
 「ゲーム本体とは関係ない要素」「なくてもよい要素」「ボリューム感を水増しするための要素」などなど,正直なところをいうと,筆者は,おまけ的な要素として用意されるミニゲームというものがあまり好きではない。大抵はその作り込みが中途半端ということもあるのだが,やらなくてもよいものを山盛りにされるというのは,なんというか,食べたくもないものでお腹を膨らまされるような感覚がしてしまうからだ。例えるなら,とんかつを頼んだのに,キャベツだけ大盛りにされる感覚……とでも言えばよいだろうか。「いいから,とんかつの味で勝負してくれよ」みたいな気がしてしまうのだ。

今回もさまざまなプレイスポットが用意されている。これだけあると,遊びきるのも大変だ
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 しかしながら,そんなミニゲームが山盛りであるハズの龍が如くシリーズでは,なぜかそういう感覚を抱かなかった。ごく自然な気持ちで,夜の歓楽街をフラフラするという楽しさを味わえたのである。これはなぜだろうか。この記事の冒頭で「龍が如くの面白さをうまく表現できなかった」という話をしたと思うが,それは,こうした問題意識から発したものだ。
 いや,もちろん本編のストーリーは面白いし,主人公の桐生一馬ほか,物語を彩るキャラクター達も非常に魅力的だ。伊達さんは渋いし,遥も可愛い。しかし,それだけが本作の魅力ではない。本編そっちのけで賭博や麻雀をする楽しさ,あるいは涙あり笑いありのサブストーリーをこなしていく楽しさ,これらはどう表現すればいいのだろうか?
 そもそも,単純に質の高いミニゲームを集めれば,本作のような楽しいゲームになるのだろうか。これまでにもミニゲームが山盛りのゲームはいくつかあったと思うが,それらの例を見る限り,そんな単純な話ではないはず。やはり龍が如くには,何かしらの“秘訣”があるに違いない。
 それは,ゲームの世界観と各種プレイスポットが自然な形で融合されている点かもしれないし,あるいは達成時の報酬のバランスがよいことかもしれない。もしくは純粋に,各種ミニゲームが“本当に面白い”のかもしれない。


 そんなこんなでいろいろ考えてみたわけだが,最終的に「あらゆることで経験値が入る」というゲームシステムが,龍が如くという作品の肝であり根幹なのではないか,という結論に至った。
 というのも,本作には,いわゆる成長の概念がある。成長するとより強力な技を使えるようになったり,体力バーやヒートゲージ(必殺技を繰り出すのに必要)が増え,戦いを有利にしていける。そこまではまぁ良くあるゲームシステムなのだが,本作がユニークなのは,そうした強さを身につけていくための作業が,何も戦闘(ケンカ)に限らないという点だ。
 お酒を飲んだりキャバ嬢と遊んでいれば経験値が入るし,犬と遊んだり,あるいはご飯を食べたりしても経験値が入る。要するに,街中で“あらゆる経験”をしていくことで,主人公たる桐生一馬は強くなっていくのだ。
 本作は,基本的に桐生一馬という男の「生き様」をテーマにしたゲームである。「男が強くなる」とはどういうことなのか,それがゲームとしてどう表現されているのか。まぁ本当のところは開発陣に聞いてみないと分からないのだが,要するに,それは「ただケンカが強いだけじゃない」という話なのだろう。つまり,男として,いや人として経験を積み成長することが,本作における「レベル上げ」の作業というわけなのだ。

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 それを踏まえたうえで,本作におけるミニゲーム,そして雑多なサブストーリーの存在意義を考えてみると,実はこれらが決して「おまけ要素」などではなく,むしろ「ゲームの骨格」の一つだということが見えてくる。本作でシナリオに行き詰まって,あるいはちょっとした気晴らしに街をふらつくなどというのは,ほかのゲーム……例えばRPGなどでいえば,いわゆる「レベル上げ」の作業に近い役割なのではないか。フラフラ遊んでいるうちに桐生が強くなり,自然とメインシナリオを進めやすくなるのである。

 つまり,本作におけるミニゲーム/サブストーリーというのは,すべて「男を磨く=いろいろな経験を積む」を軸としたゲームシステム(テーマ)をベースにしており,単なるおまけ要素ではない,ゲームの基幹要素として組み込まれている。戦闘(ケンカ)をするよりも,街中で遭遇する各種イベント,そしてそれに絡んだミニゲームをこなしていったほうが経験値の割がよいというのも,そうしたテーマというか,本作の設計思想があったればこそではないか。
 考えてみてほしい。喫茶店で食事をして経験値が入るゲームなど,ほかに何があるだろうか。高いお酒を飲めば多めの経験値が入るとか,そこらのゲームではまず見かけないシステムだ。しかし,これこそが龍が如くというゲームの本質だと感じるのだ。

 ―――人生,何事も経験なんだよ

 まさに,そんな名越氏(本作の総合監督)の声が聞こえてきそうなゲームシステムではないだろうか。
 要するに本作は,「弱きを助け強きをくじく」といったフレーズに代表される,任侠ものというテーマを実にユニークなゲームシステムで表現した作品であり,また本作におけるミニゲームは,そうした作品のテーマ/ゲームシステムに則った「必要な」要素だと思う。だからこそ,筆者も本作の各種ミニゲームをストレートに楽しめたのだと感じる次第。本作のミニゲームは,おまけではない。紛れもない「メインディッシュ」だと思うのである。



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ゲーム史における龍が如くシリーズの意義


 さて,これまでは「突飛な」あるいは「イレギュラーな」作品として認知されていた本シリーズなわけだが,筆者としては,これはマーケティング的に見てかなり狙い澄ました作品であったように思える。

 日本のゲーム産業の本格的な立ち上がり,すなわちファミコンの誕生から20年以上が経った今,当時の子供達(筆者も含む)がもう“いい大人”になっているというのは,あえて指摘するまでもない。しかし,誰もが分かっていたこの事実がありながらも,この“大人市場”に積極的に目を向けたメーカーは多くなかった。
 いや,ノスタルジックさをウリにしていた「ぼくのなつやすみ」や,往年のゲームファンを狙った「ファミコンミニ」など,それぞれのスタンスで大人市場を狙った商品があったことは確かだが,ある程度の規模の予算を組んだであろう“大作感溢れるゲーム”を作るという例は,少なくとも国内では,龍が如く以外の名前をほとんど聞いたことはないように思う。

CERO:D区分(17歳以上対象)のタイトルでありながらも,高いセールスを記録した龍が如くシリーズは,ゲーム市場の変化を象徴する作品だろう
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 しかしそうした一方で,「グランド・セフト・オート」に代表されるクライム物(犯罪物)は,世界的には一大人気ジャンルであり,マフィアやギャングといったテーマを扱った作品は数多い。またゲーム以外のメディア,例えば小説や映画,漫画などに目を向けてみれば,ヤクザやマフィア,任侠などをテーマにした作品というものは,やはり定番のジャンルとして確立されていた。それなのに,なぜ日本のゲーム市場だけは,そうした部分にフォーカスした作品が皆無だったのだろう。ゲームを作る側からして,大人の市場の存在を信じ切れていなかったのだろうか。

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 その意味では,龍が如くは,結果的には以前からニーズが高かったであろうジャンルだと解釈できるわけだが,その“誰もが本腰入れて取り組まなかった金脈”(市場)を的確に掘り当てた,本作のプロデューサーである名越氏の着想力,そしてリスクを覚悟しながらも断行したその実行力は,称賛に値するものだといえる。
 今になって冷静に考えてみれば,龍が如くには,ヒットする要因が多々あったと思い至るわけだが,それが数年前,それこそ初代「龍が如く」の企画時期(2003年くらい?)ともなれば,話はまったく別。さまざまな難題,課題があったことは想像に難くないが,それらを乗り切って,龍が如くは,いまや国内のゲーム市場における代表的なシリーズにまで成長した。
 かつての漫画やアニメがそうだったように,ゲームが“子供のもの”というだけではない,幅広い層に支持されるメディアへと成長を遂げているということを,本シリーズは結果(初週販売本数:37万2000本)によって証明したのだ。

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 いわゆる先年の“次世代機戦争”以降,ゲーム市場は,より複雑さを増したといわれている。年齢によるターゲッティングの難しさもそうだが,昔のファミコンやプレイステーションのように,“誰もが持っているハード”というものがなくなってしまったからだ。ゲームは,いまやそのライフスタイルに併せて,いろいろなゲーム機(あるいはゲーム機以外)で遊ぶ時代へと突入している。

 龍が如くは,そうしたゲームの新しい時代の流れのなかにあって,先頭に立ち,新たな市場を切り開いたであろう作品として,ゲーム史に残るタイトルなのではないかと思う。おそらくは今回の龍が如く3の成功を受け,さらなる続編も視野にあることと思うわけだが,シリーズのより一層の発展を願うばかりだ。
 公言されている名越氏の新しいプロジェクト共々,次回作にも大いに期待したい。


「龍が如く」公式サイト


名越稔洋オフィシャルブログ




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