インタビュー
未だ見えてこないMMORPG「ZIPANG(仮)」とはどういうゲームなのか? その概要を根掘り葉掘りプロデューサーに聞いてみた
東京ゲームショウ2008での電撃発表で,大きな反響を呼んだアクワイアのMMORPG「ZIPANG(仮)」。その後も各方面から注目を集めているものの,公式サイトに掲載されているのはいくつかのコンセプトアートと,“和”の世界をベースにしたゲームであるといったプロデューサーからのメッセージぐらい。
そこで,ZIPANGとは実際のところどういうゲームなのか,どんなところに期待すればいいのか,そして今後のスケジュールはどうなっているのかなどについて,現時点で分かる話を,アクワイアでZIPANGのプロデューサーを務める薬師寺健治氏にインタビューした。
「ZIPANG(仮)」4Gamer内記事一覧
ギルドで天下統一を目指すもよし
ソロで各国を放浪するもよし
戦国時代をベースにしたMMORPG
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。ZIPANGは発表以来,熱心なオンラインゲーム/MMORPGファンの注目を集めていますが,内容についてはまだまだ分からない点が多いです。そこで,どんなゲームであるのか,基本的なところから聞かせてください。
ゲーム画面がまだ未公開なので,今日は頭の中でイメージできる材料を,一から根掘り葉掘り聞いていきたいと思います。
薬師寺健治氏(以下,薬師寺氏):
概要を説明しますと,ZIPANGは“和”の要素にファンタジー色をプラスした世界観を持つ,アクション性の高いMMORPGタイトルです。時代設定としては,日本の戦国時代から少しあとくらいで,戦乱が落ち着き江戸時代に移行するまでの微妙な時期といったところです。
4Gamer:
プレイヤーは,その世界観の中でどういった立場になるのでしょう?
薬師寺氏:
最初は,どこにも所属しない一般人です。クエストなどをこなしながら各国を行き来して,どの国のどのギルドに所属するかを決めていただくという流れです。また,ソロプレイを志向するプレイヤーであれば,どこにも所属せず,放浪し続けることもできるようにしたいと考えています。
4Gamer:
国やギルドには善悪の属性,あるいはそれらの対立構造のようなものは存在するんでしょうか?
薬師寺氏:
ギルドに善悪はなく,単純に対立したり同盟したりという関係です。強いていうなら,いわゆるモンスターに相当する敵キャラクターが,全プレイヤー共通の敵というスタンスになります。いくつか存在する国の中で,モンスターが支配するNPCの国がありまして,そこのボスを倒すとシーズン1クリア……みたいなイメージです。これはコンシューマゲーム的な要素ですね。
4Gamer:
なるほど。追って国が増えて,新たなボスも登場するわけですか。
薬師寺氏:
はい。最初に登場するのは数か国ですが,シーズンを重ねるごとにどんどん増やしていく予定です。1シーズンで数か国が追加される予定です。
4Gamer:
なるほど,最初は関東や近畿だけだったのが,各地域が追加されていき,最終的に日本全国を網羅していくようなイメージですかね。ゲームの目的は,このうちNPCが支配する国のボスを討伐していくことなんでしょうか?
薬師寺氏:
それは,あくまでも目的の一つです。プレイヤーは勢力内で自分の地位を高めて,最終的には国の君主にまで登り詰めることができるようになります。君主となって他国を制圧し,やがて統一を目指していけるようなシステムを考えています。
4Gamer:
なるほど,ギルド中心の遊び方の場合は,そういったスタイルになるということですね。
薬師寺氏:
そうですね。
4Gamer:
基本的なゲームプレイは,モンスターを倒したり,あるいはクエストを攻略したりしながらキャラクターを成長させていく,一般的なMMORPGのようなものと考えてもいいのでしょうか?
薬師寺氏:
ええ。ソロプレイ志向の方であれば,そういったプレイを中心に楽しんでいただけると思います。またMMORPGに慣れている人であれば,早い段階からギルドを興して,抗争を楽しむこともできます。
4Gamer:
プレイヤーの職業にはどんなものがあるのでしょう?
薬師寺氏:
それはまだお話できない部分です。申し訳ありません。
4Gamer:
MMORPGの職業というと近接攻撃系,遠距離攻撃系,魔法攻撃系,回復系のようなくくりが一般的ですが,ZIPANGにおいて何か特徴的なものはありますか?
薬師寺氏:
実はZIPANGの世界には,あまり魔法のような概念を入れないようにしようと考えています。その代わり,例えば魔法使いに相当するクラスなら爆弾のようなものを投げるとか,より具体的な物質に置き換えた形で表現していこう,と。
ただ魔法的なものを完全になくしてしまうと,それはそれで表現の幅に限界を設けてしまいますから,なるべく少なくする方向ということですね。このあたりは世界観の構築と絡めて,うまくZIPANGなりの“和”を表現できるように調整していきます。
4Gamer:
日本の戦国時代が舞台ということですが,歴史上の有名人物をモデルにしたNPCなどは出てくるのでしょうか?
薬師寺氏:
そういったものも考えています。ただ,どこまで表現するかについては検討中です。つまり実在の人物に近い存在にするのか,それとも独自にアレンジするのかといったような点について考えているところです。
「侍道」や「天誅」よりもアクション性が高い?
独自の戦闘システム
4Gamer:
注目されている部分の一つに,“アクション性の高さ”が挙げられています。具体的に,どういう感じになるのでしょうか?
薬師寺氏:
4Gamer:
敵に近づいていって斬りつけたり,みたいなことができるわけですか。
薬師寺氏:
そうです。もちろん,遠距離攻撃もできます。多人数同士がぶつかり合って接近戦を行ったり,遠距離から攻撃したり。
4Gamer:
従来のMMORPGでは,一度ターゲットすると半自動的に攻撃を繰り返す,いわゆるクリックゲームが主流ですが,そういったものではないわけですね?
薬師寺氏:
はい。基本的に,単純なクリックタイプにならないような方向で開発を進めています。
4Gamer:
操作にゲームパッドの類は使えますか?
薬師寺氏:
その予定です。キーボードでの操作に関しても,ゲームパッドを意識した感覚で作っています。
4Gamer:
そうなると“アクションゲームに近いMMORPG”というよりも,むしろ“アクションゲーム”といったほうがいいようなイメージでしょうか?
薬師寺氏:
それくらいのイメージで良いと思います。実際,開発はアクションゲームを作っているくらいの感覚でやっていますし。
4Gamer:
MMOに限らず,RPGというとレベルを上げる作業がつきものになるかと思います。あまりアクション性が高い内容となると,長時間戦闘を繰り返すのが苦痛になるケースも考えられませんか。
薬師寺氏:
オートバトルシステムのようなものなどを搭載して,そういったプレイヤーの負荷をできるだけ軽減できるように考えています。また,ミッションやクエストをクリアすることで経験値を得られる割合を増やすなど,長時間プレイしないとレベルが上がらないような仕様は避ける方向です。
とはいえ,あまり早くレベルが上がってしまうとバランスが崩れますから,そこはまさにコンシューマ寄りのMMORPGというイメージですね。また,通信状況などの関係で,あまりシビアな判定にするとゲームとして成立しなくなりますので,ある程度のアクションは割り切って,その割り切った部分をMMORPG寄りにしているということです。このアクションの部分については,ZIPANGの肝の一つなので,我々も慎重に調整を続けていきます。
4Gamer:
なるほど。そうしたアクション性は,インスタンスダンジョンのような限られた空間だけでなく,フィールド上ならどこでも体験できるんですか?
薬師寺氏:
はい。現在はそのような方向で開発を進めています。
4Gamer:
そうなると気になるのが要求されるPCスペックです。実際,どのくらいを想定しているのでしょう?
薬師寺氏:
4Gamer:
アクションゲームとなると,ゲーム内にプレイヤー自身のスキルはどの程度反映されるのでしょう? 例えば,上手なプレイヤーならレベルの高い相手であっても対人戦で勝つことができるとか。
薬師寺氏:
そういったバランスはまだ検討/調整段階です。もちろん,レベルが絶対というバランスにはしないつもりですし,ギルド戦におけるバランスも,所属しているメンバーのレベルや,ギルドの勝率や位に応じたハンディキャップを設定したり,小さなギルドも他のギルドと同盟を結んだりして対抗できるようにしたりなど,いろいろなバランスの取り方を考えています。
4Gamer:
NPCやモンスターと戦う場合はどうでしょう?
薬師寺氏:
そこは単純にレベルベースです。それはソロプレイヤー向けに考えていますからね。
4Gamer:
なるほど。具体的なゲーム画面などはまだまだ先ということですが,実際,見た目はどんなイメージになるのでしょうか?
薬師寺氏:
「侍道」や「天誅」レベルのクオリティは出したいと思っています。
4Gamer:
最近の流行や風潮に合わせる,あるいは逆に意識的に違うものにする,といったような部分はありますか?
薬師寺氏:
とくに意識はしていません。開発内部で,そのへんをとくに何か話し合ったということもありませんし……無意識に皆が一点を想像していたといいますか。「こんな感じだよね」「うん」みたいな(笑)。アクションゲームの部分でカメラワークをどうするか,システム的にマップをどう扱うのか,という議論はありましたけど。
グローバルタイトルとして海外展開も視野に
4Gamer:
それでは気になる今後のスケジュールをお聞きしたいと思います。まずゲーム画面の初公開は,いつ頃になりそうでしょう? 冒頭のお話だと春以降ということでしたが。
薬師寺氏:
4Gamer:
なるほど,グローバルタイトル扱いなのですか。そうなるとZIPANGにおける“和”は,海外受けするようなものになるのでしょうか?
薬師寺氏:
はい。いわゆる似非ジャパニーズですね。海外でイメージされているような“勘違い日本”を,どストライクに(笑)。開発には外国人スタッフもいて,「“正しい”勘違い日本」についての話もしています。
4Gamer:
日本のデベロッパがグローバルタイトルを企画する際に,海外受けする要素と日本受けする要素をどういった割合で入れるのか議論になるケースもあるようですが,ZIPANGではどうですか?
薬師寺氏:
4Gamer:
どちらかというと日本向けだった従来のアクワイアタイトルとは異なる,海外を視野に入れた新たなIPというイメージでしょうか?
薬師寺氏:
そうですね。そういう意味では,まったく新規のIPです。
4Gamer:
一口に海外といっても,欧米とアジアでは,MMORPGやオンラインゲームに求めるものが異なりますし,日本もまた大きく違う傾向が見られます。国ごとに独自の方向へバージョンアップしていく可能性はありますか?
薬師寺氏:
基本的に世界共通にする予定です。仮に海外からの要望を採用することになったとすると,同じくらいの比重で日本からの要望も採用する予定でして,どこかに偏るようなことはしないようにしたいと考えています。ただまあ,こればっかりは実際にやってみないと分からないですけどね。
4Gamer:
なるほど。サービスを展開するにあたって,そのほか何か特別に予定していることはありますか?
薬師寺氏:
もっと楽しめる様に,色々仕掛けを予定しています。そこは言える時期が来たら……ということで。
コンシューマゲームとオンラインゲームを繋ぐ
新機軸のMMORPGを目指す
4Gamer:
ところで薬師寺さんはZIPANGのプロデューサーという立場ですが,具体的にどんな作業をしているのでしょう?
薬師寺氏:
4Gamer:
ゲームに盛り込むアイデアとかは,誰が出しているんですか?
薬師寺氏:
関わるスタッフ全員がそれぞれの立場から出しています。例えば原案を作ったスタッフからは原案なりの,運営からは運営なりの,そして私からはプロデューサーとして。いい意味で,皆でアイデアを出しあっている感じです。
4Gamer:
というと,もともとアクワイア内部にオンラインゲームの原案があって,それを薬師寺さんがプロデューサーとして手がけることになったと。
薬師寺氏:
簡単に言えば,そうですね。手がけるとは,それこそ最初にオンライン事業部の人員を集めて,部屋を借りるというようなところから(笑)。
4Gamer:
ZIPANGが具体的に動き始めたのは,いつ頃でしょう?
薬師寺氏:
最初の原案ができたのが,2008年の4〜5月頃です。最初の形ではちょっと微妙な感じがあったので,そこから何度も練りなおす作業が入りまして。
4Gamer:
薬師寺さんご自身は,オンラインゲームに関わってどのくらいになるのでしょう?
薬師寺氏:
最初にオンランゲームを作ったのは10年前でした。その後も大小取り混ぜてずっと国内のタイトルに携わってきました。コンシューマ時代も含めると,ゲーム作りには14年関わっています。
4Gamer:
今現在,コンシューマとオンライン,どちらのゲーム開発がご自身に向いているとお考えですか?
薬師寺氏:
いい意味でバランスが取れているんじゃないかと思います。今までの蓄積が合致してきたといいますか。オンラインゲームとコンシューマゲームの開発では,中心となる内容が異なっていて互いに話が噛み合わないことが往々にしてあるんですよ。
例えば,オンライン系の人達はまずビジネスモデルや収益性の話から始めたり,重視する傾向が多分にあります。コンシューマ系の人達は,逆に世界観やゲームの内容を重視する傾向があり,それからビジネスの話をする傾向があります。私の場合は,これまでの経験を生かして,両者の橋渡し役として機能しているんだなあ,と実感しています。
4Gamer:
なるほど。
薬師寺氏:
でもどちらかといえば,私もゲームの内容を重視しています。当たり前の話ですが,きちんと面白いゲームを作れば,どういう方向にも持っていけると思っていますし,収益性はゲームであれば,まずは売れる面白いものありきかな,と。
また,それを判断できる経験がないと駄目かと思います。これはゲームに限ったことではなく,どの仕事でも同じだとは思いますが。あとは作り始めたときと,その後では周囲の状況も変化しますので,その都度考えていく柔軟な思考も必要だと思います。
4Gamer:
ZIPANGは,プロデューサーのそうした意識が反映されたものに仕上がりそうですか?
薬師寺氏:
そうですね……オンラインにもコンシューマにも良いところ悪いところはありますから。両者の良い部分をまとめたものにしたいですね。その分,苦労も増えるのですが,それだけやりがいのあるものだと思います。
4Gamer:
オンラインとコンシューマの良い部分をまとめた作品……。今,同じようなスタンスで開発に取り組んでいると感じられる,他社の作品ってありますか?
薬師寺氏:
今後は,両方のバランス感覚が必ず必要になってくると思います。他社のゲームでもアイデアを実験的に投入してるんじゃないかと感じるものもありますが,今年〜来年はもっとどんどん出てくるんじゃないでしょうか。ZIPANGもさまざまな実験的な要素が入っていますし。
4Gamer:
極めて個人的な見解ですが,確かに従来型のMMORPGはここ数年ですっかり熟成してしまい,同じスタイルでは今後大きな発展は期待できないかもしれません。ある意味,現在は転換期にあるわけですが,ZIPANGは国内タイトルにおける先駆け的な存在と期待してもいいでしょうか?
薬師寺氏:
可能性という意味なら,そうかもしれません。いい意味でどっちつかず,ということで(笑)。
オンラインゲームやMMORPGが好きだった人に向けているのは確かですが,興味はあったんだけど手を出せずにいた人達を引っ張ったり引率したりする方向にも持っていきたいですね。今後は,PC/コンシューマといったプラットフォームや,オンライン/オンラインといった垣根もなくなると思いますし。
4Gamer:
なるほど。全般に新機軸でやっているという感じは受けましたが,何かまだ話していない隠しネタはありますか?
薬師寺氏:
うーん……ZIPANGでいえば,「PvP」は,ちょっと見ものかもしれません。「これを,ゲームの一要素として入れてるだけ?」という感覚でしょうか。
4Gamer:
謎掛けのようですが,つまりそこだけ切り取って1本のゲームとしてリリースされてもおかしくないほどのもの,と?
薬師寺氏:
はい。これ以上は,今はまだこちらからは言えません。
4Gamer:
実際に触れられる日を楽しみにしています。
最後の質問なんですが,スパイクで開発中の「Blade Chronicle: Samurai Online」との関係について,お聞きしてもいいですか? どちらもアクワイアがらみで,和風テイストのMMORPGですよね。
薬師寺氏:
以前から,「Samurai Online」というタイトルに着手しているとは聞いていまして,それがBlade Chronicleとしてリリースされたのを知り,なるほど,と。
中には“Samurai OnlineがZIPANGになったのではないか”と勘違いしておられる方もいるのですが,まったく別物です。それぞれの会社が,それぞれの指揮のもと,それぞれの企画を進めていたというわけです。
4Gamer:
ZIPANGに対する4Gamer読者の期待も非常に大きくなっていますので,最後に何かメッセージをお願いします。
薬師寺氏:
質問や要望があれば,ZIPANGの公式サイトに「目安箱」を用意していますので,ぜひお寄せください。また,4Gamerさん宛に送っていただいても良いかと。質問や送っていただいたものは,すべてに目を通していますので。
4Gamer:
ありがとうございました。
インタビューを読んでもらえば分かるとおり,ZIPANGは2009年丸々かけて展開していくタイトルである。そうなると東京ゲームショウ2008での発表は少々早かったのでは? と思う人もいるだろうが,当時,薬師寺氏は「2009年に発表したのでは埋もれてしまうかもしれない」と考えたそうだ。それは上記のとおり,今後新たなタイプのオンライン対応ゲームが,PCに限らずコンシューマでも続々と登場し,一般に浸透していくことを肌で感じ取っているからだろう。
時期的な関係で,残念ながら今回は具体的な話にまでは踏み込めなかったが,今後もZIPANGの情報が入り次第,随時お伝えしていくのでお楽しみに。
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