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[GDC 2011]スクウェア・エニックスの鈴木光人氏が,ニンテンドーDSおよびPlayStation 3におけるゲーム音楽の作り方を解説
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印刷2011/03/04 19:52

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[GDC 2011]スクウェア・エニックスの鈴木光人氏が,ニンテンドーDSおよびPlayStation 3におけるゲーム音楽の作り方を解説

 現在サンフランシスコで開催中のGDC 2011にて,スクウェア・エニックスの鈴木光人氏によるオーディオ解説系のセッションが行われた。

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 鈴木氏が,作曲家およびシンセサイザーオペレーターとしてスクウェア・エニックスに入社したのは約5年前のこと。それ以前は商業音楽の分野で活躍をしていた。
 スクウェア・エニックスでは,「FINAL FANTASY XIII」(以下,FFXIII)や「光の4戦士 -ファイナルファンタジー外伝-」(以下,光の4戦士),そして最近では「The 3rd Birthday」の音楽制作に参加。また,ゲーム音楽のみならず,ソロのミュージシャンとしてアルバムもリリースしている。
 そんな鈴木氏が物を作る際に最も重要だと考えているのは,「固定観念に縛られない」ことだという。その実践として,鈴木氏は即興で音楽を作り,それを効果的に配置するというような,自由な制作を心がけているとのことだ。
 リアルタイムに音楽を作っていく手法は,思いもよらぬものを生み出すことがあり,それを鈴木氏は重視しているそうである。

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 今回のセッションでは,鈴木氏が関わったFFXIIIと光の4戦士の音楽制作ついての解説が行われた。
 この二つには,ナンバリングタイトルと外伝という違いはあれど,ファイナルファンタジーシリーズという共通点がある。だが,前者はPlayStation 3用タイトル,後者はニンテンドーDS用タイトルという大きな違いもある。
 二つの作品の音楽制作は同時期に進行しており,「冠は同じだが,ハードが異なる」という部分で,頭の切り替えが難しかったとのことだ。

 ご存じのとおり,PlayStation 3とニンテンドーDSでは,音楽を鳴らすためのハードウェア環境が大きく異なっている。
 据え置き型のコンソール機は,CDなどと同じ品質の音楽を奏でることが可能になって久しい。一方,ニンテンドーDSのような携帯型ゲーム機にはまだまだ制約があり,音楽制作にも職人的ノウハウが必要になっていたりする。
 ちなみに,スクウェア・エニックス内部には,携帯型ゲーム機用の音楽を専門に手がけるスタッフがいて,その技術に日々磨きをかけているそうだ。

 鈴木氏はこうした二つの環境について,「どちらがいい」というものではないと語る。
 ニンテンドーDSは,メモリに制限があるために人の声や打楽器などを上手く使うのは難しい。しかし,MIDIデータを内蔵音源で鳴らす場合,繰り返しがラクであったり,継ぎ目なく曲をつなげられたりといった利点を持っている。
 このような特性をうまく理解して活用できれば,独特の味を持った音楽が制作可能になるそうだ。

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 光の4戦士に話を移そう。鈴木氏は,同作のゲーム画面を見せてもらったときの印象から,「古き良きRPG」というサウンドコンセプトを打ち立てたそうだ。
 当時の鈴木氏は,チップチューンに興味を持っており,機会があったらやってみようと素材を作り溜めていたという。そんなタイミングだったこともあり,その方向性で企画書を作成したところ,無事に採用されたとのこと。
 このように,「初期段階でコンセプトをしっかりと決めておくのは,とても重要なこと」だと鈴木氏はいう。

 光の4戦士のゲーム内には昼と夜の概念があり,キャラクターがフィールドを移動中,時間と共に移り変わっていく。鈴木氏は,フィールド用の曲を,昼と夜とで変化させたいと考え,「ループや切り替えが簡単である」というニンテンドーDSの音源の特徴を生かすことにしたそうだ。
 ニンテンドーDSは,16トラックを同時再生できる能力を持つ。鈴木氏はまず,昼用の曲を8トラックで制作し,合わせて,夜をイメージしてその曲をアレンジし,そちらも8トラックで制作した。そして最終データは,その二つをくっつけて合計16トラックとした。
 フィールド上ではこの曲を流すのだが,昼には昼用の8トラックのみを鳴らし,夜になったら,昼用から夜用の8トラックにクロスフェードさせる。こうすることで,昼の曲と夜の曲をなめらかに変化させているとのことだ。

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画像集#011のサムネイル/[GDC 2011]スクウェア・エニックスの鈴木光人氏が,ニンテンドーDSおよびPlayStation 3におけるゲーム音楽の作り方を解説
 一方,PlayStation 3用タイトルであるFFXIIIの音楽制作には,同時発音数などの制約はない。
 こういう環境では,いわゆる作家性が強く出やすいそうだ。そして,何でも出来るからこそ,先ほども出た「サウンドコンセプト」を明確に持っておくことが重要になるとのこと。
 そうすることで,全体を統一性のあるものにできるということだろう。

 とはいえ,何でも出来るからといって,常に力一杯音を鳴らせばいいというわけではない。例えば同じ曲でも,プロモーションムービーなどで使用する際には低音を重視するが,ゲームに実装するときには,人物のセリフとぶつかってしまうのを防ぐために低音を抑える,というような,細かな調整を行っているという。
 このような調整には,ほかの部分を担当するスタッフとしっかりとコミュニケーションを取ることが重要だそうだ。
 ちなみに鈴木氏の場合,音の調整には,アナログミキサーを多用するそうだ。その理由は,マウスを使ってソフトで変えるより,即興的に音を変えられるためだという。

 また,固定観念に縛られた,予定調和的な音楽が出来上がってしまうことを嫌う鈴木氏は,即興演奏を目的としたMac用の「cyan/n」というフリーウェアをよく使うとのことで,会場ではその実演が行われた。
 鈴木氏がcyan/nで音楽を流しながら,画面上をマウスでいろいろと操作していくと,リズムやフレーズが,さまざまな音色に変化していった。即興のいいところは,イメージとは違う「何か」が生まれる可能性があることで,そういうものが出てきたときには,とても快感だそうだ。
 実際にゲーム用の音楽を作るときには,例えばそのゲームのムービーをずっと流しっぱなしにしつつ,それを見ながらこのような即興演奏を続けていくのだという。そしてそれを録音しておいて,あとからエディットするという方法をとるのだそうだ。

 さらに鈴木氏は,ほかの部分でも「固定観念に縛られない」ため,「思いついたら,即行動」を実践しているそうだ。
 例えば,FFXIIIの楽曲制作の際,「ケチャ」がほしくなったとき,いろいろとライブラリを探したものの気に入るものを見つけられなかったそうだ。そこで鈴木氏は,なんと,自分で歌って録音したのだという。
 また,演奏者に依頼するときにも,かっちりとした楽譜を用意するのではなく,イメージや曲調だけ伝えて,あとは自由にやってもらったり,といったことをよくするという。
 鈴木氏としては,据え置き型ゲーム機のストリーム再生の場合,このようにして作り上げた,即興要素に満ちた楽曲を扱えることに,大きな魅力を感じているそうだ。

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 現在はテクノロジーの進歩のおかげで,比較的誰もが容易に音楽を作れるようになった。しかし,そんな環境があるからこそ,これからはクリエイターのアイデア,柔軟な発想が大切になるのだと鈴木氏はいう。
 「固定観念に縛られない」「思いついたら,即行動」と口で言うのは簡単だ。自由で新しい音楽を生み出せるかどうかは,それを,鈴木氏のように,本当に実行できるかどうかにかかっているのかもしれない。

画像集#018のサムネイル/[GDC 2011]スクウェア・エニックスの鈴木光人氏が,ニンテンドーDSおよびPlayStation 3におけるゲーム音楽の作り方を解説
  • 関連タイトル:

    ファイナルファンタジーXIII

  • 関連タイトル:

    光の4戦士 -ファイナルファンタジー外伝-

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