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[AGDC 08#04]著名コミック・アーティストJim Lee氏が,「DC Universe Online」でのアート制作を語る
そんなLee氏だが,近年,Sony Online Entertainmentが「DC Universe」と呼ばれるDC Comicsの総体的な版権を得て,MMOGを開発することになったのを期に,同作のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターに就任。コミックの制作作業の傍ら,Sony Online Entertainmentのオースティン支部に頻繁に足を運び,「DC Universe Online」のアート・ディレクターとして大きく関与しているようだ。
ともあれLee氏の話によると,コミックアートとゲーム開発の最も大きな違いは,アーティストのクリエイティビティが上手く生かされにくいということらしい。例えば,女性をセクシーに見せるために足を長くしてみると,3Dモデルをアニメーションしてみたときにはアートが崩れて人間らしくなくなったり,ぎこちない動作になってしまう。またコミックでは,場面によってはバットマンのマントを大きくしてシルエットを強調させてみたりということも自在にできるが,これもゲームでは表現するのが非常に難しく,「仕方なく」固定させなければならないのは歯がゆい部分だという。
自身が熱狂的な「EverQuest」ファンだったことでも知られるLee氏だが,彼は「World of Warcraft」のコミックのカバーアートも手掛けるなど,以前からゲーム業界とは何かと近しい関係にあった。ただ,ゲーム開発者と実際に仕事をしたり,ゲーム業界の仕事現場に足を運んだのは,このDC Universe Onlineが初めてのことだったらしく,作業に関わるのが新鮮に感じられるとLee氏は言う。
ゲーム開発現場のアーティストたちは,皆コミックだけでなく,映画やTV番組などを通して自分なりのイメージを築き上げているため,それを統一してひとつのゲームとして世界感をまとめ上げるのがLee氏の主な役目だ。もっとも,Lee氏がゲームアーティストたちから学んだことも少なくはないようで,「今まで足のくるぶしを内側に描いていたのが間違っていたのを教えてもらった」とジョーク交じりに語っていたのは印象的。とはいえ,すでに多くのアートで間違いを残してしまっているために,今後もくるぶしを内側に描き続けるつもりらしいが。
ちなみにDC Universe Onlineでは,スーパーマンやバットマン,ワンダーガールのような著名キャラクターとそっくりな3Dキャラクターを,プレイヤーが実際に作ってしまうことができる。髪型や顔の特徴,衣装などは自由に変更できるため,例えば“ダーク・スーパーマン”のようなキャラクターだって制作できるという。作品のコンセプトでいえば,「City of Heroes」などに近い雰囲気だろうか。
Sony Online Entertainmentは,PCとPLAYSTATION 3のプレイヤーが同時にプレイできるクロスプラットフォームを目指して開発を進めており,2009年中のリリースを予定している。Lee氏監督のもと,DC Universe Onlineがどのように描かれていくのか,氏の仕事ぶりが,本作の魅力の1つとなるは確かだろう。
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DC Universe Online
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