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ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第51回「成り上がれ,『ゴッドファーザー』に(8)」
前回は,エレクトロニック・アーツが日本でリリースした「ゴッドファーザー」(原題 The Godfather)のXbox 360版を紹介したが,今回はPlayStation 2版とPLAYSTATION 3版について。
やはりシネマゲーム研究家を名乗るからには,たとえ同じゲームであろうともマルチプラットフォーム展開されていたら,すべてを遊ばなければ気が済まないもの。基本は同じゲームなのだから,時間の浪費に終わってしまうケースも少なくないが,各機種で遊んでみて初めて見えてくるものだってあるのだ。
まず,ニューヨーク市民をつかむことができない。ゲーム内で市民をつかんで殴り殺すといった行為自体,本筋には関係のない要素ではある。もしもPS2版を最初に遊んでいたならば,さほど気にもならなかったことかもしれないが,先にXbox 360版をプレイしていただけに,ずいぶんと様変わりしたという印象を受けた。
グラフィックスに関しては,マシンスペックに大きく依存する部分なので単純に比較するのは酷だが,暴力描写に関しても,グラフィックスと同じか,あるいはそれ以上の違いがある。
例えば,焼き殺したり電気ショック死させたりしたときに,相手がもがき苦しみながら命を落としていくときの表現がカットされているほか,血の量も減っている。
あからさまな暴力描写以外でも,Xbox 360版ではスリーインワンの下着姿で踊りまくっていた売春婦が,お世辞にもおしゃれとは言い難いロングスカート姿に変更されていたのも気になった。
このほかにも,マシンスペックの問題なのだろうが,相棒を雇える仕様がなくなっているのも残念なところである。
CEROレーティングでZ指定であるにも関わらず,PS2版にはこれだけの修正が加えられていることを考えると,Xbox 360版が海外版そのままの内容で発売されたのは,奇跡に近い出来事だったのかもしれない。
ただ,前述の通りドン・エディションには,海外版の「The Godfather: The Don's Edition」に準拠した形で,新要素が盛り込まれている点は見逃せない。
ストーリーには関係ないながらも,オリジナルの新キャラクターが登場するほか,鞄を手に街中を闊歩しているやや太めのスーツ&ハット姿の男を攻撃すると5000ドル手に入ったり,店などを襲撃しているとその姿を撮り逃げするパパラッチ的な新聞記者が登場したりと,他機種版をクリア済みの人であってもプレイのモチベーションを維持できるような作品になっている。
さらには,必殺スタイルが追加されており,溺死させる必殺から銃器で殴り殺す必殺,絞殺刑具を使ってコントローラーのSIXAXIS機能で絞め殺す必殺,さらには配電盤へ叩きつけて感電死させる必殺といった要素が,新しい楽しさをもたらしてくれているのだ。
これ以外にも4名の舎弟(ソルジャー)で部隊を組み,プレイヤーキャラクターを護衛させたり,アジト(隠れ家)への移動時に電話でハイヤーを呼んで連れて行ってもらえるようになっていたりと,全般的に遊びやすくなっている。
また,海外で発売されたLimited Editionに同梱されていたメイキングDVDの映像を,日本語字幕付きで収録してくれたのもポイント。ただ,画質が……。
さて,最後に映画にも出演し,ゲームでも声の出演を果たしたロバート・デュバル氏とジェームズ・カーン氏の談話を紹介しよう。
デュバル氏は,ヴィトに育てられた優秀な弁護士であり,コルレオーネ・ファミリーの相談係,トム・ヘイゲンを演じている。
この作品において本当に残念なことは,マーロン(ブランド氏)がすべてのセリフを録音し終える前に亡くなってしまったことだろう。収録のときから声色は酷く,不完全な体調が見て取れた。急きょ,マーロンと似た声を持つBill Meilenを起用してフォローしたみたいだけど,この作品がマーロンの遺作になってしまったというのはとても悲しい。実際にマーロンが吹き込んだ声は,ゲーム内でほとんど使われていないし,ムービーシーンのフッテージは映画からの流用だしね。ゲーム会社もたいへん困ったことでしょう。
ニーノ・ロータの美しい旋律が,彼の最期にふさわしくゲーム内でも奏でられているし,ビル・コンティとアシュレイ・アーウィンという映画業界で著名な2人がゲームの音楽を作曲しているなど,素晴らしいメンバーが揃っていることを思うと,なおさらマーロンが亡くなったことが残念だ。
そうそう,ジェームズ・カーンとは「このゲームが我々の同窓会になればいいのに」なんて話していたんだけど,彼は「ソニーは料金所で殺されてしまったから,俺の出番はもうないんだ。だから続編は作らないでほしいぜ」なんて皮肉混じりに言っていたよ。アイツは年寄りになっても性格が変わらないね。
常に喧嘩上等でファミリーでもトップクラスのアグレッシブさを持つ長男,ソニー役のジェームズ・カーン氏は,弟役のアル・パチーノ氏とゲームで共演できなかった理由を語っている。
ゴッドファーザーが声優としてゲームへ登場するのなら,俺達ファミリーの結束力を見せるべく,参加するのが当然だろう! でも残念ながら,アルが参加できなかったんだが,それは彼のエージェントにも問題があったんだよ。
電話で直接話して聞いたんだけど,なんでもアルはゲームメーカー側だけじゃなく,生前のマーロンからも直々にゲームへの参加を誘われていたらしいんだ。でも,「スカーフェイス」のゲームへ独占的肖像権を数年間与えるような形でエージェントが契約しちゃっていたそうで,アルは「両作品とも自分にとってはマスターピースなので,どちらのゲームに出ることも問題なかった」と言っていたよ。ハリウッドで有名になればなるほど,本人の思惑とは外れたところで物事が動くようになるってわけだ。
しかしゲームってもんは面白いな。オレの若い頃がCGでそのまま蘇ってしまうぐらいだし。「エイリアン・ネイション」もゲーム化してくれたら,またオレがゲームに登場できるんだけどなぁ。歳食って死んじまう前に,ゲームの中で自分の分身にアクションしてもらいたいな。こんな老人になっちまったけど,声だけが若々しければセリフもOKだもんな!
ということで次回は,日本でも2009年4月に発売されたばかりの「ゴッドファーザーII」を取り上げよう。
■ドブ漬けゲームスープレックス(50)
Wii
「The House of the Dead: Overkill」(セガ)
海外では2009年2月に発売され,スマッシュヒットを記録したことで,まだまだ元気なコンテンツであることを見せつけてくれた「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド」シリーズの最新作。
ESRB認定の“Mature”タイトルが少ないWiiだが,最近のSega of Americaは「MAD WORLD」をはじめ,大人が楽しめるような作品を出してくれているのが,セガ好きとしては嬉しい限り。
で,本作はめでたく9月に日本国内でも発売されることに。手前味噌ながら,字幕監修を筆者が担当したので,一足早く日本語ローカライズ版をプレイしてみた。
ゲーム自体はおなじみの一人称視点のガンシューティングで,シリーズでおなじみのエージェント“G”が登場。2人同時プレイにも対応している。
本作で描かれているのは,シリーズ第一作の8年前。1970年代の場末感漂うアメリカの“グラインドハウス”(エロ,ホラー,バイオレンスといったメジャースタジオが手がけないインディー系映画を2本立てで上映していた映画館の総称)っぽいにおいがぷんぷん漂う,クラシカルな世界観で,R-30世代を直撃!
相棒のワシントン刑事が「F**K」なFワードを使いまくるのだが,字幕はともかく音声はそのままというのも,B級っぽさを際立たせている。
開発元のHeadstrong Games(元Kuju London)は,過去にゾンビゲーム「George Romero's City of the Dead」を開発していたところ。City of the DeadはパブリッシャのHip Gamesが倒産したことにより開発が暗礁に乗り上げ,結果的にお蔵入りしてしまった。
だが今回,ザ・ハウス・オブ・ザ・デッドの新作を受注したことで,きっとスタッフ達の溜飲も下がったのではないだろうか。
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- 関連タイトル:
ゴッドファーザー ドン・エディション
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ゴッドファーザー
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- 関連タイトル:
The Godfather II
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