連載
ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第14回「『ダークナイト』が全米大ヒット中! BATMANゲーム大解剖 その(3)」
1992年に公開された映画,バットマン・リターンズは,制作費に8000万ドルと前作の倍以上の資金が投じられたものの,興行成績も2倍止まりに終わった。前作が制作費の8倍もの興行成績を記録したことを考えると,かなりコストパフォーマンスが悪かった作品といえるだろう。やはり,内容が暗かったのが原因だろうか。
個人的には,前作よりもこちらのほうが好きな映画であり,ゲームについても思い入れが強い。
筆者が最初に触れたバットマン・リターンズのゲームは,SEGA of Americaが映画公開と同時期にリリースした,コンシューマゲーム機版だ。ちょうど,秋葉原のメッセサンオーが洋ゲーコーナーを充実させ始めた頃だったので,筆者は輸入品のGENESIS版が同店に入荷されるやいなや購入し,早速プレイ。
映画は暗い内容で救いのない物語だったが,ゲームも変わらず。それどころか,GENESIS版に至っては画面の暗さで敵が見えにくかったり,体力ゲージが見にくかったりといった問題があり,なんとも不条理な死が頻発。また,グラフィックスのクオリティ自体は高いものの,キャラクターと背景からティム・バートン監督らしい“不気味な可愛さ”が感じられなかったのは,けっこう残念なポイントだった。
そんな具合で消化不良感の残るまま,またしてもメッセサンオーに足を運ぶと,SEGA MASTER SYSTEM版とGAME GEAR版を発見。即座に同時に購入した。もちろんこれらも海外版だ。が,正直なところ買い物としては大失敗。なんせ,この二つ,グラフィックスの差こそあれど,中身はほとんど一緒だったのだ。確認をしなかった筆者が悪いので仕方ないのだが……。
その内容は,てっきりGENESIS版を「タイニーゼビウス」化したようなものだと思っていたのだが,実際には「タイニーゼビウスmkII」ぐらいにがんばっていた。GENESIS版にはない「バイオニックコマンドー」のようなワイヤームーブが盛り込まれるなど,随所にオリジナリティが込められていたのである。SEGAらしい色彩感が隅々まで行き届いたグラフィックスや,古代祐三氏が手がけたBGMなども好印象で,個人的にはGENESIS版よりも気に入ったものである。
SEGA MASTER SYSTEM版 |
GAME GEAR版 |
さてLYNX版だが,グラフィックスの描き込みはなかなかのものではあったが,格別の難しさ。どうやっても後半へ進むことができなかった。奥行きのない横軸移動だけのアクションゲームなのだが,アクションゲームが上手いとか下手とかそういうレベルの問題ではない。
実はこれ,ATARIが自社で版権を獲得して開発したゲームであったため,SEGA版とは何から何まで異なっており,ついでにゲームレベルのハードルもグンと上がっていたのである。画面が狭く感じられ,妙に遊びにくいのはLYNXのハードそのものに原因があるわけで……うん。
ちなみにスーパーファミコン版は,9種類発売されたバットマン・リターンズのゲームの中で,最も高い完成度を誇る作品である。映画と同じようなデモのカットインは素晴らしいし,「ファイナルファイト」タイプのベルトスクロールアクションも遊びやすい。
ゲームの難度を変更すると,エンディングが変わるというスタイルにも驚かされた。すべてのエンディングを目にするために,繰り返し遊びたくなるという粋な計らいだ。
筆者の記憶が正しければマニアモードが最高難度。3面か4面に出てくるキャットウーマンには,かなり手こずらされた。しかしこのモードでラスボスのペンギンを倒し,エンディングを迎えると「オマエは本当のダークナイトだ」というようなメッセージが表示され,それまでの苦労がすべて報われたような気分になったものである。
ロサンゼルスでソフトを購入したはいいが,NES本体が手元にはなかったため,カルバーシティに住んでいた友人宅に無理矢理上がり込み,テレビとNESを借りてプレイ。
スーパーファミコン版に比べて難度が低く,少々拍子抜けしたものの,ストーリーはたっぷり堪能できたほか,パスワードによるコンティニューにも対応していたりと,開発陣の着実な仕事ぶりに感服。これが日本で発売されなかったのは,少々残念ではある。が,ゲーム市場はスーパーファミコンが席巻していた時期なので,それも仕方のないところか。
その後,ロサンゼルスから帰国するときに空港近辺の大型ショッピングストアでお土産を物色していると,PC売り場で目に飛び込んできたのがまたもやバットマン・リターンズのゲーム。これはもう,呪いのようなものだろうか……。
売り場では,DOS版とAmiga版(どちらもKONAMIが発売)が売られていたのだが,パッケージはまったく一緒。どちらを買うべきか迷っていると,「映画版権のゲームを研究しているのに躊躇するとは何事だ!」という神の言葉が聞こえたような気がし,勢いに任せて両方購入。
続いて玩具売り場に足を運んでみると,今度はSEGA CD版を発見。なんて運命的なんだろう……なんて感慨に浸る余裕もお金もない。DOS版とAmiga版の両方を買ってしまったため,財布には50ドルしか残っていない。ここでSEGA CD版を買ってしまったら,お土産を買えなくなってしまう。DOS版とAmiga版を抱えつつ,しばし後悔しながらも,「どうせGENESIS版のメディアをROMカートリッジからCD-ROMに変えただけだろう。音質が良くなっただけだろう。もともとそんなにいい出来のゲームではないし」と自分に言い聞かせてスルー。
ところが,帰国してからDOS版とAmiga版をプレイしていると,とんでもない事実が判明したのだった……。というところで,続きはまた次回。
ドブ漬けゲームスープレックス(14)
Xbox360
「バトルフィールド バッドカンパニー」(エレクトロニック・アーツ)
世界中でオンライン対戦が盛り上がっている本作。このシリーズはオンラインのマルチプレイが中心だったのに,今回はシングルモードにも力が入っている。とりあえずシングルモードからプレイしてみたのだが,さほど難しくもなくオンラインへ参戦するためのチュートリアル的な雰囲気の漂う展開。はぐれ者な4人の軍人達が,チームを組んでミッションをこなしていくサマはなんとも痛快だ。
いかにも血の気の多いアメリカンが好きそうなFPSではあるが,今作から採用された新エンジン“Frostbite”が細かで綺麗なグラフィックスを楽しませてくれる。
マルチプレイは,シングルモード同様に4人のチームを組んでいくのだが,言語の異なる見知らぬ者とチームを組むとかなりたいへんなことになることが判明。戦車やヘリコプターに乗ると運転手と機銃手の二手に分かれるのだが,ここでボイスチャットをしても言葉が通じないと水と油状態。結果,瞬く間に敵に撃破されることもしばしば。だが,知り合いや仲の良い者同士で4人のチームを組んでボイスチャットをしながらマルチプレイをすると,面白さは段違い。二人ずつのペアに分かれて最前線に向かっていけば,乗り物に乗るときなどに便利なのでオススメだ。
また,援護兵として救急パックを使いまくり,自分や味方兵を回復させるだけでもスコアポイントを稼げる。援護兵はさらに,ロックオンで遠距離攻撃可能なGPS送信機や,戦車やヘリコプターなどの車両修理が可能な道具も備えているので,マルチプレイに慣れないうちはこれでゲームに親しんでおくといいかもしれない。
「バトルフィールド バッドカンパニー」公式サイト
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