プレイレポート
PC版「バイオハザード5」はGeForce 3D Visionにネイティブ対応。“奥行き”感のある新鮮な映像でプレイできた先行体験会レポートを掲載
今回は,試遊の前に「バイオハザード5」プロデューサーの竹内 潤氏/川田将央氏,そしてNVIDIA日本オフィスのショーン・ボナム氏からそれぞれプレゼンテーションが行われ,PC版の特徴や,本作が対応する「GeForce 3D Vision」についての説明も行われている。PLAYSTATION 3 / Xbox 360版と何が違うのか,7月16日のニュースよりさらに突っ込んだ詳細が明らかにされたので,その内容を,プレイレポートと共にお伝えしよう。
カプコンは,PLAYSTATION 3,Xbox 360そしてPCに対応したゲームエンジン「MT Framework」で開発された「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(PC版 / PLAYSTATION 3版 / Xbox 360版)「ロスト プラネット コロニーズ」(PC版 / Xbox 360版)「デビル メイ クライ 4」(PC版 / PLAYSTATION 3版 / Xbox 360版)などのタイトルをリリースしてきた。
この遅れについて竹内氏は,「ただマルチプラットフォームで提供するのではなく,各プラットフォームに合わせた特徴を入れたい」ということが背景にあったためだと説明する。
ではどのあたりが違うのかというと,まず竹内氏はPCならではの高解像度/高フレームレートを挙げた。コンシューマ版ではフルHDサイズの解像度では30fpsでいっぱいいっぱいのところを,PC版ではスペックさえ十分なら,より解像度が高くより滑らかな動きでプレイできると説明した。
PC版は,システム面で後述するGeForce 3D Vision対応ということで「眼鏡」がキーワードだが,それに併せて(?),クリスとシェバのコスチュームも眼鏡がキーワードだ。
まずクリスは,ティアドロップ型レンズのレイバン風サングラスをかけ,オールバックでブラックの髪色とかなりのイメージチェンジ。それに併せて,コスチュームも大胆に肌を露出させてトゲトゲがアクセントの「マッ○マックスとか世紀末救世主伝説とかに出てくる人のイメージ」(竹内氏談)になっている(ちなみに竹内氏は,クリスのコスチュームが海外ではそっち系の人からの評判が非常に高かったとも述べていた)。
シェバについては,見た目どおりオフィスなレディのコスチューム+セルロイドっぽいフレームの眼鏡対応と,こちらも好きな人にはたまらないコンビネーション。
今回の試遊はGeForce 3D Visionの立体視体験がメインだったが,PC版のオリジナル要素も確認できる状態だった。詳しくは後述するが,スペシャルコスチュームでプレイした印象をひとまずお伝えしておこう。
カメラで画面を直接撮影するのはNGだったので写真がなく申し訳ないが,コスチュームは細かい部分までこだわって作られていると感じられた。
たとえば,シェバのインカムは耳かけ式からカナル型イヤホン+咽喉式マイクに変わっていて,走るとどこかとは言わないがちゃんと揺れる(揺れるのはコンシューマ版にもある要素だが)。
また,コンシューマ版やほかのコスチュームでどうだったかは記憶があいまいで恐縮だが,スカート姿だとイベントシーンでひざを閉じてしゃがむといった,細かい仕草が非常に印象に残った。筆者は女性(の特定部分)を見る目は確かなはずなので,話半分程度には期待してもいいかもしれない……勘違いだったらごめんなさい。
なお筆者は,男を見る目はあまり持ち合わせていないので,クリスがスペシャルコスチュームに着替えると,シリアスなシーンもコメディに見えてくるということくらいしか覚えていない。
PC版では,一人用の「SOLO」と二人用の「DUO」に加え,「UNLIMITED」モードが追加される。UNLIMITEDモードは一人用で,「圧倒的な数の敵が登場する」のが特徴。竹内氏によればその数はコンシューマ版の「およそ2〜3倍」とのこと。また竹内氏は,「PC版では高いフレームレートが出せるので,それに合わせてゲームプレイのほうも過激にしていこう」という意図で追加されたモードだと述べた。
ここで川田氏による「集会場」ステージのデモプレイも行われたが,滑らかな動きのマジニ達がうじゃうじゃ出てくる。コンボはつなぎやすそうだが弾切れになるんじゃないかと,見ているだけで心配になったほど。また,多数の敵が出現した状態でもフレームレートが落ちるようなことなしに動作しており,確かにPC版ならではのモードといえそうだ。
「バイオハザード5」では,「プログラムネイティブの部分からGeForce 3D Visionに対応している」と竹内氏は述べていた。具体的には,GeForce 3D Visionを用いたときのオブジェクトの配置(深度,距離)を全体にわたって調節しているという。当初から3D Visionに対応することを念頭に開発されたゲームタイトルは,おそらく本作が初であろう。
3D Visionを採用した理由について竹内氏は「『バイオハザード5』は当社のフラッグシップタイトル。だから生半可な技術は採用したくない。NVIDIAさんからGeForce 3D Visionを見せていただき,これは採用に足る技術であると確信した」と語った。さらに「『バイオハザード5』とGeForce 3D Visionの相性はとてもいい」と何度も竹内氏は強調していた。
120Hz(倍速)表示が可能な液晶ディスプレイなら
機種を問わずGeForce 3D Visionを利用可能
ボナム氏によると立体視の仕組み自体は「5〜6年前からドライバに入っていた」のだという。ただ,当時はディスプレイが立体視に適していなかったため,ドライバの中で“眠っている”状態になっていたという。
しかし,120Hz(倍速)表示が可能なPC用液晶ディスプレイや倍速表示対応の液晶テレビが登場してきたことで,「リビングルームでも3Dコンテンツが楽しめる状況になりつつある」とGeForce 3D Visionのための環境が整い始めていると述べた。
そのうえでボナム氏は,GeForce 3D Vision対応タイトルを楽しむためには,120Hz表示が可能なディスプレイとGeForce 8シリーズ以降のNVIDIA製GPU,そして3Dメガネがあればよく,「環境を整えるのは非常に簡単」とアピールした。
なおGeForce 3D Visionは,ネイティブレベルでの対応は「バイオハザード5」が初となるが,ドライバレベルでの対応ゲームは約400タイトルあるとのことだ。
プレゼンテーションでボナム氏は,「120Hzの表示が可能な機種であればGeForce 3D Visionが楽しめる」と述べていた。仕組み的には特別なディスプレイは必要ないようだが,現状120Hz対応のディスプレイは数えるほどしかなく,多くのユーザーにとって事実上は買い替えが必要である。“環境が整い始めている”というのはやや時期尚早にも感じられる。
ちなみに,PC側に接続する受信機と3Dメガネがセットになったパッケージに加え,多人数プレイなど2台目以降の3Dメガネはより安価に導入できるよう,3Dメガネのみの販売も行われるとのこと。
ちなみに,ゲーム以外のGeForce 3D Vision対応コンテンツとしては,富士フイルムが8月にリリースする3Dデジタルカメラ「FinePix REAL 3D W1」に対応した「3Dフォトビューア」というソフトウェアの公開が予定されていることを明らかにしていた。富士フイルムと共同で開発を進めているそうで,このソフトも近々に利用できるようになるという。
さらに,仕様策定が進められているBlu-ray 3D規格への対応も進めており,近いうちに何らかの発表ができるだろうともボナム氏は述べていた。
今回のプレゼンから分かるように(というより以前からではあるが),NVIDIAはGeForce 3D Visionの普及にかなり力を入れている。その普及にはコンテンツの充実が欠かせないのは確実で,今回発表された「バイオハザード5」はネイティブ対応するという点で,その出来がGeForce 3D Visionの将来をも大きく左右する存在になりそうだ。本作で実現される3D立体視環境には要注目といったところだろう。
コンシューマ版をプレイした人も体験の価値あり
GeForce 3D Visionは予想以上の立体感を実現
ゲーム内容については,当たり前といえば当たり前だが,コンシューマ版とほぼ同じ。4Gamerではレビュー記事を掲載しているので,ゲームの内容については「こちら」を参照してほしい。
PC版最大の注目要素とされているGeForce 3D Visionについては,予想以上に“奥行き感”が再現されていると感じられた。……筆者のつたない文章でこれを表現するのは非常に難しいのだが,3Dメガネをかけていれば,ディスプレイに映っているものが平面ではなく,奥行きのあるものに感じられる。
ステレオグラムのように,目の焦点を意図的にずらして写真などの二次元画像を三次元的に認識する,交差法/平行法といった裸眼立体視のテクニックがあるが,見え方としてはそれに近い感覚だ。
「バイオハザード5」のゲーム内映像は3Dのモデリングで描かれているが,映像は最終的に2Dのディスプレイに出力されるため,“奥行き”の表現には限界がある。GeForce 3D Visionを使うことで,“フラット”な映像に(それでも十分リアルなのだが)奥行き感が加わって,より“3D”に近づいているわけだ。
いくつかのチャプターをプレイしてみて,竹内氏がプレゼンテーションで,「バイオハザード5」とGeForce 3D Visionの相性はいいとコメントしていた理由が分かった。登場するキャラクター達やクリーチャー,銃器や自動車などのオブジェクトは,通常の画面でプレイしたときよりもさらに臨場感あふれるものになっている。
もう一つ,竹内プロデューサーからオススメされたのが,ゲーム内に登場するキャラクターなどの“フィギュア”の閲覧。こちらは深度の設定がゲーム本編と違うのか,ディスプレイから“飛び出して”見えるほど。シェバやらエクセラやらをじっくり堪能させてもらったのだが,コンシューマ版よりも台座の存在が憎らしく感じられた。ゲームとしては“オマケ”的な要素が,見え方一つでまったく印象が変わったのは驚きだった。
ゲーム本編をプレイして気になったのは,たとえば字幕のように“奥行き”がある必要がない部分だ。立体感が強くなる半面,文字が浮いて見えるのはちょっと違和感があった。感覚は人それぞれかもしれないが,映像と重ならない部分に表示してもらいたいように思えた。
Co-opモードは,オフラインでの一人プレイ,インターネットに接続したオンライン/PC同士をLAN接続して行う2人協力プレイが可能だ。コンシューマ版にあった,画面分割による2人同時プレイモードは見当たらなかった。
なおオンラインCo-opは,Xbox 360やPLAYSTATION 3などコンシューマ版プレイヤーと一緒に遊ぶことはできず,PC版のプレイヤー同士に限られる。
操作方法については,ゲームパッド(Xbox 360 Controller for Windows推奨)でのプレイのほか,キーボード+マウスでの操作にも対応。コントローラに割り当てられているアクションがすべてキーボード/マウスに割り当てられる形だが,キーアサインはすべてカスタマイズ可能。ちなみにコンシューマ版では武器の切り替えを十字ボタンで行えるショートカット機能が存在したが,PC版ではアイテムスロット9個すべてにショートカットを割り当てることが可能だ。
最後に画面表示設定について。時間があまりなかったので設定項目の詳細までは確認できなかったが,「PC SETTING」では以下の項目を設定可能だったのを確認した。4Gamerのベンチマークレギュレーションでも解説しているので,興味のある人は目をとおしてほしい。
・スクリーン解像度
・画面モード(フルスクリーン/ウィンドウ)
・ディスプレイ周波数
・垂直同期
・フレームレート(可変/固定など選べる模様)
・アンチエイリアス
・モーションブラー
・影品質
・テクスチャ品質
・画面クオリティ
コンシューマ版でもここまでできるのかというほどCGクオリティの高かった「バイオハザード5」。PC版のゲーム内容はコンシューマ版とほとんど同じなので,プレイ済みの人にとっては,オリジナル要素にどれだけ魅力を感じられるかがポイントになるだろう。
PC版ではPCのスペックが十分なら,さらにリッチな映像で楽しめる。また,追加投資が必要ではあるが,映像に奥行き感が加わるGeForce 3D Visionも面白い取り組みといえる。
さすがにカプコンの人気シリーズだけあり,本作は本編のボリュームはもちろん,クリア後のお楽しみ要素もたっぷり詰め込まれている。アクションゲームやホラーが苦手な人でなければ,長く楽しめるはずだ。コンシューマ版に触れる機会のなかったPCゲーマーにはとくにオススメしたい。
- 関連タイトル:
バイオハザード5
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