テストレポート
「Tegra Note 7」はゲーム用Androidタブレット端末として買いか? その実力を定番ベンチマークテストで検証
日本で販売されるZOTAC In
本稿では,じっくり触ったTegra Note 7のファーストインプレッションと,筆者によるテストレポートではお馴染みのベンチマークテストの結果をレポートしたい。なお,技術解説を含む詳報は,こちらの記事を参照してほしい。
NVIDIA,Tegra 4搭載の7インチAndroidタブレット「Tegra Note 7」を発表。その特徴を写真とムービーでチェックしてみた
デザインはごく一般的なタブレットだが
ステレオスピーカーは目を引く特徴だ
詳報と重なる部分もあるが,外観についての印象を簡単に述べておこう。Tegra Note 7は,デザイン的にはごく普通のタブレット端末で,側面から背面にかけて丸みを帯びたラウンドフォルムの形状を採用している。
本体前面には7インチサイズで解像度1280×800ドットのIPS液晶パネルを搭載。パネル周囲のベゼル部分には,インカメラや環境光センサーがあるといったレイアウトも一般的なタブレット端末と変わらない。
Tegra Note 7の前面(左)と背面(右)。前面左右端にあるスピーカーが目立つものの,全体的にはごく普通のタブレットだ |
本体サイズは190(W)×120(D)×9.4(H)mmで,重量は約320g。Google「Nexus 7(2013)」のWi-Fiモデルよりも,30gほど重い。手に持って確かめたところ重心はほぼ中央にある感触で,一般的な持ち方で試した限り,縦位置と横位置どちらにしてもどこかがアンバランスに重いと感じることはなかった。
最近ではステレオスピーカーを搭載するタブレット端末もちらほら見かけるようになったが,Tegra Note 7ほど内蔵スピーカーに力を入れた製品はまれだろう。ゲームを楽しむには音も重要なファクターであり,ここを差別化要因として打ち出してきたのは,いかにもNVIDIAらしいといえそうだ。
Tegra 4を除けばスペックは控えめ
次にスペックを確認してみよう。Tegra Note 7が採用するSoC(System-on-a-Chip)は,NVIDIA製の「Tegra 4」だ。メインメモリ容量は1GBで,内蔵ストレージ容量は16GBと,どちらもやや少なめではある。本体にはmicroSDカードスロットを備えており,最大32GBのmicroSDHCカードに対応するので,ストレージに関して心配する必要があまりないのは救いか。
Tegraシリーズに最適化されたゲームを集めたポータルアプリ「Tegra Zone」を見ると,Tegraに最適化されたゲームは順調に増えているようだ。携帯ゲーム機としてTegra Note 7を導入するというのも,悪くない選択肢に思える。
無線通信機能としては,IEEE 802.11g/n対応の無線LAN機能と,Bluetooth 4.0に対応する。IEEE 802.11a/acに対応していない点は少し残念だ。
また,Tegra 4自体がUSB 3.0に対応するにも関わらず,Tegra Note 7のUSB Micro-B端子は,USB 2.0対応までというのももったいない。価格のことを思えば致し方ないところか。
ただし撮像素子の画素数は普通でも,Tegra Note 7は撮影機能として,タイムラグなしでHDR写真を撮影できる「Always-On HDR」といった,今までのタブレット端末にはない特徴を備えている。Always-On HDRは12月中に提供予定のアップデートで有効化されるとのことで,残念ながら今試すことはできないのだが,見落としてはいけないポイントであろう。
内蔵バッテリー容量は4100mAhとのことで,Nexus 7(2013)よりはわずかに多い程度だ。バッテリー駆動時間は「HDピデオ再生で約10時間」とスペック表には書かれており,こちらもごく一般的なレベルといえようか。むしろ気になるのは,「ゲームをプレイした場合のバッテリー駆動時間」なのだが,さすがに数字はないので,発売後に実機で試してみるほかない。
Tegra Note 7のスペックを俯瞰するに,液晶パネルの解像度をはじめ,メインメモリやストレージの容量,インタフェース類の点などで,けっしてハイスペックな製品とは言い難いことが分かる。しかし価格のことを思い出してほしい。削れるところは削るかわりに,Tegra 4や内蔵スピーカー,スタイラスといった特徴にコストをかけたのがTegra Note 7であり,強みを打ち出せるところに特化して既存のタブレット端末に対する差別化を図るというのは,間違った戦略ではないと思う。
定番ベンチマークテストで実力を検証
さて,それではお待ちかねのベンチマークテストによる実力検証に進もう……という前に,ソフトウェア面で説明しておくべき点がある。
詳報でも触れているが,Tegra Note 7では設定項目の中に,「プロセッサ」というNVIDIA独自の追加設定が用意されているのだ。プロセッサの設定には,「パフォーマンス最大化」「バランス」「バッテリ節電」という3種類のプリセットがあり,それぞれで最大CPUコア数や動作クロック制限,アプリケーションのフレームレート(FPS)制限などが異なる。つまり,どれを選ぶかでベンチマークテストの成績も変わる可能性があるということだ。
アプリを使ったベンチマークテストは,定番の「3DMark」によるグラフィックス性能テストと,連射測定アプリ「ぺしぺしIkina」による液晶パネルの連打に対する応答性計測の2種類を実施した。
まず3DMarkから見ていこう。標準プリセットであるIce Stormは,Tegra 4では測定限界である「Maxed out!」に達して役に立たないことが,東芝製Androidタブレット「REGZA Tablet AT703」やSurface 2のテストで判明しているので,今回は負荷の高いIce Storm Extremeでの計測に限定している。
その代わりというわけではないが,先述したプロセッサ設定を変更して,スコアの変動をチェックしてみた。下のグラフ1が計測結果である。プロセッサの設定をパフォーマンス最大化,バランス,バッテリ節電と切り替えて,それぞれでIce Storm Extremeを計測したものだ。なお,何度か測定してみたがスコアのぶれはごくわずかだったので,1回分の結果を採用している。
見てのとおり,Ice Storm Extremeでも,パフォーマンス最大化とバランスでは測定限界に達してしまった。最大CPUコア数が「2」で,FPS制限が「30」となるバッテリ節電のみ,6631という数字が見えている。Surface 2は,Ice Storm Extremeのスコアが9633だったので,Tegra Note 7をバランス以上の設定で動かすと,そのグラフィックス性能はSurface 2を超えてきそうだ。
次のグラフ2は,各テストにおける平均フレームレートを比較したものだ。Graphics Test 1では,パフォーマンス最大化とバランスは60fpsに近い数字で安定している。パフォーマンス最大化のスコアがバランスのそれとほぼ同じということは,この2項目は3DMarkにおいて,性能差がないといえそうだ。
一方,バッテリ節電のGraphics Test 1が30fpsという結果となっているのは,プロセッサの設定によってアプリのFPS制限が「30」に固定されているため,上限に達してしまったのだろう。
これらのテスト結果を見るに,大抵のゲームはバランスのままで十分に遊べるといえるだろう。バッテリ節電はFPS制限が気になるものの,スコア自体は2012年モデルのタブレットを凌駕するレベルなので,それほどグラフィックス性能を要求しないゲームならこちらに設定しておくことで,バッテリー駆動でも長時間プレイできそうだ。
それにしても,こうした数字を見せてSoCの電力管理をユーザーの手で行えるようにするというのは,なんとなくNVIDIAらしいアプローチだなと思う。だが,PCで細かいグラフィックス設定を詰めていくことに慣れているようなユーザーなら,もっとチャレンジングな設定も試したくなるのではないだろうか。ユーザーからの要望が多ければ対応される可能性もあるので,とりあえず筆者は体験会の場で,NVIDIAスタッフにお願いしておいた。
次に「ぺしぺしIkina」の結果を見てみる。手順はいつもどおりで,連射回数が93〜96になるようにタップしてスコアを見るというものだ。連射の途中で処理の飽和が起きると,解放までの間,カウントが止まるため,連射中心のゲームに対する応答性が分かる。これも3つのプロセッサ設定ごとに,変化があるかどうかを確認してみた。
結果からいえば,バッテリ節電が最も高い「87」という結果となった。テスト中は断続的に飽和らしきものを確認したのだが,連射自体はきちんとカウントされていたことになる。
これは推測になるが,上限30fpsというアプリのFPS制限によってタップが描画に反映されていなかっただけで,内部的にはきちんと処理を継続していたのではないかと思われる。描画が頭打ちになった分だけ,SoC内部はむしろ余裕があり,スコアが高くなったのではないだろうか。
そう考えると,FPS制限が60fpsのバランスでスコアが悪いのは,描画が頭打ちになることがなかったためかもしれない。
ちなみに,パフォーマンス最大化時のレスポンスは,バランスやバッテリ節電を選んだときよりもよく,とくに連射スタートからの立ち上がりがとてもスムーズだった。この感触も加味すると,連射に対する反応を重視するゲームであれば,バッテリ節電に設定すると安定した結果を得られるだろう。一方で,連射の反応とフレームレートのどちらも重視するという場合は,パフォーマンス最大化に設定するのがよさそうだ。
最後に,Androidの「開発者オプション」を利用して,ドラッグ処理に対する応答性を検証してみた。これは「開発者オプション」にある「ポインタの位置」を利用するもので,シングルタッチと5点マルチタッチで1分間ドラッグ操作をし続けて,処理が途切れることがないかを確かめるというテストだ。
下に並べた2枚の画像がその結果で,青い線が指の動きを示している。どちらも指の動きを取りこぼしたり,途中でドラッグが解除されることはなかった。全体的にみて,指の位置をきれいに検出できているのが分かる。
左がシングルタッチ,右が5点マルチタッチでのドラッグテスト結果(※クリックすると拡大します)。どちらも取りこぼしらしいものはなく,きれいに位置を検出し続けた |
タブレットやスマートフォンのゲームでは,画面上を長い間ドラッグし続けるような操作をすることが多いもの。Tegra Note 7であれば,入力にしくじる可能性がきわめて低いといえ,こうした点でもゲーム機としての素性の良さがうかがえるというものだ。
解像度の低さは気になるが,ゲーマー向けタブレットとしての仕上がりは上々
Tegra Note 7のスペックを眺めてみると,「解像度の低さが気になる」という人が少なくないかもしれない。7インチ級の対抗馬であるNexus 7(2013)が,解像度1200×1920ドットという高精細液晶パネルを採用しつつ,最も低価格なモデルで2万7800円(税込)という価格であることを考えれば,Tegra Note 7にも,高精細なパネルが欲しかったというのは正直なところだ。
しかし,SoCの性能と価格を思えば,その魅力は損なわれていないと筆者は考える。SoC以外のスペック面で多少の妥協は必要かもしれないが,NVIDIAがこだわったステレオスピーカーという大きなポイントもあるので,「手頃な価格で,最新のAndroidゲームを快適にプレイできるタブレットがほしい」という人にとっては,購入を検討するに値する製品だ。
ゲーム用のAndroid端末といえば,携帯ゲーム機型の「SHIELD」が日本で発売されるのを待っている人がいるかもしれない。だが,今のところ日本でいつ発売されるのか見当もつかない状況だ。であるならば,SHIELDの代わりにTegra Note 7を買ってしまうというのも,悪くない選択だといえるだろう。
●Tegra Note 7の主なスペック
- サイズ:190(W)×120(D)×9.4(H)mm
- 重量:約320g
- OS:Android 4.2(Jelly Bean)
- プロセッサ:NVIDIA「Tegra 4」,動作クロック1.8GHz
- ディスプレイ仕様:7インチ液晶パネル
- ディスプレイ解像度:1280×800ドット
- メインメモリ容量:1GB
- ストレージ容量:内蔵16GB
- 3G/LTE通信:なし
- 無線LAN:IEEE 802.11g/n
- Bluetooth:4.0 搭載
- NFC:なし
- センサー類:GPS,加速度,コンパス,環境光,ジャイロ
- 外側カメラ:500万画素
- 内側カメラ:30万画素
- バッテリー:4100mAh,HDビデオ再生時で最長10時間駆動
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