テストレポート
BIOSTARのゲーマー&オーバークロッカー向けマザー「TPower I45」,その“ゲーマー向け度合い”をチェックする
さて,4Gamer.netでマザーボード単体を深く掘り下げて紹介するのは珍しいが,のっけからネガティブな話をしておくと,“ゲーマーおよびオーバークロッカ−向け”とされるマザーボードが,100%ゲーマーのほうを向いた機能を搭載していることはまずない。オーバークロック機能が豊富だったり,オーバークロック時の安定性に振ったマザーボードデザインを以て「オーバークロックして高い性能を発揮できる→高い性能を求めるゲーマーにも向く」と主張していることがほとんどであり,結論からいうと,TPower I45も,そんな製品の一つである。
だが同時に,TPower I45におけるオーバークロッカ−向けと思われる要素が,ゲーム用途でメリットを生みそうなのもまた確かである。まずは,写真を中心に,スペックを概観してみよう。
標準オプションのVRM用クーラーが特徴
全体的な印象はabit風!?
今回BIOSTARから借用したTPower I45はボードリビジョン5.0だが,ゲーマーとして注目すべき外観上の大きな特徴はざっと以下のとおり。2.や3.あたりは,どことなくUniversal abit製マザーボードを思わせる仕様だ。
- 搭載するコンデンサがすべて日本メーカー製のものであること
- ノースブリッジ(MCH)とVRMのヒートシンクがヒートパイプでつながり,さらに後者には標準添付のアクティブクーラー「Cooler Harbor」を取り付け可能であること
- I/Oインタフェース部に排気孔が設けられていること
- 8レーン×2による2-way ATI CrossFireXをサポートすること
高負荷への安定度は高め
ファンのうるさいCooler Harbor,冷却効果はある
ゲーム用途で最も重要な安定性,とくに,フルロード時の安定性をチェックしてみよう。今回は,PCに高負荷をかける「Prime95」(Version 25.6 build 6)の「Torture Test」ブレンドモードを実行し,並行して「3DMark06 Build 1.1.0」の「Feature Test」にある「Pixel Shader」を連続実行する。つまり,CPUとGPUの両方に高い負荷をかけ,安定性と温度をチェックしようというわけだ。
テスト環境は表1のとおりで,一般的なスチール製のミドルタワーPCケースにシステムを入れてある。テスト時の室温は25℃だ。
その結果をまとめたのが表2,表3だが,VRMヒートシンク部の温度はさすがに低め。Cooler Harbor標準搭載のファンは70mm角,ファン回転数4000rpmで,お世辞にも「静か」とはいえない動作音だが,さすがにそれだけの冷却効果はあるようだ。なお,テスト中の異常はまったく生じなかった。
せっかくなのでオーバークロックも試す
オーバークロック周りの機能は充実
ところで,海外のPC系ニュースサイトをマメにチェックしている人や,オーバークロックファンであれば,BIOSTARが「TPower I45が,FSBオーバークロックの世界記録を更新した」と発表したことを記憶しているかもしれない。BIOSTARは,「CPU-Z Validation Database」に登録されたデータを以て,「Intelプラットフォームのマザーボードとして,初めてFSB 725MHzを達成した」(※正確なFSBクロックは724.89MHz)と謳っている。
オーバークロックを試行するときに付きものなのが,「マザーボードの沈黙」だ。電源は入るのだが,BIOSが“上がってこない”ため,画面表示がなされないというアレである。一般的なマザーボードの場合,オーバークロック設定に失敗して起動できなくなった場合,CMOSをクリアしたり,ボタン電池を抜いたりといった面倒な手順を踏む必要があるのに対し,TPower I45では,「起動に失敗した場合,何度か試行し,それでもダメだったときはデフォルト設定に戻して起動する」機能「Over Clock Retry Count」が用意されている。CMOSクリアなどを行うことなく,ガンガンと試していくことが可能になっているわけだ。
なおTPower I45には,Windows上からオーバークロックを試したりできるソフトウェアツール「Tpower2」も用意されているのだが,正直アプリケーションの反応が遅く,正直かなり使いにくい。ユーザーインタフェースもよくない意味で“いかにも”であり,これを使うのはオススメしづらい。
せっかくなので「Core 2 Duo E7200/2.53GHz」を利用し,一般的なPC2-6400 DDR2 SDRAMと組み合わせて,リファレンスCPUクーラー装着という条件で試してみたところ,別のマザーボードではベースクロック350MHz程度が限界だった同個体で,ベースクロック400MHz(FSBクロック1600MHz)での3DMark06完走が可能だった(※CPU電圧+0.200V,チップセット電圧およびFSB電圧+0.100V)。テスト環境は先ほど示した表2,テスト結果は下に示したとおり。いわゆるオーバークロックメモリを利用すれば,もう少し上も狙えそうな気配である。
※注意
オーバークロックはメーカーやショップの保証外となる行為であり,オーバークロック設定の結果,CPUやPCに深刻なダメージを負ったとしても,すべては実行した人の自己責任となります。今回の記事を参考にオーバークロックを試みた結果,何か問題が発生したとしても,BIOSTARやIntel,販売店はもちろん,筆者および4Gamer編集部も一切の責任を負いません。
ゲーム用途では非常に無難
80点を与えられる総合力
まとめると,ゲーマーにとって大いにポイントとなる部分は
- マザーボード自体の安定感は高く,Cooler Harborを利用した冷却機構の効果も高い
- ATI CrossFireXの利用にジャンパ変更が必要なのは面倒
- BIOSTARのいうとおり,CPUオーバークロック性能は高そう
- 2008年7月下旬時点の相場と比較するに,実勢価格は妥当
点数を付けるとしたら,80点。「優」を与えられるマザーボードだ。派手さはないが,安定したゲーム環境を求める自作派ゲーマーには,大いに意味のある存在といえる。
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Intel 4
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