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  • 発表日:2008/03/03
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Atom+GeForce 9300M GSの実力を探る。10万円のN10Jは「どこでもPCゲーム」を実現できるのか?
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印刷2008/10/17 14:25

テストレポート

Atom+GeForce 9300M GSの実力を探る。10万円のN10Jは「どこでもPCゲーム」を実現できるのか?

N10J
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ASUSサポートセンター
TEL:0800-123-2787(通話料無料)
予想実売価格:9万9800円前後
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 2008年夏以降,市場で大きな注目を集めているNetbookは,いずれも「Atom」プロセッサとIntelのグラフィックス機能統合型チップセットが組み合わされている。Windows XPを搭載したNetbookで,インターネットに接続して,Webブラウジングやメールのやりとりを行うだけなら,3D性能はほとんど必要ないからだ。

 そんななか,Atomを搭載する「一般のノートPC」として発表されたのが,ASUSTeK Computer(以下,ASUS)の「N10J」である。2008年9月19日の記事でお伝えしたとおり,Netbookの代名詞的な存在にもなっている「Eee PC」とは一線を画すスペックを持つのがN10Jの大きな特徴だが,とくに注目したいのが,単体GPU,「GeForce 9300M GS」を搭載している点。
 「9300」という製品型番の時点で,過度な希望を持てないことは想像がつくが,それでもグラフィックス機能統合型チップセットよりは,間違いなく“期待”できる。では,現実問題としてどれくらい期待できるだろうか?

 4Gamerでは,ASUSからN10Jの実機を入手したので,(先にAtom搭載マザーボードのテストを行ったときと同様,)実際にゲームを実行した様子をムービーにまとめつつ,N10Jの可能性を探っていきたいと思う。


ローエンドながら単体GPUを搭載

バッテリ寿命のためにGPU切り替えも可能


GPU-Zの実行結果。SP数はNVIDIAの公式の値とは異なる結果が出てしまっている。なお,動作クロックはコア580MHz,シェーダ1450MHz,メモリ800MHz相当(実クロック400MHz)と認識されていた
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 あらためて確認しておくと,GeForce 9300M GSはローエンド向けとなるNVIDIAのモバイル向けGPUだ。NVIDIAの公式資料では,シェーダプロセッサ「Streaming Processor」数は8基で,メモリインタフェースは64bitと,見事にローエンド仕様である。

 なおN10Jは,Netbookでも利用されているグラフィックス機能統合型チップセット「Mobile Intel 945GSE Express」(以下,945GSE)チップセットを採用している。
 GeForce 9300M GSの利用時は,バッテリー駆動時間が4時間となるが,もう少し長時間使いたいときもあるだろう。そのようなときは,GeForce 9300M GSへの給電をカットし,945GSEのグラフィックス機能を利用することで,駆動時間を7時間に延長できる。ただし,この切り替えには手動スイッチによる設定変更と,Windowsの再起動が必要であり,Windows上で自由に切り替えたりはできない。

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HDMIコネクタの左にあるのがGPUスイッチ。「ON」だとGeForce 9300M GSが,「OFF」だと945GSEの統合型グラフィックス機能が使用される
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GPUスイッチを切り替えると,それを検知して「省電力スイッチ」のウインドウがポップアップして再起動を促してくる(画面では,GeForce 9300M GSから945GSEに切り替えたので「POWER SAVING」になっている)。再起動後にGPUが切り替わる仕組み

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N10Jと付属品一式。本体とACアダプタ,バッテリー以外に,ドライバやソフトウェアのCD-ROMや取扱説明書,そしてキャリングケースとUSBワイヤードマウスも付属する
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キーピッチは[SHIFT]キーや[¥]キーなどが一部狭いものの,基本的に18.5mmと比較的広め。2mm弱のストロークも感触は悪くなく,タッチタイプ時の違和感はなかった


実際にN10Jでゲームを実行してみる

1024×600ドットの解像度が第一の関門


 テストに入る前に,N10Jの基本的なスペックを確認しておこう。入手した個体のCPUやHDD,ドライバインストール状況は下に示した表のようになっている。

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 N10Jのスペックで注意する点は,液晶ディスプレイの解像度だ。表示ドット数は1024×600。横1024ドットに対して縦横比4:3となる場合の768ドットより縦のドット数が少なく,これがゲームではネックになる場合があるからだ。

「シヴィライゼーション4」は起動時に画面解像度をチェックする仕様で,1024×768ドットの表示が不可能だと起動できない
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 例を挙げると,今回チェックした範囲では,「ルーセントハート」および「シヴィライゼーション4」で「画面解像度が1024×768ドット未満には対応しない」という趣旨のメッセージが出て起動できなかった。

 2008年1月25日の記事でお伝えしているように,Eee PCでは(メーカー保証外で,100%自己責任になることを覚悟すれば)ディスプレイ解像度を仮想的に広げる手段も用意されているが,少なくとも筆者が調べた限り,現時点でN10Jの解像度を“どうこう”できるツールはない。GeForce 9300M GSのパフォーマンスで想定されるようなカジュアルタイトルだと,4:3というアスペクト比のゲームが多いだけに,これはやや厳しいところだ。ASUSがドライバを出してくれたりするといいのだが……。

■複数のゲームタイトルで動作状況をチェック


 テストするN10Jの環境について簡単にチェックしたところで,いよいよテストに入っていこう。

 まずは,参考までに「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)を,ドライバの設定などをベンチマークレギュレーション5.2の「標準設定」に準拠し,そのうえで解像度はN10Jが表示できる最大の1024×600ドットに設定してテストを行った。
 GeForce 9300M GSはDirectX 10世代のGPUであるため,「HDR/SM3.0」テストも正常にテストが実行できており,結果,総合スコアは1560。解像度が1024×768ドットに満たないため,これまで4Gamerで行ったほかのGPUのテスト結果とは比較できないが,それでもかなり低い結果である。表示も“紙芝居”に近いコマ送りで,かろうじて動いているように見える程度だった。
 ちなみに,945GSE内蔵グラフィックス機能でもテストを行ったが,当然のことながら,HDR/SM3.0テストを実行できないこともあり,総合スコアは二桁台と無残なものであったことを付記しておきたい。

 いきなり残念な結果が出てきたが,3DMark06はあくまでもベンチマークテストであり,実際のゲームではどうかはまだ分からない。ちゃんとプレイできるかどうかはゲーム次第なので,実際にいくつかのゲームを動かしてみる必要がある。

 ……ということで,上述の解像度の問題が生じなかったタイトルのうち,いくつかを実際に用いつつ,N10JのゲームPCとしての実力を探ってみたい。チェックすべきポイントは,どれだけスムースに描画が行われるか,そしてその状態で満足なプレイが可能かだ。なお,945GSE側のグラフィックス機能を使った場合についても,同じようにプレイできるかどうかを確かめているので,そちらについても参考にしてもらえれば幸いだ。

SPORE クリーチャー クリエーター
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 まずは,「SPORE クリーチャー クリエーター」を動かしてみた。エレクトロニック・アーツが公開している動作確認環境にIntel GMA950(※945GSE内蔵のグラフィックス機能)が含まれていることから,問題なく動作すると予想していたが,それを裏付ける結果になったことはいうまでもない。
 当然のことだが,945GSEのグラフィックス機能を使用した場合でもほとんどもたつきなどを感じず,スムースに動作した。GeForce 9300M GSでも同様で,実際のところどちらのグラフィックス機能でもほとんど差を感じない。

 1024×600ドット表示は公式にサポートされており,「画面サイズ設定」からこの解像度を選択可能。その状態でゲーム内オプションからグラフィックス設定をすべて一番高く指定しても,もたつきなどは生じなかった。

モンスターハンター フロンティア オンライン
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 比較的低スペックのPCでも動作することが知られている「モンスターハンター フロンティア オンライン」。実際,以前のAtom搭載マザーボードの検証でも,「キャラクターやオブジェクト(NPCを含む)が多い街での移動は,やや“もっさり”感が漂うものの,比較的閑散としているフィールドでの戦闘なら問題なく行える」と評価していた。
 今回のチェックにおいても,N10Jで945GSEのグラフィックス機能を利用した場合,上記の評価と同様。キャラクターが多くなってきたり,オブジェクトが多くなるとややつらくなるものの,おおむね問題はない,といった印象だ。

 一方のGeForce 9300M GSはどうか。実のところ,このもたつきの原因はCPUにあると思っていたので,GPUを用いても大きな違いはないだろうと踏んでいたのだが,予想はいい意味で裏切られた。広場のようにキャラクターが多く,描画だけでなくCPU能力も必要とされるであろう場面ではさすがにもたつくものの,フィールドではまったくといってよいほどそれを感じなかったからだ。
 どちらのグラフィックス機能でもプレイできるといって問題ない同タイトルだが,GeForce 9300M GSを利用したほうがより快適だったと断言していいだろう。

コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア
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945GSEで起動すると,エラーが発生する
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GeForce 9300M GSでは問題なく動作
 「軽い」ゲームを二つ試したところで,今度は「重め」のゲームとして,「コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア」(以下,CoD4)を動かしてみる。

 まずは945GSEからだが,結論からいうと,「CoD4が利用する機能をグラフィックスカードがサポートしていない」という趣旨のエラーが出て起動できず。
 一方のGeForce 9300M GSはさすがGeForceというか無事に起動。とはいうものの,GeForce 9300M GSでも,1024×600ドット全画面表示,デフォルトの描画設定ではいわゆる“コマ送り”であり,まともにプレイできるとはいえない状態である。

 そこで今回は描画負荷をできるだけ下げてみようということで,ゲーム内オプションから640×480ドットを選択,さらにすべての描画オプションを一番下でそろえたところ,「プレイできないほどではないが,快適とはいえない」という状態までは改善された。
 とはいえ,全体的にもたつく感じはぬぐえず,描画オブジェクトが増えるとフレームレートが落ちるのがはっきりと体感できる。正直な話,この状況で実際にプレイするのはつらい。単体GPUとはいえ,GeForce 9300M GSには荷が重すぎる印象だ。

Crysis
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Crysisは945GSEをサポートしていない
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GeForce 9300M GSでもゲームになる速度が出る
 GeForce 9300M GSはDirectX 10世代のGPUであり,N10JにはWindows Vista Home Premiumがインストールされている。そこで,用意したのが,DirectX 10対応タイトル「Crysis」だ。今回は手元にあった英語版を用いた。

 あらためて述べるまでもなく,945GSEはDirectX 10非対応。案の定動作しなかったので,GeForce 9300M GSに切り換えると,問題なく実行できた。
 なお,Crysisは起動時に動作環境チェックを行って,適切なグラフィックス設定が自動的になされるが,起動直後にグラフィックスオプションを確認したところ,「TEXTURE QUALITY」や「SHADER QUALITY」など主要な描画オプションはすべて「LOW」。さらに,表示解像度は640×480ドットが指定できず,800×600ドットか1024×600ドットしか選択できない。とりあえず800×600ドット表示を選び,この状態でプレイしてみたところ,もたつきはあるものの,紙芝居やコマ送りほどはひどくない状態だった。

 そこで,すべての設定を「LOW」に変更。すると,「快適ではないが,我慢すればプレイを続けられる」程度の動きになった。CoD4と比較すると,Crysisのほうが“軽い”印象で,フレームレートが落ちる症状の頻度が少ないように感じられる。とはいえ,森の中など描画オブジェクトが増えると,ときどき“引っかかり”のようなものを感じることが多くなり,実際にこの状態でプレイを続けるのはつらいはずだ。


 以上のように,4つのゲームを実際にプレイして,N10Jでどこまでゲームができるのかを探ってみたが,「文章だけではイメージが掴みにくい」という人もいるだろう。そこで,それぞれのゲームがどの程度動いているのかを,画面直撮りのムービーにまとめてみた。ぜひ,実際に自分の目で確認してほしい。なお,事情によりモンスターハンター フロンティア オンラインは割愛しているので,ご了承を。



Netbook以上の3D性能は間違いなく持つN10J

ディスプレイの制限と価格,重量をどう判断するか


画像集#014のサムネイル/Atom+GeForce 9300M GSの実力を探る。10万円のN10Jは「どこでもPCゲーム」を実現できるのか?
 以上,ゲームプレイを中心にN10Jを評価するに,3D能力をあまり必要としないゲームならば大きな問題はなくプレイできそうだ。また,DirectX 10の機能をすべて備えているので,Intelのグラフィックス機能統合型チップセットを利用すると起動すらできないゲームもプレイ可能になる。
 ただし,その場合でも,3D描画負荷の高いタイトルを前にすると,描画オプションを最低に設定しても,満足にプレイできる環境の実現は難しい。ここは,「グラフィックス機能そのものが原因でゲームが起動しない」問題は少なくとも回避できるようになった,と捉えるべきだろう。

 また,本稿の中盤で指摘した件の繰り返しになるが,N10Jが持つ1024×600ドットというディスプレイ解像度も,ゲームプレイに当たって意外なハードルとなる。この問題が何らかの形でクリアされれば,「ゲームの互換性に優れる単体GPUを搭載したノートPCが10万円で!」と断言できるようになるはずで,正直,なんとも歯がゆい。
 逆にいうと,現時点では「大きめのNetbookにGPUを載せただけ」であり,そうなると,CPU処理能力に限界のあるAtomを搭載しながら10万円という価格が高く思えてしまう。同時に,筐体を大きくしたことで,重量が1.5kgになっている点もマイナスである。

 というわけで,ゲーム用途におけるN10Jの評価は,ASUSが解像度の課題を解決できるかにかかっていそうだ。今後,仮想的にでも,3Dグラフィックスの1024×768ドット表示ができるようになれば,コストを重視する“ノートPCゲーマー”にとって,魅力的な選択肢となるだろう。BIOSやドライバの開発能力に定評のあるASUSだけに,期待したいところだ。
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