テストレポート
グラフィックスメモリ1GB版GeForce 9600 GTカードを試す
この“全部入り”製品の2008年3月21日時点における実勢価格は3万円台後半。原稿執筆時点において最も高価なGeForce 9600 GTカードだが,果たしてリファレンスデザインの製品と比べて,どういったメリットがあるだろうか。今回はその点について少しチェックしてみたいと思う。
2スロット仕様のクーラーは非常に静か
動作クロックはMSIの公式情報をやや上回る
クーラーに組み込まれたファンは90mm角相当で,MSIが「Seaweed-Blade Fan」と呼ぶ,PWM(Pulse Width Modulation,パルス幅変調インバータ)制御タイプとなっている。
このリファレンスカードに対して,N9600GT-T2D1GJ-OCがどのような形で優位性を示すかを見ていくことになるわけだが,純然たるグラフィックスメモリ容量の違いも見るべく,今回はN9600GT-T2D1GJ-OCのコア/シェーダ/メモリクロックをリファレンスカード相当にまで落とした状態のデータも取得することにした。以下本文ではとくに断りのない限り,入手したN9600GT-T2D1GJ-OCは「9600 GT 1GB OC」,リファレンスクロックに設定したN9600GT-T2D1GJ-OCを「9600 GT 1GB」,リファレンスカードを「9600 GT 512MB」と表記し,グラフ中は「9600 GT」の表記も省略する。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション5.2準拠となるが,GeForce 9600 GTそのもののポテンシャルはすでに2008年2月21日の記事でお伝えしているので,今回は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06),「Crysis」「Company of Heroes」の3タイトルに絞って,「標準設定」「高負荷設定」のスコアを見ていくこととしたい。
1GBメモリの現実的なメリットはほとんどないが
クロックアップの効果はまずまず
さっそく,3DMark06のスコアからチェックしてみよう(グラフ1,2)。さすがに9600 GT 1GB OCは頭一つ抜きん出ており,メーカーレベルのクロックアップ効果はかなり高い。一方,動作クロックを揃えた状態におけるグラフィックスメモリ1GBと512MBの違いは,まったくないといっていいだろう。
続いてグラフ3,4はレギュレーション5世代で最も描画負荷の高いCrysisの結果だが,ここでもクロックアップ効果をはっきりと見て取れる。
3DMark06と異なるのは,高負荷設定時の1600×1200ドット以上における同クロックの比較で9600 GT 1GBが9600 GT 512MBに差を付けている点。とくに1920×1200ドットでは2倍以上の違いが出ているが,実際のフレームレートはゲームプレイにならない値であり,現実的な解像度においては,やはり「変わらない」ということになる。
また,Company of Heroes(Version 2.202)でも,9600 GT OC 1GBが突出したスコアを見せ,一方,同一クロックだとグラフィックスメモリ1GBの優位性は明確に確認できないという結果に終わった(グラフ5,6)。
消費電力の上昇は許容できるレベル
GPUクーラーの静音性&冷却性能は高い
Windows XPの起動後,30分間放置した直後を「アイドル時」,3DMark06を30分間連続実行し,最も消費電力の高かった時点を「高負荷時」として,各時点の消費電力をワットチェッカーで計測した結果がグラフ7だ。アイドル時に,CPUなどの省電力機能はすべて無効化している。
クロックアップモデルには,どうしても“電力食い”のイメージがつきまとうが,テスト結果を見る限り,9600 GT OC 1GBのスコアは性能向上度合いに見合った程度の上昇に抑えられているといってよく,十分許容できる範囲だ。リファレンスクロックで比較したときにメモリ容量の違いが消費電力にはほどんど影響していない点も興味深い。
いずれにせよ,現在主流となっている定格500W級の電源ユニットを搭載した,標準的な構成のデスクトップPCなら,9600 GT OC 1GBを造作もなく動作させられるはずだ。
グラフ7の時点におけるGPU温度を,CPUID製のシステム情報ツール「HW Monitor」から計測した結果をまとめたのがグラフ8だ。
2スロット仕様のGPUクーラーを搭載していることもあって,9600 GT OC 1GBの温度はアイドル時,高負荷時ともリファレンスカードより低くなっている。9600 GT OC 1GBの温度が高負荷時に9600 GT 1GBと比べて2℃しか上がっていないのは,ファン回転数がわずかに上がるためで,どうも60℃付近にファン回転数変更の基準点がある印象を受けた。
もっとも,(筆者の主観ではあるが)回転数が上がっても動作音は低く,むしろCore 2 Duoボックスクーラーの動作音のほうが気になるレベル。よほど神経質な人でなければ,9600 GT OC 1GBの動作音は静かだと感じられよう。
メモリ容量以外には価値アリも割高
2万円台の512MBモデルなら選択肢になり得るか?
ただ,本稿のテーマから少々外れることを覚悟で続けると,MSIはN9600GT-T2D1GJ-OCのグラフィックスメモリ512MB版「N9600GT-T2D512J-OC」を用意しており,搭載するクーラーや動作クロックは「両製品で共通」(エムエスアイコンピュータージャパン)。512MB版の実勢価格は2万5000〜2万8000円程度なので,「GeForce 8800 GT」搭載カードとの価格差がほとんどないこと,そして何より今回のスコアがカタログスペック以上の動作クロックによって出されたものであることは留意する必要があるものの,消費電力や冷却能力,動作音を総合的に見るならそう捨てたものではない。
絶対的に“コスト対3D性能比”を重視する向きには,512MB版でもやはり微妙という点まで否定するつもりはもちろんないが,より扱いやすいミドルクラスGPUの選択肢として,N9600GT-T2D512J-OCが相応に価値を持っているとはいえるだろう。
- 関連タイトル:
GeForce 9600
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