史上初のコンシューマ用ゲーム機「Brown Box」の開発者Ralph H. Baer氏(右)と,Atariのエンジニアとして「Pong」を生み出したAllan Alcorn氏
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ゲーム業界の「創始者」ともいえる二人の人物,Ralph H. Baer(ラルフ・H・べア)氏と,Allan Alcorn(アラン・アルコーン)氏がGDC08会場にて壇上に上がった。Baer氏は1968年にMagnaboxのエンジニアとして「Brown Box」を開発。さらに1972年,Atariで「Pong」を完成させたのがAlcorn氏である。
Baer氏が,「テレビを利用するハードウェア」に着想したのは1966年のこと。当時,アメリカではテレビが爆発的に普及していたものの,まだケーブルチャンネルなどは存在せず,テレビで視聴できる放送番組は限られていた。そこで,テレビを使ってピンポンを楽しめる「Brown Box」を開発したのが1968年。それがやがて,1972年にMagnaboxから発売された“史上初めてのゲーム専用機”Odysseyへと昇華したのだ。
また同じ年,Atariに就職したばかりだったAlcorn氏が,アーケード用ゲームとして「Pong」を開発した。この両者のアイデアが,もはや世界で3兆円ともいわれるゲーム産業の道筋をつけたのである。
今回のGDC08では,この両人がスピーカーとして招聘され,「How to Create an Industry: The Making of Brown Box and Pong」(産業の作り方: Brown BoxとPongの制作工程)というタイトルでの講義を行った。両者の“卵”が生まれてくるまでに,どんなアイデアが成功し,どんな失敗や挫折を経験していたのかというエンジニアとしての内情を公開する,業界でも非常に価値の高いセッションだった。
現在でもコンサルタントとしてゲーム業界に関わっているAlcorn氏は,Pongの唯一の仕様説明である「Avoid Missing Balls for High Score」(ハイスコアを獲得するためにボールのヒットミスを避けてください)という文章を持ち出し,「ゲームの仕様書きはいつの時代もシンプルなどほど良い」と説明した。講演の最後には,Baer氏とAlcorn氏が,Brown Boxを使って数十年ぶりの頂上決戦を実施。決着は付かなかったものの,会場を大きく盛り上げていた。
さて,Baer氏は恩年86歳であり,いうまでもなく業界最高齢の人物だ。その彼が,講義の最後にサプライズイベントとして,ギネスブックで有名なギネス協会から「世界で最初のゲーム機Brown Boxの開発者」という認定書を与えられた。彼らの功績がなければ,今のゲーム業界はどのような姿になっていただろうか? そんな思いを巡らせてしまうほど,筆者にとってもサプライズな出来事であった。