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  • 発表日:2008/06/19
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ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
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印刷2008/06/30 00:00

レビュー

想定売価299ドルのハイエンドGPU,その驚くべき実力に迫る

SAPPHIRE HD 4870 512MB GDDR5 PCIE
MSI R4870-T2D512

Text by 宮崎真一

»  衝撃のデビューを飾った「ATI Radeon HD 4850」。その上位モデルとして,2008年6月下旬から店頭販売が始まった「ATI Radeon HD 4870」搭載カードを入手できたので,宮崎真一氏がさっそく検証する。単に“動作クロックを引き上げただけ”に留まらない,高い性能は要注目だ。


ATI Radeon HD 4870 GPU。ダイサイズは実測で16×16mm。「0823」が製造週(※08年23週)のことを指しているとすると,できたてほやほやである
画像集#002のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
 2008年6月25日の記事でお伝えしたとおり,“199ドルのミドルハイクラスGPU”こと「ATI Radeon HD 4850」(以下,HD 4850)の上位モデルとして,AMDは「ATI Radeon HD 4870」(以下,HD 4870)をリリースした。どちらも「RV770」の開発コードネームで呼ばれてきたGPUのため,基本的なアーキテクチャは共通だが,HD 4870はHD 4850と比べて,スペックが大幅に引き上げられている。
 今回4Gamerでは,Sapphire Technologyの販売代理店であるアスクから「SAPPHIRE HD 4870 512MB GDDR5 PCIE」(以下,SAPPHIRE HD 4870)の製品サンプル,そしてAMDの日本法人である日本AMDからMSI製となる搭載グラフィックスカード「R4870-T2D512」の評価用サンプルを入手したので,シングルカードとATI CrossFire(以下,CF)構成で,その3D性能を検証してみたいと思う。

画像集#003のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
SAPPHIRE HD 4870 512MB GDDR5 PCIE
メーカー:Sapphire Technology
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
実勢価格:4万2000円前後(2008年6月30日現在)
画像集#004のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
R4870-T2D512
メーカー:MSI
問い合わせ先:エムエスアイコンピュータージャパン
TEL:03-5817-3389
価格:未定(2008年6月30日現在)


ATI Radeon HD 3870よりも大仰な2スロットクーラー搭載

ATI PowerPlayの挙動はカードによって異なる?


SAPPHIRE HD 4870とR4870-T2D512のカード裏面。後者(※写真手前側)には,評価用サンプルである旨を示すシールが貼られていたが,カードデザイン自体は同じ
画像集#005のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
 SAPPHIRE HD 4870とR4870-T2D512はいずれもリファレンスデザインを採用するため,今回は製品サンプルである前者を中心に見ていきたいと思うが,GPUクーラーは「ATI Radeon HD 3870」(以下,HD 3870)を彷彿とさせる2スロット仕様だが,HD 3870のリファレンスデザインが採用していたとの比べると,基板がたわまないよう補強する役割を担うなど,大型かつ頑丈な作りとなっている。また,カード長は実測で241mm(突起部除く)になっており,同230mmのHD 4850と比べると若干長くなり,さらにPCI Express用補助電源コネクタは6ピン×2仕様になるなど,HD 4850(やHD 3870)と比べると,いかにもハイエンドカードという仕様になった印象だ。言うまでもないが,6ピンコネクタは両方接続しておかないと,起動時にエラーが出て利用できない。

カードを別の角度から撮影したり,HD 4850のレビュー記事と同様に,「ATI Radeon X1950 Pro」搭載カードとカード長を比べたりしてみた。サイズは気持ち大きめで,PCI Express用補助電源コネクタは外部インタフェースの反対側に置かれる設計なので,PCケース内の空きスペースに注意したい
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搭載するメモリチップは512Mbit(16M×32)品
画像集#009のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
 GPUクーラーを取り外すと,GPUコアとグラフィックスメモリが姿を現す。6月25日の記事で紹介しているとおり,HD 4870は,世界で初めてグラフィックスメモリにGDDR5が組み合わされているわけだが,そのチップはQimonda製の「IDGV51-05A1F1C-40X」(1.0ns品)となっていた。TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.2.4)動作クロックを確認すると,SAPPHIRE HD 4870とR4870-T2D512の両製品はいずれもコア750MHz,メモリクロック3.6GHz相当(実クロック900MHz)とリファレンスどおりだったので,メモリクロックは実クロックで100MHz分のマージンが設けられていることになる。

GPUクーラーは,カードのたわみを防ぐスチールベースとファンに,2本のヒートパイプを活用した銅製GPUヘッド+アルミフィンのヒートシンクユニットからなる。メモリチップは8枚搭載するデザインだ
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SAPPHIRE HD 4870へのGPU-Z実行結果
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 また,省電力機能の「ATI PowerPlay」が有効になると,SAPPHIRE HD 4870はコアクロックが500MHzまで下がる。TechPowerUp製のBIOSエディタ「Radeon BIOS Editor」(Version 1.11)で確認する限り,アイドル状態でもコア電圧は1.263Vのまま,下がっていないようだ。
 一方,R4870-T2D512は同条件でコア550MHz,コア電圧1.203Vに低下するようになっており,ATI PowerPlayの実装方法がカードメーカー各社で微妙に異なる可能性を見て取れた。

上下段とも,左がSAPPHIRE HD 4870,右がR4870-T2D512。上段はATI Catalyst Control Centerから確認したアイドル時の動作クロック,下段はRadeon BIOS Editorからチェックした,アイドル時の動作クロックとコア電圧だ
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R4870-T2D512の製品ボックス。本文で触れているように,カードはリファレンス動作するのだが,なぜか「OC Edition」と書いてある
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 ところで,R4870-T2D512の製品ボックスに添付の「Quick User's Guide」に興味深い記載が見られたので,紹介しておきたい。
 というのも,このQuick User's Guideには,グラフィックスメモリの項目に「1G DDR3 memory or 512MB DDR5 memory」と明記されているのだ。つまり,MSIはHD 4870搭載で,GDDR3メモリを搭載したメモリ1GBモデルを投入する予定があるというわけである。
 QimondaのWebサイトによると,容量1GBを実現する1GbitのGDDR5チップは,2008年7月からの生産開始。それを待たずにGDDR3を採用することで製品リリースを早めるのかもしれない。いずれにせよ,グラフィックスメモリ1GB版のHD 4870カードを待っている人は,搭載するメモリチップに関して,カードメーカー各社の動向を注視しておく必要があるだろう。


レビュワー向け最新ドライバを使用しつつ

AMDが配布するHotfix版ドライバとの違いもチェック


Rampage Formula
ゲーマー向けのX48&DDR2マザー
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:3万6000円前後(2008年6月30日現在)
画像集#019のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション5.2準拠で,テスト環境は表1のとおり。HD 4870のテストに当たって,AMDはレビュワーに向けて,HD 4850のときより新しい「8.501.1-080621a-065813E-ATI」というバージョンのグラフィックスドライバを配布している。これは,「ATI Catalyst 8.6」をベースに,CF時における「BioShock」と「The Witcher」のパフォーマンスを改善し,そのほかにも細かな問題点を修正したバージョンとのこと。今回は,本ドライバ,そして,HD 4850のレビュー時に用いたATI Catalyst 8.6ベースのHotfix版ドライバ「8.501.1-080612a-064899E-ATI」を用いて,HD 4850のレビューで見えてきたいくつかの問題点が改善しているかどうかをチェックしようというわけだ。ただし,テストスケジュールの都合で,CF時はレビュワー向けドライバのみを用いる。

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 シングルカードの比較対象としては新たに「GeForce 8800 Ultra」を加えつつも,基本的には「GeForce GTX 280/260」のレビュー記事HD 4850および「GeForce 9800 GTX+」のレビュー記事から,テスト結果を流用している。そのため,ATI Radeonは「Intel X48 Express」ベース,GeForceは「nForce 780i SLI」ベースと,マザーボードが異なるので,この点は注意してほしい。

 以下,基本的にグラフィックスカード名ではなくGPU名で表記を行い,ここまでとくに断っていないGPUについても,「ATI Radeon」「GeForce」は省略。CFおよびNVIDIA SLI(以下,SLI)動作については,GPU名の後ろに[CF]あるいは[SLI]と書いて区別する。
 最後になるが,参考までに,HD 4870&4850と,置き換え対象になるGPUや競合製品について,スペックを表2にまとめたので,興味のある人はご一読を。

※ GeForce 9800 GTX+のみ想定売価。ほかは2008年6月30日時点の実勢価格。ATI Radeon HD 3870 X2,ATI Radeon HD 3870,GeForce 9800 GTXは,店頭で価格が大きく変動中
画像集#024のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載


3DパフォーマンスはGTX 260と同等かそれ以上

CrossFireの効果も比較的良好


 いつものように前置きが長くなったが,「3DMark06 Build 1.2.0」(以下,3DMark06)の結果から見ていこう(グラフ1,2)。「標準設定」におけるシングルカードのスコアはGTX 260を凌いでいる。HD 4850に対しては,解像度が高くなるほどスコア差を大きくしており,1024×768ドットで約10%,1920×1200ドットでは約20%高いスコアを示した。一方,HD 4870をもってしてもHD 3870 X2を越すほどにはいたらなかったようだ。
 CF&SLIのスコアは,2008年6月下旬時点の世界最速シングルGPUであるGTX 280との比較を軸に見ていきたいと思うが,HD 4870は安定してGTX 280のスコアを上回っており,HD 4870を2基搭載するウルトラハイエンドソリューションとして,2008年8月にも登場予定となっているHD 4780 X2にも期待が高まる。なお,Hotfix版ドライバとレビュワー向けドライバの間に,そう大きなスコアの違いは見られなかった。

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 一方,「高負荷設定」のテスト結果をまとめたグラフ3,4では,負荷によりスコアは低くなるものの,傾向そのものは標準設定と変わらない。HD 4870[CF]とHD 4850[CF]では,前者のほうが高負荷設定により強い点にも注目したい。

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 グラフ5〜7は3DMark06の「Feature Test」から,フィルレート(Fill Rate),ピクセルシェーダ(Pixel Shader),頂点シェーダ(Vertex Shader)各テストの結果をまとめたものだ。
 フィルレートのMulti-TexturingテストでHD 4870がHD 3870の倍近いスコアを記録しているのは壮観だが,それ以上に,頂点シェーダテストで,HD 4870がHD 3870と並んでいる点に注目したい。HD 4850のレビュー時に比較したとおり,HD 4800シリーズでは,GeForceに似た,ピクセルシェーダ性能重視の傾向を見て取れる。事実,ピクセルシェーダのスコアはHD 4870がHD 3870の2.3倍弱という,圧倒的な値を示しているのだが,にもかかわらず,基本性能の向上によって,頂点シェーダスコアがそれほど落ち込んでいない。これはなかなか立派だ。

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画像集#031のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載

 以上,3DMark06で見せた傾向が,実際のゲームタイトルではどういった結果を生んでいるだろうか。
 グラフ8,9は,FPS「Crysis」から標準設定のテスト結果をまとめたものだ。まず,HD 4850に対するHD 4870のアドバンテージは10〜20%。GTX 260とはほぼ互角で,未だ搭載カードが店頭に並んでいない9800 GTX+をも圧倒する。
 CrysisはマルチGPU動作のメリットがあまりないタイトルなので,CF時のスコアはGTX 280に低解像度で置いて行かれるが,1920×1200ドットにおいて逆転しているのも興味深い。

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 同じくCrysisから,高負荷設定の結果をまとめたのがグラフ10,11である。3DMark06で,HD 4870は高負荷設定時の強さを見せており,前世代品となるHD 3870に対しては80〜90%増しというスコアを記録している。しかし,NVIDIAの強いサポートの下で作られているCrysisだと,さすがにGTX 260に若干の先行を許す。HD 4870[CF]も,GTX 280からはだいぶ置いて行かれている。
 なお,ATI Catalyst 8.6 Hotfix版ドライバだと,高負荷設定の1920×1200ドットでHD 4850のCFが正常に動作しなかった問題があったが,これはHD 4870だと確認されなかった。

画像集#034のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
画像集#035のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載

 「Unreal Tournament 3」(以下,UT3)の結果がグラフ12,13である。HD 4870は9800 GTX+に置いて行かれる場面も見られるなど低解像度でのスコアは今一歩。しかし,1600×1200ドット以上ではGTX 260を上回っており,ここでもHD 4870は描画負荷の高まりに強いことを確認できる。
 CF動作時は,低解像度だとCPUボトルネックによるスコアの頭打ちが見られるものの,高解像度になってシングルカードと同様に描画負荷が高くなると,強みを見せるようになる。

画像集#036のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
画像集#037のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載

 もう一つFPSから「Half-Life 2: Episode Two」(以下,HL2EP2),標準設定の結果をグラフ14,15に示す。HL2EP2の標準設定は,このクラスのGPUを評価するには負荷が低すぎるため,スコアの違いが現れにくくなっている。とはいえ,高解像度に注目すれば,HD 4850や,9800 GTX+より一段上のポテンシャルを持つことを確認できよう。
 CF時は,CPUボトルネックによって,スコアにほとんど差が生じていないが,それでも競合わずかに上回っているあたりは,最適化の効果アリといったところか。

画像集#038のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
画像集#039のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載

 一方,高負荷設定では,Crysisと同様,高解像度でGTX 260に差をつけられてしまう。GDDR5による広いメモリバス帯域幅だけでは,メモリ負荷が高い局面で,256bitメモリインタフェース,あるいはGDDR5のレイテンシの大きさといったハンデを克服できない場合があるということだろうか。
 CF時のスコアの安定性は目を見張るものがある。

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 続いてはTPSから,レギュレーション5.2採用タイトル中,最もグラフィックスメモリ負荷の高い「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロスト プラネット)だが,標準設定の結果をまとめたグラフ18,19では,パフォーマンスがあまり芳しくない。
 HD 4850のレビュー時に筆者は,ドライバの熟成が進んでいない可能性を指摘したが,メモリバス帯域幅が大きく向上しているHD 4870で,スコアが大きく伸びているにも関わらず,GTX 260に届かないことからすると,やはりメモリパフォーマンスよりもドライバが影響している可能性のほうが高そうである。
 ただ,HD 4850が完敗を喫した9800 GTX+に対し,HD 4870が勝っている点は,評価していいだろう。さらに,CF構成でのスコア向上率にも著しいものがある。1920×1200ドットで,HD 4870シングルカード時の80%増し,GTX 280シングルカードに対して20fpsもの差をつけている点は興味深い。

画像集#042のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
画像集#043のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載

 高負荷設定の結果が,グラフ20,21である。
 ここでもHD 4870のパフォーマンス傾向は基本的に変わらず,9800 GTX+以上,GTX 260未満のところに位置している。
 HD 4870[CF]は,ここでも高解像度での強さが目立つ。

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画像集#045のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載

 ロスト プラネットと並んでHD 4850のスコアが伸びなかった「Company of Heroes」では,やはりというかなんというか,HD 4870のスコアもパッとしない(グラフ22,23)。一にも二にもドライバの成熟待ちである。

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 高負荷設定でも傾向は同じ。とはいえ,GTX 280に届かないものの,9800 GTXや8800 Ultraと同等レベルのパフォーマンスは発揮できている。

画像集#048のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
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消費電力はHD 4850比で“順当に”増加

2スロットクーラーもファン回転数が低い


 さて,HD 4850で1基だったPCI Express用補助電源コネクタを2基搭載することから,HD 4870の消費電力がHD 4850をかなり上回ることは容易に想像がつくが,それはどの程度だろうか。

 今回も,HD 4850やGTX 280/260のレビューと同じように,消費電力変化のログを取得できるワットチェッカー「Watts up? PRO」を利用してシステム全体の消費電力を測定することにした。OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を「(アプリケーションの)実行時」として,それぞれのテスト結果をスコアとする。なお,HD 4870については,製品版サンプルであるSAPPHIRE HD 4870を基本的には用いる。

 結果はグラフ26のとおり(※編集部注:巨大になるため,バーにスコアを書き込んだものは別ウインドウを開くと表示するようになっています。また,別途表3にスコアの一覧表をまとめました)。HD 4870が示すアイドル時の消費電力は170W台半ば。8800 Ultraよりは低いが,9800 GTX+や,(省電力機能を持つと思われる)GTX 260と比べるとやや高めだ。マザーボードが異なるので,今回のスコア差がそのままグラフィックスカードの消費電力差とはならないが,少なくとも低くはない。
 ただ,ここで別途,アイドル時にコア電圧の下がるR4870-T2D512でもデータを取ってみると,162W。ATI PowerPlay適用時の電圧の違いからSAPPHIRE HD 4870とは10W以上も開きがある。アイドル時の消費電力を気にする場合は,製品ごとに異なるであろう,ATI PowerPlayの仕様にも注意を払いたいところだ。……なかなか情報が出てこないところではあるのだが。

 ゲームアプリケーション実行時におけるシステム全体の消費電力は280W前後で,これは9800 GTXとほぼ同じで,GTX 260と比べるとかなり低い。ハイエンドGPUを選ぶようなユーザーにとっては,とくに問題のない消費電力だろう。
 一方,HD 4870[CF]は400Wオーバーとなり,HD 4850[CF]より70〜120Wも高くなっている。PCI Express用補助電源コネクタを2基持つのは伊達ではなく,CF動作を考えるのであれば,電源ユニットにも相応のスペックが求められるかもしれない。

画像集#050のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
画像集#051のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載

 3DMark06を30分間連続実行した時点を「高負荷時」としてGPUの温度を測定した結果をまとめたのがグラフ27である。GeForceファミリーの温度測定には,GPU温度取得機能を持つ汎用ユーティリティソフト「ATITool」(Version 0.27 Beta 3)を利用しているが,ATI Radeonシリーズでは温度取得ができなったため,ATI Catalyst Control Centerの温度をスコアとして採用している。何度かお伝えしているとおり,以前のレビューでATIToolとATI Catalyst Control Centerの示す温度は,両者でほとんど同じであることは検証済みだ。なお,測定環境はバラック状態で,室温は22℃となる。

 さて,HD 4850のレビュー時に筆者はGPUクーラーの冷却能力不足を指摘したが,HD 4870でも,アイドル時の温度は78℃と非常に高い。高負荷時はHD 4850ほど高くないのが救いというレベルに留まっている。

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GPUクーラーは外排気タイプ
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 前述のRadeon BIOS Editorでファンの回転数制御設定を確認してみると,SAPPHIRE HD 4870とR4870-T2D512はいずれも,GPU温度58℃でようやくファンの回転が始まり,80℃付近では50%以下の回転数に留まる。静音性が相当重視されているわけだ。HD 4850と異なり,GPUクーラーは外排気タイプなので,PCケース内に籠もる熱の量はHD 4850よりも少なくなるはずだが,それでもCF動作を考慮する場合は,エアフローを十分に考慮する必要があると思われる。

今回テストした2製品ではいずれも,GPU温度が58℃になるまでファン回転が始まらない仕様になっていた
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ハイエンドGPU市場を塗り替えたHD 4870

供給量が安定すれば選択肢としてかなり魅力的


SAPPHIRE HD 4870の製品ボックス
画像集#022のサムネイル/ハイエンドGPUの勢力図を塗り替える「ATI Radeon HD 4870」レビュー掲載
 HD 4870は,ドライバチューニングが不十分であるため,発売直後の現時点ではゲームタイトルによって得手不得手が見られるものの,総じてGTX 260相当のパフォーマンスを発揮できている。純然たるコストパフォーマンスではHD 4850に敵わないが,5万円出してGTX 260を選ぶのであれば,4万円前後から購入できるHD 4870のほうが間違いなく魅力的である。
 ただ,4万円程度では割高感があるのも確か。これは,現在の市場でHD 4870が極端な品薄状態にあるためで,潤沢に出回ればAMDの想定価格299ドルに近い金額になっていくはずだ。AMDやカードベンダーには,いち早い供給量の改善を望みたい。

 シングルGPUで利用する限り,ウルトラハイエンドのGTX 280を脅かすことまではできないが,NVIDIAが価格を下げてきた9800 GTXクラスは圧倒しており,3万円台後半から5万円台というハイエンドGPU市場において,いまHD 4870以外の選択肢はない。ミドルハイクラスに続き,ハイエンドのシングルGPUでも久しぶりにAMDがパフォーマンスリーダーとなったことを,健全な競争という観点から,大いに歓迎したいところだ。
  • 関連タイトル:

    ATI Radeon HD 4800

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